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41.遠い唇 42.ヴェネツィア便り 43.小萩のかんざし−いとま申して3− 44.中野のお父さんは謎を解くか 45.中野のお父さんと五つの謎 |
【作家歴】、空飛ぶ馬、夜の蝉、秋の花、覆面作家は二人いる、六の宮の姫君、冬のオペラ、スキップ、覆面作家の愛の歌、覆面作家の夢の家、ターン |
朝霧、謎のギャラリー、謎のギャラリー特別室、謎のギャラリー特別室2、謎のギャラリー特別室3、謎のギャラリー最後の部屋、月の砂漠をさばさばと、盤上の敵、リセット、北村薫の本格ミステリ・ライブラリー、詩歌の待ち伏せ(上)、詩歌の待ち伏せ(下) |
街の灯、語り女たち、ミステリ十二か月、ニッポン硬貨の謎、北村薫のミステリー館、紙魚家崩壊、ひとがた流し、玻璃の天、1950年のバックトス、北村薫のミステリびっくり箱 |
北村薫の創作表現講義、野球の国のアリス、鷺と雪、元気でいてよR2-D2、いとま申して、飲めば都、八月の六日間、慶應本科と折口信夫、太宰治の辞書、中野のお父さん |
41. | |
「遠い唇」 ★ |
2019年11月
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久々の、日常ミステリを中心とした短編集、7篇。 ・「遠い唇」:学生時代にサークルの一学年上の先輩女子から貰ったアルファベット羅列の葉書。その先輩が亡くなったという知らせを受けて、改めてそに意味を解こうとする篇。 ・「しりとり」:知人の女性編集者のご主人が亡くなり、彼が遺した俳句の意味を彼女と共に解こうとする篇。 ・「パトラッシュ」:同棲中の彼氏がとった普段にはない行動にかかるささやかな謎を解く篇。(※題名のパトラッシュとは「フランダースの犬」の名前) ・「解釈」:地球上空に飛来した宇宙人が、小説を事実の記録と誤認識し、そのストーリィを誤解釈するというユーモラスな篇(対象は「吾輩は猫である」「走れメロス」)。 ・「続・二銭銅貨」:江戸川乱歩の探偵小説デビュー作、その題材となったアイデアの謎を乱歩が解き明かそうとする篇。 ・「ゴースト」:名前違いから生じたストーリィ。 ・「ビスケット」:「冬のオペラ」に登場した名探偵=巫弓彦とかつての助手=姫宮あゆみが18年ぶりに登場するミステリ。 各篇それぞれに趣向が凝らされているのですが、何かなぁ、インパクトを感じないんですよねぇ。 遠い唇/しりとり/パトラッシュ/解釈/続・二銭銅貨/ゴースト/ビスケット/付記−ひらめきにときめき |
42. | |
「ヴェネツィア便り」 ★☆ |
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2020年11月
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“女子大生と円紫師匠”シリーズ、“時と人”三部作以来、ファンとしてずっと読み続けてきましたが、そろそろ終わりにしていいかなと思ったのは、北村さんの講演を聴いた時からだったでしょうか。 本書についての出版社紹介文に、≪時と人≫の15篇という文言があり、つい三部作への懐かしい思いから読んでみた次第。 本書収録の15篇、まさに断片的な掌篇ストーリィ。 あっという間に終わってしまったり、ファンタジーもあればちょっとしたホラーもある、そしてミステリー的な篇もありと、いろいろな菓子が箱詰めされたような短篇集。 勿論そのどの篇にも、北村さんらしい香り、雰囲気が散りばめられているのは言うまでもありません。 中でも表題作「ヴェネツィア便り」は、時間を超えた、ややミステリアスなストーリィ。 ただ、軽やか過ぎて、手応えのある作品を期待してしまうと、はぐらかされたような思いが残るのではないかと思います。 その中で快く記憶に残ったのは、「誕生日」「岡本さん」「ヴェネツィア便り」の3篇。 麝香連理草/誕生日−アニヴェルセール−/くしゅん/白い本/大ぼけ小ぼけ/道/指/開く/岡本さん/ほたるぶくろ/機知の戦い/黒い手帳/白い蛇、赤い鳥/高み/ヴェネツィア便り |
43. | |
「小萩のかんざし−いとま申して3−」 ★☆ |
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2021年02月 2018/05/06 |
北村さんのお父上=演彦氏が残した膨大な日記を基に、大正から昭和初期という時代を背景にした文学青年の青春譜“いとま申して”三部作=「いとま申して−『童話』の人びと−」、「慶應本科と折口信夫」に続く第3弾、完結編。 内容としては、前作の延長、慶應義塾の学生だった時代の後半という印象。 折口信夫という師との関わり、池田弥三郎という異才、等々の人物も登場し、本作の中心軸として語られます。 しかし、就職難の時代。折口信夫に就職斡旋といった世俗的な問題で煩わしてはいけないという思い、それでも最終的に頼まざるを得ないまでに追い込まれ、紹介された沖縄での教職に嬉々として向かう姿等が描かれます。 一方、欧州ではヒトラーの他国侵攻、日独伊三国同盟締結といった暗雲が漂う時世。 そこにあるのはやはり、当時に大学生生活を送ったひとりの学生による時代の証言でしょう。 |
44. | |
「中野のお父さんは謎を解くか」 ★☆ |
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2021年11月
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文芸誌編集者である娘=田川美希と、博覧強記の高校教師である父親というコンビが謎を解く、日常ミステリ“中野のお父さん”シリーズ第2弾。 編集者である美希が、仕事上付き合いのある作家先生たちから投げかけられた謎を実家に持ち帰り、お父さんが謎解きに繋がる様々なヒントを見つけ出す、探し出すというパターンの連作ストーリィ。 名のよく知れた作家、その作品に関する謎めいたエピソード、事件、それらに関わる蘊蓄の開陳が、小説好きにとっては楽しい。 この辺りは北村さんの真骨頂ですね。 もうひとつ、これは私の個人的な好みによるものですが、堂々と繰り出される駄洒落の数々、これが嬉しい。 今、中々駄洒落って口にできないですものねぇ。(苦笑) まだまだこのシリーズ、続きそうです。最後の場面、美希のにやり顔と、相手の思い違いした風が今後どう展開していくのか、面白そうですから。 ※南洋一郎訳「ルパン全集」、エドモン・ロスタン「シラノ・ド・ベルジュラック」、あぁ懐かしかったァ。 縦か横か/水源地はどこか/ガスコン兵はどこから来たか/パスは通ったのか/キュウリは冷静だったのか/『100万回生きたねこ』は絶望の書か/火鉢は飛び越えられたのか/菊池寛はアメリカなのか |
45. | |
「中野のお父さんと五つの謎」 ★☆ |
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文芸誌編集者である娘=田川美希と、博覧強記の高校教師である父親というコンビが謎を解く、日常ミステリ“中野のお父さん”シリーズ第4弾。 夏目漱石、松本清張、池波正太郎、久保田万太郎、芥川龍之介といった名だたる作家+名人たちの落語等々、様々なエピソードにまつわる蘊蓄語りが楽しい。 ただ、自分の好きな、あるいは良く知っている作家、落語といったことではないとちょっと読むのがシンドイかもしれません。 (※私の他人事に非ず・・・) ・「漱石と月」 漱石より、ロシア文学翻訳先駆者であった二葉亭四迷のことの方が懐かしく、興味を惹かれます。 「浮雲」「其面影」「平凡」といった小説や、「片恋」「あひびき」「めぐりあひ」といった翻訳作品も、高校生当時愛読しましたし。 ・「清張の手おくれ」 松本清張の出世作「点と線」についてのエピソード。 私が読んだのは中学生の頃でしたが、作中の刑事より読者の方が先に気づいたという点、私は何も気に留めなかったなぁと思います。 漱石と月/清張の手おくれ/「白浪看板」と語り/煙草入れと万葉集/芥川と最初の本 |
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