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33.ボーダレス 34.歌舞伎町ゲノム-歌舞伎町セブンNo.4- 35.背中の蜘蛛 36.妖の掟-妖シリーズNo.2- 37.もう、聞こえない 38.オムニバス-姫川玲子シリーズNo.10- 39.フェイクフィクション 40.アクトレス |
【作家歴】、妖の華、吉原暗黒譚、ジウⅠ、ジウⅡ、ジウⅢ、ストロベリーナイト、ソウルケイジ、シンメトリー、武士道シックスティーン、武士道セブンティーン、武士道エイティーン |
インビジブルレイン、歌舞伎町セブン、感染遊戯、レイジ、ドルチェ、あなたの本、あなたが愛した記憶、幸せの条件、ブルーマーダー |
ドンナビアンカ、増山超能力師事務所、Qrosの女、ケモノの城、歌舞伎町ダムド 、インデックス、武士道ジェネレーション、硝子の太陽N、硝子の太陽R、増山超能力師大戦争 |
妖の絆、ジウX、マリスアングル、首木の民 |
31. | |
「ノーマンズランド No Man's Land」 ★★ |
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2020年11月
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“姫川玲子”シリーズNo.9。 前作で親しかった林警部補を殉職させてしまったという心の痛みを、勝俣から時に投げつけられる“死神”という言葉と併せて、未だに玲子が深く傷ついているところからスタートします。 事件は、一人暮らしの女子大生がマンションで絞殺死体となって発見されたというもの。葛飾署内にすぐ捜査本部が設置され、すぐ容疑者が浮かびますが、何とその容疑者が本所署に別の殺人事件容疑で逮捕される、それも刑事係ではなく知能犯係にという奇妙な展開。 いつもながらに玲子、何故?という疑問を放っておけず、勝手に一人で突っ走り始めます。 (玲子、少しも懲りないよなぁ。そこが玲子の魅力ですけど) その一方、20年前、同じ高校バレー部同士の江川利嗣と庄野初海という初々しいカップルが描かれます。その初海が突然行方不明になるという謎の事件が発生。何があったのか・・・。 これまでの残虐な事件、スリリングな捜査という姫川玲子シリーズらしさは本作で影を潜めていますが、その一方で、政治に絡むきな臭い様相が姿を現します。 それにガンテツこと勝俣刑事が絡んでいることが、なおのこと厄介でどす黒い闇を感じさせられます。 これまでにない政治的な展開は、本シリーズが新たな局面に足を踏み入れたことを感じさせられますが、されそれが面白いと言える展開になるのかどうか。 なお、新たな人物として曲者検事である武見諒太が登場。その武見と玲子の絡み合い、そして新たに玲子の上司となった日下守警部補の嘆き節が本作では楽しめます。 |
32. | |
「あの夏、二人のルカ」 ★☆ |
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2021年04月
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題名から推測されるように、想い出の青春期に対する回想ストーリィ。そして、2人のルカとは誰なのか、その点がちょっとミステリアス。 まず、主人公の沢口遥・32歳が仕事を辞め離婚もして、名古屋から東京の下町=懐かしい谷中に戻ってくるところからストーリィは始まります。 そこで遥が新たに出会ったのは、この町でギター修理店を開いていた乾滉一・38歳。何故か遥、その店<ルーカス・ギタークラフト>に関心を抱く様子。 一方、高校生ドラマーの佐藤クミコ。ギターを始めた同級生2人とバンドを組み、メンバーにはならないが手伝いとして加わった真嶋瑠香、その瑠香が連れて来た転校生の森久ヨウも加わって5人の熱いバンド青春ストーリィが繰り広げられていきます。 そのバンド名は“RUCAS(ルーカス)”。 しかし、現在と過去のストーリィが並行し、かつ交互に進められていくのですが、読んでいて何故か重い。頁を繰る手が中々進まず、という具合です。 でも最後は、感動的な友人たちの再会があり、あの頃の友情は今も続いている、決して一人ではないという結末へ。 そんな熱い時代があれば、その後の人生も支えてくれる、決して過去の思い出だけでは終わらない、そう思わされます。 本作は、そうしたストーリィ。 1.薔薇とギターとストレンジャー/2.Fの罠/3.わたしの祈り/4.二人のルカ/5.ゴッド・ファーザー/終章.赤い靴 |
33. | |
「ボーダレス Borderless」 ★☆ |
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2021年02月
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父親に暴力を振るう謎の男から逃げ出した姉妹(妹は事故で失明)、高校の同級生3人(一人は小説家志望)、コーヒー店を営む一家(姉妹に確執)、父親に反対されるも惹かれ合う女性2人。 別々に展開するストーリィが、一つ一つ組み合わさっていき、ついに一つの事件に集結していきます。 誉田さんの、残虐ともいえる凶悪事件に慣れてしまっている所為か、なんとなく物足りず。そしてどう展開していくのか見通しがつけられないとあって中途半端な印象を否めません。 しかし、終盤になって皆が一堂に集結した時、事件が顕在化した時、一人一人の真価が問われることに。 最後で何とかサスペンスにまとめ上げた?とも思ったのですが、しばらく置いてから振り返ってみると、これは青春時代の一幕、彼女たちの今後の人生への転機となった事件ではなかったか、と思い当たりました。 ひとつの事件によって生まれた新しい人間関係の繋がり、今後の生き方への転機となった、青春期の忘れ難い事件と受け止めた方がすっきりします。 |
34. | |
「歌舞伎町ゲノム」 ★★ |
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2021年10月
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“歌舞伎町セブン”シリーズ第4弾。 今回は短篇5作という構成。 冒頭「兼任御法度」「凱旋御法度」の2篇は、まさに現代“仕置人”といった観ある歌舞伎町セブンらしいストーリィ。 前作でメンバーの一人である上岡慎介を失い、6人となった歌舞伎町セブン。無理矢理というか、新たなメンバーを加えて再び7人態勢となり、再び動き出します。 それにしても歌舞伎町セブンの制裁ぶりは凄まじい。そんな世界には一歩も近づきたくないと思うばかりです。 ま、どうしようもない非道を繰り返した相手方、自業自得とは勿論言えるのですけど。 「売逃御法度」は、かなり捻りのあるストーリィ。 「改竄御法度」はすっきりしない幕切れではありますが、「終わりよければすべてよし」とすべき展開かな。 「恩赦御法度」は、<新世界秩序(NWO)>に関わりのあるフリーライター=土屋昭子の危機に、陣内が助けを求められます。 陣内と土屋の関わりがまた深くなったことに、今後の暗雲を予想させられます。 この篇により、次作への興味を引き立てられますね。 本格的長編ストーリィの間に置かれた短篇もの。気軽に楽しめた気がします。 兼任御法度/凱旋御法度/売逃御法度/改竄御法度/恩赦御法度 |
35. | |
「背中の蜘蛛」 ★★ |
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2022年10月
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来るべき新たな警察捜査の是非を描く警察ミステリ。 第一部、第二部は前触れ。2つの事件で捜査を進展させたのは某タレコミ。しかし、そのタレコミに不審なものを感じたのは、第一部では当時新宿署の刑事課長だった本宮夏生、第二部では警視庁組織犯罪対策部の植木範和警部補。 そして第三部にて、いよいよ本番と言うべきストーリィが展開されていきます。 一方の主役は、今や警視庁捜査一課の管理官となった本宮。 そしてもう一方は、警視庁内に秘密裏に組織された<警視庁総務部情報管理課運用第三係>で係長を務める上山章宏警部。偶然にも本宮と懇意な、後輩警察官。 その運用第三係こそ、米国の開発システムによる<通信傍受>という方法により犯罪防止、犯人捜査に繫げようという新たな捜査手法の運用部署。 第三部にてまたもや不審なタレコミに出会った本宮は、捜査本部に復帰した植木警部補と佐古巡査部長の協力を得て、その真相を密かに探求し始めます。 その一方、「オサム」と名乗る正体定かでない男と、彼と親しくなった前原涼太・幹子という姉弟のストーリィが描かれます。 如何にも犯罪に巻き込まれそうな姉弟ですが、上記展開とどう関連するのやら。 題名の「蜘蛛」とは“ネット”のこと。 今や日常的に起きる様々な事件の捜査も、まず防犯ビデオの確認が重要になってきたぐらいですから、本作に描かれる通信傍受という仕組みも、ある程度理解はできます。 しかし、その仕組みに恐ろしい面があるのも当然ながら事実。 要は、捜査手法が古かろうが新しくなろうが、肝心なのは歯止めとなるべき倫理が守られるか、ということ。 できるかどうかと、やってよいかどうかは、別の問題。 厄介なのは、力を手に入れることによって自由に力を使う権限を与えられたと勘違いする輩がいることです。 警察官らに新たな課題を突き付けたストーリィ、そう感じます。 スリリングではありましたが、単純に楽しめたとは言えず。 第一部 裏切りの日/第二部 顔のない目/第三部 蜘蛛の背中 |
36. | |
「妖の掟」 ★★ |
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2022年12月
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デビュー作「妖の華」に続く、シリーズ第2弾とのこと。 その間空くこと、17年。珍しいですよね。 第2作といっても、内容は「妖の華」の前日譚。しかも概ねのストーリィは既に「妖の華」内にて語られています。 そのため、本ストーリィに新鮮味はないのですが、それでも惹きつけられ十分に楽しませてもらえるのは、やはり誉田作品ならではの面白さがあるから。 紅鈴と欣治という日本古来の吸血鬼=“闇神(やがみ)”同士の恋人関係、吸血鬼の2人と人間である辰巳圭一という青年との友情関係が読み処。 そして、その脇で、暴力団抗争に3人が巻き込まれ、そのことによって思いもかけぬ事態の蓋を開けてしまうという、サスペンスフルな展開。 主人公=紅鈴のキャラクターが、ともかく魅力いっぱいです。 「妖の華」未読の読者には、是非本作を読んでから「妖の華」を読むことをお薦めします。 その方が、ストーリィの流れとしては正当ですし、より話の筋が分かりやすいと思います。 ※「『妖の華』に始まるシリーズが再始動!」とのことですが、一体どんなシリーズ展開になるのでしょうか。 |
37. | |
「もう、聞こえない」 ★☆ |
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2023年10月
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自部屋に押し入って来た男性を怪我させてしまったと女性が通報してきた事件は、被害者が死亡したことから、殺人あるいは傷害致死事件に。 被疑者は中西雪美・30歳、独身、出版社<協文舎>で、写真週刊誌「SPLASH」編集部の記者。 その中西、自ら通報し大人しく逮捕されたにもかかわらず、詳しい経緯を所轄の刑事に語ろうとせず。 しかも、被害者=浜辺友介・36歳の身元は全く不明のまま。 そこで所轄署刑組課長が警視庁捜査一課の武脇元(はじめ)警部補を名指しで依頼、武元が高井戸署に赴いて中西の取り調べを担当することになった次第。 粘り強く聴取を続けていた武元に中西がようやく口にしたのは、「女の人の声が聞こえるんです」という言葉。 武元と所轄署女性刑事の菊田梓巡査部長による、中西雪美の取り調べ。 それと並行して、小学校以来の親友であるゆったんとみんみ(足立美波)の小中高と成長していく様子、そしてみんみの身に起きた事件のことが語られていきます。 そして、中西雪美の前任者である寺田真由が、足立美波の事件を調べようとする展開も。 「女性の声が聞こえる・・・」、それは幻覚か、偽装か、それとも・・・。 そこが本作の鍵となるところなのですが、そうか、そう持ってくるか。 それなりに読ませられますが、私として読み処と感じたのはやはり武脇の取り調べぶりでしょうか。 ただ、面白く読めたものの、興奮する面白さ、には至らず。 |
38. | |
「オムニバス Omnibus」 ★★ |
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2023年07月
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“姫川玲子”シリーズNo.10は、短篇集。 事件の真相に、飛躍した発想で迫るかと思えば、容疑者を徹底的に追及してその隠された胸の内を容赦なく暴き出す、という姫川玲子シリーズの面白さは、短篇集でも変るところはありません。ただし、短篇事件であるからには、長篇事件と比べると軽め、あっさりとしたものになっていますが。 事件もの6篇のうち、姫川玲子を主人公に設定したものが3篇、玲子の部下である中松信哉、日野利美、小幡浩一の各巡査部長を主人公に設定したものが1篇ずつあり計3篇。 また、姫川班が捜査本部に加わったものが3篇、今泉管理官から頼まれて所轄署の事件で容疑者の取り調べのみ担当する、というものが3篇。 ※なお、「赤い靴」と「青い腕」は連作ものです。 上記の結果として本作は、姫川玲子という傑出した、その反面において暴走気味で危なっかしい、女性捜査官の人物像を浮かび上がらせる構成になっています。 なお、最後の「それって読唇術?」は、東京地検公判部の検事=武見諒太と玲子が、バーで語り合う、武見の思い出話を聞かされる、という内容。 その最後で明かされるのが、まもなく玲子の部下に異動があり、その後任としてやってくるのが、あの○○○○とのこと。 その新部下を得て、本シリーズが次にどんな展開になっていくのか、まるで見当もつきません。まずは、次巻に期待。 それが嫌なら無人島/六法全書/正しいストーカー殺人/赤い靴/青い腕/根腐れ/それって読唇術? |
39. | |
「フェイクフィクション Fake Fiction」 ★☆ |
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2024年08月
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鵜飼道弘は五日市署、刑事組対課の係長。その五日市署管内である檜原村の路上で首なし死体が発見されます。 被害者は一体誰なのか。一体どんな犯罪が行われたのか。 そして捜査側の一員となった鵜飼、何か事件の背後を知っているのか。 一方、元キックボクシングのボクサーで、今は地場の北村製餡所で働いている河野潤平。 北村製餡所に新しい従業員としてはいってきた有川美祈に一目惚れ。いろいろ美祈に誘いを掛けますが、美祈は新興宗教「サダイの家」西東京支部に暮らす信者だった。 そしてその潤平に荒っぽいやり方で接触し、協力して美祈を教団建物から救い出そうと持ちかけてきた男女=竹島五郎、伊丹世津子の正体は何なのか、そして彼らの目的は如何。 新興宗教団体を巡る、警察、暴力団、元キックボクサーの青年と教団に復讐を企む男女らとの争いを描くサスペンス。 新興宗教集団内部、教団に手を貸す暴力団らの犯罪のおぞましさに顔を背けたくなるほどですが、それだけに展開はサスペンスに満ちています。 しかし、結果的に救われた人物の少なさ、犠牲になった人の多さから、結末にもうひとつ納得できない思いが残ります。 そこがちょっと残念。 第一章~第五章/終章 |
40. | |
「アクトレス Actress」 ★☆ |
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「ボーダレス」続編。 前作から5年後、前作で仲良くなった女子4人が再び活躍するミステリ。 ・森 奈緒:高卒後県警に入るが、母親の介護のため退職。 ・片山希莉:舞台女優兼脚本家として奮闘中。 ・市原琴音:カフェ・ドミナン2号店を経営しながら子育て中。 ・八辻芭留:東京の興信所「和田徹事務所」に勤務中。 希莉の書いた小説を、希莉が抗えないのをよいことに、鴻巣という男が出版社に売り込み、芸能事務所デライトの若手人気女優=真瀬環菜名義で発表され人気を博します。 しかし、そのストーリィをなぞるように不快な事件が起きると共に、ついに殺人事件まで発生。 それと前後して希莉が行方知れずになったという知らせを受け、残る3人は危機に陥ったのだろう希莉を救い出すため、連絡を取り合って動き出します。 事件の真相にはそれなりに謎が掛けられていますが、さほど奇々怪々な事件というものではありません。 本ストーリィの楽しさはむしろ、事件そのものより、4人の繋がりが復活した処にあります。 4人それぞれ、とても楽しそうです。 ※見逃してはいけないのが、芭留の所属する和田徹事務所。 所長の和田徹、そうなんです、姫川玲子のかつての上司である元警視庁捜査一課長。 せっかく和田徹が登場したのですから、さらなる続編も読みたいところです。 |
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