|
【作家歴】、妖の華、吉原暗黒譚、ジウⅠ、ジウⅡ、ジウⅢ、ストロベリーナイト、ソウルケイジ、シンメトリー、武士道シックスティーン、武士道セブンティーン、武士道エイティーン |
インビジブルレイン、歌舞伎町セブン、感染遊戯、レイジ、ドルチェ、あなたの本、あなたが愛した記憶、幸せの条件、ブルーマーダー |
ドンナビアンカ 、増山超能力師事務所、Qrosの女、ケモノの城、歌舞伎町ダムド 、インデックス、武士道ジェネレーション、硝子の太陽N、硝子の太陽R、増山超能力師大戦争 |
ノーマンズランド、あの夏二人のルカ、ボーダレス、歌舞伎町ゲノム、背中の蜘蛛、妖の掟、もう聞こえない、オムニバス、フェイクフィクション、アクトレス |
41. | |
「妖の絆」 ★★ |
|
|
“妖”シリーズ第3弾、今回の舞台は江戸時代、吉原等々。 シリーズものには珍しく、第1弾、第2弾と時間=物語を遡っていく構成が面白い。 普通だったら興を削がれる処かもしれませんが、それぞれ独立して楽しめるストーリィになっていますし、前作で謎だった部分が次作で明らかにされるという謎解き要素もあるということで、楽しめます。 本作では、紅鈴と2百年に亘る相棒関係となった欣治との出会いから始まり、欣治が自ら望んで闇神となるまで。 といってもそれはサイド・ストーリィといったところで、メイン・ストーリィは紅鈴と“女閣羅”の生け捕りを狙う百地一党との戦い。 女衒であっても良心的な人間もいれば、家族に対して畜生のような振る舞いをする性悪男もいる。紅鈴を狙う敵方においてもそれは同様。 紅鈴、角と牙を生やした姿から“鬼”と呼ばれますが、本当の鬼とはどのような人物のことなのか。 吉原に売られた母親と、置き去りにされた子供たちの為に行動する紅鈴の姿に、<闇神>といっても優しい気持ちのあることがそれらと対称的に描かれます。その辺りが読み処。 しかし最後、善良か性悪かという違いを吹き飛ばして戦いが繰り広げられるところが、ノワール活劇という処でしょう。 紅鈴の妖艶さが鮮やか、面白かったです。 さて、本シリーズ、まだ続くそうです。次はどんな時代のストーリィになることやら。楽しみです。 序章/第1章~第5章/終章 |
42. | |
「ジウX」 ★★ |
|
|
「ジウ」三部作に連なり、歌舞伎町セブンを主人公にした「歌舞伎町ゲノム」最終章から続く激動篇。 <NWO(新世界秩序)>の生き残り、凶悪な実行部隊である狂気の集団が残虐非道な行動を露わにします。 その発端となるのが、公園のトイレで発見された女性の遺体。 何と素人の手で、一般の調理器具を使って意識のあるまま内臓を抉り出され、その後に放り出され失血死した、というおぞましい事件。 東弘樹警部補が捜査本部に駆り出されますが、被害者の身元さえ判明せず、捜査は難航。 一方、歌舞伎町セブンの陣内の元に、NWOと関わりをもち信用のできない女性フリーライター=土屋昭子から依頼事があったかと思えば、陣内の店に不審な集団客が姿を見せます。 要は、NWOの狂気的な集団と、歌舞伎町セブンの激突、といったストーリィ展開。 しかし、本ストーリィはそんな単純な対決構図に終わりません。 そして「ソウスイ法案」とはいったい何のことなのか。 前回「ジウ」が三部作であったように、今回の事件も本書一冊ではとても終わりません。 今後も続編があるのでしょう。 なお、狂気集団による残虐さは目に余るものがあり、気分が悪くなる程。でもその辺りこそ誉田さんの面目躍如、という処なのかもしれません。 その一方、「ジウ」三部作に登場した女性警察官=門倉美咲が再び登場します。彼女は今度も重要な役割を果たすのかどうか。 彼女の安全を懸念しつつ、これからの展開が楽しみ、というより決着が付くまで読まない訳にはいきません。 |
43. | |
「マリスアングル Malice Angle」 ★★ |
|
|
流石の“姫川玲子”シリーズにもややマンネリ感が出てきた為でしょうか、今回は新機軸を感じます。 36歳になった玲子の私生活にちょっとした変化が。 そして刑事捜査の面では、姫川玲子の新たな部下として、あの“魚住久江”45歳が加わります。 殺人事件より生きている人間と関わっていたいと、これまで捜査一課への異動を拒んできた魚住ですが、目黒署副署長として転出することになった今泉警視からの懇願を受け、捜査一課へ異動となった次第。 その魚住久江が、一部で「死神」とも評される姫川玲子という刑事を、上司をどう観察するか、まずはそこが興味処。 事件は、廃墟となっていた民家で殴り殺された男性の遺体が発見されたところから。しかし、その現場には捜査の糸口となるようなものが全く残されておらず、遺体の身元も不明。 一方、それ以前に、何かの一味らしい者たちがある男性を監禁するという事件が起きていたらしい。 姫川と魚住、2人はどうタッグを組んで事件を解決に導くのか?と期待したのですが、その点では物足りず。 姫川は、相変わらず姫川らしいアプローチで事件に迫り、一方の魚住もまた、魚住らしい聞き込みの上手さで事件を辿っていくという<1+1>の展開。 そのため、姫川と魚住それぞれでもう一つ物足りず、という印象です。 もっとも今回はまだまだ顔合わせ、という段階。 今後、2人がタッグを組み持ち味が融合して、<1+1=4>の面白さとなることを期待します。 |
44. | |
「首木の民」 ★★ |
|
|
警察事件捜査もの、であると同時に、目を見張る経済小説。 事件の舞台は志村警察署。 そこに、大学の客員教授である久和秀昭(46歳)が、自動車警ら隊に緊急逮捕されて送られてきます。容疑は、車内から血の付いた他人の財布が発見されたこと+公務執行妨害。 取調べを担当するのは、佐久間龍平警部補(47歳)。しかし、久和は「あらゆる公務員を信用していない」と言い、供述を拒否します。ただし信用しない理由については説明すると言い、そこから始まったのは、経済・貨幣経済の仕組みから、ひいては日本の赤字財政問題へと、まるで大学の講義。その久和の講義を佐久間はきちんと聞き、その内容を理解しようとするのですが・・・そんなことで良いのか?と、読者としても思うくらい。 一方、財布の中にあった会員券から所有者の身元が判明。 それを捜査するのは、佐久間の部下である中田三都(みつ)巡査部長(36歳)。 財布の持ち主はフリーライターの菊池創(40歳)。その行方がつかめないものの、ある交通事故のことに菊池が関心を寄せていたことが分かる。 その事故を起こした人物は、元財務省官僚の息子。そしてまた、久和も元財務官僚。そこに何か関りがあるのか・・・・。 ミステリなのに、何故延々と国家財政問題が論議されるのかと思いますが、それはそれで結構面白い、勉強になります。 一方、中田三都の捜査は地道なものですが、三都のキャラクター(何かと突っかかる)が愉快で、楽しめます。 ※看護師の妻や高校生の娘に頭が上がらず、三都の顔が怖いと怯えながら、その一方で真摯に久和に向き合う佐久間のキャラクターも十分好ましい。 刑事たちのキャラクターの面白さ、事件の奥深い真相、国家財政論議の見事さが相俟って、読み応えのある作品に仕上がっています。 さて、題名の「首木の民」とは何のことか。それは、本作を読んで初めてわかることです。お楽しみに。 |
誉田哲也作品のページ No.1 へ 誉田哲也作品のページ No.2 へ
誉田哲也作品のページ No.3 へ 誉田哲也作品のページ No.4 へ