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【作家歴】、しゃばけ、ぬしさまへ、百万の手、ねこのばば、アコギなのかリッパなのか、うそうそ、みぃつけた、まんまこと、ちんぷんかん |
つくもがみ貸します、しゃばけ読本、こころげそう、いっちばん、アイスクリン強し、こいしり、ころころろ、ゆんでめて、若様組まいる、ちょちょら |
やなりいなり、こいわすれ、ひなこまち、さくら聖・咲く、けさくしゃ、つくもがみ遊ぼうよ、ときぐすり、たぶんねこ、明治・妖モダン、すえずえ |
えどさがし 、まったなし、なりたい、うずら大名、明治・金色キタン、若様とロマン 、おおあたり、まことの華姫、ひとめぼれ 、とるとだす |
むすびつき、新・しゃばけ読本、つくもがみ笑います、かわたれどき、てんげんつう、わが殿、猫君、あしたの華姫、いちねんかん、いわいごと |
「もういちど」 ★★ | |
2023年12月
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夏季恒例刊行の「しゃばけ」シリーズNo.20。 であると同時に、刊行20周年。もうそんなになるのかァと思うとファンとして感慨深いものがあります。 その記念となる巻だから、ということでもないのでしょうけど、今回の趣向には流石に驚かされます。 冒頭の章で若だんなこと一太郎、根岸の寮へ舟で向かう途中、酔っ払った龍神たちのせいで舟を転覆させられた挙げ句 200年ぶりの天の星の代替わりに巻き込まれ、何と赤子に戻ってしまうのですから。 意識は若だんなのままでも、口も利けないし、自分で行動することもできず、またすぐ眠くなってしまう・・・。 様々に起きる難題をそんな若だんながどう解決するのか。そこが見物なのですが、こりゃ面白い! ・「もういちど」:大騒ぎに巻き込まれ赤子になってしまった一太郎、無事でいられるのやら。 ・「おににころも」:5歳位になった一太郎、勘助という少年と寮の外へ。悪いことをしてみたい、と。だが村に・・・。 ・「ひめわこ」:12歳位になった一太郎、とても元気。芝居小屋の浪人と剣術の稽古まで。ところが浪人の身に事件が・・・。 ・「帰家」:元の姿に戻りつつあり、久しぶりに長崎屋に。栄吉の嫁取りが決まったものの、相手の実家絡みで事件発生。 ・「これからも」:元に戻った一太郎、早速寝ついてしまうことに。そのまま寝床で事件解決に頭をひねります・・・。 もういちど/おににころも/ひめわこ/帰家/これからも |
「御坊日々(ごぼうにちにち)」 ★☆ | |
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舞台は明治20年、浅草にある東春寺。 この東春寺、廃仏毀釈の波の中で前住職が亡くなって廃寺となっていたものですが、前住職の弟子だった冬伯が相場師となって儲けた金で立て直した寺。 しかし、廃寺となっていた間に檀家も離散してしまい、今でも冬伯の相場師の腕に収入を頼らざるを得ないという貧乏寺。 冬伯の弟子も玄泉一人のみ。 この玄泉が真面目で、師僧の相場ごとに良い顔をしない。 この、性格は対照的ですが良いペアと言うべき師弟コンビが、様々な相談ごと、そして前住職が死んだ経緯を探る、という連作ストーリィ。 江戸から近代国家へ、というまだまだ移行過程の時代。そういう時代背景があってこその各ストーリィなのですが、う〜ん、今ひとつすっきりせず。 冒頭の2篇、「色硝子と幽霊」「維新と息子」は、変った相談ごとに対するユニークな解決法という江戸“市井もの”的な展開が楽しめました。 一方、後半の「お宝と刀」「道と明日」は前住職の死にかかわる“ミステリ”風の展開だったのですが、こちらは今ひとつすっきりしないまま、という読後感。 明治ものはこれまでにも、“若様組”シリーズ等ありましたが、いずれも苦労しているという印象があり、難しいようです。 序/色硝子と幽霊/維新と息子/明治と薬/お宝と刀/道と明日/終 |
「またあおう」 ★☆ | |
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“しゃばけ”シリーズが開始されて祝20周年、「えどさがし」に続く外伝・第2弾。 前作の「えどさがし」もそうでしたが、畠中さん、<外伝>では“しゃばけ”&若だんなの設定に囚われず、“しゃばけ”の舞台を借用してのびのびと妖たちのストーリィを描いている、という印象です。 度々では“しゃばけ”世界を壊しかねませんが、たまの外伝であれば、読者もまたのびのびとストーリィを楽しめる気がします。 冒頭「長崎屋あれこれ」を除く4篇の共通点は、若だんなが登場せず、妖たちの冒険譚になっているところ。 ・「長崎屋あれこれ」:長崎屋ってどんなところ、紹介篇。 ・「はじめての使い」:東海道戸塚宿に住まう猫又たち、その若手であるとら次とくま蔵、命じられての初めての江戸行きは、長崎屋へのお使い。ところが雲助たちに囚われ・・・。 ・「またあおう」:長崎屋の妖たち、何と草双紙=桃太郎の物語の中へ・・・。 ・「一つ足りない」:九千坊河童、一団の河童を引き連れて中国から倭国へ。九州にようやく住み着いたものの猿たちの攻撃に晒され、利根川の禰々子親分を頼るのですが・・・ ・「かたみわけ」:若だんなが長崎屋の主となり、妖退治で知られた高僧=寿真(寛永寺)・寛朝(広徳寺)が死去した後の世が舞台。 寛朝から妖退治を引き継いだ秋英ですが、自らの力不足を感じ、長崎屋の妖たちに助力を求めるのですが・・・。 長崎屋あれこれ/はじめての使い/またあおう/一つ足りない/かたみわけ |
「こいごころ」 ★☆ | |
2024年12月
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夏が来れば楽しみなのが、このシリーズ。 このシリーズを読んでこそ、あぁ夏だ、とも思います。 言うなれば、一年中の読書生活における“夏の避暑作”と言って良いかもしれません。 シリーズNo.21。 ・「おくりもの」:難しい贈り物の相談が、若だんなの父親=藤兵衛の元に持ち込まれます。若だんなも、どんな贈り物が良いのかと考えだし・・・。 ・「こいごころ」:狐仙の老々丸が、妖の命が尽きかけているという弟子=笹丸を連れて若だんなの元にやって来て、ある願いごとを。 笹丸に対する皆の気持ちが愛おしくなる一篇です。 ・「せいぞろい」:若だんなの誕生日祝いの宴を妖たちとやろうとしたところ、参加希望の妖たちが大勢。さらに盗賊も? ・「遠方より来たる」:若だんなかかりつけの医師=源信が引退することになり、後釜を狙う医師たちが長崎屋に殺到。 果たして医師選びは・・・。 ※新たな妖レギュラーが登場。 ・「妖百物語」:怪異を見たいと大店の主たちが百物語を始めるのですが、若だんながそれに巻き込まれ・・・。 おくりもの/こいごころ/せいぞろい/遠方より来たる/妖百物語 |
「忍びの副業」 ★★ | |
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甲賀忍びの若手三人=滝川弥九郎、望月十郎、土山蔵人を主役に据えた将軍家治&田沼意次時代の活躍を描いた時代もの。 幕府に仕える忍びには、甲賀、伊賀、根来と数多くいるものの、戦国の世は疾うの昔、忍びの技を受け継いでいる者も一部に限られ、そのうえその技を使う機会もなし、という状況。 甲賀や根来の今の役目はというと、鉄砲百人組として江戸城警護とのため番所に座っているだけ。 そんな弥九郎たちに降って湧いたのは、本来の仕事とは別の、まさに“副業”ともいうべき、将軍世子=西之丸様である家基の警護。さてその顛末、結果は・・・。 家基は若くして死去し将軍職を継承できなかったのは史実ですから、弥九郎たちは家基を守り抜けなかったということになる訳ですが、そこまでをどう組み立てるのか、という興味あり。 なお、忍びによる闘いとなると死闘というイメージが浮かびますが、そこは畠中恵作品だけにそうはならず。 甲賀と根来の関係は同役だけに何となく和気藹々、伊賀とは対立関係が際立ちますが、とはいって死闘になどなりません。 全体的にほんわかした雰囲気です。 読み終えた後ふと気づいたことは、これは家基警護という時代サスペンスなどではなく、(本業が暇で物足りないが故の)現代に通じる副業探しストーリィであったか、ということ。 「忍びの副業」という本作題名が腑に落ちたという次第。 それでも、弥九郎たちの忍びの技、奮闘は面白く、充分に楽しめる軽快かつ現代的な忍者ものストーリィと言って良いでしょう。 1.忍びの副業/2.天女の笑み/3.闇の中にあり/4.斑猫の毒/5.甲賀と伊賀/ 6.家を継ぐ者/7.死の一報/8.くノ一の花嫁/9.毒の噂/10.鷹狩り |
「おやごころ」 ★★ | |
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「いわいごと」に続く“まんまこと(真真事)”シリーズ第9弾。 お寿ずを亡くして以来ずっとやもめ状態だった麻之助も、前巻最後で評判の良い町名主の西森金吾の娘=お和歌と急展開で祝言を挙げ、ようやく落ち着きます。 ところが、本巻後半でその和歌に子ができたとなるや、あちこち走り回り落ち着きのないこと甚だしい。 一方、高橋家の支配町が増えたせいなのか、吉五郎や清十郎から押し付けられる揉め事解決を押し付けられる所為なのか、抱え込む相談が増え、やたらと忙しくなった気配。 なにしろ女房になったお和歌、町名主の娘だけに相談事に応じるのは当たり前、そのうえ好奇心も旺盛とあって、父親の宗右衛門が何かと麻之助に押し付けてくる所為があるらしい。 事件ごとではなく、いろいろな揉め事を解決するための奮闘という本シリーズ、いつ読んでも楽しい。まぁ、悩み事、揉め事というものは常にあちこちで起きるものですから。 ただ、度々麻之助が嘆くように、お気楽な跡取り息子として友たちと馬鹿やっている時の方が楽しかっただろうと思います。 清十郎はすでに名主で妻子あり。吉五郎も与力見習いとなって忙しく、清十郎、吉五郎とのやり取りも減っていることは、読者としても寂しい処です。 ・「たのまれごと」:ある旗本が長男の悪行に苦労。相談を受けた吉五郎が麻之助に振ってくる。 ・「こころのこり」:いずれも江戸店の大番頭三人が、揃いも揃って店内で無くなったものがあると相談に。上方の本店には隠しておきたいというその失せ物とは? ・「よめごりょう」:お和歌と結婚する筈だったといきなり高橋家に乗り込んできた男。西森金吾もお和歌も訳が分からず、きょとん。一体なぜ? ・「麻之助走る」:清十郎、その他の町名主で、持ち込まれる相談ごとが奇妙に減っているという。一方、丸三、新たに金を借りたいと言ってくる者が増えているという。何故? ・「終わったこと」:与力の娘が笠の男にやたら付け回されているという。なぜ麻之助の処に? ・「おやごころ」:麻之助に、宗吾という子がついに誕生。それなのに我が子を可愛がる暇も与えられず、親子関係の揉め事がやたら麻之助の元に。 「こころのこり」のおかげで新知識を得られました。 「よめごりょう」が愉快。原因は麻之助にあったとは! たのまれごと/こころのこり/よめごりょう/麻之助走る/終わったこと/おやごころ |
「いつまで」 ★★ | |
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夏恒例の“しゃばけ”シリーズ No.22。 今回は No.5「うそうそ」以来、17年ぶりとなる長篇! 長篇だけに中身がたっぷり、いつも以上に面白かったです。 前作「こいごころ」に登場した火幻医師、その正体は西から江戸にやってきた妖。 その火幻を追って西からやってきた妖が以津真天(いつまで)。 ところが、火幻は長崎屋に迎え入れられ、江戸で楽しそうに過ごしているのと対照的に自分は江戸に受け入れられなかったと、以津真天は憎しみを抱き、長崎屋に悪さを仕掛けます。 まず場久が姿を消し、そして火幻と若だんなが以津真天の罠に嵌り、とんでもない目に遭います。 若い娘の声で若だんなは目を覚ましますが、そこは何と5年後の江戸。 長崎屋の妖たちと再会した若だんなでしたが、若だんなが姿を消していた5年の間に、大久呂屋という強力な競争相手が現れ、しかも消えた若だんな捜しで両親とも商売どころではなく、長崎屋の経営は窮地にあるという。 さて若だんな、5年前の世界に戻れるのか、それともこのまま5年後の世界に留まるのか。また、窮地にある長崎屋を救うことはできるのか。 ストーリィ展開がしっかりしているので、読み応えがあります。 また、広徳寺の寛朝・秋英をはじめ、中屋の於りんちゃんや、河童の禰々子親分、利根川である坂東太郎までも登場し、本作での顔ぶれにも文句なし。 なお、長崎屋の繁栄は若だんなの存在があってこそ、と皆が納得する辺りも、若だんなファンとしては嬉しい限りです。 |
「なぞとき」 ★★ | |
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夏恒例の“しゃばけ”シリーズ No.23。 毎年楽しみにしている本シリーズですが、今回は、冒頭からワクワク。いつも以上に楽しめる、と確信。 何しろ、強力な妖=犬神である佐助が頭から血を流して登場、そしてその額と頬にざっくりとした爪痕が。 佐助に傷をつけるなんて、一体何者が!?と若だんな、妖たち、読者も驚くところ。 そこから始まるのが、本巻題名とおりの謎解き。 場久が、賭けをしようと皆に提案します。 若だんながそれに乗り、真相を突き止めた者はひとつだけ望みを叶えてもらうことができる、但しお金で叶えられるもの、と決めます。 ファンタジー+謎解きという趣向、これは面白い、楽しい! ・「なぞとき」:佐助に爪傷を負わせたのは誰か? ・「かたごころ」:おしろ(猫又)の弟子である小料理屋の娘=お照の縁談が破談に。いったい何故? ・「こいぬくる」:長崎屋に迷い込んできた仔犬。日本橋通り町に現れた盗賊と何か関係あり? ・「長崎屋の怪談」:若だんなの夢の中に女の幽霊が出現。若だんなに「お見忘れ?」と言うが、知り合いなのか? ・「あすへゆく」:父親の藤兵衛から若だんな、長崎屋を退職する3人の今後についてサポートするよう指示されます。跡継ぎ修業の一環なのか。若だんな、役目を果たせるのか? なぞとき/かたごころ/こいぬくる/長崎屋の怪談/あすへゆく |
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