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32.まったなし−「まんまこと」シリーズNo.5− 33.なりたい−「しゃばけ」シリーズNo.14− 34.うずら大名 35.明治・金色キタン 36.若様とロマン 37.おおあたり−「しゃばけ」シリーズNo.15− 38.まことの華姫 39.ひとめぼれ−「まんまこと」シリーズNo.6− 40.とるとだす−「しゃばけ」シリーズNo.16− |
【作家歴】、しゃばけ、ぬしさまへ、百万の手、ねこのばば、アコギなのかリッパなのか、うそうそ、みぃつけた、まんまこと、ちんぷんかん |
つくもがみ貸します、しゃばけ読本、こころげそう、いっちばん、アイスクリン強し、こいしり、ころころろ、ゆんでめて、若様組まいる、ちょちょら |
やなりいなり、こいわすれ、ひなこまち、さくら聖・咲く、けさくしゃ、つくもがみ遊ぼうよ、ときぐすり、たぶんねこ、明治・妖モダン、すえずえ |
むすびつき、新・しゃばけ読本、つくもがみ笑います、かわたれどき、てんげんつう、わが殿、猫君、あしたの華姫、いちねんかん、いわいごと |
もういちど、御坊日々、こいごころ、忍びの副業、おやごころ、いつまで、なぞとき |
31. | |
「えどさがし」 ★☆ |
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「しゃばけ」シリーズ、初の外伝。 |
「まったなし」 ★★ |
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2018年04月
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「ときぐすり」に続く“まんまこと(真真事)”シリーズ第5弾。 いつものように連作ものですが、本書で一貫として主ストーリィとなっているのが、麻之助の親友で先に町名主を継いだ清十郎の縁談。 そしてそれは、清十郎の義母となっているお由有にふって湧いた縁談話にも関わってきます。 本書で新たに登場するのが、親戚らが清十郎に押しつけた花嫁候補の一人である、やはり町名主である甲村家の娘であるお安。極めて聡明な娘と判るなのですが、器量がよくないと自分で決めつけている所為か縁談話に縁がないのだとか。 それに対し、元気なお香という13歳の娘も登場してストーリィに華を添えています。 ・6篇の中で「運命の出会い」が異色。さながら“しゃばけ”シリーズ的な展開が稀なる面白さです。 ・一方、「親には向かぬ」も本シリーズらしからぬハードサスペンス。これまたスリリングな面白さです。 ・最後の「昔から来た文」はちょっとしたミステリ。それと同時に本巻を見事に締め、清十郎と麻之助にとって大きな転機となる篇になっています。 本シリーズにあって面白さ充分の巻。 まったなし/子犬と嫁と小火/運命の出会い/親には向かぬ/縁、三つ/昔から来た文 |
「なりたい」 ★☆ |
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2017年12月
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夏季恒例刊行の「しゃばけ」シリーズNo.14。 今回の趣向は、様々な登場人物の“なりたい”願望を題材にした短篇集。もちろん、若だんなは何になりたいと思っているのか?も重要な部分です。なお、前巻の最後で若だんな=一太郎と深川にある材木問屋=中屋の娘於りんとの婚約が一応まとまったためか、本巻で一太郎自身に関わる周辺事は割りと静かです。 序、若だんなの病気回復を祈って神様に祈りに行くのではなく神様に来てもらった方が良いという発案が通り、神様たちが数人長崎屋の招きに応じて出向いてきます。 その席で神様たちはお礼に若だんなの要望を叶えようと言い出すのですが、さて・・・・。 「妖になりたい」:若だんな、店のために貢献したいと新しい薬作り。それに欠かせない材料をもつ甚兵衛は、空を飛びたいという欲求を持っていて・・・。 「人になりたい」:殺されたと大騒動になった菓子売りの勇蔵。実は妖。生き返って再び人間たちの中で暮せるのか・・・。 「猫になりたい」:“猫じゃ猫じゃ”を巡る戸塚宿と藤沢宿の猫又同士の争い。そこに猫又となった青竹屋が加わり・・・。 「親になりたい」:長崎屋の若い女中おようの二度目の縁談。しかし、相手の柿の木屋には孤児だったという腕白な三太という子供が居て。実は三太、妖・・・?。 「りっぱになりたい」:病弱な若だんな仲間だった万之助がついに病死。ところが幽霊となって現れ、若だんなに最後の頼み。一太郎はその望みを叶えてやれるのか。 若だんな自身の冒険ストーリィにはなっていないところがちょっと残念でしたが、外伝的な面白さを味わえる巻。 序/妖になりたい/人になりたい/猫になりたい/親になりたい/りっぱになりたい/終 |
「うずら大名」 ★★ | |
2017年12月
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かつて町道場で冷や飯食い仲間だった2人が偶然にも再会してみれば、部屋住みの身だった有月は若き大名隠居、そして百姓の三男坊に過ぎなかった吉也(現・高田吉之助)は豪農の名主。 そんな2人が手を携えて、と言うか、有月が強引に吉之助を振り回し、名主の連続不審死から幕を開けた幕藩体制を揺るがす陰謀の探索に奮闘するという時代もの長編ストーリィ。 畠中恵作品の魅力は登場人物のキャラクターにあって、それは本作品でも変わりありません。 吉之助を平然と敵の囮にして動じることのない隠居大名ホームズ=有月、昔と変わらず泣き虫の村名主ワトソン=吉之助の他、やはり冷や飯仲間で今は有月の御付人である新島左源太、吉之助の姪である奈々ら、畠中作品らしい登場人物が次々と登場します。 その中で特筆すべきキャラクターが、有月の巾着袋に入って有月と行動を共にする“巾着鶉”の佐久夜。 可愛らしい姿に「御吉兆ーっ」というめでたい鳴き声から、鶉は武家の間で愛玩鳥になっていたという想定です。 たかが鶉と軽視する事勿れ、その佐久夜が思わぬ活躍をするのですから。 ただ、惜しむらくは、大陰謀を企てた黒幕、犯人たちの像が結末へ近付くにつれ迫力を欠いていくこと。畠中作品と言えばファンタジーあるいはユーモラスな作品が多いだけに、極悪人といったキャラクターは苦手なのかもしれません。 そのため、最後を締める吉之助の感慨は理解出来るものの、結末がイマイチという読後感が残ってしまいました。 なお、本作品の背景でもある注目点は、大名と“大名貸し”と言われるまでに力を付けた豪農(商人ではなく)の関係。どうぞお見逃しなく。 序/うずら大名/御吉兆聞こえず/大根一万本/書き付けの数字/佐久夜の初泳ぎ/江戸の合戦 |
「明治・金色キタン」 ★ | |
2019年02月
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明治の世、煉瓦街である銀座の交差点に立つ巡査派出所に勤務する原田と滝という2人の巡査を主役とした「明治・妖モダン」の続編。 江戸から僅か20年という時代。江戸にいた妖たちは今も何処かに姿を潜めている筈、というのが本作のコンセプト。 前作で2人に連なる人物として登場した牛鍋屋の百賢、その妹であるみずは、三味線師匠のお高、裕福な寡婦である花乃、煙草商人の赤手たちも引き続き登場です。 本書の冒頭で原田と滝、築地の甫峠寺跡へ出向く内務省のお偉方=阿住の護衛を命じられます。そこは筑摩県に組み入れられた甫峠村に会った甫峠寺の別院。廃藩置県と共に廃仏毀釈で寺も別院もなくなり、祟りがあるという噂のある場所。そこで突然仏塔が倒壊、赤手が行方不明となります。 それをきっかけに甫峠村から姿を消した5人の僧、失われた5つの仏に関係するとみられる事件が次々と起こります。 明治という時代の世相を楽しむという趣向に合わせ、今回は連作風長編<妖>ミステリ。 ただ、展開が複雑で少々判り難い分、面白さを欠いてしまったという印象。また、主要登場人物の妖しさが既に知れている所為か予想外の面白さを味わえなかった気がします。 甫峠村という鍵となる場所も、銀座から縁遠かったですし。 序/1.赤手と菜の花/2.花乃と玻璃/3.モダン 美人くらべ/4.闇の小路/5.上野の競馬/6.祟り、きたる/終 |
「若様とロマン」 ★★ | |
2018年08月
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「アイスクリン強し」「若様組まいる」に続く、明治時代を舞台にした青春グラフティ“若様組”シリーズ第3弾。 元旗本の若様たちですが、今の状況はというと安月給の巡査という身分。当然ながら縁談には苦労すると思っていた若様たちですが、なんと降って湧いたように縁談が転がりこんでくる、いや押し付けられるとは?! その仕掛け人が誰かと言うと、小泉沙羅の父親で明治成金の代表格である貿易商=小泉琢磨。その狙いはというと、外国との戦争懸念にあるという。でもそれが見合いとどんな関係に? 「アイスクリン強し」ではミナこと皆川真次郎と小泉沙羅が、「若様組まいる」では長瀬健吾を大将格とする若様たちが中心でしたけれど、この第3弾では両者を含めた明治時代の青年・令嬢たちを広く登場させ、明治時代の青春グラフティという要素をさらに高めています。 巡査という職を得た若様たちの次のステップが結婚であれば、真次郎や沙羅たちの次のステップは何でしょうか。 若様たちそれぞれのお見合いがどのように繰り広げられるのか、若様組の大将格である長瀬や真次郎、沙羅にどんなこれからの道が用意されているのか、それは読んでのお楽しみです。 読み終えた後で気になったのは、ストーリィが一区切りついたように思えること。これで完結と言われても不思議ないところですが、完結篇という説明はないし、ストーリィが続くのも不自然ではなし。勿論もっと読みたいという気持ちもありますが、その辺り、作者の畠中さんに委ねるのが一番と思います。 園山・運動会/小山と小沼・川開き/加賀・百貨園/長瀬・居留地/真次郎・亜米利加 |
「おおあたり」 ★★ | |
2018年12月
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夏季恒例刊行の「しゃばけ」シリーズNo.15。 今回のテーマ、各篇の共通項は“おおあたり”。どんな大当りが若だんなや妖たちを悩ませ、振り回すのか、それは読んでのお楽しみです。 本シリーズ、各巻ごとに異なる趣向が楽しみのひとつですが、今回はかなり楽しめました。 「おおあたり」:餡作りがヘタで未だ修業中の栄吉ですが、その栄吉が作った“辛あられ”が美味いと大当り。ところがそのおかげで栄吉が苦境に立つことに・・・。 「長ア屋の怪談」:人の悪夢を喰ってはそれをネタに噺家として人気を得ている場久こと獏をつけ回す男? お陰で場久は眠るのが恐いと言い出し・・・。 「はてはて」:貧乏神の金次、ぶつかって菓子をばら撒かせてしまったお詫びにと富くじを貰うのですが、何とその富くじが大当り。しかし、同じ当たりくじが他に2枚も現れて・・・。 「あいしょう」:一太郎の祖母であるおぎんこと大妖=皮衣から頼まれて、仁吉と佐助は一太郎の守り役として長崎屋にやってきます。その直後の騒動を描いた篇。 「暁を覚えず」:若だんなが客の接待役を務めようと猫又が差し入れてくれた薬を服用。一方、そのお供役を射とめようと、妖たちは饅頭にてくじ引きを行います。結局大当りしたのは誰? 題名通り「おおあたり」が本書における共通項なのですが、もうひとつ、栄吉が作るお菓子が副次的にストーリィ展開を握っている気がします。何で?と考えると愉快な気分になってきます。 今回は、一太郎5歳時の仁吉・佐助との出会いや、母親であるおたえのズレぶり、異母兄である松之助久々の登場が楽しめましたが、次作では是非於りんちゃん(若だんなの許嫁)に登場して欲しい処です。 序/おおあたり/長ア屋の怪談/はてはて/あいしょう/暁を覚えず |
「まことの華姫」 ★☆ | |
2019年06月
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「まことの華姫」とはどんな人物? 本当のお姫様? と題名から不思議に感じていましたが、読み始めれば疑問はすぐ解消します。 それは人々が口にする異名にして、その正体は、両国橋の見世物小屋に出ている人形遣いの月草が操る木偶人形“お華”のこと。 要は腹話術の芸なのですが、お華の動きと口ぶりがまるで本物のよう、そしてお華の語りは真実を言い当てていると評判になり、“まことの華姫”と異名を取り、おっかけ客までいる、という次第。 千里眼ではない、単なる芸に過ぎないと月草が弁明するものの、勝手に華姫は真実を言い当てるという噂が広まって、何人もの人物がお華の元に難題、事件を持ち込むというのが、本ストーリィの内容です。 さしづめ妖怪版事件解決ストーリィ“しゃばけ”の向こうを張って、(現代でいえば初音ミク的な)ヴァーチャルアイドルによる事件解決ストーリィと言ってよいでしょう。 現物を見れないので今一つですが、月草とは別人格と思えるお華と月草の、さらに両国橋辺りの見世物小屋を差配する山越の親分の娘で13歳のお夏(ワトソン役)のやり取りが、楽しい。 ・「まことの華姫」:月草&お華とお夏の出会い、そして川に落ちて死んだ姉おそのの真相をお夏が確かめようとする篇。 ・「十人いた」:7年前に行方不明となった我が子を探す親の元に十人の孤児が集まります。本当の子は誰か見分けてほしいとお華に持ち込まれましてもネェ・・・。 ・「西国からの客」:お華に持ち込まれた依頼は人探し。 ・「夢買い」:運勢占いのように言い広められてしまったお華、大身旗本への奉公争いに巻き込まれ・・・。 ・「昔から来た死」:月草の元婚約者に亭主殺しの容疑が。月草は元婚約者の危難を救えるのか。 序/まことの華姫/十人いた/西国からの客/夢買い/昔から来た死/終 |
「ひとめぼれ」 ★★ |
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2020年06月
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「まったなし」に続く“まんまこと(真真事)”シリーズ第6弾。 由有が再嫁し、清十郎はお安という頼りになる女房を得てすっかり安定というように、幼馴染仲間である麻之助・清十郎・吉五郎の身の上にも着々と変化が訪れています。 そんな中、お寿ずという女房を亡くした痛手を未だに引きずる一方で“お気楽者”を演じている麻之助には、少々痛々しさを感じるところあり。 本書では、吉五郎の養父である強面同心の相馬小十郎が事件の起点となっているのが特徴。 同心という公の立場から自分や吉五郎が手出しできず、既に町名主である清十郎が乗り出すのも差しさわりがある事件とあって、何かと気楽な身分である麻之助に事件解明を押し付けてきます。 それゆえに、否応なくというのが麻之助の立場。 今回新たに登場し、今後も引き続き登場しそうな人物は、小十郎の母方の伯母で町方に嫁ぎ、現在は花梅屋の隠居であるお浜と、その孫娘の雪。元気者で活発な気性は亡きお寿ずを彷彿させるところがあります。今後の活躍に期待したいところ。 ・「わかれみち」:由有の実父である大倉屋に江戸を追い出された横平屋の達三郎が江戸へ舞い戻ろうとしているらしい。さてどんなトラブルを引き起こすのか? ・「昔の約束あり」:仏具屋の娘であるお蝶、祖父同士の約束で相馬家に嫁ぐことになっていると主張してきますが・・・。 ・「言祝ぎ」:吉五郎の姪であるおこ乃に縁談話が3つ。小十郎が麻之助に、その3家について調べろと命じてきます。 ・「黒煙」:燃え広がる火事から幼い双子を助けた麻之助。一件落着だった筈なのに、双子の実家である菊屋から相談事の持ち込み。さらに、丸太屋と紅屋という親戚同士で親密だった商人の間で深刻なトラブルが発生。麻之助の真価が問われます。 ・「心の底」:小十郎の伯母であるお浜の孫娘である雪の縁談相手が消息知れずとなり、その捜索依頼が麻之助に。 ・「ひとめぼれ」:相馬家の遠縁にあたるというイケメンの春四郎が小十郎&3人の探索活動にしゃしゃり出てきます。そんな春四郎に小十郎の一人娘である一葉がすっかりのぼせている様子。どうなる吉五郎? いずれも小十郎が絡んでいる揉め事である所為か、今回は<謎の解明>という趣向が際立っていて、その分楽しめました。 わかれみち/昔の約束あり/言祝ぎ(ことほぎ)/黒煙/心の底/ひとめぼれ |
「とるとだす」 ★★ |
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2019年12月
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夏季恒例刊行の「しゃばけ」シリーズNo.16。 巻ごとに趣向を凝らす本シリーズですが、本巻では、若だんなの父親で長崎屋の主人である藤兵衛が、冒頭で倒れ意識不明のままになるという危機が発生。 本巻における5篇のストーリィは、その延長線上に展開されていきます。 父親の苦難に若だんなが奮闘、本書での出来事を通じてちょっぴり若だんなも成長、そして若だんなをいつも取り囲む妖たち皆の協力に感謝する、という内容になっています。 ・「とるとだす」:寛朝により大勢の薬種問屋が広徳寺に集められたその場で藤兵衛が突然卒倒し、意識を回復しないままとなります。一体何があったのか? ・「しんのいみ」:江戸湾に蜃気楼が出現。その中に取り込まれた若だんな、大丈夫か? ・「ばけねこつき」:若だんなに我が娘を嫁がせたいと突然、娘と番頭連れで押しかけて来た染物屋。一体どんな事情が? ・「長崎屋の主が死んだ」:離れの庭に突然現れた狂骨。様々な妖に慣れた若だんなさえ、恐いと思う程。何故狂骨は長崎屋に現れたのか。若だんなはまだ具合の悪い藤兵衛の身を心配します。 ・「ふろうふし」:藤兵衛の回復の為にと来てもらった大黒天、常世の国の薬祖神なら毒消し薬を持っているかもしれないと、若だんなを常世の国に弾き飛ばしますが、着いたところは神田明神境内。そこで争う武家たちと神様?たち・・・・。 今回は、初登場の妖ももちろんですが、それ以上に初登場の神様たちが楽しい。「ふろうふし」をお楽しみに。 とるとだす/しんのいみ/ばけねこつき/長崎屋の主が死んだ/ふろうふし |
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