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12.逃亡 13.受精 14.安楽病棟 15.空山 16.薔薇窓(集英社文庫改題:薔薇窓の闇) 17.エンブリオ 18.国銅 19.アフリカの瞳 20.千日紅の恋人 |
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受命、聖灰の暗号、インターセックス、風花病棟、水神(上下)、やめられない、蠅の帝国、蛍の航跡、ひかるさくら、日御子 |
移された顔、天に星地に花、悲素、受難、守教、襲来、沙林、花散る里の病棟 |
●「空 夜」● ★★★ |
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1998年04月
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帯には「九州の四季の移ろいの中に揺れ動く、ふた組の、不倫を越えた純愛を描く」とあります。何故帚木さんが不倫の愛を描くのか? 何故こうしたストーリイを書こうとしたのか? それを解き明かそうと思いながら読みました。 舞台は、九州の過疎とも言える村。その村でワイン造りをしている旧家の跡取り娘の真紀(31才)、娘の伽奈、同級生で医師として赴任してきた山岡慎一。 |
●「逃 亡」● ★★★ 柴田錬三郎賞 |
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2000年08月
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これまでの帚木作品と多少異なり、一文一文をかみ締めながら読み終えた、という気がします。 最後の段階の頃には、涙をこらえつつ読む羽目になりました。 主人公は、当初自分は何の罪もないとして逃亡しますが、後日繰り返し回想するにつれ、認識を変えていきます。 |
●「受 精 Conception 」● ★ |
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2001年09月
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率直に言って、帚木作品にしては納得し難い作品。 |
●「安楽病棟」● ★★ |
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2001年10月 2017年08月
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ストーリィの舞台は、総合病院の中の痴呆病棟です。そこに暮らす様々な老人たち。痴呆病棟にいるといっても、入院の事情、痴呆の様子は人それぞれです。 ※老人介護問題の壮絶さを描いた作品に佐江衆一「黄落」があります。 |
●「空 山」● ★★ |
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2003年06月
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ちょうど豊島という時事問題があったからでしょうか、本書は大型ゴミ処理場建設の問題をテーマとした作品です。 |
●「薔薇窓」● ☆ |
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2004年01月 2014年08月
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舞台は、1900年、万国博覧会開催中のパリ。主人公は、警察の特別医務室に勤める精神科医ラセーグ。 その特別医務室で彼が診るのは、いずれも警察に関わり、精神病癖があるかどうか疑念をもたれた人物たち。 ある夜、日本人らしい若き娘が、傷だらけかつ呆然自失の状態で連れられてきます。果たしてどんな事件が彼女を襲ったのか。 そして、現代のストーカーの如くラセーグにつきまとう貴婦人を乗せた馬車、パリの巷で若い娘が連続して誘拐されるという猟奇的事件。本書は、それらを軸としたサスペンスです。 帚木さんが主人公を日本人以外に設定したのは初めてのこと。とは言え、この主人公は、鍔の蒐集趣味をもつ等極めて親日的な人物。なおかつ、博覧会には日本も参加していて、日本の芸人による曲芸、美術品の展示も見られ、パリでは日本ブームが高まっているというのが、本ストーリィの背景。 近代国家の仲間入りしたばかりの日本、日本人の姿を、外国の地にて外国人の目から眺めるという興味が本作品にはあります。登場する重要な日本人は、ラセーグに保護される娘・音奴と、パリで日本の美術品を商う林の2人。とくに、音奴がパリの下町の下宿屋で人々に親しんでいく様子は、微笑ましさを感じます。 |
●「エンブリオ」● ★☆ |
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2005年10月
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“エンブリオ”とは、受精2週以後の受精卵(受精後9週からは胎児という呼び方もする)のこと。 岸川の経営するサンビーチ病院は、海岸沿いに立つ贅沢な施設と高度医療で知られる病院。他の病院で不妊治療の成果を得られなかった夫婦は、ここでやっと救われ、喜びと感謝に涙を流す。 |
●「国 銅(こくどう)」● ★★ |
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2006年03月
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奈良・東大寺の本尊、毘盧遮那仏如来像(いわゆる大仏)の建立に携わった人足たちを描いた物語。 帚木さんが本作品を書く契機となったのは、山口県の長登という鉱山跡を見た時。そこの銅が大仏建立に使われたこと、大仏建立に徴用された20万人位の人々が使い捨てのように放り出されたという話を聞いて、工事に携わった名もない人々のことを書こう、と思ったのだそうです。 古代と言うべき奈良時代。人々がどのように生活していたのか想像もつかない時代だけに、帚木さんがどう物語を書いていくのか、多少心配しつつも興味もあり、というのが正直なところでした。 |
●「アフリカの瞳」● ★★ |
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2007年07月
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「アフリカの蹄」の続編というべき、南アフリカ共和国を舞台にした、日本人医師・作田信を主人公とする医療サスペンス。
主人公の作田信(シン)のほか、妻のパメラ、診療所の医師サミュエルら、前作で馴染んだ人物たち再び登場し、馴染みの世界に戻ったような懐かしさ、居心地の良さがあります。 今回は、南アフリカに蔓延するエイズ禍を問題として取り上げた作品。 |
●「千日紅の恋人」● ★★☆ |
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2008年04月
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主人公はバツ2で、老人介護のパートの傍ら母親が所有するアパートの管理をしている38歳の女性、宗像時子。 初婚は死別、再婚は2年で破綻。その時子は、父親が遺した古アパートの「扇荘」を母親に代わって管理して15年になりますが、その管理ぶりは並々ならぬものがあります。 本書は一応“ラブ・ストーリィ”ですが、主眼は時子という女性の生き方にあります。彼女に訪れた思いも寄らぬ恋は、そんな風に真面目に生きてきた彼女へのご褒美と受け止めた方が良い気がします。 ※千日紅(千日草)・・・花言葉は「不滅の愛」 |