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3.子づれ兵法者 4.黄落 5.江戸職人綺譚 6.江戸は廻灯籠 7.幸福の選択 8.女剣 (文庫改題:「からたちの記」) 9.クィーンズ海流 10.北海道人 |
自鳴琴からくり人形、わが屍は野に捨てよ、士魂商才、長きこの夜、動かぬが勝、兄よ蒼き海に眠れ、エンディング・パラダイス、野望の屍 |
●「北の海明け」● ★★ |
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1988年 1996年
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江戸幕末期、蝦夷地に官寺建立が決定され、その三寺のひとつアッケシの国泰寺に赴任した
老若ふたりの僧の物語。 |
●「捨 剣−夢想権之助−」● ★★ |
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1992年 新潮文庫化
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何度もの剣の勝負(宮本武蔵との2度を含む)に常に負けながら、剣の道を目指し、遂に夢想流杖術を創始した男の物語。 |
●「子づれ兵法者」● ★★ |
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1992年12月 1996年09月
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7篇の時代小説短篇集。
とくに秀逸だったのは、表題作である「子づれ兵法者」。10歳の息子進之助を連れて、乞食同然の格好で剣術道場の前に立った平川軍太夫。彼を迎え入れる道場主・森山七郎兵衛の娘で、小太刀の名手である志津は、初めて女らしく軍太夫に思いを寄せます。 子づれ兵法者/菖蒲の咲くとき/峠の伊之吉/鼻くじり庄兵衛/猪丸残花剣/女鳶初纏/装腰綺譚 |
●「黄 落」● ★★★ ドゥマゴ文学賞受賞 |
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1999年10月
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中年夫婦が年老いた親夫婦の介護をするというストーリィなのですが、その凄まじい内容には声も出ない、というのが実感。 本書の渦中では、老父に対する妻の嫌悪感、作者夫婦の間にさえ互いへの憎悪という感情までが噴き出してくる。“ホンネ”を超絶した、極限の状態の中での感情の迸りというべきもの。 ここに至って老人福祉の問題も考えざるを得なくなりました。老人福祉という問題が、子供世代の家族崩壊という危機まではらむとは、思いもよらないことでした。 結末における作者の妻の一言は、答えを与えられたようで、ホッとするものでした。 転倒/後光/黄楽/葬送/老骨 |
●「江戸職人綺譚」● ★ 中山義秀文学賞 |
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江戸時代の職人を題材とした短篇集。職人の姿を知るというのには良いのかもしれませんが、市井ものを楽しもうとしていた私にとっては、もうひとつ不満足なものでした。 解錠綺譚(錠前師・三五郎)/笑い凧(凧師・定吉)/一会の雪(葛籠師・伊助)/雛の罪(人形師・舟月)/対の鉋(大工・常吉)/江戸の化粧師(化粧師・代の吉)/水明り(桶師・浅吉)/昇天の刺青(女刺青師・おたえ)/思案橋の二人(引札師・半兵衛) ※「自鳴琴からくり人形−江戸職人綺譚−」を読んでから思うと、どうも本書の読み方を誤ったようです。 |
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2000年08月 1998/02/05 |
各ストーリィの中で、ちょいと登場した人物が次のストーリィの中では主役となり、
都合7篇がグルリと繋がるという(作者言うところの)円環小説。
主人公は、屋根職人 → 武士 → 料理茶屋の女中 → 密偵 → 目明かし
→ 町娘 → 隠居という風にめぐっていきます。 あとがきにおいて、作者自ら「小説家は職人だと思っている」と言っていますが、まさに職人芸のなせる業、そんな印象の短篇集です。 |
●「幸福の選択」● ★★ |
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2002年05月
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長年勤めた広告会社を定年退職した津村昭二がつきあたった問題は、“人生の選択”の是非ということでした。過去の人生の岐路でどう人生を選択し今に至ったのか、他の可能性を選択していたらどうなっていたのか、またこれからの人生をどう選択するのか。そして、ひいては“幸福”とは何であったのか、何であるのか。 |
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2001年08月
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主人公は、江戸から北国の小藩家臣のもとに嫁いだばかりの女剣士・里絵。藩内に馴染んでいくのと共に剣の道を更に深めていく過程が、詩情と気品豊かに語られていきます。私だけの印象かもしれませんが、藤沢周平「蝉しぐれ」の牧文四郎と、男女の違いはあれどつい比べてしまいたくなる作品でした。ちなみに、構成としては6篇からなる連作短編です。
何より印象強いのは、全編に漂う気品。里絵の女武芸者としてのキリッとした印象にもよるのですが、ただそれだけではなく、里絵が自分の剣の業を謙虚に思い、更なる成長の必要なことをわきまえる分別を持っていることの緊張感によるものではないかと思います。里絵の剣に対する姿勢は極めて自然なものです。むしろ、雪国・志津野藩に馴染むこと、新しい(夫の)父母に孝養を尽くすことを第一義に考えているし、剣の道を目指すにしても、女らしい優しい剣を身に着けたいと望んでいます。そんな里絵の生き方そのものが、志津野の四季の中で新たな人間として、剣士としての成長を育んでいく、そんなストーリィです。
女剣士としては「剣客商売」の佐々木三冬もいますが、本書を読んで思い浮かべるのは、藤沢周平「隠し剣孤影抄」の中の一篇である「女人剣さざ波」の邦江。 |
●「クィーンズ海流」● ★★ |
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アヘン戦争当時の中国を舞台にした歴史小説です。主人公は東シナ海を舞台に活躍する海賊、“東海の青龍”こと周時珍。 |
●「北海道人−松浦武四郎−」● ★★ |
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2002年12月
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幕末期の蝦夷地探検家・松浦武四郎を描いた歴史小説。蝦夷が舞台ということで、やはり「北の海明け」を思い出しながら読み進みました。 |