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22.聖灰の暗号 23.インターセックス 24.風花病棟 25.水神−久留米藩三部作− 26.やめられない 29.ひかるさくら 30.日御子 |
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空夜、逃亡、受精、安楽病棟、空山、薔薇窓、エンブリオ、国銅、アフリカの瞳、千日紅の恋人 |
移された顔、天に星地に花、悲素、受難、守教、襲来、沙林、花散る里の病棟 |
●「受 命 Calling 」● ★★ |
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「受精」の続編となる作品。 よくまぁそう軽々と北朝鮮に行くものだなァと思います。何があっても不思議ない国だから怖そうと、私だったら臆病風に吹かれそうです。 |
●「聖灰の暗号」● ★★☆ |
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2010年01月
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14世紀の南仏において、ローマ教会(ヴァチカン)から異端派と断じられ、多くの信者たちが火刑に処せらる等徹底的に弾圧されたカタリ派。 キリスト教の秘められた歴史をめぐるサスペンスというと話題になったダン・ブラウン「ダ・ヴィンチ・コード」を思い出しますが、同作品が奇想天外なフィクションであったのに対して、同じフィクションとはいえ本書は実際にあったカタリ派弾圧の歴史を基にしているだけに興味は尽きません。 ストーリィとしてはサスペンスに類しますが、本書の真価はカタリ派弾圧の史実を現代に蘇らせたことにあります。 本書はキリスト教を題材としているので、宗教、キリスト教史に関心がある方には読み応え充分な作品と思いますが、反対に興味のない方にとっては物足りないサスペンス小説に留まるかもしれません。 |
●「インターセックス」● ★★ |
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2011年08月
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最近オリンピックなどで有力な女性選手が染色体検査をしたところ男性と判定され出場資格を失う、といったニュースを時々見ることがあります。どういうことはもうひとつ判らないままだったのですが、本書を読んで初めてどういうことか知りました。 本書はそのインターセクシュアリティの人たちをテーマにした長篇小説。主人公は、インターセックスと性差医療の問題に使命感を抱く女医の秋野翔子。 帚木さんらしく、本作品にはサスペンス要素もあります。 |
●「風花病棟(かざはなびょうとう)」● ★★ |
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2011年11月
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帚木蓬生さん初の短篇集。10年間に亘って少しずつ書き続けてきた10作品をまとめての刊行。 帚木作品というとこれまで医療あるいは歴史の現場におけるドラマティックなストーリィが主だったのですが、本短篇集ではいずれも、患者たちに真摯に向かい合う医師たちの姿が描かれています。 本書に登場した医師の中では「雨に濡れて」に登場する、研修医時代患者に感情移入し過ぎて泣きじゃくり、“泣きの水戸先生”と仇名されたという女医の姿が一番心に残ります。ストーリィには、谷村志穂「余命」の感動を思い出しました。 そして主人公の医師と共に、患者本人より看護する夫のことばかり考えていたことを指摘され愕然とする思いを味わったのが、「顔」。この篇は、いざ自分が患者になったとき、どうあるべきか、どういられるか、ということも考えさせられました。 親子二代医師となったが故に、同じ医師である父親との関係の難しさを描いた作品が「百日紅」と「震える月」。 なお、いずれの短篇にも各々に“花”が添えられています。それらの花を愛でる気持ちになりながら読むのも一興です。 メディシン・マン/藤籠/雨に濡れて/百日紅/チチジマ/顔/かがやく/ショットグラス/震える月/終診 |
●「水 神」● ★★ 新田次郎文学賞 |
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2012年06月
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帚木さんの地元=福岡、五人の庄屋が身代を投げうって筑後川に堰を築き、水に恵まれない江南原の地に水を引くという史実をモチーフにした時代小説。 本作品の主人公は、五人の庄屋であると同時に、その地に生きる百姓たち。 久留米藩の江南原。すぐ近くを大河である筑後川が流れているというのに、この地は川から高いために水に恵まれない。そのため高田村では“打桶”という役割を与えられた百姓2人が、毎日朝から日没まで一年中、土手の上から筑後川に桶を投げ入れ、汲んだ水を水路に流すという仕事を一生続ける、ということを繰り返していた。そんな土地柄であるため、当然にこの地の百姓はずっと貧困に喘ぎ続けてきた。 水に恵まれない百姓の苛酷な暮らし、五人の庄屋たちの勇気ある自己犠牲、そして江南原地方を上げての堰築造工事が、淡々と物語られていきます。 ※本作品執筆中に白血病罹患が判明した帚木さん、下巻は全て病室で書かれたそうです。 |
●「やめられない−ギャンブル地獄からの生還−」● ★★ |
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ギャンブル中毒、依存者。軽い気持ちで帚木蓬生さんの著書だからと、興味半分で読み始めたのですが、すぐ恐くなりました。 病気の目安になるのは、嘘と借金だそうです。 特にパチンコ・スロット。“ギャンブル”ではなく“遊戯”扱いのため規制も緩い。そしてそこら中にあるサラ金。元々罠が用意されているようなものですから、万が一陥ったとしたら・・・ 本書を読んで初めて認識したのですが、ギャンブル依存者の場合は嘘をつき続けるため、嘘をつかれ続ける家族への精神的ダメージも実に大きいのだそうです。 ギャンブル地獄であえぐ人たち/ギャンブル地獄の正式診断/ギャンブル地獄の二大症状は借金と嘘/地獄へいざなうギャンブルの種類/ギャンブル地獄で<意思>はない/ギャンブル地獄での合併症/若年化するギャンブル地獄/ギャンブル地獄で起こる犯罪/ギャンブル地獄の女性たち/ギャンブル地獄では家族も無力/地獄から生還する道はただひとつ/自助グループこそ地獄に垂れた蜘蛛の糸/通院治療と入院治療/ギャンブル地獄生還途上の試練/ヒト社会のギャンブル行動 |
●「蠅の帝国−軍医たちの黙示録−」● ★★ 医療小説大賞 |
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2014年01月
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元軍医たちが遺した先の戦争の記録。 医学生になれば普通の兵隊として召集されることは免れ、少しでも危険な場所へ赴かされる可能性は減る、医学を道を志した動機は人それぞれですが、軍医になったからといって危険が無かった訳ではない。部隊付属となり戦地へ赴き、犠牲となった若い軍医たちも多くいたそうです。 最初の内は一篇一篇を読むという感じでしたが、2/3を過ぎる頃には一つ一つのピースから全体像が浮かび上がってくる、という感じを受けるようになりました。 空爆/蠅の街/焼尽/徴兵検査/偽薬/脱出/軍馬/樺太(サガレン)/土龍(もぐら)/軍医候補生/戦犯/緑十字船/突撃/出廷/医大消滅 |
28. | |
●「蛍の航跡−軍医たちの黙示録−」● ★★☆ 医療小説大賞 |
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2014年08月
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「蠅の帝国」に続く、元軍医たちが遺した先の戦争の記録である短篇集「軍医たちの黙示録」続巻。 表紙裏に本書の舞台となる東南アジア・太平洋周辺、東部ニューギニア・ソロモン諸島周辺の地図が挿入されていますが、トラック島やタラワ島等、日本本土やアジア大陸から遠く離れた絶海の島にまで日本軍は侵攻、布陣していたのかと思うと絶句する他ありません。 本書の中で特に印象に残った篇は「名簿」「軍靴」「下痢」「行軍」。 高校生の頃、大岡昇平「俘虜記」「野火」を読んで戦場の過酷さを深く感じたものですが、本書はそれらの傑作に比肩される貴重な記録小説。是非読んでいただきたい作品です。 抗名/十二月八日/名簿/香水/軍靴(ぐんぐつ)/下痢/二人挽き鋸/生物学的臨床診断学/杏花(シンホア)/死産/野ばら/巡回慰安所/行軍/アモック/蛍 |
●「ひかるさくら」●(絵:小泉るみ子) ★☆ |
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2012/04/22 |
薬売りの彦一は、いつもとは違った山道に足を踏み入れる。すると彦一、男性、女性、子供と次々と病人に出会います。優しい彦一は、その度に代金を貰うことなく薬を分け与えます。 本書、帚木蓬生さんには珍しい絵本です。 医者たる者、誰が見ていようが見ていまいが、誰に評価されることがなくても、病人一人一人に優しく向かい合わねばならない、という気持ちを描いたものではないかと思います。 ※なお、この絵本の対象年齢は5才とのこと。 |
●「日御子(ひみこ)」● ★★☆ 歴史時代作家クラブ賞作品賞 |
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2014年11月
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紀元1〜3世紀の九州(倭国)を舞台にした壮大な歴史ロマン。 時代は3部に分かれており、第一部は那国、ついで伊都国からはるばる後漢、その首都である洛陽にまで赴いた朝貢団の足跡を綴った篇。その2回に亘る朝貢団で使譯を務めたのは、<あずみ>一族の灰、孫の針(しん)。 “弥摩大国、日御子”が、日本史上の“邪馬台国、卑弥呼”のことであるのは言うまでもありません。 1.朝貢/2.日の御子/3.魏使 |