桃太郎 特集
01. 倉敷張子(岡山県)と鵜渡川原土人形(山形県)
02. 松本押絵(長野県)
03. 鵜渡川原土人形(山形県)
04. 春日部のつまみ人形(埼玉県)

05. 岡山の桃太郎でこ(岡山県)
06. 姫路の張子面(兵庫県)

07. 中山焼の桃太郎(岡山市)


01. 倉敷張子(岡山県)と鵜渡川原土人形(山形県)



わが国の「五大昔話」といえば桃太郎、かちかち山、猿蟹合戦、舌切り雀、花咲爺。また、お伽(とぎ)話で「三太郎」といえば桃太郎、金太郎、浦島太郎の三人をさす。どちらにも名前のあがる桃太郎は、それだけ日本人に馴染みの深い主人公である。桃太郎の成立については数々の論考があって、民間に古くから語り伝えられた神話や説話が、近世以降にお伽話として成熟したものとされている。左は倉敷張子の桃太郎犬。岡山県は桃太郎伝説が色濃く残っている土地である岡山01。右は酒田の鵜渡川原土人形の桃太郎で、高さ20p。(H26.11.24

02. 松本押絵(長野県)



桃太郎のお伽話は、桃から生まれる誕生にまつわる前半と、鬼を退治する後半に大きく分かれ、どうやら、別々の起源を持つ二つの話が後になって一つにまとめられたものらしい。話の趣旨は、“極めて小さい形をして生まれた子が、急に成長を遂げて尋常ならざる能力を発揮する”というものであり、桃太郎と同類の話には、竹の中から見つかったかぐや姫や瓜から生まれた瓜子姫がある。柳田國男は名著「桃太郎の誕生」のなかで、これらの話を“小さ子物語”と呼んだ。一寸法師もこの分類に入るかもしれない。写真は松本の押絵で、桃太郎が犬に黍(きび)団子を与える場面である。高さ25p。(H26.11.24)

03. 鵜渡川原土人形(山形県)



桃太郎のハイライトは、もちろん鬼ヶ島の鬼退治である。しかし、前半が“割れた桃の実から子が生まれる”という日本独特の話であるのに対し、後半は“動物の助けを借りて大事を成し遂げる動物忠誠譚(たん)“であり、西遊記の三蔵法師と孫悟空の例など、日本以外にも類話は多い。柳田は桃太郎について「日本の特徴というのは、ただその英雄の名前であり、また、その出現の様式であった」と述べ、桃太郎の前半こそ「わが国において新たに出現したもので、民族の固有信仰のかなり大切なる一つの信條であった」としている写真は桃太郎一行が意気揚々と凱旋して来る場面。鵜渡川原土人形にはほかに花咲爺などもあり、お伽話をテーマにしたものが多い。雉の高さ14p。(H26.11.24)

04. 春日部のつまみ人形(埼玉県)



桃太郎のような不思議な生まれ方をしたものには、鬼退治のような常人には出来ない偉業も可能だろうということで、話の前半に後半を結び付けて語るようになったのがお伽話の桃太郎であった。本来、前半に続く物語は“妻求め”や“神と人との通婚””といった(子供向けではない)話であったのだろうと柳田は考察している。写真は春日部張子埼玉14の作者による手捻りの首人形。桃太郎主従や鬼のほか、後ろには串刺しの黍団子も見える。高さ19p。(H26.11.24)

05. 岡山の桃太郎でこ(岡山県)




桃太郎の話は、岡山市、香川県高松市首人形09、それに岐阜県犬山市が本家争いをしている。岡山県では、吉備国を開拓した吉備津彦命(きびつひこのみこと)の鬼征伐伝説を、桃太郎の話として伝えている。当時、吉備には百済(くだら)から渡来した温羅(うら)という豪族が居て、西国からの貢船を襲い、人々から鬼と恐れられていた。吉備津彦命は中山(ちゅうざん)に陣を敷き、鬼ノ城(きのじょう)に立てこもった温羅を征伐したという。現在、中山には吉備津神社があり、一方の鬼ノ城は朝鮮式山城の遺構として学術調査が進められている。桃太郎でこは、画家である夫がデザインし、妻が手捻りで作る夫婦合作の土人形。高さ4p。H26.11.24

06. 姫路の張子面(兵庫県)




桃太郎を題材にした郷土玩具には土人形千葉09福井01や凧東京32などのほか、張子の面もある。姫路では、以前から作られていた桃太郎、猿、犬の面に、新たに雉の面が追加されて一同が勢揃いした。桃太郎主従の面は香川県高松市にも一組あると聞くが見たことはない。桃太郎面の高さ21p。(H26.12.30

07. 中山焼の桃太郎(岡山市)




桃太郎との結びつきが強い岡山県からもう一つ。中山焼は、桃太郎こと吉備津彦命が鬼退治のために陣を敷いたと伝わる中山(ちゅうざん)の麓で焼かれていた無彩色の陶人形。終戦後、考古学に造詣が深い地元の郷土史家が創始したもので、桃太郎に因んだ人形や土鈴が多い。高さ6p。(H27.8.16

当ホームページ内の写真、図、文章を無断で転載する事はご遠慮下さい。
著作権は佐藤研氏に所属します。