K122.北の丸露場の気温-降雨・日照との関係まとめ


著者:近藤純正
東京都心部の「北の丸露場」は森林公園内の開空間に設置されており、気温は都市 ビル街を代表する大手町露場と異なる特徴を示す。樹木の葉面群はビル壁面などに 比べて個々の葉面積が小さく熱交換係数が大きく、昼・夜の大気に対する加熱・ 冷却作用を強める。その結果、晴天日中の平均気温は日だまり効果によってビル 街より0.8℃前後の高温に、夜間は1.7℃前後の低温になる。こうした特徴を降雨 (地中の熱慣性)と日照時間(日射量)と風速に注目し、日変化グラフを月ごとに 表して理解を深めた。(完成:2015年12月15日)。

本ホームページに掲載の内容は著作物である。 内容(新しい結果や方法、アイデアなど)の参考・利用 に際しては”近藤純正ホームページ”からの引用であることを明記のこと。

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更新の記録
2015年12月13日:素案の作成
2015年12月15日:11月(図122.11)を追加

  目次
      122.1 はしがき(林内気温の特徴)
      122.2 北の丸露場の気温日変化、3月~10月
      122.3 月平均日照率と気温日較差の関係(大手町、横浜、千葉との比較)
   122.4 風速との関係
   122.5 まとめ
   引用文献


気象庁資料
気象庁大手町露場の気温データは気象庁から提供されたものである。


122.1 はしがき

東京都心部の気象観測露場は大手町から北の丸公園に移転された。2014年12月2日 9時40分から北の丸露場の気温・湿度などが東京の正式の値として発表されるよう になった。

北の丸露場は、世界の大都市を代表する東京の気象観測所である。

北の丸露場における気温の観測値には、
・ 都市気候(100年間に 2℃程度の上昇)、
・ 地球温暖化(100年につき 0.7℃程度の上昇)、
・ 森林環境の影響(最高気温で最大2℃程度高め、最低気温で最大3℃程度低め)
を含む。森林環境の影響は日々の気象条件にも依存し、非常に複雑なものになる。

この複雑さを解明し、北の丸露場における観測値の理解・利用のために、各地の 森林について研究を行なってきた。それらはシリーズ研究「森林内の気温」、及び 他のまとめの章に示してきた。その主なものは、

「K111.北の丸公園の日中の気温分布(2)」
「K114.明治神宮・代々木公園の日中の気温水平分布(3)」
「K115.新宿御苑の気温水平分布(2)」
「K116.東京都心部の代表気温―大手町露場の代表性(完結報)」
「K117.自然教育園の林内気温、6月~10月」
「K121.空間広さと気温―“日だまり効果”のまとめ」

であり、得られた林内気温の特徴は次のとおりである。

〇全般的な特徴
気温の特徴は、日射量が比較的に入る木漏れ日率20%以上の林内と、それ以下に大別される。

(1)人工的に整備された見通し(風通し)のよい森林公園(例:代々木公園)では、気温の 場所による違いは小さく概略±0.5℃の範囲にある。

(2)広い芝地の気温を基準としたとき、自然林のように風通し(見通し)不良の森林公園 では、気温差は-1.3℃~+0.3℃である。

ここに、広い芝地の気温とは、概略10km範囲を代表する気温である( 「K116.東京都心部の代表気温-大手町露場の代表性(完結報)」)。

目測が可能な木漏れ日率と観測が難しい林内日射量の関係は 「K113.林内の日射量と木漏れ日率の測定」に示してあり、木漏れ日率20%は林外 日射量の15%に、木漏れ日率50%は林外日射量の40%に対応する。

〇密な林内の特徴(例:明治神宮や自然教育園)
(3)市街地(大手町露場)の気温に比べて、日照時間が多い日ほど昼夜ともに低温となる。 日中は1~2℃の低温である。

(4)広い芝地の気温を基準とした気温差は、降雨日には林外気温の日較差にほぼ比例する のに対し、晴天日の気温差は大雨からの経過日数(林内土壌の水分量)に依存する。

(5)林内気温の鉛直分布は、昼夜とも上層が高温、下層が低温の安定成層をしている。 気温の鉛直差の絶対値は風速が強いほど小さくなる。

(6)大雨直後の晴天日や曇天日は林内気温の上昇が遅れ、晴天続きの日に比べて1℃ほど 低温になる。

(7)風上の林縁からの水平距離が約30m~50m以上の林内では、気温は風下距離とほとんど 無関係となる。

〇樹木に囲まれた開空間の特徴(例:北の丸露場)
(8)北の丸露場は樹木に囲まれ、しかも見通し(風通し)不良の開空間に設置されている。 樹木の葉面群はビル壁面などに比べて個々の葉面積が小さく熱交換係数が大きく、 昼・夜の大気に対する加熱・冷却作用が効率的に行なわれ、日中の「日だまり効果」による 昇温と夜間の冷却量は、ビルに囲まれた同じ空間広さの観測地点に比べて、共に2倍ほど 大きくなる。この特徴は、盆地における日中の昇温、夜間の放射冷却による冷気湖の形成 過程に似ている。

(9)晴天続きの条件では「日だまり効果」が顕著に現れるのに対し、大雨後や雨の多い 期間中の晴天日には地中水分が多く熱慣性(「熱伝導率×比熱×密度」の平方根)が大きく 気温上昇は小さくなる。

(10)昼・夜の気温上昇・下降は風速の増加とともに小さくなる。

北の丸公園全般は風通しは比較的によいが、特に露場の周辺は見通し不良で、風は渦巻き、 風向不定の特徴を示し、特殊な観測環境にある(「K63.露場風速の 解析―北の丸と大手町」)。

図122.1は北の丸露場の写真である。大手町露場から北の丸露場に移転する前の2011年7月に 撮影したもので、露場の盛土斜面や露場下の広場の芝地は未完成であるが、現在は綺麗な 芝地となっている。

東京の新露場全景
図122.1 北の丸露場、露場の南南東方向から北北西方向を撮影(2011年7月22日)
「写真の記録」の 「93.東京の新露場」の図93.2に同じ)。
写真中央のやや左よりの黒い 箱は「現在の気象」をデジタル表示する表示盤、土盛りして 2mほど高くなったところが露場。


備考1:望まれる観測環境の改善
北の丸露場は周辺に低木も多く、植栽も密で風通し不良である( 「K111.北の丸公園の日中の気温分布(2)」の図111.1の上図に赤破線で囲んだ範囲)。
樹木の剪定など行ない、風通しを良くすれば、東京都心部をよりよく代表する気象が観測 されるようになり、さらに防犯の面からもよい。これに類することが高知地方気象台の露場 であり、公園管理者や住民の協力によって改善された (「所感」の「11.気象観測と住民の協力」)。


図122.2は東京白金台の自然教育園で観測した林内1m高度の気温と樹冠上の19m高度の 気温の差(12時~15時平均)が大雨後の経過日数とともに変化することを示している。 ここに、19m高度の気温は林外を代表する気温とみなしてよい。7月11日は連続降雨日後 の快晴日であり、林床面下の土壌水分量は多くなっているはずで、その後は日ごとに乾燥 して貯熱効果が小さくなり、林内1m高度の気温が日ごとに上昇している。

風が弱く日射量が少ない林内および林内の開空間では、土壌水分の乾燥化に時間を要し、 地中の熱慣性の影響が気温の振舞いに大きく影響することがわかる。

1mと19mの気温差
図122.2 自然教育園における林内1m高度の気温と19m高度の気温差(12時~15時平均)。
「K117.自然教育園の林内気温、6月~10月」の図117.8の一部。
赤塗印:日照時間>10時間
黄塗印:日照時間=9.1時間
黒四角印:日照時間=0の日
6月30日~7月10日は毎日雨が降り、この11日間の合計雨量=145mmである。


前述した林内気温の特徴、特に(8)~(10)に注目し、次節では北の丸露場における 長期間にわたる日々の気温日変化から、気温の振舞いを理解することにしよう。

122.2 北の丸露場の気温日変化、3月~10月

解析に用いる観測データ
北の丸露場:気温
大手町露場:気温
北の丸公園内の科学技術館屋上の風速と日照時間

これらは10分間隔のデータを用いる。なお本報告に限り、気温観測器に及ぼす放射影響の誤差 (0.3℃程度)とゼロ点ズレ(0.1℃程度)は未補正のままで解析する。

日変化グラフを見る準備として、月ごとの気象条件を表122.1に示した。
太陽高度が高く日射量の日平均値>10 MJ m-2d-1の3~10月を比較の 対象として、この表によれば、
(a) 3月~5月、8月、10月は月降水量が少ない。
(b) 3月、5月、10月は日照率が大きい。
(c) その結果、日中の気温差(北の丸-大手町)>0.7℃の日数が多いのは3月~5月、
次いで多いのは8月と10月である。

表122.1 2015年の月ごとの降水量と平均気温と日照率(北の丸)
  日中気温差>0.7℃:日中の2時間移動平均気温差(北の丸-大手町)が0.7℃以上の日
  平均日射量:      全天日射量の日平均値(1 MJ m-2d-1=11.57 W m-2)

月  降水量   気温  日照率 平均日射量  日中気温差>0.7℃
    mm  ℃    %  MJ m-2d-1    日数
 3      94    10.3   53  14.5        15
 4     129    14.5      38  14.2         12
 5      88    21.1      55   20.8         14
 6     195    22.1      32  16.0           1
 7     234    26.2      41  16.2           3
 8     103    26.7      33  14.0           7
 9     503    22.6      30  11.4           0
10      57    18.4      52   12.3          4
11      139    13.9      39     7.9          11



図122.3~122.10は2015年の3月から10月までの図である。各図では上から順番に降水 量、風速、日照率、気温の日変化を示す。各気象要素は前後1時間(合計2時間) の移動平均値をプロットしてある。

日変化3月
図122.3 降水量、風速、日照率、北の丸・大手町気温差の日変化、3月

日変化4月
図122.4 降水量、風速、日照率、北の丸・大手町気温差の日変化、4月

日変化5月
図122.5 降水量、風速、日照率、北の丸・大手町気温差の日変化、5月


3月~5月は降水量が少なく、晴天日が多いので、日中の気温差(北の丸-大手町)が0.7℃ 以上となる日が多い。気温差は2時間移動平均であり、日中の0.7℃以上は最高気温で概略 1℃以上に相当する。

同じ晴天日でも、降雨の直後には日中の気温差(北の丸-大手町)は大きくならないことが 分かる。

本報告や他の多くの章で取り扱ってきた要素は、最高・最低気温ではなく、数時間の平均 気温である。瞬間的な最高・最低気温を取り扱わないのは、水平距離が数mの差でも同じ 値が観測されるとは限らず、平均気温に比べて代表性に劣るからである。


備考2:瞬間的な最高・最低気温
最高・最低気温の定義は、例えば、時定数=1秒程度の微細センサーで気温を測ったとした場合、 1分余(80秒~100秒程度)の時間で平均した気温データを連続してつくり、これらデータ のうち、その日の最大値・最小値を最高気温・最低気温としている。これは昔の時定数 の大きな最高・最低気温計で観測していた時代の値に近い値を得るためのデータ処理方法 による(「K23.観測法の変更による気温の不連続」 の表23.1を参照)。


日変化6月
図122.6 降水量、風速、日照率、北の丸・大手町気温差の日変化、6月

日変化7月
図122.7 降水量、風速、日照率、北の丸・大手町気温差の日変化、7月

日変化8月
図122.8 降水量、風速、日照率、北の丸・大手町気温差の日変化、8月


6月~7月は梅雨の季節であり、日射の強い晴天日でも日中の気温差(北の丸-大手町) は大きくなる日が少ないことがわかる。しかし、梅雨明けの晴天が続く8月1日~6日には 日中の気温差は毎日0.7℃を超えている(図122.8)。

日変化9月
図122.9 降水量、風速、日照率、北の丸・大手町気温差の日変化、9月


日変化10月
図122.10 降水量、風速、日照率、北の丸・大手町気温差の日変化、10月

図122.9に示す9月は降水量が多く(月降水量=503mm)、晴天日も少なく、気温差 (北の丸-大手町)が0.7℃以上となる日数はゼロである。

10月下旬の連続無降水で快晴が続く10月25日~28日には4日連続して毎日、気温差 (北の丸-大手町)は0.7℃を超えている。


図122.11に示す11月になると、太陽高度が低くなり、快晴でも日照時間は10時間以下で日射量 も少なくなる。それゆえ、10月までとは区別しなければならない。
しかし気温差は大手町との差を見ており、大手町では周辺のビルの影響を受けて日中の 日陰面積が増え気温の上昇が抑制される。そのため、気温差(北の丸-大手町)が0.7℃以上 となる日数は11日間もあることに注意したい。

日変化10月
図122.11 降水量、風速、日照率、北の丸・大手町気温差の日変化、11月


上で見てきたように、森林公園内の開空間に設置された北の丸露場では、周辺の林内と露場 空間における風が弱く、林外の広い芝地や都市ビル市街地に比べて土壌水分の乾燥化が遅れ、 気温の振舞いが複雑になっている。

夜間についても露場周辺の風速が弱く、晴天日には放射冷却が強く気温が低下する。 その際、「K121.空間広さと気温-“日だまり効果”のまとめ」 の図121.15で示したように、周辺樹木の葉面の冷却効果が加わり、冷却が一層大きくなる。

開空間の周辺樹木の葉面による冷気の発生は、盆地冷却における斜面で生成される冷気に 対応し、開空間の低高度(露場付近)に堆積することになる。林内の開空間における強い気温 逆転層の観測結果は「K118.北の丸露場における夜間の気温鉛直分布」 の図118.3、および「K107.林内気温の日変化・季節変化、 春~入梅期」の図107.7(左図) に示されている。

盆地内に形成される夜間の冷気湖については近藤ら(1983)やKondo, et al.(1989)に掲載 されており、林内の開空間における冷却機構はこれに似ていると考えてよい。


122.3 月平均日照率と気温日較差の関係(大手町、横浜、千葉との比較)

次に、月平均の気温日較差(=最高気温-最低気温)と日照率との関係が、都市を代表する 大手町、横浜、千葉における関係とどのように違うかを見ておこう。

図122.12と図122.13は2008年から2015年までの月平均日照率と月平均気温日較差の関係で ある。ただし、赤塗印で示す北の丸は2014年12月~2015年11月の1年間のプロットである。

北の丸露場における値は、都市内観測所(大手町、横浜、千葉)の上方にずれた位置に プロットされ、特異なことがわかる。

日射量が比較的に多く、降水量の少ない3月~5月の気温日較差は都市内観測所 (大手町、横浜、千葉)に比べて、月平均値で1℃ほど大きくなっている。この特徴は すでに示した2011年8月からの1年間の解析結果( 「K54.日だまり効果と気温:東京新露場」の表54.2)と同じである。

月平均日較差と日照、1-6月
図122.12 月平均日照率と月平均気温日較差の関係、1月~6月
 赤丸印は北の丸露場、その他の丸印は大手町、横浜、千葉

月平均日較差と日照、7-12月
図122.13 月平均日照率と月平均気温日較差の関係、6月~12月
 赤丸印は北の丸露場、その他の丸印は大手町、横浜、千葉

北の丸露場では、月平均値としても日中の気温は高めに、夜間は逆に低めの気温が観測 される。その結果として、今後は他所と比べて最高気温が35℃以上の猛暑日、30℃以上の 真夏日や最低気温が0℃未満の真冬日などの日数が増えることになる。ただし、瞬間的な 最高・最低気温は偶然性が含まれるので、統計的に長期間データを分析する必要がある。


122.3 風速との関係

雨後の数日間を除き、日照時間>10時間の晴天日について、北の丸と大手町の気温差の 風速依存性を調べた。

図122.14は気温差(北の丸-大手町)の風速依存性を表している。気温差は2時間移動平均値 のうち日中の最大値を赤丸印で、夜間の最小値(マイナスの値で最大値)を黒四角印で 示した。

この図の全プロットの平均値は、
日平均風速=3.6m/s±1.1m/s、
日中の気温差=0.77℃±0.36℃、
夜間の気温差=-1.66℃±0.52℃、
である。

破線は、風速の逆数に比例する関係を表し、観測値はほぼこの曲線の周辺にプロットされて いる。

快晴日気温差風速依存性
図122.14 気温差(北の丸-大手町)の風速依存性。
赤丸:日中の気温差の2時間移動平均値の最大値
黒四角:夜間の気温差の2時間移動平均値の最小値(マイナスの最大値)


気温差が風速の逆数に近似的に比例することは、これまでの報告:
「K111.北の丸公園の日中の気温分布(2)」の図111.3、
「K114.明治神宮・代々木公園の日中の気温分布(3)」の図114.4、
「K117.自然教育園の林内気温、6月~10月」の図117.10、
「K121.空間広さと気温-「日だまり効果」のまとめ」の図121.16、
に示したとおりである。

微風時を除けば、近似的に風速の逆数に比例することは理論的に得られる結果である。
「水環境の気象学」6章の式(6.102)によれば、地表面温度の日変化振幅A1は放射量 (日射量と長波放射量)の日変化振幅 R1 に比例し、「係数+風速」に逆比例する。 したがって風速が大きくなるにしたがって、日変化振幅 A1 は風速の逆数に漸近すること になる。

この傾向は相対的に風の強い大手町露場の周辺でも、風の弱い空間広さの小さい北の丸露場 の周辺でも同じである。また、地上気温も地表面温度の変化傾向に類似する ので、気温の日変化振幅も風速の逆数に漸近することになる。観測結果は理論的予想と 矛盾しない。

122.4 まとめ

東京都心部の「北の丸露場」は、世界の大都市を代表する東京の気象観測所となった。 この露場は森林公園の開空間に設置されており、気温は都市ビル街を代表する大手町露場と 異なる特徴を示す。

特に注目すべきは、露場のごく近傍は樹木が密で低木も多く、風通し不良である。

樹木の葉面群はビル壁面などに比べて個々の葉面積が小さく熱交換係数が大きく、昼・夜の 大気に対する加熱・冷却作用が効率的に行なわれる。その結果、気温は独特な振舞いを 示す。

降水量、風速、日照率とともに気温日変化をグラフに示し、気温の特徴を降雨 (地中の熱慣性)や日照時間(日射量)および風速と関連づけして理解した。

(1)晴天日中の平均気温は日だまり効果によってビル街より0.8℃前後の高温に、 夜間は1.7℃前後の低温になる。この特徴は、晴天が続く期間に顕著になる。

(2)降水量が少なく、晴天が多い3月~5月には日中の平均気温がビル街を代表する大手町 に比べて0.7℃以上高温になる日数が多い(表122.1)。

(3)月平均値の気温日較差(=最高気温-最低気温)と日照率の関係について、都市を 代表する大手町、横浜、千葉と比べると、北の丸露場では樹木に囲まれた開空間の特徴が 現れ、気温日較差が1℃ほど大きくなる。ただし、晴天日が少なく降水量が多い月にはこの 特徴は不明瞭になる。

(4)日中の気温差(北の丸-大手町)および夜間の気温差(北の丸-大手町)の風速依存性 を晴天日(日照時間>10時間)について調べると、それらの絶対値は強風日ほど小さくなり、 近似的に風速の逆数に比例する(図122.14)。これは理論的予想と矛盾しない。

図122.3のプロットの平均値は、
日平均風速(測風塔の地上高度は35m)=3.6m/s±1.1m/s、
日中の気温差=0.77℃±0.36℃、
夜間の気温差=-1.66℃±0.52℃
である。

引用文献

近藤純正(編著)、1994:水環境の気象学―地表面の水収支・熱収支―.朝倉書店、pp.350.

近藤純正・森洋介・安田延寿・佐藤威・萩野谷成徳・三浦章・山沢弘実・川中敦子・庄司 邦彦、1983:盆地内に形成される夜間の安定気層(冷気湖).天気、30、327-334.

Kondo, J., T. Kuwagata and S. Haginoya, 1989: Heat budget analysis of nocturnal cooling and daytime heating in a basin. J. Atmos. Sci., 46, 2917-2933.

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