1.特徴
世界でも八丈島にのみ分布する珍しい種類です。本州や他の伊豆諸島に
生息するノコギリクワガタに比べ以下の点で異なっています。
(1)雄は体長に比べて大腮が短く太い。
(2)雄雌ともに、体色が黒くふつう頭部の中央が赤味がかっている以外
はほぼ全体が黒い。足は若干赤味がかっていますが本州のものと比べると
黒い。
(3)最大でも60mm程度でほとんどが小型で50mmを越えるものは
少ない。
(4)足が同じ大きさのノコギリクワガタに比べて明らかに短い。
(5)大歯型は非常に少なくほとんど採集されていない。
(右の写真は、特大型の雄と路上徘徊中の雌)
2.生態
(1)飛ぶことがなく移動は主に歩行による。
(2)5月上旬から見られ7月にはほとんど見られなくなる。
(3)樹液にくることはあまりなく、路上を徘徊しているときに見つかる。
(4)主に夜活動し、日中は倒木の下に潜り込んでいることが多い。
(左から歩行中の大型個体、倒木の下にいた原歯型、珍しい赤色型)
ハチジョウノコギリクワガタの幼虫は、オオバヤシャブシのなどの広葉樹の
朽ち木の根の部分を食べて育ちます。(左の写真参照)
ノコギリクワガタに比べ頭部が小さく、あまり大きく育ちません。
したがって、成虫も大きいもので50mmくらいです。
最近クワガタムシの養殖が盛んになりましたがこのハチジョウノコギリクワ
ガタの大形個体は養殖でもまだ育てられないようです。
ハチジョウノコギリクワガタは、八丈島が古い時代に他の伊豆諸島から切り
離されたことを物語る生き証人です。
近い種類のノコギリクワガタから大昔に隔離されて独自の進化を遂げた結果
別の種類に進化して、八丈島の環境に適応したと考えられています。