さて、ゴビ砂漠での発掘
から1年ほど経ちました。 1999 年 7 月 25 日、群馬県中里村・恐竜センターで 「バルスボルド博士によるクリーニング体験学習」 という催しが企画され、モンゴルの恐竜研究の権威 (そして発掘の指導者でもあった)バルスボルド博士が 化石クリーニングの指導を行うとのこと。 そこでは去年の僕等の発掘化石も運び込まれるらしいとの噂。 これは行かねばなるまい。
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中里村 は、恐竜化石が出土する村として、
数年前からモンゴル国と協力関係にあり、モンゴルの恐竜化石の
クリーニングや組み立ての作業を行っているのだ。 中里村はハッキリ言って山奥である。早起きし川崎から3時間半ほど かけて恐竜センターに到着した。クリーニング室に入ってゆくと、 バルスボルド博士が子供に化石クリーニング教えている姿が目に入った。 そして、あ、あの博士の横にあるのは!? 見たことのある形だぞ。 |
![]() 優しく教えるバルスボルド博士 |
![]() 見覚えあるピナコサウルスの手 |
それはなんと、すでにすっかりクリーニングされてしまった
ピナコサウルスの手ではないか!
話を聞くと、化石を持ち込んだ博士が、昨日あっという間に
クリーニングしてしまったとのこと。 残しておいてくれれば、自分でやりたかったのにぃぃぃ。残念。 化石ジャケットを開いてクリーニングする時は、裏側から行います。 もともとは地面の下だった側から削っていって、最後に表面の化石に 到達する。だから左の手の形は、発掘した時 とは反転した形になっています。 |
隣に置いてある箱には、削って行く途中で見つかった化石骨の部品も
取り分けられている。発掘時には見えなかったものだ。 大きく丸く平たいのは肩甲骨のようだ。ということは肩から先の ひとそろいの骨が取り出されたことになる。 腕、手、指の形というのはその生物に固有の貴重な情報を含んでいるので、 これらからいろいろなことがわかるのだろう。今後の研究が進むことを 期待する。 |
![]() 肩の骨も入ってた |
![]() プロトケラトプス頭 ![]() プロトケラトプス胴体 |
ゴビ砂漠から中里村へと運ばれ、再会することになった恐竜化石は
他にもあります。 例えば、 一昨年(1997年)の夏に発掘したプロトケラトプスの恐竜化石 (通称サトケラトプス、佐藤さんが見つけた)も中里村に移送され、 発掘者本人によってクリーニングが進んでいました。 発掘現場では クチバシの先と襟飾りの先が見えていただけ だったのに、顔全面がキレイに露出し、歯も残っているのが見えています。 とても保存状態が良い化石です。 同じプロトケラトプスの胴体も丁寧にクリーニングされ、 あばら骨、背骨、腰骨が見え、全身骨が現れています。 頭骨と合わせて、完全な一体の骨格がそろいます。 石膏ジャケットの切れ目から、 僕のジーンズの青い色がのぞいているのが懐かしい思い出を 呼び起こします。 |
これで「ピナコサウルスの旅」についてのお話はおしまいです。 ゴビ砂漠での発見から約1年、ピナコサウルスの化石と日本で再会することが できました。 今回は自分でクリーニングするチャンスを逃しましたが、 自分の発見物が研究資料として価値のある扱いを受けているのを見ると 充実感が湧いてきます。さらに研究され役立って欲しいものです。 そして、MINEW は次の発見を求めて、 またゴビへと旅立つ(1999 夏)のでした。 |