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大森望・日下三蔵編『虚構機関 年刊日本SF傑作選』創元SF文庫/税込1,155円 編者序文(→amazon | bk1 | e-hon | 7&Y | 本やタウン | 楽天
ジョン・クロウリー『エンジン・サマー』大森望訳/扶桑社海外文庫980円(→amazon | bk1 | 7&Y | 本やタウン | 楽天
コニー・ウィリス短編集『マーブル・アーチの風』早川書房2,100円(税込)9/25発売(→amazon | bk1 | 7&Y | 本やタウン | 楽天
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■豊崎由美・大森望『文学賞メッタ斬り! 2008年版 たいへんよくできました編』パルコ出版1,470円(税込)発売中(→amazon | bk1 | 7&Y | 楽天
■北上次郎・大森望『読むのが怖い! 帰ってきた書評漫才〜激闘編』1,785円(税込)発売中→amazon | bk1 | 楽天
ちくま文庫版『文学賞メッタ斬り!』絶賛発売中。
Nippon2007開催記念特別企画、ワールドコン1997、LoneStarCon2レポート
コニー・ウィリス『わが愛しき娘たちよ』、復刊しました。
■大森望・豊崎由美『文学賞メッタ斬り! 2007年版 受賞作はありません編』1,260円(税込)→amazon
コニー・ウィリス『最後のウィネベーゴ』大森望編訳・河出書房新社 1,995円(税込)→amazon | bk1 | 7&Y
■『文学賞メッタ斬り!リターンズ』(→amazon | bk1 | 楽天 | 7&Y
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■2008年12月10日 『虚構機関 年刊日本SF傑作選』(12/18追記)

(→amazon | bk1 | e-hon | 7&Y | 本やタウン | 楽天
 創元SF文庫から12/26に発売決定(→12/20発売になりました)。528ページ、1,155円(税込)。これが売れないと続きが出なくなるので何卒よろしく。今回出るのは2007年の傑作選で、2008年の傑作選は来春刊行予定。基本的には再録アンソロジーですが、円城塔「パリンプセストあるいは重ね書きされた八つの物語」のみは未発表。群像新人賞応募作としてタイトルだけは公開されていた100枚の中篇です。

 創元のサイトで序文公開中。収録作一覧もそのうち(→公開しました)。

 『エンジン・サマー』特設ページを公開しました。


■2008年12月05日 菊池寛賞

 高知から上京している母親のお供で菊池寛賞初体験。受賞者の宮尾登美子先生に招待されたのはうちの両親。出不精の父親が行かないというので、オレはその名代。ホテルオークラのパーティ会場を母親と歩く。宮部さんとか椎名さんとかに「うちの母です」と紹介したところ、しゃべるしゃべるしゃべる。オレが子供の頃の話とかしなくていいですから!

 そして初対面の椎名さんに向かって、「あなたのパタゴニアの本を読んで面白かったけど、似たような本をたくさん出してますねえ」と言い放つ母(『パタゴニア』と『パタゴニア紀行』のことか?)。おそろしい。

 高知からも、尾崎知事はじめ、高知文学館とか高知新聞とかの関係者が多数集合。そっち方面には「息子です」と紹介され、「アボさんの息子さん? そりゃどうも。小学生のころに会うたけんど、覚えてないろうねえ」(高知新聞前社長)などなど。

 ひさしぶりにお目にかかった宮尾さんは思ったより元気そうでした。受賞者スピーチもさすがの貫禄。


■2008年11月27日 『エンジン・サマー』ようやく発売

 4年がかりで(といってもずっとやってたわけじゃありませんが)改訳した文庫版『エンジン・サマー』がやっとのことで刊行に漕ぎつけました。文庫版といっても部数は極小。当社比で文庫の過去最低部数を記録しました。ていうか、『マーブル・アーチの風』より初版が少ないんですけど……。一部の大書店以外ではなかなか発見しにくいと思うので、見つからない人はネット書店にGO。待っていた人が多かった場合にはあっという間に売り切れるはずなのでお早めに。ずっと残ってたりして……。


■2008年11月25日 桜庭一樹インタビュー〜ファンタジーノベル大賞

 6時からミステリチャンネルの『ファミリーポートレイト』著者インタビュー。
 講談社に行ったらいきなり巨大桜庭ポスターに出迎えられる。直筆サイン入り。その横に手書きの字で「千枚です!」とか書いてあって、そうかあ、このポスター、千枚も刷ったのか……と感心してたら、千枚は小説の枚数でした(笑)。 「あたりまえでしょ!」と怒られた。そりゃそうだ。
 インタビューは成り行きで妙に突っ込んだ話になり、10分番組なのに25分も回してしまう。編集がたいへんそうです。すみません。

 インタビュー終了後、ダッシュで大手町のクラブ関東。パーティはいつにもまして人が多い。20回記念だから? 大賞受賞者の奥さまはワールドコンのスタッフだったそうで、ご夫婦双方からそれぞれにヒューゴー賞の司会の話をされる。年が近いと思ったらやっぱりその筋ですか。

 あとは中村融とベイリー話&年間ベスト話。SFMの連載コラムに書いたベイリー紹介史の話で、『SF兵器カタログ』掲載の安田均「イギリスの新鋭SF作家たちによる<キッチン・シンク製>大宇宙小説群」のことをすっかり忘れてました。そうだよ、新クレプラの前になんかあった気がしたんだけど、盲点だった。あと、文中で「地底潜艦」が「地底戦艦」になってました、お詫びして訂正します。
 ベイリーはSFM来年5月号(たぶん)の追悼特集用に、未訳短篇のうちから邦訳推薦作募集中。 あと、12月13日のSFファン交流会@恵比寿区民会館は、「私の愛したベイリーとワイドスクリーン・バロック」という追悼企画。大森望・小浜徹也・向井淳が出演予定。どなたでもお気軽にどうぞ。参加費500円。

 年間ベストのオレ投票は「時間封鎖」「ザ・ロード」「Yrr」「蒸気駆動」「20世紀の幽霊たち」あたりか。国内は「新世界より」「神獣聖戦 Perfect Edition」「ディスコ探偵」「Boy's Surface」とか。あとは「聖家族」か「MM9」。ってすごい組み合わせだな。

 二次会は例によってパレスホテルのバー。主に新潮社の社内事情を取材。鈴木光司の長女は就職活動中と聞いて驚く。そうか、もう20年経つんだもんなあ。


■2008年11月22日 集英社四賞@帝国ホテル

 一次会では年に一回しか会わない奥泉さんとひとしきり。いま戦争アンソロジーを編纂中で、エンターテインメント系のもいろいろ読んでるんだけど短篇でいいのがなかなかないというので、「戦闘妖精・雪風」を推薦。まずは基本から。
「古処さんも読んでるけど、長いのばかりでしょ」と言われて、「そうですね」と答えたんだけど、いま野性時代に書いているのが短篇で、これがすごくいいらしい。なのでだれか奥泉さんに教えてあげてください。

 江國香織さんとは初対面。たしかどこかで『航路』を誉めてくれていたのでそのお礼を言いつつ、最近の海外ミステリの話。仕事に詰まると読書に逃避するんだそうで、『チャイルド44』とかもきっちり読破。江國香織推薦オビはどうか。
 ちなみに『犬は勘定に入れません』という邦題は、『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』という偉大な先例があったおかげで実現したんです――という話をし忘れた。 ちなににその両方のカバーを描いているのが松尾たいこさん。

 小説すばる新人賞二次会に行ったら、その松尾たいこさんがいらっしゃってて(もう2年間もずっと小説すばるの表紙を描いているので当然といえば当然か)、念願の対面を果たす。奇想コレクションで3冊、早川で2冊(スタージョン2,ウィリス3)と、いちばんたくさんカバーを描いていただいているのに、一度も会ったことがなかったのである。
 松尾さんご自身も『輝く断片』の絵がいちばん気に入ってるんだそうで、
「このあいだの小さな個展で奇想コレクションの他の絵は何枚か売ったけれど、『輝く断片』だけは手放したくなくてとっておいたんです」と聞き、 思わず「ひぜ売ってください」といいそうになるが自重。売った絵の値段を聞くと非常にお安い友だち価格だったんですが。飾る壁がないしなあ……。

 帰りは宮部さんとタクシー。伊藤計劃と米澤穂信と「告白」と直木賞選考委員就任の話など。 小説すばる新人賞のスピーチでは、お母さんモードになる宮部さんですが、直木賞では「若さを吹き込んでくれないと」(北方謙三談)と期待されているらしい。いよいよSF受賞の芽も出てくるか? しかし吉川英治文学新人賞でもSFは押し切れないみたいだしなあ。
 ともあれ、これで、小説すばる新人賞選考委員( 阿刀田高、五木寛之、井上ひさし、北方謙三、宮部みゆき)は全員が直木賞選考委員ということに。ま、阿刀田高、五木寛之、田辺聖子、渡辺淳一の時代も、阿刀田高、五木寛之、井上ひさし、田辺聖子の時代も、全員が直木賞選考委員だったわけですが。

 ところで今回の小説すばる新人賞受賞作の片方は別の賞の二次選考で読んでマルつけて残した作品。某スレでは祭りになってましたが、小説すばる新人賞は応募要項に二重投稿禁止規定がないということで問題なしの判断だった模様。


■2008年11月16日 闘うベストテン公開収録@青山ブックセンター本店

 家族連れで出かけて、子供たちは東浩紀一家と合流し、ABCのすぐとなりのこどもの城へ。キリカはシオちゃんと遊べてしあわせだったらしい。しかしシオちゃんのおじいちゃんの本はベストテンには入らず、次点どまり。むしろ国内編が驚愕の結果に。いいのか、そんなことで。オビに入れてほしいなあ。 結果はまだ内緒です。オンエアをお楽しみに。

 公開収録の会場は満員。本もそこそこ売れていたような……。ご来場いただいた皆さん、ありがとうございました。

 終了後、子供たちと合流。走りまわる幼女二人。トキオはひたすらDSポケモン中。

 東一家と別れて、ベストテン打ち上げ会場へ。反・本屋大賞派のシュプレヒコールが聞こえる(笑)。
 なぜか打ち上げに参加している朝倉かすみさん(初対面)といつのまにか仲良しになっているキリカさん。トキオは下足札というか下駄箱の板状のカギの21番と5番がコンパチである事実を発見。カギの種類より下駄箱の数が多いらしい。まあそんなもんか。

 帰って寝て起きて仕事。いつまでたっても仕事がかたづかない。スザンナ・クラークとかどうしてくれよう。エリザベス・ムーンどころかジャック・キャンベルもまだなのに。

 あ、『時間封鎖』は読んだ。まあ、順当に行くと今年の翻訳SFベストはこれじゃないの? 最後、ラーマになっちゃうのがちょっと不満。出だしが『流星の絆』そっくりで笑う。そこから『宇宙消失』になって、途中から『異星の客』ね。ロッキングオンで設定しゃべったらウケたので、意外と一般誌でも紹介できるかも。


■2008年11月15日 SF例会日和

 土曜は、仕事の山に埋もれつつも馬場MIYAMAのSF例会から新宿・味王のファン交打ち上げをはしご。ファン交は大盛況で満員。みんなハードSF好きなのか? 風花に寄ればよかったのかという気もちょっとした。

 途中、芳林堂で、さいとうよしこの書いたレッカ社ドラマ本とアニメ本を買う。ソニマガ新書はさがしにくい。

『ドラマ×主題歌101連発』
『アニメ×アニソン101連発』

 アニメはネット上にいくらでもデータがあるので、貴重なのはむしろドラマのほうか。1970年前後生まれがストライクゾーンらしい。合コンの席に一冊あると盛り上がるかも。
 アニメのほうはさいとうよしこがひとりで書くはずだったんだけど、最後どうしても間に合わない、このままだと本が出ないという事態になり、関係者が土壇場で救援登板。わたしも3本書いてます。だれがどこを書いたかはひみつ(笑)。
 しかし、「いつだって“星屑ロンリネス”と口ずさんでいた 」っていう副題はすごいな。そんなやついるのか(だいいちそこだけ口ずさむのはむずかしい気が)。


■2008年11月09日 文学フリマ
 仕事の合間を縫ってゼロアカ同人誌見物に出かける。2時ごろ着いたら一種類だけ売り切れてましたが、残りをひとととり買う。買ってどうするんだいったい。

 東浩紀一家とトヨザキ一家はもちろん、山田和正とか前田久とか前田塁とか佐々木敦とかマイミク各氏とか知り合い多数。中森明夫とうしろでえんえん立ち話とか。この環境でなぜ矢川澄子さんのディープな話になるのか謎すぎる。

 離脱してひと仕事したあと、ゼロアカ打ち上げをちょっと覗く。戦いに敗れ号泣する藤田直哉。青春だなあ。涙の数だけ強くなれるのか。

 この企画、「批評家甲子園」とか銘打ってテレビ局の協賛をとりつけておけば、相当おもしろいドキュメントになったのに。ドラマ的な盛り上がりは完璧に近い。500部の同人誌が5時間で完売するんだもんなあ。

 最終的にゼロアカ道場から生み出されるものより、この過程のほうが圧倒的に面白いのはほぼ確実で、しかもこの祭り感覚は活字にしてもあんまり伝わらないと思われるので、非常にもったいない。すでに東浩紀の制御を離れてフランケンシュタインの怪物化しつつあるような気も。


■2008年11月06日 電撃大賞/ポプラ社小説大賞

 文化放送ゴールデンラジオで真藤順丈の話をしたあと、渋谷パルコで次回メッタ斬り!大幅リニューアルの打ち合わせを済ませ、電撃大賞贈賞式@明治記念館に滑り込み。

 電撃大賞に潜入するのは初めてなので知らない人だらけ。というか、知っている人は選考委員各氏を除くとごく一部。そもそも作家の顔と名前が全然一致しないので歴代受賞者の観察に追われる。

 受賞者インタビューのしきたりがあるらしく、廊下の椅子にずらっと受賞者がすわっているのが可笑しい。女子高生からおっさんまで。いや、真藤順丈が最年長というわけでもないんですが、やっぱり浮いてました。銀賞なので受賞者挨拶はなかった模様。制服姿の女子高生は小説賞短編部門の受賞者らしい。パーティ会場では大モテで、彼女と古橋秀之の2ショット写真を撮影してあげたりとか。もちろん古橋秀之のために。

 しかし紅玉いづきさんとか壁井ユカコさんとかがきゃあきゃあ言いながら女子高生を囲んでるのがなんとも。あなたたちのほうがふつうに萌えキャラです。

 ちなみに一昨日はポプラ社小説大賞@ポプラ社ホール。

 特別賞『夏の終わりのトラヴィアータ』の永島順子さんの挨拶が、プロのアナウンサーですか? といいたくなるくらいうまくて、真藤順丈も(乾杯の挨拶に立った)方波見大志も、永島話し方教室に通うといいと思った。真藤順丈は帽子を脱ぐネタだけで笑いをとれて重畳(ホラー大賞で帽子を脱がなかったので朱川さんに怒られたらしい(笑)。)

 二次会は荒木町のバー。賞金2000万の新人賞とは思えないほどアットホームな雰囲気――って、このミス大賞のことを思えばべつに驚くこともないか。それにしても受賞者は歴戦の勇者ばかりでした。


■2008年11月03日 フタバ図書テラ南砂町店

 南砂町に10月オープンしたショッピングモールSUNAMOを家族連れで覗きに来たんですが、4Fに入ってる書店、フタバ図書テラがあまりに巨大でびっくり。
 新刊20万冊ですか。 書泉西葛西が7月に閉店したいま、まちがいなく地域最大。
 南砂町の本屋で長崎書店の海外ミステリがふつうに買えるとは……。
 トヨザキ社長の『正直書評』もいちはやく入荷。
 しかし客の姿はまばら……。大丈夫なのかフタバ図書。

 もっとも、いちばんの驚きは、古本コーナーが併設されていること。
「新刊書店のリサイクルコーナー」が謳い文句らしいが、まあブックオフの中規模店ぐらい。価格設定はかなり高めで、新刊の美本中心、とくにライトノベルとコミックが充実。3割引きぐらいで売ってる。発売3カ月以内の文庫・新書・コミックスの買い取りは一律150円。ライトノベル文庫は100円。ふうん。ここに売りに来るかな。


■2008年11月01日 ホラー大賞@東京會舘

 3年ぶりの授賞式。フジテレビがいきなり後援から降りていた。当然といえば当然か。全然ドラマ化してないし、メリットがほとんどないもんなあ。しかもドラマ制作費削減の時節柄、無駄金は出せないと。
 しかし今回は4つも受賞作が出たのでなかなか景気がよろしく、荒俣さんの選評もやけっぱち感が炸裂してて爆笑。あいかわらず緊張気味の真藤順丈氏の挨拶もウケてたし、「粘膜人間」の飴村行氏は、作風と人柄のものすごいギャップで笑いがとれる。それにくらべて田辺青蛙氏は……猛省をうながしたい。ていうか、途中から地味に綾波プラグスーツのコスプレ(モノ自体はめちゃくちゃ出来がいい)して会場をうろうろするくらいなら、最初からその姿で登壇しないと。もしくはスピーチでコスプレ宣言。角川なんだから、コスもふつうにハルヒ(またはケロロ)でよかったのに……。
雀野日名子さんは残念ながらよんどころない事情で欠席。お目にかかれず残念でした。

 今回は恒例の森村食事会がなかったので二次会に参加。さらに謎のガード下三次会にも流れ、いろいろ珍しい人・ひさしぶりの人・はじめての人に会う。初対面の受賞者とか。


■2008年10月31日 西澤保彦『スナッチ』の高知っぷり

 大崎梢『夏のくじら』につづく高知もの。 西澤作品としてはほとんど初めて、実在の地名がバンバン出てくる。
 いきなり"土佐市家俊"でのけぞる。主人公は土佐中出身か。オレの数年先輩ですな。 廿代町とか鷹匠町とか与力町とか、さらにピンポイントの町名が出まくり。
 西沢書店、富士書房から島内書店、金高堂、井上書店とまわって片桐書店、明文堂って、それはまさにオレの巡回コースですよ。逆回りだけど。
 西沢書店閉店ネタとかとでん西武取り壊しネタとかも入ってて、主人公が他人とは思えません。中央公園の変貌に驚くところとか。あと、オレが高校2年まで住んでた家の前も通ってるし。

 しかし主人公の中学校時代は、たぶん町名変更より前のはずで、そうすると鷹匠町と与力町は八軒町と南与力町で、廿代町は本与力町だったんじゃないかと。したがって、ぼくと"僕"の間で町名をめぐるとんちんかんなやりとりが交わされたりしてほしいところ。

 まあ、そのころ安芸市に住んでいた西澤さんには知るよしもなかったんでしょうが、ここはやはり地元民にチェックさせるべきだったんじゃないかと。言ってくれたらオレが読んだのに!

 以下、さらに重箱の隅。
・はりまや橋をわたっていきなり帯屋町商店街に入るのは変。町名としては(地図上は)正しいけど、そのアーケードは京町商店街で、その次が新京橋商店街、それからやっと帯屋町二丁目商店街じゃないですか。
・高新ホールは、その当時だとふつう"RKCホール"と呼んでたと思った。
・高知市で最初にできたハンバーガーの全国チェーンはたぶんデイリークイーン。大丸のすぐそば。

 それと別に驚いたのは、「人類の月面着陸は無かったろう論」が"僕"によって肯定的に言及されること。これは、宇宙人に寄生されると頭がトンデモになるという例なんでしょうか。虚弱体質の宇宙人というネタは面白い。


■2008年10月27日 「もろびと大地に坐して」がもしアニソンネタだったら……

 今年のヒューゴー賞を受賞したコニー・ウィリスのエイリアン・コメディ「もろびと大地に坐して」がSFマガジン12月号に載ってるわけですが、鈴木力の感想にコメントしていて思いついたネタ。

 宇宙人がデンヴァー大学のキャンパスに着陸するんだけど、あたりをにらむばかりで全然コミュニケーションが成立しない。9カ月のあいだいろいろ試しても埒が明かず、困り果てていたところ、ショッピングモールの有線から流れてきたクリスマスキャロルの歌詞に突如反応。「もろびと大地に坐して」っていうところでエイリアン6人が一斉に座った。さて、いったい彼らはなにに反応したのか? ってことで、いろんなクリスマスソングを聴かせまくる話なんですが、もしも彼らが着陸したのが東大キャンパスで、出かけた先が秋葉原、聴いた曲がソフマップの前でかかってるアニソンだったら……と想像しはじめるといくらでも話がつくれるね。
 その場合、語り手が頼りにするクリスマスソング通の聖歌隊指揮者の役は日下三蔵で。
「アトムなら27種類の違う録音で持ってるから」とか。
「鍵を握るのはやっぱりロボットね!」とか。
「いや、スーパーロボットには反応しない」
「宇宙少年ソランには反応したのに」などなど。
 そのぐらいならまだいいけど、
「せ、先生、アルタイル人が女子中学生を襲って制服を脱がせようとしてます!」
「だからその歌だけは聞かせちゃ危険だとあれほど!」


■2008年10月24日 西上心太結婚パーティ@中目黒Q.E,D.Club

 さすがミステリ界の(物理的に)重鎮の結婚パーティだけあって、推理作家協会とワセダミステリクラブとマルタの鷹協会のお歴々が参集。各社編集者も加わって、これじゃただの業界パーティじゃん――と思うところですが会場がすばらしい。料理も素晴らしければロケーションも最高。雨上がりの庭で芝生に置かれた椅子にゆったり座っていただく料理はまた格別。たいへんけっこうなパーティでした。

 会費が安すぎたんじゃないかと心配になるくらいですが、ベストセラー作家の人たちがわたしたちの分までご祝儀を奮発したと信じたい。

 人間、50歳過ぎて結婚すると、初婚でも余裕たっぷりなパーティが出来るもんですねえ。いや、おめでとうございました。

 パーティ会場では徳間書店K田さんにフォークで刺殺されそうになり、恵比寿の路上ではWMCの某氏に絞殺されそうになりましたがなんとか無事帰還し、ご祝儀をはずんだはずの人が原作を書いたたいへん視聴率の高いドラマの第二回を録画視聴。いや、快調です。戸田恵梨香すばらしすぎ。「バチスタ」も見習わないと!


■2008年10月19日 早稲田文学10時間耐久レース

 早稲田大学国際会議場(井深大記念ホール)で、10時間連続の公開シンポジウム.朝っぱらから客席はけっこう埋まってる。 男子率8割。 パネリストも男ばっかりだしなあ(紅一点はトヨザキ社長)。
 今日一番の勇者は、1コマ目の質疑応答で客席からすっくと立ち上がり、宇野常寛に向かって、「編集者としての能力は認めるが、あなたの批評は読むに耐えない」と言い放った藤原力。そして憤然と立ち上がり、あくまで宇野常寛を擁護する東浩紀。有言実行の人。

 大森の出番は2コマ目「日本小説の現在――現在時の日本小説をめぐって」。東浩紀、渡部直己、池田雄一、新城カズマ、前田塁+というメンツ。役割分担的にエンタメ寄りのスタンスで発言。"現在時の日本小説"だったらふつう東野圭吾じゃないの? みたいな。トークの模様はニコ動もしくは12月売りの早稲田文学で。

 シークレット企画は阿部和重と東浩紀の再会トーク。
 ほとんど元カノとの公開痴話喧嘩&ツンデレ和解劇。
「オレを振ったのはキミのほうじゃないか!」
「そんなことない。そっちから先に冷たくなったのよ。1997年の秋から」
「……。そりゃ、そんなこともあったかもしれないけど、でもあのときはきみだって」
 などなど。場内爆笑。いちばんウケた企画かも。これでもっと腐女子観客がいれば。

 終了後は風花で打ち上げ。文芸誌における政治力行使の実例そうざらえみたいな話になり、たいへん勉強になりました。 わたしは終電で帰ったけど、一日出ずっぱりでしゃべりっぱなしだった東浩紀は朝までしゃべりつづけたらしい。おそるべし。


■2008年10月12日 京フェス2008メモ

 東京発9:40ののぞみに乗り、会場入りは12:30過ぎ。聖護院で食事中の眉村さんに挨拶し、昔話をちょっと聞く。朝のインタビューはまったく聞けなかったのでmp3ファイル希望。

 瀬名・円城企画は蒟蒻問答ふたたびというか、ほとんど三省堂の続き。しかしあの四本足はやっぱり動画で見せないと。写真だけで生命っぽいかどうかの判定は困難では。

 それにしても円城塔の飛ばしっぷりがひどすぎる。今回も通訳の試みはほとんどナシ。瀬名さんがちょっと考えてから、「わたしには理解できません」と毎回律儀にいうのが面白すぎる。八代くんはもっと通訳の努力をすべきだと思った。

 年刊日本SF傑作選企画はまったくなんの打ち合わせもしてなかったんですが、壇上で打ち合わせができたのでちょうどよかった。日下三蔵は意外と無口。日下三蔵でも遠慮するのか? ヒゲがないから? でも、「日下がウォルハイムでオレはカー」のネタがウケなかったので、時代の変化を痛感する。ちょっと悲しい。いいよ、オレはもうメリルで。

 ディッシュについては、どうしてあんなにマルツバーグを目の敵にするのかが知りたかったが、だいたいパネルで答えが出たような気がしなくもない。

 ……というような企画の合間を縫って十両に走り、夕食20人分の打ち合わせ。去年まではいきなり大勢で押しかけててんでに注文してるんだけど、予約してくださいと毎回言われるので予約することに。そしたら、1階はすでに予約で一杯だから2階の座敷で……と言われる。座敷があったのか! 板前はひとりなのであらかじめ注文を決めてほしいと言われ、ひとり2000円(プラス酒代)で適当に20人前出してね、という話で決める。

そこから20人ぴったりの人間を過不足なく集めるのがたいへんだと思ったけど、ちょっきり20人でおさまってめでたしめでたし。2階に上がるとずらりと20個のお膳が並んで、まるで旅館の宴会状態。メニューは刺身盛り合わせと鱧のすき焼き鍋。来年は京野菜炊き合わせを予約したい。座敷は広いので30人までは行けそう。

合宿は3コマ連チャンだったのでたいそうくたびれた。

年刊日本SF傑作選2009年版の部屋は、文芸誌系を中心にかなりの推薦をいただき、たいそう有意義でした。すでに半分ぐらいは決まったんじゃないかな。まだ全然読んでないけど。

京フェスレポートのブログ等でもいろいろ推薦をいただいてますが、マンガに関しては現物が手もとにないからなあ。日下三蔵マターということにしよう。知り合い方面の人はできれば現物つきで推薦してください。

翻訳講座に関しては、聞いてる人にとってもうちょっと面白くする方法を考えたい。ただの翻訳授業じゃちょっとねえ……。

3コマ目は、十両の二階で電池が切れてばったり寝てしまいそのまま旅館の家族部屋でこんこんと眠りつづけていたトキオがむっくり起きだして風呂に入ると宣言したので、10分ほど企画に遅刻しますと断って大浴場に連れていき、ついでにいっしょに入って眠けを覚ましてから参加。奇想短編についてしゃべるうち、冬蜂くんの隠された性的ファンタジーが明らかに(笑)。

4コマ目は野田さん追悼部屋を覗きつつ、谷崎由依の酔っぱらいぶりを観察。円城塔の描写が正確であることを確認する。たいそう面白い見せ物だと思ったが、それは翌日の夜の樽本宴会に至るたんなる伏線でしかなかった……。


■2008年09月30日「科学・SF・アートが見る夢」@三省堂

 早川書房でもろもろ打ち合わせと四方山話のあと神保町まで歩いて三省堂本店。 瀬名秀明×円城塔×池上高志のトークショーを見学。
 客席のSF率は非常に低く、博士率高し。三省堂サイエンス・フォーラム?
 トークは瀬名秀明が司会にまわり、池上高志の独演会に円城塔がときどき茶々を入れる構成。 禅問答というか蒟蒻問答というか、くねくねした話芸の世界を堪能。
 瀬名さんの仕切りは非常にきっちりしているのに、それとは関係ないところで話が回っているというか。科学の人はやっぱり「人間が書いてない」方向に行きたいのか。しかし小説ジェネレーターとしては結局ハサミとノリが優秀だったり。 池上さんの本にサインをもらってS澤パパと電車に乗って帰宅。物真似王座見ながら神経衰弱地獄(キリカさんトランプマイブーム中)。

■2008年09月24日 第7回「このミステリーがすごい!」大賞発表

 今回は大賞作品をめぐって選考委員が真っ二つに割れ、両者まったく譲ろうとしなかったため二作受賞に。めんどくさいので産経ニュースから引用。
第7回「このミステリーがすごい!」大賞(宝島社など主催)は24日、香川県丸亀市のアルバイト、山下貴光さん(33)の「屋上ミサイル」と、山形市のフリーライター、柚月裕子さん(40)の「臨床真理」に決まった。賞金各600万円。優秀賞は会社員、塔山郁(かおる)さん(45)の「毒殺魔の教室」とフリーライター、中村啓(ひらく)さん(34)の「霊眼」。賞金各100万円。4作とも宝島社から刊行される。
大賞の山下さんは第4回新潮エンターテインメント大賞でも最終候補に残ってます。クリーニング店勤務。柚月裕子さんのほうはあっと驚く美女。どう見ても30代前半です。塔山さんは、別名義で数年前に某賞の最終に残ったやつが私はたいへん好きだったので(香山二三郎氏もご贔屓)ぜひそっちも出版してほしい。中村さんは去年もこの賞の最終に残った実力派で、即戦力。

■2008年09月23日 野田昌宏さんを偲ぶ会@日本青年館

 奇しくも野田さんの父方の従弟が自民党総裁になった翌日の開催。

 当日、会場でもご本人の口から語られたんですが、野田さんの妹さんの田中淑子さんがプログラムブックに書いている幼少期の野田家の思い出話があまりにも浮世離れしていて、ほとんどファンタジーのよう。『ミーナの行進』かと思いました。とても現実とは思えない。そのまま小説になりそう。

 ドク・ブラウンみたいな発明家おやじがアメリカの最新家電製品をかたっぱしから買ってきて、1930年代の福岡の一般家庭なのに、GEの冷蔵庫やフードプロセッサが常備され、オール電化。各部屋に電話が引かれて、幼児でもかけられるようにダイヤルのところには絵がついていたとか。16ミリの映画やアニメを借りてきて上映会をしたとか。撃墜されたB-29の調査から戻ってきた父親が夜中に帰ってきて、アメリカの科学技術がいかにすぐれているかを寝ている母親に縷々語り、幼い娘は夢うつつでそれを聞いていたとか。それこそ『マイナス・ゼロ』の世界。
 こういう話を野田さんがついぞ(たぶん)書かなかったのはどうしてかと考えていると、これまたいろいろと想像が広がる。

 第三部には、前回のSF観光局(SFマガジンの連載コラム)でちらっと名前だけ触れた、青少年SFファングループ連合の佐藤昇氏が登場(大宮さんが電話して呼んだらしい)。終わったあと、控え室でいろいろと昔話が聞けてラッキーでした(内田樹氏の話とか)。
 このパネルでは大宮さんが大伴昌司の話を持ち出して、国際SFシンポジウムにおける主導権争いとか、しきりと危険な方向へ誘導しようとするも時間切れ。残念でした。
 スタッフの皆様、お疲れ様でした。

 家に帰ってハモネプの録画を見てたら、きのうたまたま見た歌スタに出ていた青学の女の子が、今度は学内アカペラグループのリードヴォーカルで出てきてびっくり。予選突破の曲はなかなかよかった。
 最近、小説の新人賞では2賞、3賞を受賞してデビューする人がけっこういるんだけど、歌の世界でもこんなことが。桃花さん、キャラ的にもけっこう有望だと思いました。。
 しかしハモネプの優勝は予想通り「どんぐり」。 予選のポニョは105円出してもいいくらいのインパクトはあった(決勝の「もののけ姫」も悪くなかったけど)。。鈴木さんは、ただちにジブリ名曲アカペラ全集のCDをどんぐりに発注すると吉。とりあえずは「みんなのうた」からひとつ。

■2008年09月22日 エド・ブライアント映画化

 エド・ブライアントの短編がいつのまにか映画化されていたのをたまたま発見。キム・ベイシンガー主演で年末にアメリカ公開。でもギリシャではもう公開されてる模様。
While She Was Outという原題にも、「彼女のお出かけ」という邦題にもまったく記憶がないが、扶桑社ミステリーから出ているエド・ゴーマン編のアンソロジー『現代ミステリーの至宝』の2巻目に入ってるらしい。大森望訳。うーん。まったく思い出せない(笑)。どんな話だっけ。ていうかそんな仕事したっけ。まあ、日本公開はなさそうだけど、映画はちょっと見たい。

 エド・ブライアントの短編集はどうかと一瞬考える。シナバーもろとも。《奇想コレクション》にはちょっと弱いか。

■2008年09月21日 東京タワー

 トキオとうっかり約束したので、子供二人を連れて雨の中を東京タワーへ。母親が留守番なのでむくれていたキリカは東京タワーの勇姿を間近に見て機嫌を直す。
 トキオの目当ては水族館とトリックアート・ギャラリー(小学校で「蛇の回転」とか見て、すっかり錯視にハマったらしい)。水族館は魚が笑っちゃうほどぎっしり詰まっていて妙に新鮮。値札も貼ってあるし(一部)、大きめのアクアショップか。
 子供は東京タワー初体験。わたしも横山宏夫妻の結婚パーティ以来、10数年ぶり(?)なので、天気が悪くて何も見えないのを承知で一番上まで上がる。たまに来るとわりに楽しい。
 さらに、フットタウン3階の「スペースワックス」では、 「ヤッターマン THE 3D」を上映中(「タツノコプロ ヒストリカル コレクション」つき)だったので否応なく視聴。
 これ見る!と飛び込んだキリカは、画面からドロンボー一味のメカが飛び出してくるなり号泣。さすが立体メガネ初体験(たぶん)。ずっと泣きながら「ヤッターマンがんばれ!」と応援してました。タツノコプロのひとも本望でしょう。
「ヤッターマン THE 3D」というアトラクションはドロンジョが考えたインチキ公演で、例によって入場料だけ集めて本篇はやらずに逃げようとしていたところ、ドクロベエから、今日のドクロリングは客のだれかが持っていると言われて、客席に向かってメカや手をのばし、リングを改宗しようとしているところへヤッターマン登場??というメタシアター仕立ての愉快なシナリオ。びっくりどっきりメカが3Dメガネだったり、なかなかよくできてました。
 レストラン街でカレーを食べて、豪雨の中、タクシー帰宅。

 朝日新聞読書面、今日の瀬名さんの書評はジョー・ヒル『20世紀の幽霊たち』。異様にテンションが高く、これは効きそうだと思ったら、amzonではいきなり総合65位まで浮上。さらに、急遽増刷が決まった模様。霊験あらかたです。
 実際、たいへんいい短編集なのでぜひ。わたしも「ボビー・コンロイ、死者の国より帰る」は傑作だと思いました。「ゾンビ」撮影中のセットでハイスクール時代の同級生男女が(エキストラのゾンビメイクで)再会する話。ちなみに大森が日刊ゲンダイに書いた書評はこちら(北上次郎と交替で隔週土曜日掲載。昨年以降の分はゲンダイダイレクトで読めるはず)。

■2008年09月20日 島崎博@土曜サロン

 来日中の島崎博氏(元・幻影城編集発行人)が推理作家協会の土曜サロンに登場。 テーマは主に台湾におけるミステリ出版。ぶっちゃけた話とがんがんゴシップが混じる語りがたいへん面白い(「彼は浮気して奥さんに逃げられたから、会社を畳んだの」などなど)。以下、どうでもいいメモ。

・中国語翻訳は字数で数える。日本語で15万字の長編は中国語にすると12万字ぐらい。1冊訳して5万円から8万円ぐらい。それでも月に1冊訳せば大卒初任給ぐらいにはなるし、翻訳志望者が多数いるので競争は激しいらしい。
・部数は通常2000部。日本ミステリの版権料は12万程度だったのがどんどん高騰。30万、40万がざらになって利益を圧迫している。そのため2006年をピークに刊行点数が減り気味。それでも、欧米ミステリの翻訳点数とおなじぐらいの点数が訳されている。

 本題とは関係ないけど、『文学賞メッタ斬り!』(『ファウスト』掲載の島崎博インタビューに添えられた本棚写真に入ってた)のみならず、『ライトノベル☆めった斬り!』まで読んでいただいていると聞いて驚く。
「あの三村さんという人はずいぶんくわしいね。かつくら(活字倶楽部)の連載の書評もよく見てるけど」
「え、島崎さん、かつくらまで読んでるんですか!?」
「でも揃ってないよ。日本にいたら、あれは全部揃えたと思うけどね」

 今回の来日は忙しすぎてゆっくり書店に行く暇もなくてたいへんとか。本の雑誌の仕事で神保町に行ったぐらいらしい。

 二次会は失礼してSFファン交流会の打ち上げに回り、上京中の菅浩江さんに挨拶。ひとり離れた先にすわった小学生のお嬢さんが異様に場になじんでいるというか、場を仕切ってました。末恐ろしい……。

■2008年9月19日 乱歩賞とか

 ミステリチャンネル収録の前に日経エンターテインメントの取材を入れていたのをころっと忘れてて、旧知の松谷創一郎氏から、「今日の取材、ぼくがインタビューすることになってて、待ってるんですけど」と電話があって大慌て。40分遅れでKKRホテルのラウンジに到着し、伊坂幸太郎と東野圭吾(はなぜどんどん映像化されるのか)について30分で適当にしゃべる。

 イチオシ収録のあとはミステリチャンネル陣と雨の中タクシーに乗ってダッシュで帝国ホテル。
 戸川さんの紹介で会うことになった台湾の大学の人たちとラウンジで落ち合い、日本のSFについて取材されるついでに、台湾ではあんなに日本ミステリが訳されてるのになぜSFは全然訳されないのかについて逆取材。台湾のSFファンはみんなアメリカSFが好きらしい。

 6時になったので乱歩賞受賞式へ。宮部みゆきさんから、伊藤計劃『虐殺器官』がいかにすばらしかったかについての熱弁を聞かされる(しばらく前に会ったとき強く推薦したので、その反応)。
「日本SF大賞はどうしてとれなかったの?」 「あれでも受賞できなかった小松左京賞ってすごいのねえ」 などなど。
 いやまあそれにはいろいろと事情がありまして……。
 宮部さんも熱烈な小島秀夫ファンなので、もちろん『メタルギアソリッド ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』も読んだとのこと。
「『虐殺器官』を読んでるとメタルギア思い出すし、メタルギアやってると『虐殺器官』思い出すのよねえ。ノベライズ読んでたら、ゲームやらなくてもいいような気がしてくるくらい面白かった」などなど。
 次は宮部みゆき×伊藤計劃対談か。どこかの雑誌でぜひ企画していただきたい。

 きのう読み終えた『きのうの世界』の恩田さんともひさしぶりに会う。
「読みましたよ。すごかったですねえ。仰天しました」
「バカミスでしょ? どう、あの**トリック?」
「いや、ふつうあの手の**トリックって、**を**するために使うもんじゃないですか。恩田さんのはぜんぜん**と関係ないんだもん。**トリックじゃなくて、ただの**(笑)」
「そうかあ、それはぜんぜん思いつかなかったなあ。言われてみたらそうだよねえ。あれ使って**を**すればよかったんだ。なるほど!」
 って……(笑)。
 いや、全然関係ないところがいいんですけどね。バカミスのためのバカミス。純粋バカ。恩田陸史上最大のトリックが炸裂する。 驚愕の傑作です。
『女王国の城』からプリズナーNo.6つながりで本格ミステリ大賞はどうか。ぜひとも候補に推薦したい。いや、最近、推薦も投票もしてないけど。

 なりゆきで、8年ぶりに乱歩賞二次会に参加。
 1年ぶりに会う曽根圭介氏と、「鼻」のオチがわかる人、わからない人の話をしていたところ、曽根氏いわく、
「ジーン・ウルフの『ケルベロス第五の首』を読んで、やっぱり書きすぎたなあ、失敗したと思ったんですけど」
「いや、あれを参考にしちゃだめでしょう」
「プリーストの『双生児』を読んでも、やっぱりこのぐらいやらなきゃなあとか思って」
「あれは明らかにやりすぎです」
「プリーストは『奇術師』より『魔法』が好きなんです」
「見習うなら映画版の『プレステージ』ぐらいしたほうが……」
 どうやら曽根さんはみずから茨の道を選びたいタイプらしい。なお、第二短編集は10月末に角川から四六判で出る模様。

■2008年9月11日 文庫編集長座談会

 《野性時代》文庫特集用の文庫編集長座談会@角川書店の司会。新潮文庫と講談社文庫と集英社文庫を角川文庫が呼びつけたかたち。迎える角川文庫・郡司編集長は虎柄のアロハシャツ着用(笑)。
 1時間半で会議室を追い出されてしまったので佳境に入る前に終わった感じですが、ネタ的にはじゅうぶん。集英社文庫編集長・小山田女史の聞きしに勝る飛ばしっぷりがあまりにもすばらしかった。しかし、みなさんキャラが立ってます。
 終わったあとは飯田橋の沖縄料理・島で打ち上げ。今度は唐木さんが飛ばす飛ばす。愚痴芸。たいへん盛り上がったので続きは本の雑誌とかでどうですか。

【京フェス告知編】2008年9月13日〜9月18日

■書き忘れてましたが、ジョー・ヒルのブラム・ストーカー賞、世界幻想文学大賞受賞のデビュー短編集『20世紀の幽霊たち』(→amazon | bk1)が出ました。わたしも1本だけ訳してます(なぜ1本だけなのかについては諸事情あったんだけど略)。「ポップ・アート」。いじめられっ子の風船人間との友情を描く、涙なくしては読めない少年小説で、わりと傑作。
 ほかにも、ロメロが「ゾンビ」を撮影中のピッツバーグのショッピングモールで、トム・サビーニにゾンビメイクを施されたエキストラの男がハイスクール時代の恋人と再会する異色のラブストーリー(?)「ボビー・コンロイ、死者の国より帰る」とか、ベテランのホラー専門アンソロジストが未知の特異な才能を見出し、著者とコンタクトをとろうとするうち次第に怪異に呑み込まれてゆく「年間ホラー傑作選」とか、奇天烈な設定の秀作多数。乙一や三崎亜記、ケリー・リンクのファンにもお薦めです。どっちかというと、河出書房新社〈奇想コレクション〉とか早川書房〈プラチナ・ファンタジィ〉とかで出たほうが注目されたんじゃないかなあ。まあ、ホラー系、ミステリ系の読者にも評判がよさそうですが。クライブ・バーカー《血の本》に匹敵するぐらいのデビュー作だと思った。

■10月11日(土)の京都SFフェスティバル2008に参加します。昼間は、日下三蔵、小浜徹也(東京創元社)と、「年刊日本SF傑作選を編む」という企画に出演予定。

 諸般の事情でものすごく立ち上がりが遅れてるんですが、創元SF文庫で今年から大森望・日下三蔵編の年刊日本SF傑作選(題未定)がスタートします。筒井康隆『日本SFベスト集成』の創元版というか、ジュディス・メリル『年刊SF傑作選』の日本版というか、そういう位置づけ。ウォルハイム&カーの年刊傑作選に見立てると、日下三蔵がウォルハイムで大森がカー。推薦作の傾向から見ると、日下三蔵が筒井康隆でオレがメリルか(すごくえらそうです)。
 1巻目は2007年(雑誌は1月号〜12月号)のベストを集めた2008年版。すでにラインナップは決まってて、現在交渉中。いくらなんでも京フェス当日には発表できるはず。

 2009年版の編纂作業も引き続いてすぐに始まる(予定)ので、合宿では、自薦他薦を含め、皆様から2008年の日本SFベスト短編を推薦していただく部屋も開催予定。
 さらに合宿では、恒例になりつつあるライブ版SF翻訳講座とか、ファン交企画の「ぶっとび海外奇想短編に酔う」とかにも出る予定。ふるってご参加ください。

コニー・ウィリスの新刊、『マーブル・アーチの風』bk1で予約受付中。9/18追記:amazonでも予約始まりました。

【近刊予告編】2008年8月20日

コニー・ウィリスの短編集『マーブル・アーチの風』が早川書房プラチナ・ファンタジィから9月25日に四六判ハードカバーで刊行予定。予価2,000円(税別)。
 700頁の巨大短編集、The Winds of Marble Arch の翻訳ではなく、日本オリジナル編集の最新ベスト。シリアス系の表題作「マーブル・アーチの風」(150枚)と、チャネリング・コメディ「インサイダー疑惑」Inside Job(200枚)が本邦初訳。どっちもヒューゴー賞受賞作。このほか、既訳では、「白亜紀後期にて」と、クリスマス・ストーリー2編、「ニュースレター」「ひいらぎ飾ろう@クリスマス」を収録。

■そういえば、2008年のヒューゴー賞も決定。コニー・ウィリスのエイリアン・コメディ“All Seated on the Ground”がノヴェラ部門を受賞しました。ワールドコン開催地デンヴァーのご当地ものなんで鉄板だったとはいえ、あいかわらずヒューゴー賞には強い。
 ついでにノヴェレット部門では、テッド・チャン「商人と錬金術師の門」が受賞、ネビュラ賞と併せてダブルクラウンを達成。テッド・チャン、アメリカでも大人気ですよ!

■年明けに入稿したジョン・クロウリー『エンジン・サマー』改訳版は、2カ月前に初校ゲラが出て、現在、校正作業中。10月か11月には扶桑社ミステリーから文庫判で刊行の予定。読み返すたびに傑作だなあと思うんだけど、翻訳がなかなかそのレベルに追いつかない。今回、テキストファイルにもどって2年がかりで徹底的に手を入れたので、福武書店版よりはかなり精度が向上しているはず。既読の方も未読の方も乞うご期待。

■ltokyoはサポート終了後もなんとなく稼働中。

【たいへんよくできました編】2008年5月22日

『文学賞メッタ斬り! 2008年版 たいへんよくできました編』(→amazon | bk1 | 7&Y | 楽天)めでたく刊行。
「文学賞メッタ斬り!」シリーズ第4弾。今回の目玉は、押しも押されぬ、芥川賞作家・長嶋有氏、直木賞作家・石田衣良氏との爆笑座談会。また、恒例の受賞 作選評や、文学賞受賞作の寸評「文学賞の値うち」、第一三八回芥川・直木賞授賞式レポート、第3回「文学賞メッタ斬り!」大賞、今回より発足した「文学賞 メッタ斬り!」新人賞など、今回もてんこ盛りです。
文学賞メッタ斬り!特設ページに、序文・目次・内容の一部を掲載しました。
第一回文学賞メッタ斬り! 新人賞受賞者によるROUND5の注釈。

大森望・豊崎由美×市川真人(+前田塁) トークショウ「メッタ斬り!をメッタ斬り?」
2008年5月25日(日)15:00〜17:00(開場14:30)青山ブックセンター本店内・カルチャーサロン青山
定員120名/入場料:500円(税込)/電話予約の上、当日清算(03-5485-5511)


【ltokyo終了、イベント告知その他のお知らせ】2008年4月25日

■1995年から足かけ13年の長きにわたってお世話になってきたwww.ltokyo.comですが(www.sdw.com/ltokyo/時代含む)、いよいよ2008年6月でサポート停止となる模様。柳下も書いてるけど、桝山さん、長々とありがとうございました。リトル東京のオフ会とかやってたのももう12,3年前か。何もかもみな懐しい。

 というわけで、ミラーサイトだったhttp://www.asahi-net.or.jp/~KX3M-AB/のほうが本サイトに昇格する予定。この機会にブログに切り替えたりすべきなんだろうけどなあ……。ちなみにタカアキラくんち(http://sf.lovelove.jp/ohmori/index.html)にも部分的にファイルを置いてて、ここではtdiary使ったブログをちょっとだけ書いてたんですが(http://sf.lovelove.jp/ohmori/)、2年間放っておいたら、2年前の最新エントリに3348件のコメントSPAMがついてます(笑)。どうするかなあ。mixiで全体公開日記を書くと自動的にどこかのブログにコピペされるというのが一番便利な気が。


■『読むのが怖い! 帰ってきた書評漫才〜激闘編』刊行記念トークイベント:北上次郎×大森望

PART1: 5/5 19:00〜20:00「北上次郎と大森望の24時間 書評家の仕事」
第6回一箱古本市week in 不忍ブックストリート参加企画
会場:やなか珈琲店千駄木店2階(東京メトロ千代田線千駄木駅、団子坂口を出て目の前の不忍通りを右手に徒歩30秒)。
参加予約:件名を「読むのが怖い!トーク」と明記の上、往来堂書店まで(maido@ohraido.com またはファックス03-5685-0807)。

PART2: 5/9 18:30〜 三省堂神保町本店8Fにて 掲題書購入者先着100名に整理券を配布。電話予約可(03-3233-3312)
こっちでは、「読むのが怖い!」ライブ版を開催予定。要するに、ふだんロッキング・オン本社でやってる書評対談を三省堂でやります。テキストは、北上選が菅野雪虫「天山の巫女ソニン」全3巻(講談社)、大森選が立川談春『赤めだか』(扶桑社)、編集部選は現在調整中(上野千鶴子『おひとりさまの老後』が第一候補らしい)。



【新刊告知】2008年4月10日

『読むのが怖い!』の2冊目、『読むのが怖い! 帰ってきた書評漫才〜激闘編』が出ました。お値段はちょびっと上がって1,785円。単行本用のボーナストラックとして、オールタイムベスト3対決がついてます。はたして北上次郎は『百年の孤独』をどう読んだのか!? 気になる人はいますぐクリック→amazon | bk1 | 楽天

 発売記念トークショーも開催予定。5/5に不忍ブックストリート、5/9に三省堂神保町本店にて。詳細は後日。

 『文学賞メッタ斬り! 2008年版 たいへんよくできました編』は5月10日ごろ発売予定。
 http://www.ltokyo.com/が落ちてますが、当面、http://www.asahi-net.or.jp/~KX3M-AB/のほうで更新・運用します。


【急告】2008年3月19日

 アーサー・C・クラーク死去。大往生の部類でしょうが、謹んでご冥福をお祈りします。
 追悼企画として、9年前、スリランカのご自宅でインタビューしたときの原稿をhtml化しました。→acc.html。ついでにクラーク写真館の リンク切れを修整。取材裏話は、日記のこのへん、「アユボワン、サー・アーサー」で読めます。

●『蒸気駆動の少年』刊行記念企画として、『スラデック言語遊戯短編集』解説をhtml化して再録しました。

【もろもろ告知】2008年2月19日

●あけましておめでとうございます。と言いつつはや2月。さらに3カ月のご無沙汰でした。うーん、やっぱりブログとかに移行しなきゃダメなのか。mixiでは全体公開のエントリもたまに書いてるんだけど。

ちくま文庫版『文学賞メッタ斬り!』絶賛発売中。ぎっしり詰まって税込777円とおめでたくお徳用。本文は変わってませんが、文学賞マップを更新、脚注が若干アップデートされ、あとがき対談がつきました。単行本巻末の「文学賞の値うち」は諸般の事情(主にページ数の都合)で割愛されてますが、お手元にぜひ一冊。

●1月は文庫の解説が4本と短編の翻訳が3本あって元日から仕事漬け。解説を書いた文庫はすべて2月刊で、東直己『ライダー定食』(光文社文庫)、蘇部健一『届かぬ想い』(講談社文庫)、冲方丁『ばいばい、アース4』(角川文庫)、野阿梓『兇天使』(ハヤカワ文庫JA)。翻訳は、3本のうち2本が、実は私の担当分ではなかったことがのちに判明(送られてきたテキストが間違っていた)。***枚分の入力作業がまったく無駄になってしまったわけですが、それを口実に最終作業量を減らしたので結果オーライか(当然、ボツ原稿料は支給される見込み)。

●紀伊国屋ホール『文学賞メッタ斬り!』トークショー当日にパソコン入りのバッグを電車に置き忘れて大変だった話はSFマガジンの連載に書きました。ブログ?

●そして今週末(2/24(日)17:00〜)は、立川のオリオン書房ノルテ店にて、河出書房新社より2/18発売の奇想コレクション『蒸気駆動の少年』(ジョン・スラデック著/柳下毅一郎編訳)発売記念トークイベント。メンツは柳下毅一郎、大森望に、京都から法月綸太郎が駆けつけるという異種格闘技マッチ。まだ若干の残席があるようなので日曜日ヒマな方は是非。

●『読むのが怖い!2』(仮)と、『文学賞メッタ斬り! 2008年版 たいへんよくできました編』(仮)の編集作業は鋭意進行中。陽春刊行予定。

●2008年の年頭に出た本のお薦めは、貴志祐介『新世界より』上と、円城塔『Boy's Surface』『オブ・ザ・ベースボール』と、筒井康隆『ダンシング・ヴァニティ』。貴志祐介氏にはミステリチャンネルとSFマガジンでインタビューしました。



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