【6月19日(土)】


 全然仕事が終わらない。はたして明後日からスリランカに行けるのか? って行くんだけど、セイロン・インターコンチネンタルで原稿書くのはちょっといや。締切過ぎてるやつだけでも終わらせないとなあ。

 この一週間、ずっと難航している『南海奇皇』第二シーズンLDのライナー原稿のために、もう一度37話以降のシナリオを読み返す。アニメのシナリオって慣れてないから、一回読んだだけじゃイメージがはっきり浮かばないのである。いや、最後は燃える展開なんですが。
 もっと難航しているのが、《青春と読書》の「ここ三年の国産ホラー概観」原稿。試行錯誤のあげく、いちばんありがちな切り口に落ち着いてしまう。多少変わったタイトル(あんまりホラーと見なされてないけど、アレがホラーならコレだってホラーだろう、みたいな)をいくつか潜り込ませるのがせいいっぱい。正直に書くとすぐ終わっちゃうんだけどさ。「この三年に、ホラー長編は十冊しかない。残りの7割はSFで3割はサスペンス」とか(笑)。

 悩むのをやめてひたすらキーボードをたたきつづけ、なんとか目処が立ってきたので、クラーク関連の本をさがしついでにユタへ。クラーク話いろいろ。




【6月20日(日)】


 ネオランガ、青春と読書、週刊ポストのSW評、毎日中学生新聞のコラムを書き、F.F.N.の京極夏彦・田村由美対談の原稿整理作業に着手。京極さんががんがんしゃべってて面白いんだけど、十分の一しか入りません。でも『ルー・ガルー』の中心テーマが発表されてるのでファン必読でしょう>次号アニメージュ。
 さすがに書評のほうまでは手が回らず、帰国後に決定。というか、「スリランカは暑い」という書き出しだけはあるんだけど(笑)。クラーク→2001→HAL→で黒崎政男『となりのアンドロイド』につなぐ作戦。毎日中学生新聞は『2001年』で書いたし、じつに短絡的な性格である。

 斉藤和之がボーカルやってるバンドのライブで上京してて、メンバー連れて遊びにきたので、一時間だけカラオケをつきあい、深田恭子の「最後の果実」の歌詞を確認する。
 これってサビのところが、何度聞いても「ダイエット・パ〜ラダイス、ダイエットしないのは〜」としか聞こえなくて、いくら最近ずいぶんふっくらしてきたとは言ってもデビュー曲でダイエットの歌なんか歌わないよなふつう。と頭を悩ましてたんですが、歌詞を見ると「快楽のパ〜ラダイス」だったことが判明。しかしそれがわかってもそう聞こえないぞ(笑)。
 さらに、DOUBLEのお姉ちゃんのほうがしばらく前にくも膜下出血で急死していたという事実をさいとう姉弟からいまごろ知らされて衝撃を受ける。つまりオレがはじめて聞いたときにはもう死んでたのね。合掌。
 途中で抜け出し、家に帰って荷造り。クラークにわたすお土産だけで相当な量。ちなみにうちからのプレゼントはチェキ。その場で写真とって、ポラにサインを入れてもらう作戦だが……。あと、なぜかさいとうよしこからのプレゼントがカールヘルムのシャツ。オレのと色違いのおそろいらしい。クラークとペアルック作戦なのか。謎。しかしそれはあぶないと思うが。




【6月21日(月)】


 原稿のフィニッシュ作業をやってたら朝になり、10時に家を出て徹夜のまま11:30成田。13:20発のエアランカなんで、あとちょうど2時間だな……と思いきや。出発時刻がなんと18:45に変更。いきなり5時間遅れですか。はやく寝たいのに。
 茫然とするが飛行機が出ないんだからしょうがない。なんか、近くのセントラーザホテルで費用エアランカ持ちの昼食が出るっていうんだけど、第二ターミナルに来たのは初めてなのでそれを断り、1500円のJALお食事券をもらって(笑)、和食レストランで松花堂弁当。
 電池とか取材用テープとか必要品を調達し、さあどうしようかと思ってると、同行するカメラマンの甲斐氏から電話。セントラーザに部屋を用意してもらってくつろいでいるらしい。それならセントラーザで昼寝するしか。エアランカのカウンター(というか、JALが代行してるのでJALのカウンター)に行って、セントラーザの連れと合流したいと交渉。費用エアランカ持ちのタクシーに20分揺られて、成田駅そばのビジネスホテルに入り、2時間仮眠。5時にカメラマンと合流、バスでふたたび成田空港にもどる。

 ……とまあ、すったもんだのあげくUL455便(トライスター)に搭乗。セントラーザでいっしょだった客室乗務員のみなさんは、クララ嬢の報告通り、女子プロレスの巡業かと見まがう立派な体躯の持ち主がそろってたんですが(3人並ぶだけですごい迫力)、エコノミークラス担当はふつうサイズより細めの人ばかりでした。ちょっと残念(笑)
 しかし、特筆すべきは、このご時世に喫煙席が用意されていること。えらいぞ、エアランカ。しかもオフシーズンなので、うしろのほうはガラガラ。速攻で無人の四人席にチェンジしてもらってのびのび。
 機内食はチキンカリー&オクラカリーをチョイス。ノースウェストやユナイテッドなんかよりよっぽどうまいじゃん。やたらエアコン効いてるのが唯一の難点だけど、なにしろ毛布が四人分あるのでへっちゃらさ。
 というわけで毛布にくるまって『3001年』を読み、さらに『オリンポスの雪』を読む。『楽園の日々』を持ってくるのを忘れたことに気がついたが、まあいいや。




【6月22日(火)】


 午前1時、バンダラナイケ国際空港着。コロンボまではさらに30キロ。成田のような空港である。しかし、深夜着の便が多いだけあって24時間体制。銀行の窓口もやってたので、カメラマンとふたり分ってことで仮払いされている経費が5万円なので、まとめてぜんぶスリランカルピーに両替(←失敗だったことがのちに判明)

 インターコンチネンタルホテルのタクシーで40分かけてホテルに到着。五つ星ってことでしたが、フロントの応対とか全然ダメな感じ。室料も朝食代も前払いしてるのに、「朝食はついてません」とか「もっといい部屋があるがどうか」とか。もっとも一泊US65ドルなのでぜいたくは言えない。最高級のヒルトンだと値段が倍なのである。しかし同じランクだったらゴール・フェイスとか、コロニアルな古いホテルに泊まりたかったかも。

 部屋は広くて設備はまずまず。熱い湯が出ないけどまあ風邪をひくほどぬるいわけでもない。しかし空調は効きすぎ。めちゃめちゃ熱いのを覚悟してたけど、夜中の気温・湿度は、夏の東京よりずっと過ごしやすく、海が真ん前のせいか、窓を開けても涼しい。

 とりあえず風呂に入って、クラーク本を読みつつ午前4時ごろ就寝。

 起きたらお昼。機材の動作確認をしつつティールームでお茶を飲み、カメラマンと落ち合って出発。ホテルのタクシーに乗って住所を告げ、10分。
「ええと、番地はどこ? ああ、このあたりはアーサー・C・クラークの家じゃない? なんだ、最初からクラークの家と言ってくれればまっすぐ連れてきたのに」
 ということで、クラーク邸に乗りつける。クラーク通の運転手が話をして、使用人にリモコンでゲートを開けてもらう。
 屋敷に入り、二階に通される。手前が事務室で、PCが三台。秘書らしき男性二人が仕事中。さらにその奥がクラークの書斎。大型TVと応接セット。つきあたりにライティングデスク。デスクの上にはCOMPAQのタワー型と17インチモニタ、さらにCOMPAQのノートがもう一台。
 休んでいるというクラークを待つ間に、カメラと録音機材のセッティング。高まる緊張。サー・クラークはいつ現れるのか。

 このつづきは次号で。じゃなくて、エスクァイア日本版の宇宙特集号で。

 ……と、それだけですますのも申し訳ないので印象をいくつか。脚の具合が悪くて、支えがないと立って歩けないのをべつにすれば、クラーク御大は非常に元気。インタビューの最中も、ひっきりなしに内線で電話をかけて「ファックスはどうなってる?」「なにかメッセージは?」と確認し、その合間には自分でEメールのチェック。おみやげのラジカセをわたすと目を輝かせて箱を開け、中身をとりだし、電池を入れて動かしはじめるし。
 さすがに記憶力はかなり衰えて、最近の人の固有名詞はなかなか出てこない。
 人工知能の話をしてて、
「マーヴィン・ミンスキーも言っているが――そう、ミンスキーはここに来たことがあるんだよ」
「え? そうなんですか、それは知りませんでした」
「そうなんだ。あ、いや、違う。うちに来たのはネグロポンテだ」
 とか、
「グレッグ・ベアは非常にいいものを書くね。《知性化戦争》のシリーズとか……」
「恐れ入りますが、それはグレッグ・ベアでは、サー」
「おお。最近の若い作家はたくさんいるから区別がつかん」
 などなど。

 もうじゅうぶん偉いんだから、いちいち自慢しなくてもと思うんだけど、「彼はここに来たことがある」とか、「わたしが彼に会ったときは……」とかでいちいち話が脱線する。いや、それがまた面白いんですが、なんか子供みたいでほほえましい。
 甲斐さんのカメラはハッセルブラッドなんですが、
「ハッセルブラッドか。ヴィクター・ハッセルブラッドはここに来たことがあるんだよ。彼は『2001年』にも協力していてね。そうそう、彼のカメラは宇宙を旅行した最初のカメラだ」などなど。

 WIREDだかのインタビューで、ダライラマから「九十億の神の御名」を読んだと手紙が来たって話が出てきて、いったいどういう感想だったのか気になってしょうがなかったのでたずねてみると、クラーク御大、そくざに内線をかけて、「ダライラマからの手紙のコピーを持ってきたまえ」。
 というわけで実物を拝見することができました。中身は、クラークから二冊の本を送ってもらったことへの短い礼状。
「先だってはご著書をご恵送いただきありがとうございました」みたいな事務的な内容なんだけど、一行だけ、「その中では、とりわけ、『九十億の神の御名』を面白く読みました」
 っていうのが効いてますね。ほんとに読んでないと書けない一行(笑)。洒落がわかるというべきか。

 その話をしている最中に電話がかかってきて、楽しそうに話をはじめるクラーク。目の前のダライラマの手紙を朗読している。なんだろうと思ったら、
「ロイ・ウォード・ベイカーだよ。ほら、A Night to Remember(『SOSタイタニック/忘れえぬ夜』)の監督の。彼はダライラマの個人的な知り合いでね。いやあ、すごい偶然だな。ダライラマの話をしていたらその友人から電話がかかってくるなんて。ロイはもう90歳近いはずなのに、とにかく元気でね」
 ちなみにロイ・ウォード・ベイカーは1916年生まれ。クラークよりひとつ年上ですね。恐るべき老人コミュニケーション。クォーターマス・シリーズとか撮ってる関係で知り合ったのか。しかしそんなことをたずねてるとますます脱線するので、必死に話題をもとにもどしたり。

 ところで、クラークの大邸宅に住む家族は、養子のヘクター・エカナイケ(通称レスリー)、そのイギリス人の奥さんのヴァレリー、それにエカナイケ家の娘が二人(長女のシェリーンはシドニーの大学に通ってて不在)。クラーク自身はadopted familyと言ってますが、本人もスリランカのadopted sonなので。
 インタビューの途中で、エカナイケ家の末娘、メリンダちゃん(九歳)がやってきてTVのナショナルジオグラフィックを見はじめる。
 クラークおじいちゃんが、「日本のお客さんだよ。ほら、このカメラをくれたんだ」とチェキで撮影した写真を見せると、
「Wao! Cool!」と喜ぶあたり、さすがは9歳。ついでだからと、おじいちゃんが休憩してる隙にインタビュー。「サー・クラークをどう思う?」
 メリンダちゃん、クラークのほうをちらちら見ながら、
「Well...He's kinda cool」だって。

 ヴァレリー夫人の血を引いてか、メリンダちゃんもなかなかの美少女。写真見たときは男の子かと思ったのはひみつだ。

 フォトセッションは甲斐さんが奮闘し、邸内のあちこちで長時間にわたる撮影。本来は一時間という約束だったので、
「きみたち、一時間でどうやってすませるつもりだったのかね」とか言われる始末。しかし、お土産攻勢の甲斐あってか、いやな顔も見せず、けっきょく4時間近くもクラーク邸にお邪魔したのでした。ま、インタビュー自体は正味1時間くらいだったけど。

 けっきょく4時間待ってくれたタクシーでホテルにもどり、バーで一服。クラーク通の運転手が、スリランカ料理のうまい店に連れていってくれると言うので、8時ごろ出発する。途中、巨大スーパーマーケットに寄ってもらって、インスタント食品各種とあやしいスナック菓子類、それにアラック一本を購入。
 レストランでは運転手に注文を一任。おまかせで出てきたのは、スープが二種(チキンとラサム)、カリーが四種(野菜、茄子、チキン、カニ)、あとはニンジンのデザート。とても食いきれない量でした。カリーはさすがにうまかったな。

 タクシー運転手の人はたいへんなクラーク通と判明。今までに15回ぐらいクラーク邸に行ってるそうで、そのたびに使用人からゴシップを仕入れているらしい。去年のスキャンダル騒ぎのネタを振ったら、「It's SECRET」と言いつつ、ホモセクシュアル疑惑にまつわる内部情報を微に入り細に渡って教えてくれたのだが、約束なのでひみつだ。でも、スリランカ人の9割はクラークがあの豪邸にひとりで暮らしていると思ってるとか。

 食後は何軒かディスコを回るも、平日のせいか閑散とした状態。けっきょく、カジノのBally's Barに見学に行く。チャイニーズ系の若い客が多く、ポーカー、ブラックジャック、ルーレットが主流。とりあえず2000ルピーをチップに換えて、ルーレットに参加。チップ20枚なんで、100円玉賭けてるぐらいの感じ。最初に空港で両替したルピーが大量に残ってるので消費して帰るつもりだったのに、5000ルピーに増えてしまいました。今日使ったルピーがぜんぶ戻ってきちゃったじゃないか。




【6月23日(水)】


 起きたら11時。ざっと荷造りしてから散歩に出る。さすがに歩いてると死にそうに暑い。ホテルのすぐ前が海なので、ビーチに降りてインド洋の水にちょっとだけ足を浸す――つもりが、いきなり大波がやってきて下半身ずぶ濡れ。
 がばがばのジーンズでさらに歩いてると気が遠くなってきたので、輪タク(Three-wheelerとか言うらしい)つかまえてホテルにもどり、チェックアウトをすませてからホテルのプールで体を冷やす。水着忘れたのでトランクス一丁で泳いでたのはひみつだ。着替えがないので、そのあとパンツをはかずにジーンズをはいて歩いてたのはもっとひみつ。

 ホテルから輪タクに乗り、近くの映画館、Regalへ。着いてみると上映までまだ30分あることが判明し、劇場前にたむろしていた輪タクの一台に乗って、市場(?)へ着替えを買いにいく。ついでに輪タクの運ちゃんなじみの思いきり小汚いお茶屋さんで謎の紅茶を500グラム購入。ダストってやつかな。

 30分後、映画館にもどり、謎のシンハラ語映画を見る。不倫ネタの成人映画なんですが、露出度はほぼゼロ。ベッドシーンが三回あるけど背中しか映らないという。まあ仏教の国ですから。
 劇場はすごく立派で、場内はほぼ満席。日本の成人映画とちがって、女性同士やカップルの客がかなり多い。入場料は二階席が75rs、一階席が100rs。200円しないぐらいですね。
 スリランカにはタミル語映画の上映館もあって、インドミュージカルは大人気。ラジニカーントはここでもスターだとか。シンハラ語のミュージカルもけっこうつくられてるんだそうで、ビデオが欲しかったんだけど、売ってる店が見つからず。ビデオデッキの普及率は低いのか。ま、どうせPAL方式なんだろうけど。

 映画のあとは輪タクで街をめぐり、食事と買い物。大衆食堂みたいなところで食べたチキンブリヤーニはあまりにもワイルドでした。ホッパーとロティは絶品。

 あちこちまわって買い物してからホテルにもどり、ふたたび荷造りしてから、ティーラウンジでサンドイッチをつまむ。ナンにタンドリチキンソーセージをはさんだやつ。
 紅茶飲みながら地元の英字紙The Islandを読んでたら、爆笑の記事を発見。スリではつい先週まで、クリケットのワールドカップが開かれてたいへんだったそうなんですが、
「バーでもレストランでも、寄るとさわるとクリケット、テレビでも四六時中、試合の中継ばかりが流れるこのクリケット騒ぎにいいかげんうんざりしていた読者諸氏も、ようやくほっと息をついていることと思う……」とか。
 一時はけっこう強かったスリランカも、今回は早々と負けちゃって、決勝の対戦はオーストラリア×パキスタン。スリの人はみんなパキスタンを応援したんだそうで、クリケットの世界でも、白人の国vs非白人の国(旧植民地)の代理戦争になってるらしい。
 ほかの面には、イングランドの代表監督の戦略分析が載ってたりして、種目は違ってもやってることはおなじですね。
 じっさい、クリケット人気は圧倒的らしく、街のグラウンドでは、どこもかしこも少年たちが草クリケットに興じている。
 そう言えば、クラーク家の使用人のひとりが、
「おれ、こう見えても昔はサッカーのスリランカ代表チームのゴールキーパーだったんだよ」というので、
「最近スリランカのサッカーはどうなの?」とたずねてみたら、
「さっぱりだね。みんなクリケットに流れちゃって、サッカーなんかだれもやってない」
 と言ってましたが、そのとおりらしい。

 8時にタクシーに乗り、9時空港着。時間が激しくあまったので、ひたすら紅茶を買う。ていうか、ほかに買うものがないなり。




【6月24日(木)】


 午前零時前にスリランカを出発。最後部の席だったんですが、飛び立つまではトイレのアンモニア臭がひどくて参りました。おまけに読書灯のスイッチが効かず、消灯できない。客室乗務員のお姉ちゃんに相談すると、
「すいませんねえ。なにしろ25年前から飛んでる機体なんで。再来月新しい機体が就航するから、そしたらよくなるんだけど。ええと、とりあえず電灯にはこれをかぶせて……」
 とアルミホイルを丸めたやつをとりだして、読書灯の枠にセットする。をを、光はみごとに遮断されたなり。
「でも、また点灯したいときは……」
「となりの席が空いてるから、そっちのライトを使ってね」
「あの、そっちのライトもスイッチが壊れててつかないんですけど……」
「あら……」
「あ、でも手動でアルミホイルはがすのでだいじょうぶっす」
 みたいな。

 あいてる隣席にスリランカ人のおねいちゃんがやってきて、「ここで煙草吸わせてもらっていい?」と言うので、「どうぞどうぞ」と荷物をかたづけ、話を聞く。
「日本へ旅行?」
「ううん、成田でデルタに乗り換えてアトランタまで行くの」
「そりゃ長旅だねえ」
「向こうでフィアンセが待ってるんだ。飛行機に乗るのは今日がはじめて。離陸のときは緊張したけどもう大丈夫」
「今日、CDとかカセットとか買ったんだけど、スリランカの歌手ってだれが人気あるの?」
「シンハリの歌? うーん、英語の歌しか聴かないからわかんない」
「若い子はやっぱりそうなんだ。英語だとどんなシンガーが好き?」
「セリーヌ・ディオン!」
(わ、わかりやすすぎ……)「『タイタニック』はスリでもすごい人気なんだってね。あ、だったら日本人のバイオリニスト知ってるでしょ、葉加瀬太郎」
「名前は知らないけどテレビで見た。彼のバイオリンはgood」
「日本の音楽はスリでは人気ないの?」
「全然」
「でもテレビは人気なんでしょ。『おしん』とか」
「そう! あたし『おしん』大好き! 最初からぜんぶ見たわ! すごくかわいそうで、もう最高」
「ふうん。日本じゃ、若い子には人気ないんだけどな」
「かもね。でもスリランカでは若い子もみんな見てるよ」
「スポーツはクリケットが人気なんでしょ。二番めは?」
「クリケットの次はラグビー」
「やっぱり英国の伝統が強いんだ。スリの人はイギリスが好きなの?」
「ううん」思いきり顔をしかめて、「イギリスなんか大嫌い」
「だったらどうしてクリケットとかやるわけ?」
「だってスポーツとして面白いんだもん」
 ……ううむ、そうだろうか。

 成田到着はお昼前。空港でPHSからインターネットにつないで、メールと伝言板をチェック。留守中もあいかわらず発言数が多いことである。締切をすっかり忘れていたアサヒグラフからは悲鳴のような催促が。とりあえず電話して、明日のお昼までなら間に合うことを確認してひと息。
 リムジンとタクシーを乗り継いで帰宅。とりあえず飯を食い、荷物をざっとほどいてから、明日の牧野修インタビューに備えて、廣済堂文庫で来月出る予定の『リアルヘヴンへようこそ』のゲラを読みながら寝る。

 ……と、ここでクラークファンのために、秘蔵写真(の一部)を大公開。独立したクラーク写真館としては、http://www.ltokyo.com/ohmori/accphoto.htmlを用意しておきますが、その中身をそのままここに貼り込んでおくので、見たい人は適当にクリックしてね。

●ACC写真館

クラークとヘクター・エカナイケさん(左)
クラークを撮影するカメラマン・甲斐氏
愛犬ペプシを抱くクラーク
クラークその1(書斎にて)
クラークその2(撮影用の服に着替えて電話中)
クラークその3(中庭にて。鉄棒は歩行運動用のバー)
クラークその4(食堂で新聞を読む)
クラークその5(歩行訓練中)
クラークの本棚
クラーク邸のダイニングルーム
クラーク邸中庭から見た食堂
クラーク邸外観。ガードはがっちり
クラーク邸の表札(レスリーはヘクターのニックネーム)
クラーク邸の中庭
クラーク邸の屋上。まるいのは天体観測室
オフィスの壁面
クラークと大森
クラークと大森その2

●コロンボ風景

路上の象
これがインド洋だ
カメラマンの甲斐氏@セイロン・インターコンチネンタル
コロンボにはカラスが多い。(ホテルのプールにて)
コロンボの真ん中にある湖
これがスリランカ料理だ。
街角の風景
眺めのいい部屋




【6月25日(金)】


 早朝に起きて、アサヒグラフの「スター・ウォーズ」特集用の原稿を書き、メールで入稿。『リアルヘヴン』のゲラを読み終えて(これは傑作。スカトロ大爆発で最高っす)、昼から早川書房。スリランカ土産を配り、3時からクリスティで牧野修インタビュー。
『偏執の芳香』『リアルヘヴン』とホラー大賞長編賞佳作の『スイート・リトル・ベイビー』が中心。『偏執の芳香』と『リアルヘヴン』はやっぱり姉妹篇らしい。『偏執』がややSF寄り、『リアル』がややホラー寄りですか。

 大阪に帰る牧野さんと神田で別れ、新橋の第一ホテル東京で推理作家協会賞授賞パーティ。
「クラークはどうだった?」とたずねる人には、健康状態に関心を示す人と、ホモ疑惑に関心を示す人の二種類がいる(笑)。
 とりあえず、チェキで撮影したクラークとのツーショット写真サイン入りと、無理やりわけてもらったクラーク切手を自慢。
 あいかわらず伝言板関連の話題を振ってくる人も多い。しかし今日つなごうとしたら、K&Tのデータがきれいに吹っ飛んでるんでした、ちゃんちゃん。うちの伝言板でははじめての事故ですが、前に喜多さんとこで起きたのと同じ症状かな。まあしかし、これでしばらく書かなくてすむのでしめしめな感じ。
 なんかあめぞう漫画の「あいかわらず」ツリーも消えちゃってるんだそうで、これはどうしたんでしょうね。ま、こだまのあとだまは生きてるからいいんだけど。

 とかそういう話をしているうちに一次会終了。あ、茶木則雄×法月綸太郎会談とかも持たれていた模様。茶木さんは関係修復工作に余念がないらしい。

 二次会は、近くのPRONTで開かれる森英俊氏のパーティへ。大量の現役を含め、ワセミスの山。ほとんど身動きもままらなず、高瀬美恵嬢、白須清美嬢などと雑談。柴尾氏はハワイ(推定)でエピソード1Tシャツを20枚も買い込んできて、毎日とっかえひっかえしているらしい。しかしダース・シディアスのTシャツはふつう着ないと思うぞ。
 ちなみに今日の大森のトップは、Buffalo Exchangeで買ったコムデギャルソンのシャツでした(笑)

 森さんの会は、笠井潔、山口雅也、芦辺拓、霞流一、二階堂黎人、北村薫、折原一、小森健太朗、法月綸太郎、高瀬&白須……と来賓スピーチがえんえんつづく構成。学生時代、前夜から作戦会議を開いてはデパートの古本市に乗り込むエピソードを暴露した霞流一氏の挨拶が爆笑でした。それと反対に凍りつくような恐怖を味わったのは以下略。

 最後の森さんのスピーチが終わったところでPRONTOを抜け出し、コリドー街のHUBでやってる東野圭吾さんの二次会に合流。C塚組に加わり、日航ホテル裏のコージーコーナーに流れ、最終的にほぼいつものメンバーでボックスに入り、歌わないまま朝まで歓談。
 DAM128の機械が入ってたので、往年の特撮&アニメ映像がいかに編集されているかを楽しむ会を一部有志で開催したり。いやあ、レインボー戦隊ロビンとかいいっすよ。ものによっては東映のLDより楽しいかも。

 午前6時、タクシーで帰宅し、死んだように寝る。なんか風邪引いたかも。まずい。

PS ということで伝言板が落ちてますが、代替掲示板として、大盛なんでも伝言板'99 と、大贋なんでも伝言板が立ち上がってます。大森伝言板に書きたいのに書けないっ! って方はご利用ください。ただし論争系の話題はK&T復旧までお待ちください。

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