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大ヨドメの滝、チチタケ、ナメコ、山野草、石滝、ノロの沢
 4日目・・・心配された昨夜の雨もやみ、流れの濁りも消えた。水量はやや多いものの、予定通り赤石川本流を下ることにする。テン場を綺麗に片付け、2日間お世話になったC2で記念撮影。それにしても、超有名なはずの世界遺産・白神山地の源流で3日間、誰とも会わないのは腑に落ちない。これは、もしかして赤石川源流の指定ルートが行き止まりルートになっていたり、大川源流の山越えが険悪なためだろうか。
 流れる雲は早く、時折、雲間から太陽が顔を覗かせる。沢下りには、願ってもないチャンスだった。ほどなく大ヨドメの滝上部に達する。写真のすぐ下流に5mほどの滝があり、その下が大ヨドメの滝だ。この滝を巻くには、右岸の尾根筋に巻き道がある。一部泥壁の急斜面があるので、安全のため、渓流足袋にピンソールを着けて高巻く。
 大ヨドメの滝(落差約20m)で記念撮影。いつもより水量は多く、迫力満点だった。かつて砂子瀬の工藤兄弟3人のマタギが、この滝壺で釣った十数尾の尺岩魚を竹カゴに入れ、滝の左をロープで吊り上げて滝上に放流した。なお余談だが、昔のマタギは、右岸ではなく、左岸の尾根を大きく高巻いていたらしい。
 赤石川源流の水を集めて一気に落下する大ヨドメの滝アップ。飛び散る飛沫と瀑風は物凄く、時折射し込む光にキラキラ輝いた。この滝周りは、赤石川でマイナスイオン値が最も高い場所に違いない。
 夏の赤石川をゆく・・・大ヨドメの滝を過ぎると、しばらく開けた河原が続く。ぬけるような青空と流れる雲、夏の陽射しを全身に浴びて下る。重い荷を背負い、ただやみくもに歩くのではなく、走る岩魚を観察したり、森の中に入り、山野草、きのこを探してはデジカメで撮影したりと、とにかく道草しながらスローに歩く。そうすれば、意外な場面にも遭遇する。
 流れる水面が夏の光にキラキラと宝石のごとく輝き、目に眩しい。時折、瀬尻から黒い陰が電光石火のごとく走った。
 タニガワコンギク・・・川岸の岩の間にたくさん群生していた。
 シシウド・・・まるで白い線香花火のようにも見える。大型で、沢筋や雪崩斜面など、至る所に生え、群生の規模も大きくやたら目についた。
 オオバキボウシ・・・普通は、もっと葉が大きいはずだが、異様に小さい。それだけに、可愛らしく、一際目を引いた。植物の世界も、一つ一つに個性があり、実に多様性に富んでいる。
 赤石川中流部・・・川はあくまで穏やか。右に左に蛇行し、そのカーブ地点は決まって深い淵を形成している。ちょっと淵を覗けば、岩魚が猛スピードで上流へ駆けて行く。岩魚は、人間と違って、絵になる連続滝やゴルジュ、ナメ床が連続する渓を好む魚ではない。
 沢には、赤トンボ(アキアカネ)が群れをなして飛んでいた。夏の初めに羽化した赤トンボは、夏の暑さに弱い。羽化するとすぐ、涼しい源流へ飛び夏を過ごす。岩魚にとっては、夏の貴重な餌でもある。涼風が吹く秋になると、体が真っ赤になり、何千匹もの大きな集団となって平地の水田に戻ってくる。
 リョウブ・・・落葉小高木。枝先に総状花序を出し、小さな白花を多数つける。  ヒメノガリヤス・・・渓流の岩場に多い。
 チチタケ・・・夏のキノコで、特に杣道沿いにやたら群生していた。地元では、ぼそぼそしているキノコと不評で、採る人はほとんどいない。栃木県では人気が高く、マツタケ並みの高級品として扱われているというから驚きだ。白神の山を歩いている限り、採った痕跡は皆無で、採ろうと思えば、すぐにカゴ一杯採れたはず。それぐらい、至る所に生えていた。スライスして、ニンニク、ミズと一緒に油で炒めると意外に美味しいらしい。
 ハナホウキタケ・・・暗い森に一際目立つ珊瑚状の毒キノコ。こんな美しい毒キノコもあるんだと感心してしまった。山中では、名前の知らないキノコがあちこちに生えていた。白神は、キノコマニアにとって、桃源郷のような場所に違いない。
 渓流脇の止水域に岩魚が5〜6匹泳いでいた。河原に荷を下ろし、しばし岩魚ウォッチングを楽しむ。写真は、水がやや濁り不鮮明だが、岩魚がどれかはお分かりいただけるだろう。
 早速水中撮影を試みる柴ちゃん。淀んだ水は透明度が悪く、しかも岩魚との距離が遠いため、いい作品は撮れなかった。やっぱ、水中撮影は難しい・・・と思いながら対岸の倒木を見ると、何やら食べられそうなキノコが目に止まった。
 夏ナメコ・・・ナメコと言えば10月という固定観念ができつつあったが・・・道草しながらスローに歩けば、こんな思わぬ場面に遭遇する。思えば、小学校時代の道草も刺激と感動に溢れていたように思う。

 輪廻転生・・・ブナは、250年から300年ほど生きると、寿命が尽き、風や雪で倒れる。倒木にはナメコやムキタケ、ブナハリタケなどの美味しいキノコが生える。キクイムシやアリの住処となり、クマゲラやアカゲラの餌となる。昆虫や微生物たちによって分解され、やがて土にかえる。その土からブナの幼木が育つ。こうして自然の営みは無限に繰り返される・・・「学問は人からではなく、自然から学べ」・・・と言っているようにもみえる。
 石の小屋場沢から約3キロ、右にカーブした正面に滝ケ倉沢が合流する。淵は大きく、岩魚の格好の住処になっている。あれほど良かった天気も崩れ、雨が降り出してきた。山の天気は、目まぐるしく変わる。
 ウドの花  オオイタドリの白花
 滝ケ倉沢を過ぎると一転、岩場とナメ床が続く渓に一変する。石がゴロゴロした河原を歩くより、岩盤の方が歩きやすい。こうした渓相の変化は、石滝が近いことを告げる。
 ナメ床をゆく・・・夏の渓流で、こうした川床一面の岩盤を清冽な水が滑るようなナメ床を歩くのが楽しい。心が洗い流されるような夢心地にワクワクしながら下る。
 岩場とナメの岩盤、甌穴・・・美しい渓を360度眺めながら下ると、まもなく石滝だ。岸辺の岩には、様々な山野草が咲き乱れ、遡行者を飽きさせない。
 石滝・・・滝の落差は小さいが、滝壺が大きく本流から遡上した岩魚が一旦、この滝壺で止まる。それだけに、数々の大岩魚伝説をもつ。圧巻は、滝ではなく、右手の直立する黒壁から滴り落ちる美景だ。
 石滝の左岸に位置する壁を正面から撮る。黒い岩壁は、ほぼ垂直。頭上の森から滴り落ちる湧水が硬い岩盤を縞状に削る。黒壁、縦縞模様、フキユキノシタの緑、細く白い帯・・・その絶妙の造形美に目を奪われる。
 ノロの沢・・・ノロとは、マタギ言葉で「カモシカ」のことを意味している。この沢の源流に幻の沼「ノロの沢の沼」があるらしい。いつか機会があれば、ぜひ訪ねてみたい場所の一つだ。このノロの沢下流左岸の台地にテン場があったので、ここをC3とする。ベースキャンプではなく、移動キャンプ方式に切り替えたので、ブルーシートを張るのを省略した。それがために、荷物が雨に濡れてしまった。雨に濡れると、荷がさらに重くなる。少々面倒だが、ブルーシートを張るのがベターだったように思う。

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