古地磁気学と岩石磁気学の基礎

過去の地球磁場(古地磁気,古地球磁場)

地球磁場の観測は過去400年程度しかなく,地球磁場の全体像を見るには短すぎます.地磁気が過去何回も逆転を繰り返してきたことは古地磁気学によってはじめて明らかにされました.1950年代に古地磁気学が確立されて以来,たくさんの地磁気逆転が世界的現象として認識されました.現代では海上地磁気異常の観測結果と合わせて,詳細な地磁気極性タイムスケール(GPTS; geomagnetic polarity time scale)が過去1億6千万年間について作られています.ただし,このタイムスケールは将来にわたって新しい逆転が発見されるたびに改定されることになります.

過去1億6千万年の地磁気極性タイムスケール

ここにアイスランドの溶岩から得られた地磁気逆転の例を示します.

連続溶岩層序での古地磁気試料採取

アイスランドの連続溶岩層序における古地磁気試料採取.

約250万年前の地磁気逆転が,29枚の連続溶岩層序の下部から発見されました.古地磁気の方向と極の図に見られるように,最下部の溶岩が正極性の方向を示すのに対して,次の3枚が非常に浅い東方向を記録していました.そして,その上の残りの溶岩は全て逆極性の方向でした.仮想的地磁気極(VGP; virtual geomagnetic pole)の図から,VGPは北半球の高緯度からインドの近くを通って南極地域まで移動したことが分かります.しかし,これは単に逆転を極の動きで表現しているだけで,実際の逆転は双極子がひっくり返るような単純なものではないことが知られています.その理由は,逆転途中の地磁気は一般に強度が非常に小さくなるからです(通常の値の1/10程度).

アイスランドの溶岩層序に記録された地磁気逆転時の磁場とVGPの軌跡.