「草野球の窓」

第45章
「ちょっとしたこと」

 前章に引き続き、長野オリンピックの話である。女子モーグルで里谷選手が予想に反して金メダルを取った。誰もがメダルまでは無理だろうと思っていただけに、予想外の健闘に驚き、喜んだ。一方、ジャンプのノーマルヒルでは、当然金メダル間違いなしと皆が思っており、一本目で期待通り首位に立ったにも係わらず、思いがけない番狂わせがあった。たまたま同じ日に起きた天国と地獄のような運命のいたずらに、考えさせられたことは多かった。実力は勿論なのだが、ちょっとしたことで勝負は決まるのだ

 野球の勝負も「ちょっとしたこと」で決まることが多い。狙ったコースにピタリと投げて打ち取るのも、ボール1個分真ん中寄りに入って打たれてしまうのもちょっとしたことなのだ。実力云々ではなく、球を離す時のちょっとしたタイミングのずれが命運を分けてしまう。投球をバットの芯で捉えるか、ずれてしまうかもちょっとしたことだし、芯で捉えても、打球がたまたま野手の正面をついてしまうか、ヒットになるかもちょっとした違いなのだ。グラブの先端をかすめるような打球を捕球できるか否かも、スタートがほんの一瞬早いか遅いかで決まってしまう。

 であるなら、「ちょっとしたこと」をキチンと出来るようにしなければならない。一つは精神的なプレッシャーをどう克服するかだ。プレッシャーに負けてしまうと、一瞬の判断を間違え、スタートが遅れたり、バットスウィングが遅れたり、球離れが狂い、結果として失敗してしまう。前章で述べたように、プレッシャーを楽しむことが出来るようになれば、プレッシャーを味方につけることが出来る。もう一つは自信だ。打てる、打ち取れる、捕れるといった自信があれば、判断ミスや動作の遅れは起きにくい。自信が鋭いバットスウィングをもたらし、力のある投球や安定した制球をもたらす。自信をもって球を追えば、捕れない球も捕れる場合がある。

 自信をつけるには、勿論練習を積み重ねること、そして経験を積むことだ。変化球を打てるようにしたいならば、変化球ばかり投げてもらい、体で覚える練習をするとよい。変化球だと分かっていれば、体が逃げない。そのうち、直球と変化球を混ぜられても、戸惑うことはなくなる。外野手なら、ノックを受けるとき、ヤマをかけてスタートするのもよい。どんな打球に対してどのようなスタートをきれば捕球できるのかを体で覚える。ヤマをかけても捕球できれば、次第にヤマをかけなくても素早くスタートをきれるようになる。

「ちょっとしたこと」をキチンとやれるようになることこそが重要なのである。

 これ、ゆめゆめわすれることなかれ。

(平成10年2月27日掲載)


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