「草野球の窓」

第42章
「間(ま)」

 前章で「間」について少し触れた。野球が嫌いな人は、野球の動作が非連続だからつまらないと言う。野球が好きな人でも、一つ一つの動作の力強さ、華麗さ、躍動感に魅力を感じることが普通である。勿論、野球の基本は一つ一つの動作であるが、非連続な動作と動作のつなぎめ、すなわち「間」にこそ本当の面白さがある。「間」の使い方の上手・下手が各選手の技量に影響するし、「間」の次の動作に影響するし、試合展開すらも決めてしまう。

 例えば、打者に対して直球を3球投げ、2ストライク1ボールになったとする。バッテリーがサインの交換を行っている「間」に打者は色々なことを考える。直球が3球続けて来たから次は変化球かな、とかインハイのボールコースにもう一球直球を投げてから、アウトコース低めにスライダーでも投げてくるかな、などと考える。この時、投手がサインに対して首を横に振ったり、捕手が「ヨシ」と声を出すだけで打者は迷いを感じることがある。自分の考えとは違う球が来るのではないかと思う。これだけでスムースにバットが出ず、何の変哲もない球であっても打者を打ち取れることもある。
 あるいは、ポンポンテンポよく投げている場合、往々にしてピッチングが単調になり打ち込まれることがある。しかし、時折テンポを変えたり、ボール球を意識的に配球し、「間」に変化を与えることで連打を防ぐことが出来る。

 「間」はバッテリーと打者だけの問題ではない。走者はただ漠然と塁上にいるだけではいけない。「間」を利用して投手の癖を看破し、盗塁するタイミングを窺う。あるいは、相手の守備体形や肩の強さをみて、どこに打球が飛んだら思い切って三塁や本塁を狙うかを頭の中にたたきこむ。
 野手も試合展開、相手次打者の力量を考慮し、どのような守備体制を敷くべきか、自分に打球が来た場合にはどこに送球するか、自分以外の所に打球が飛んだ場合には自分はどこにカバリングに入ればよいかなどを考える。あるいは、相手の打法を考慮した思い切った守備体制を敷く。
 例えば、相手打者の手首がインパクトの瞬間すでに返っており、鋭い打球は全てライン際にしかこないと判断すれば、サードやレフトは思い切って守備位置をライン際に取る。これを見た打者は、右方向に打とうと考え、慣れない打ち方をし、結局投手ゴロに終わるなどというのはよくあるケースである。つまり、「間」を使って守備位置をずらしただけで、打者に迷いを生じさせ打ち取ることが出来る。

 野球では、一つ一つの動作が基本であることは言うまでもない。しかし、非連続な動作と動作の「間」をどう利用するかが次の動作に大きく影響する

 これ、ゆめゆめ忘れることなかれ。



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