「草野球の窓」

第100章(最終章)
「こだわり」

 草野球は楽しむものだ。勝った、負けたで楽しむ。打った、打てなかったで楽しむ。なのに、何故多くの人が30歳も半ばを過ぎるとプレーしなくなるのだろうか。家庭や仕事の都合もあるだろうが、体力が衰え練習をきつく感じる。今まで打てていた球を打てなくなる。届いていた球が届かなくなる。その結果、今まで楽しんできたのに楽しめなくなってしまうためだ。不滅のホームラン記録を持つ王選手でさえ、引退の動機は皆が速くないと言う相手投手の球を速いと感じたからだそうだ。だから、我々草野球人が打てる球を打てなくなったとき「もうやめちゃおう」と思うのは当然なのだ。
 私も同じことを思った。いや、今でもそう思っているし、年々打てなくなってくる。ベンチから見ていると打ちごろのスピードと感じられるのに、いざ打席に立つと速いと感じる。
 そんな場合どう対処すればよいか。タイミングの取り方、狙い球の選び方、バットスウィングの工夫などなど様々な工夫をしてきた。第42章で述べたように、力の衰えを技でカバーするのだ。工夫した効果が果して試合で通じるものだろうか。これが楽しみになる。結果が出れば出たで楽しいし、だめならだめでさらなる工夫をする。要するに草野球にこだわっているのだ。こだわれば、打てなくても楽しめるのだ。

 世の中には色々なことにこだわりを持っている方がいる。以前、線路に使われているレールに徹底的にこだわった方の話を聞いたことがある。寿命がきたレールは果してどうなってしまうのか。どうでもいいじゃないかと思う人が殆どだが、その方はこだわった。そうすると、色々なところにレールが使われていることに気がついた。普段我々が目にしている所にである。例えば、駅舎の柱にも使われている。そして、そのレールは日露戦争時代にロシアから運ばれ数奇な運命を辿ったものであることを知る。また、海岸に流れ着いた様々なゴミにこだわっている方もいる。こだわると、単なるゴミからゴミの発生源である様々な国の文化や経済状態、人々の暮らしぶりまで分かるそうだ。我々はこだわりを持っていないから気づかないだけだ。

 草野球であってもこだわりを持てば普段何気なくプレーしたり、人がプレーしているのを見ると色々なことに気づく。気づいたことをとりとめもなく書いているうちに「まるドの目」もついに第100章を迎えてしまった。インターネットに載せるようになってからは読者の方に色々な質問をいただき、それがまたネタになった。先日は私と同年代の方から励ましのメールをいただいた。大変ありがたいことである。

 打てる球が打てない、捕れる球を捕れないのなら、どうすれば克服できるのか徹底的にこだわってみよう。それがまた楽しみにつながる。

これ、ゆめゆめ忘れることなかれ。  (平成11年3月13日掲載)


【幹事補足】
 長らく続いて参りました「まるドの目」は、今回をもって終了いたします。ただし、これまでの100話の中で、世の草野球人も「その通りだ!」「いや、俺はそうは思わない!」など、様々な感想を持たれたことと思います。このコーナーをチーム内でのミーティングのネタに使っていただければ、それだけで掲載の意義はあると考えます。

 まるド仙人、どうもお疲れ様でした。そして今後もそのシビアな目を我々野球人に向け続けていただきたいと思います。



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