News >「仕事日記」2007年12月


12月1日(土) ジャズピアノパラダイス 泉佐野
コンサート終了後に帰京するというスケジュールは多少演奏に響く。

関西空港でお好み焼き。国府弘子がなんとか帰る前に、といいながら空港に着いたらチェックインや荷物預けを、それはもう手際よく分担して、ぼくが追取刀で荷物を預け終わるころにはマネージャーが6人分の席を取っている。すごい。打ち上げの設定に段取りが良いということは、本業の進行も信用できるわけで、このテのスタッフが今は少なくなった。
12月5日(水) M’s 花巻
Autumn Leaves
Blue In Green
イパネマの娘
I’m Old Fashioned
Falling In Love With Love
But Beautiful
Ladies In Mercedez
My Favorite Things
Closed Kitchin
Winter Wonderland
Spain
The Song Is Ended

ヤマハS6は名器ではあるが鳴りの面で(鳴りの良否でなく種類として)好みからちと外れるかと思っていたのだが、ここの会場との相性がいいのかとても弾きやすく丁度いいなり具合。ある意味フルコンより自分の音を身近に感じられた。 
浅野さんの泥鰌屋で打ち上げは吉川の時と同じだが今日は牡蠣鍋とすき焼きという豪華二本立て。

主催者代表の戸来(ヘライ>この苗字や地名があるところからキリストは処刑を免れて日本それも東北に来ていたという説があるとか)さんもかなりのジャズ通で、コンサート前のやり取りで演奏曲目を決める際“うちの客に初心者は少ないですよ”と言われていたのでちょいと突っ込んだメニューにしたのだった。
12月6日(木) M’s えずこホール
Autumn Leaves
佐山:ハーモニーの話
My Shining Hour
小井:メロディの話
But Beautiful
大坂:リズムの話
Spain
My Favorite Things
Falling In Love With Love
ヘッドアレンジと書き譜
Joy Sopring
Blue Keys
オリジナルということ
Deep Blue
I’m Old Fashioned
The Song Is Ended

えずこホールのスタインウエイD型が手入れも良く気持ち良い。大坂の提案で久々にピーターソンスタイルの配置。ピアニストの左手奥にベース、背中正面にドラムをセット。ピアノの蓋は客席に向かって真っ直ぐ。目合図に多少の不便はあるが三者密集するピアニストリーダー形。演奏曲目やアレンジが安定してきたので二人の音が間近に聞こえるこの形のほうが今はいいかもしれない。やりやすかった。
12月7日(金) M’s 新庄・レキシントンホール
瀬木の時は信用金庫の主催。今回はジャズファンクラブの主催で高橋さんは金庫側のサポーターと言うところか。いずれにせよ和気藹々の打ち上げは変わらずだが、みちこ様が現れないのは残念。大泉先輩は相変わらずの絶好調。このところ毎年送っていただいている新米を今日は現物でいただいた(!)。10kg。
12月8日(土) 前日入り
一旦メンバーと別れて山形>伊丹>石見と乗り継いで益田へ。お迎えの田原嬢は思いやみがたく二ヶ月前にテナーサックスを買って、今日はフルバンドの4番サックスを吹くというからすごい。
二日連続のジャズフェスの今日は初日にお邪魔して最後のジャムセッションに参加。打ち上げでのセッションはエンドレスかと思われたが中でもムネジィバンドが収穫。ホトケとやっていたクレイジーブギナイトのレパートリィが次々出てくるので頬が緩みっぱなし。バンドのメンバーにIちゃんというミニスカートのとてもかわいいお嬢さんにも緩みっぱなし。楽しくも情けなくも親切にしていただいて有難し。
12月9日(日) M’s 益田
ど田舎ジャズフェスティバル
Creopatra’s Dream
Blue In Green
Yesterdays
I’m Old Fashioned
Falling In Love With Love
Chase The Shade
Harvest
But Beautiful
Ladies In Mercedez

ヤマハS6。やはりでかいホールでの使用はちと辛いかも。並立している美術館のホワイエでソロを20分ほど弾いたのだが、そこではスタインウエイのDだった。こちらをホールに出して欲しかった。
12月10日(月) Mr.Pinstripe リハーサル
深夜バスで大阪に着く。初体験。思ったほど自由が利かない。周りがすぐにぐっすり寝るのでこちらもごそごそしにくいのである。飛行機や電車なら読書灯その他いくらでも方法はあって移動時間すなわち得がたいプライベートタイムとなるのが、深夜バスだとひたすらじっと眠気を待つ、、、うちに眠っているのに気づく、、、ということはその時は起きている。この繰り返し。ただ、その時々に頭の中で流れている音楽が変わっていて面白かった。BGMや案内放送の一切ないのは随分と取り柄である。この流れくる音楽の中に未知のものが発見された時が新しい曲の来訪なのだが残念ながらこのたびはなかった。

2時間半、30曲のダンスショーのバンドリハーサルが今日一日とはきつい。
12月11日(火) Mr.Pinstripe 劇場場当り
録音によるダンスを一通り見せてもらい全体の様子がわかる。相当楽しいステージになりそうだ。照明の高見さんは月猫絵本音楽会でのお馴染みさん。安心できる。
12月12日(水) Mr.Pinstripe ゲネプロ
バンドもようやく全体像が見え始めたくらい。指揮者がいないので僕はプレッシャー。テンポ出しが不得意なのだ。修が頼りの綱。
音楽助手の熊谷エリ嬢が心強い。稽古ピアノをずっとやっててくれたので、テンポ感や間合いが完璧に体に入っているのだ。ダンサーたちも生バンドより稽古ピアノのほうがどうもやりやすいようで本末転倒なのだが、早く追い越さなくてはいけない。
12月13日(木) Mr.Pinstripe 初日。
玉野和紀
紫吹淳
今井清隆

星奈優里
平澤智

本田有花
紀元由有
笹木重人
佐々木誠
斉田綾
島村江美
矢部貴将
小牧祥子
青井美文(ミフミ)
加賀谷一肇(カズタダ)

松山修(Dr)
土井孝幸(B)
今尾敏道(Reeds)
松本かよ(Keyb)
里見紀子(Vln)
前田卓次(Perc)

今尾さんの案内で沖縄料理屋へ。どれも化学調味料の痕跡がなく、沖縄でいただいているような味わいでとても良。

バンドと分かれた後にダンサーの何人かと合流してバーへ。綾ちゃんが熱く語って愉。慶応の政治学部出身とあって論理的な弁が立つ。プロデューサーの砂田さんの意見・美学がぶれないのも尊敬に値する。終始ニコニコと静かなえみちゃん、活発元気なゆうちゃん、ダンサーにはとにかく何故か惹かれるものが多い。目いっぱい表現しているからだろうか。
12月14日(金) Mr.Pinstripe
音楽助手のエリ様が今日で上がる。お別れ会に探し当てた居酒屋がなかなかのヒット。バンドメンバーも打ち解けてとても楽しい毎日の宴会。
12月15日(土) Mr.Pinstripe
玉野和紀さんのタップに感動。特に里見紀子とのコラボレーションによるミスター・ボージャングルス(という曲)でのインプロビゼーションが圧巻。
今井清隆さんの声の甘さに痺れる。
紫吹淳さんには悩殺された。

バンド打ち上げは“大門”あるべき居酒屋のすがた。だが食べ物がいちいちワンランク上。久しぶりに日本酒をたらふく飲んだが鼓動が早まることもなく、二日酔いもなかった。かよちゃんと里見のお酌上手に舌を巻く。
12月16日(日) Mr.Pinstripe
メトロポリタンホテルのバーでダンサーたちと打ち上げ。古賀先生(ボーカル指導)上機嫌。
12月17日(月) ミュージカル観劇
君にささげる歌 東京芸術劇場小ホール 
若いダンサーたちが素晴らしい。ヒップホップからジャズダンス、それを組み合わせた場面も随所にあり、振付家に感動。演出は忠の仁。この人はMr.Pinstripeの訳詩でご一緒。今回の玉野さんとのように、がっぷりディスカッションしながらの仕事をしてみたいものだ。
12月20日(木) Mr.Pinstripe 大阪厚生年金会館
会館前の公園を挟んだお向かいが矢野園。僕の実家(茶小売商)の問屋さん。中学高校バイトというか修行したところ。時には宇治山田にある茶畑と工場(矢野園でいと山所有)にしばらく滞在して働いたこともあった。

その公園で冬には火の用心まわりの休憩をとりながら町の年寄りの話を聞いたものだが、半分ほどの広さになっていて矢野園と厚年のあいだにワンストリートできている。

その通り沿いの店でMr.Pinstripeの最終打ち上げ。お好み焼きもたこ焼きもイカ焼きもダルマードもきつねうどんもない大阪滞在。
12月22日(土) ジャズピアノパラダイス 盛岡公会堂
新幹線に乗り込むと国府弘子が西洋梨を剥いている。いい風景である。ひとつふたついただく。実に甘味がのっていておいしい。自分がそうなのに、人が左手で包丁を使っているのを見るのは少々不安感のあるものである。

リハーサル中に暖房の都合か空気が悪くなり休憩。本番は暖房最小限にしたためか終始寒く、お客様に申し訳なく思った。思うに任せぬ部分も多々あったが、入り込めたところも随所にあり今シーズン最後のジャズピアノパラダイスめでたく終了。打ち上げにはEPO(明日同場所でコンサート)も来てくれて、何曲も歌ってくれた。いい声である。蘇州夜曲など旅をしているかのよう。
12月23日(日)
免許更新の講習中に不吉な出来事。48ページというので開いていたらどうも話の内容がずれている。隣を覗くと84ページ。30分程後には86ページを68ページと勘違い。妙に平仄があっているところが不気味。脳のどこか定まった回線がショートしているのか。認知症にしては高度?
音楽鑑賞 ミューザ パイプオルガン クリスマス コンサート 2007
廣江理枝 オルガン
篠崎史子(あやこ)ハープ <<<素ン晴らしかった
ヴォスクマーナ 合唱

フォーレのハープソロ曲とマルセルデュプレのオルガン変奏曲が特によかった。というよりそれ以前の曲ではどうしても眠ってしまうのだった。心地よ〜く。
考えてみればコンサートホールくらい理想的な落ち着き場所はないわけで、音楽もさることながら静寂とその時間を手に入れるために通うのかも知れぬ。
12月28日(金) アニメ音楽録音
六本木サウンドシティBst
さる会社の企画でアニメの主題歌・挿入歌をピアノソロで演奏してCDにもするが主にネット配信。ビクターとの契約の絡みからフルには参加できない(フル参加するとそのまま僕のピアノソロアルバムになる計算。それも面白かったろうけど)。
3曲。北斗の拳、ドラゴンボール、マクロス。どれもよく知らないので、絶対にはずせないメロディやセクションを教えてもらいながらどんどんジャズにしていく。なかなか面白い体験だった。
マクロスのテーマだという“愛、おぼえてますか”というのは加藤和彦・安井かずみのコンビによる作品でなかなかの佳曲。北斗の拳はクリスタルキング。とって不自然でへ〜んなメロディラインなのだが妙に引っ掛かるというか、残る。このあたりスムースだがフックしない傾向のある我々(いたずらに教養があるとでもいおうか)にまねできない所。センスの問題だからいまさら身にはつかないだろうが(つけたくない気もするし)理解と解釈はしたいところだ。<こういうところがやはり教養に足を引きずられてしまう所以でもあるな。
和田組忘年会恒例の“怪盗ルビー”スタッフを中心にした飲み会。
今年は岸部一徳さんが欠席のかわり(でもないけど)斎藤晴彦さんが参加。
以下名言集:
○自発的な演技を抑えて注文されたことを全うしようとした時、アンサンブルではなくなる。<<<権威的な演出家やプロデューサーについての話 by 斎藤晴彦
○ “怖がる人々”の撮影中に背中右中部を蜂に刺された。スタッフの一人が何故か毒物吸引機(蛇に咬まれた時などのため)を持っていて処置してくれたのはありがたかったが、その前に???(三木のり平さん子息)さんが咄嗟に口でちゅうちゅう吸ってくれたのは当時20代の身としてはなんとも恥ずかしいやらありがたいやら。メイク担当???さん
○舞台中継ではなく“映画”というリアリズムを撮るのだ。<<<江戸時代の襖をCGで済ませることに異論があるところから熱く語りだした麻雀放浪記からの美術担当小沢さん。
○3億もらったら5億の仕事をしろ。予算のせいにし始めたときから質は落ちる。<<<小沢さん
○他の仕事はともかく映画には“イイ人間”しか関われない。少なくとも残れない。<<<人はいいけど腕の悪い絵描きや音楽家について和田さんと僕が話していたらコメントをした製作プロデューサーの松枝さん。
○やり始めたんならやめちゃいけない。<<<映画学校に招かれて教えているが失望感の強い誰かに対して照明の熊谷さん。
12月29日(土) セッション サテンドール
川縞哲郎(Ts)
松島啓之(Tp)
大山日出男(As) <<<秀逸
井上陽介(B)
村上寛(Dr)

大山さんがなんだかすごくいい上に音程その他基礎がやたらしっかりして聞こえた。パーカーからジャッキーマクリーンにかけての管楽器全体からの鳴り、みたイなものも感じた。のでMCでわざと種々取材してみたら東京芸大出身で須川展也さんの何年か先輩なのだそう。学歴はともかくも、またサックスで逸材発見。
二部の最初にトリオで“マイバックペイジズ”。相当気持ちよかった。寛さんはジャズマン独特の歌心があって、そこのツボが押さえられてないとエイトビートもジャズにならないのだ。この3人でなにかがっぷりと演ってみたくなった。
12月30日(日) スターアイズセッション
島田剛(B)
黒田和良(Dr)

「Falling In Love With Love」「ラッシュライフ」「イフアイシュッドルーズユー」など1部は名曲集。2部はオスカー・ピーターソン追悼で「コルコバド」「酒とバラの日々」「マイワンアンドオンリーラブ」「ユールックグッドトゥミー」「Cジャムブルース」「自由への讃歌」
コピー的演奏もママならず、かといって自分のスタイルをと思っても大元がピーターソンなのだから中途半端で苦しかったが、その苦しさが楽しかった。島田がレイブラウンを踏襲しながらじわじわと自分の音色・スタイルに持っていくところがかなりの見所であった。
12月31日(月) スターアイズセッション
今日は飛び入り満載の大セッションだと思いきや、まずはトリオで1部2部、カウントダウンを挟む時間帯に飛び入りが始まって、その後はなるように、という筋立て。折角なので自作曲ばかりで今年を締めさせてもらう。昼間にオリジナル一覧を作り、コードチェンジ表(=アルファベットの羅列)のみで演奏可能なもの(ジャズチューンというのはここまでの範囲のことを言うのではないか、とは常日頃思うこと)を選び出して便箋に。

Martha……まったく新しい景色が見えた。
芭蕉……実に落ち着いてアップテンポができる。このリズム隊、相当優秀である。
Sand Castl、P-Bopといった旧作を1部に。2部はこれからの曲。
In Your Qiet Dream……In Your Peaceful Dream に改題の予定
Deva Nothern……パターンに拘り過ぎて自滅。後ほど黒田から貴重なアレンジサジェスチョンをいただく。
The End Of Season……自分のイメージがしっかり付きかけているからかスムースな演奏。
You Hide Something……M'sにもまだかけていない曲。ソウルナンバーの3連モノとジャズのスローバラードとの間をうまく縫って演奏してくれた。
Harvest……黒田はカリプソがとても上手。

そういえば昨日の一部で適当なカリプソがないからまるっきり即興でやったら結構いい曲になっていたのだった。それなので昨日はアンコールも高校生以来かもしれないくらいに突然思い出した“ソンブレロ・サム”(チャールス・ロイドグループinclude キース・ジャレット)を演奏したのだった。そしたらなんと年明け最初の買い物、中古レコード漁りでそのLPを見つけてしまったのは後日談。

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2007年