第2部:資本の流通過程
第1篇:資本の諸変態とそれらの循環
第1章:貨幣資本の循環

第2節
第二段階、生産資本の機能



マルクスが確認しているように、購買G−Wは、販売W−Gによって補足されるべき流通過程の一局面であるにはちがいないが、すでに第1部で考察されたように、資本が資本として流通する上では、購買されたWは、すぐさま右から左へ販売されるのではなく、いったん、生産過程――購買された商品が剰余価値を付け加えられた商品として生まれ変わる生産的消費――に入る。

この運動はG−W<Pm、A…Pとして現われるのであり、ここの点線は、資本の流通が中断されているが、資本は商品流通の部面から出て生産部面にはいり込むのであるから、資本の循環過程が続いていることを示唆する。[40]

剰余労働が資本主義的生産様式のもとでどのように取得され、剰余価値がどのように生み出されるかは、第1部で考察された。

この節で分析されているのは、生産資本として機能する2つの商品、生産手段と労働力の定在の仕方。

生産の社会的形態がどうであろうと、労働者と生産手段とはつねに生産の要因である。しかし、一方も他方も、互いに分離された状態では、ただ可能性から見て生産の要因であるにすぎない。およそ生産が行なわれるためには、それらが結合されなければならない。この結合がなしとげられる特殊な仕方によって、社会構造のさまざまな経済的諸時代が区別される。[42]

PmとAが商品でありつづけるということ

生産諸手段Pmと労働力Aが商品としてありつづけるということ。すなわち、それらの商品の買い手が買い手としてありつづけるということ。また、それぞれの商品の売り手が売り手としてありつづけるということ。これらおのおのの定在の意味と内容を、マルクスはそれぞれ考察している。

買い手は、貨幣所有者であると同時に商品生産者でありつづけなければならない

買い手は、生産諸手段と労働力を購買するにたる貨幣を自由にできる状態でありつづけなければならない。

なおかつ、これらを購買するのは、買い手が商品の販売によって利潤を得るためであって、購買される商品は新価値を付け加えられた新たな商品に生まれ変わり販売されることが前提で購買されるのであるから、その意味で、買い手は同時に商品生産者でありつづけなければならない。

売り手が売り手でありつづけるために

一方、労働力の売り手である賃労働者は、彼の商品である労働力を維持しなければならない。そのためには、彼の日々の生活を継続するための、生活必需品を購入しなければならず、購入するための手段をもち続けなければならない。

労働力の買い手からの、一定期間ごとの支払いが反復されなければならないし、賃労働者は生活物資のすべてを商品で贖わなければならないし、それらの生活物資がすべて、商品として市場に出回っていなければならない。

商品が、生産諸手段としても生活諸手段としても定在しているということ

賃労働が一般的になればなるほど、賃労働者の生活必需品は、ますます商品として彼に相対するようになって行く。

それほど商品生産が一般的になって行くということは、商品生産者の存在が一般的になって行くということであり、彼らが購入する生産諸手段としての商品が、ますます、生産諸手段として使用されるような商品として生産されるようになって行くということだ。

生活諸手段としての商品の生産が発展するのと同時進行で、生産諸手段としての商品の生産が発展する。

すべての生活物資が商品として生産されるということ。商品生産が一般化することで生産手段が商品として生産されるということ。これらの諸事情がもたらす生産様式への影響を、マルクスはつぎのように指摘している。

資本主義的生産の基本条件――賃労働者階級の定在――を生み出すその同じ事情は、いっさいの商品生産の資本主義的商品生産への移行を促進する。資本主義的商品生産は、それが発展するのと同じ程度に、あらゆるより古い、主として直接的自家需要を目的として生産物の余剰だけを商品に転化する生産形態にたいして、分解的解体的に作用する。それは、さしあたり外見上は生産様式そのものを侵害することなしに、生産物の販売を主要な関心事にする……。しかし第二に、この資本主義的生産が根を張ったところでは、それは、生産者たちの自家労働にもとづくか、または単に余剰生産物を商品として販売することにもとづく、商品生産のすべての形態を破壊する。それは、まずもって商品生産を一般化し、それからしだいにすべての商品生産を資本主義的商品生産に転化させる。[41-42]

商品生産を行なうあらゆる経営は、同時に労働力搾取の経営となる。しかし、資本主義的商品生産がはじめて画期的な搾取様式となるのであって、この搾取様式は、その歴史的発展の進行のなかで、労働過程の組織と技術の巨大な発達とによって、社会の経済的構造全体を変革し、従来のすべての時代を比類なく大きく凌駕する。[42]



Copyright 2006-2007 Kyawa, All Rights Reserved.