還暦バックパッカー、ヨーロッパをいく

はじめに
 私がひとり旅を始めるようになって旅の記録をまとめ、書くようになりました。
自分のために、何らかの形で残しておくのが主な目的です。
知り合いの何人かに「見せて」と言われてコピーして読んでもらうようになりました。
なにしろ、思いつくままに書いていくので、拙い文章ですし誤字脱字もたくさん見受けられます。
でも、共感を持って下さる方もいるので厚かましく続けています。
何かお気づきのことがあれば教えて下さい。

 旅のことをまとめる柱として3つ考えました。

1.童話、メルヘンの故郷を訪ねて。
2.ヨーロッパの博物館と美術館を見て来ました。
3.旅でみつけたもの。

 一部、重複もあり、少し長くなりますが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。

童話、メルヘンの故郷を訪ねて
フランダースの犬
 ヨーロッパひとり旅の一番大きな動機は、小学生の頃読んだ「フランダースの犬」。
その主人公ネロが見たかった、アントワープの大聖堂の絵を見てみたいこと、
そしてグリム童話の故郷ドイツに行くことです。
前者は、私が読んでから半世紀過ぎてもなお、心に残る物語です。
ネロが教会の冷たい石畳の上で最期を迎えるまで、その絵を見ることが叶えられなかった事への同情でしょうか、
彼が見たいと切望していた絵はどんな絵なのであろうか、とずっと私の心の片隅に残っていました。
ところが、私が52歳の時、朝日新聞の日曜版「世界 名画の旅」で
ルーベンスの「キリスト降架」であることを知りました。
私も、一度見てみたいとの思いが募り実現させたのです。
ネロとパトラッシュが住んでいたとされるホーボーケンにも行って来ました。
そして、仲良しだった少女が住んでいた風車小屋(風車小学校)にも足を運んでみました。
(実は、実在の少女をモデルしていた)

 街は非常に静かでした。
“キョロキョロ”と何かを探している私を見て、子ども連れの男性が「パトラッシュですか?」
「はい」と答えると、親切にネロとパトラッシュの銅像のある所を教えてくれました。
これは「きっとたくさんの日本人が訪れるのだな」と思いました。
ホーボーケンを訪ねてみて「これは失敗したな」と思いました。
子どもの頃に読んだ物語の場面とあまりにも違いすぎることです。
私のイメージはすっかり壊されてしまい、がっかりしました。
大聖堂のみにとどめておけばよかったと後悔しました
話は前に戻りますが、その日は雨でした。
大聖堂に入ると中はちょっと薄暗く正面に祭壇画がありました。

【主題、形式(三連祭壇が)一対として描かれている。
 左翼はキリストを身ごもったマリアが従姉妹エリザベツを訪ねる「御訪問」
 右翼は赤子のキリストが神殿にささげられる「神殿奉献」の場面がある=キリスト降架】

 ルーベンスの三連祭壇画の「キリスト昇架」「キリスト降架」と、やや後方に
「マリヤ昇天」の絵がその場を圧するように掲げられていました。
「キリスト降架」では、キリストの青白い体が生々しいほどに臨場感があふれていて、
目を背きたくなるくらいでした。
躍動感あふれる「キリスト昇架」と、しばらく無言でじっと向き合っていました。
長い間見たかった絵です。直ぐ立ち去るには惜しい気持ちでした。
そこには日本人の若者も4〜5人うっとりとその絵を眺めていました。
彼らも同じように「フランダースの犬」の愛読者だったのしょうか? 

グリム童話
 次はグリムの故郷メルヘン街道です。
やはり子どもの頃から親しんだ童話です。
私はまずドイツを通過して、北欧を回ってきてからドイツに入りましたので、
ハンブルク→ベルリン→ハノーハー→カッセル→マルブルクへと移動しながら、
メルヘン街道の木骨組みの家々を見て歩きました。
ハノーハーではそこを拠点に、ブレーメンとハーメルンそしてミンデンに行きました。
ブレーメンは「ブレーメンの音楽隊」で知られる所ですが、
マルクト広場の片隅に小さな銅像がひっそりとあるだけで、あまり印象に残らない街でした。
それでも、小さな子どもを銅像の前に立たせて写真を取っていたお父さんがいたので、
私も写してもらいました。

 一方、ハーメルンは幸いにも日曜日とあって、
「ハーメルンの笛吹き男」の劇を一目見ようとたくさんの人びとで広場はいっぱいでした。
ちょうど劇の行われる舞台右側の「結婚式の家」には、カリヨンが29個もあり、
劇の始まる前可愛い曲を鳴らしていました。
この「ネズミ捕り」の物語は、伝説で、私は前から大変興味を持っていました。
旅に出る前に、“「ハーメルンの笛吹き男」伝説とその世界 ”阿部謹也、を読んだのと、
物語から受ける印象から、ここを訪ねることにあまり気が進まなかったのですが、
来てみると明るい小さな街で、至る所からクラシック音楽(辻音楽師が演奏)が流れていて、
心地よい街なので大変気に入りました。

 午後12時半(時間は定かではありません)、いよいよ町民の皆さんによる野外劇が始まりました。
頃は西暦1284年の事です。
当時、町中にネズミがあふれて被害を被り人々が困り果てていたところ、
ひとりの笛吹き男が「この笛でネズミを退治してあげましょう」と言って報酬を要求しました。
町役人も快く約束しました。
ところが、役人も町民もその約束を守らなかったのです。
その男は怒って、町中の子どもをその笛で連れ去りました。
町民は嘆き悲しみましたが、再び子どもたちは帰ってこなかったのです。
あらすじはこんな風に語られています。
この、野外劇を見ていたのはほとんど大人達でしたが、皆、熱心に見入っていました。
ポピュラーな話なのでしょう。
そして、この悲しい物語は実話らしいそうで何か秘密が隠されているようです。
私もこの野外劇にすっかりのめり込んで、思わず涙が出てきたくらいでした。

 次に訪れたのはカッセルです。かなり大きな町でした。
私は小さな田舎の町を期待していたのですが、それがとても大きくてがっかりでした。
と言うのも、今回の旅は都会に次ぐ都会巡りで緊張状態が続き、疲れていました。
私はとりあえず町のインフォメーションを探して、大きなバックパックを背負って町中を歩き始めたのです。
今夜の宿を探すためです。その日も暑い日でした。
汗はたらたら額に流れ落ちる、背中は汗でびっしょりです。
それでも、地元の人に聞きながら、やっとインフォーメイションを探し当てました。
大きな広場の仮設住宅のような建物の中にありました。
条件を紙に書いたものを差し出しました。
簡単に条件が満たされたホテルを予約できました。その名はハウス・レンゲン。
その宿を拠点に、カッセルはもちろん、ゲッティンゲン、ハンミュンデン、フルダ、アルスフェルト、
ハーナウなど、グリム童話に関係のある町々に足を運びました。
いずれも、木骨組の古い家並みが保存されていました。
そこには人びとが住み、生活もあります。
あまりに古くなった建物は壊されて工事をしていましたが、
また最初から同じような造りの家が建てられるのではないかと思います。
そう思えるほど、市民の皆さんが街並みを大切に守っている様子が伺えました。
こんな中世のたたずまいの中に立ってみると、いっときでもその匂いや風を感じて、
その頃の風景が思い起こされてきて、「うん、うん」と納得するする私でした。
 
 カッセルには4日間滞在したので、町の中をあちこち歩いて回りました。
こんな所に素晴らしい公園があったのだとか、
古い建物の裏通りに小さな店を営んでいる人々を見つけたりするなど、
新しい発見があったりして喜んだりもしました。
公園と言えば、ヨーロッパ中どこの国も立派で広大なものを持っていました。
至る所にベンチをあしらい、市民の良い憩いの場所となっていました。
公園のみならず、町中のふとした所にもベンチがあり、
お年寄りが、若者が腰掛けてゆっくりと時の流れに身を任せている姿を見ることが出来ました。
私もそのひとりですが、隣の人を邪魔するでもなく、
ひとりひとりがそれを楽しんでいる様子が伺えました。
日本にも、公園や人通りの中にたくさんベンチを置いてもらいたいな、と思いました。
 
 話はそれてしましましたが、カッセルはグリム兄弟が住んだ町でグリム博物館もありました。
そこで目に留めたのは弟の存在でした。彼の描いた絵も一緒に展示されていたからです。
かなり名が通った画家のようでした。
絵にグリムとサインされていたので職員に確認したところ、やはり弟でした。新しい発見でした。
展示されているものがドイツ語なので、ほとんど内容を理解することも出来ず悔しい思いをしました。
こんな時、やはり「語学が出来たらいいなあ」と思いました。
せめて、解説書なり、知識があれば、もっと深く知ることが出来て、面白みは倍加するでしょう。
 
 アルスフェルトは「赤ずきんちゃん」の故郷です。
アルスフェルトは田舎でした。
駅前は何の変哲もない普通の町なので、果たしてここが?と疑問に思い、
少しばかりのお店が並んだ通りに靴屋さんがあったので、聞いてみました。
「ここは、赤ずきんちゃんの町ですか?」
「どこへ行けばいいのですか?」
彼女は、私のこんな質問が理解出来ず返事に困ています。
それはそうです。ここはドイツの田舎です、たとえ私が英語を話せたとしても通じません。
私は、どのように質問したら理解して貰えるだろうかと苦心惨たんするし、
靴屋さんも、相手が何を言っているのか、分かってくれようと一生懸命努力していました。
言うまでもなく、世界共通語のボディ・ランゲージの駆使です。
そのうちに「ああ」と言ったか言わなかったか、
とにかく「木骨組の家並み」のある所を教えてくれました。
ここは、全く「赤ずきんちゃん」の形跡の無いところでした。
せめて可愛いキーホルダーでも孫娘におみやげにと思ったのですが、
そこを訪れたのが丁度お昼でお腹が空いたので、とあるパン屋さんに入りました。
中に入るとカフェでした。
ここも、木骨組の家でこんな風に生かされているのかと建物の内部を見て感心しました。
とても落ち着いた気持ちの休まる場所でした。
“「グリムありますか」メルヘン街道とその周辺”を帰国後開いてみると、
著者達もそこを利用して次のように書いていました。
「いかにも、老舗然としたCafe兼Rest§urant“MARKT CAFE”の店内この店はケーキとパンも有名」。

 ハーナウはグリム兄弟の生まれたところです。
マルクト広場で彼らの銅像を眺めてから、少々遠いのですが、お城を目指して歩いて行ってみました。
お城には夏休みの校外活動でしょうか、先生に引率された小学生達が来ていました。
大変賑やかで楽しそうでした。
その後も丁度夏休み中と言うこともあって、行く先々で賑やかな子どもたちの集団に出会いましたが、
先生は決して子どもたちを叱りつけたりせずに、自主性に任せているようでした。
彼らも歴史を実地に学んでいるのでしょうか?
城内は歴史博物館になっていて、様々な展示品を見ることが出来ました。

 私はヨーロッパ各地で、たくさんの国や地方の博物館を見て歩きましたが、
残念ながら、ひとつひとつ記憶に残っていません。
これが若い柔軟な頭ならと惜しい気もします。
しかし、その時その時には感心しながら、時を経てきた重みを感じていました。
そう言う意味でも、若い人が大いに海外に出て、いろんな体験をしてみるのは意義ある事だと思います。
私にとってのメルヘン街道は、木骨組の家々を見て、
「中世」に生まれた「童話の世界」を、肌で感じる旅だと思いました。
絵でも同じ事が言えると思うのですが、ヨーロッパの風景を見てから、
絵の鑑賞が「なるほどそうか!」と、身近に感じられるようになったことです。
ドイツでは、この「メルヘンの世界」を訪ねた後、「ロマンチック街道」、
「我が思いはハイデルベルクへ」「ライン下り」を経て25日間の旅で終わりました。

トルコ、ヨーロッパの博物館、美術館、城そして教会を見てきました
 私の見てきた博物館、美術館は大変な数です。
一度に、これほどまでたくさん見ると、消化不良を起こしてしまいますね。確かに、そうです。
こうした美術は、美術館、博物館だけでなく、寺院やお城の中、
そして、個人所有の家や庭でも見ることが出来るのです。
それを含めると大変なものです。
とにかく、私はガイドブックや、その町に着いて紹介されている所にも行ってみました。
全部は覚えていませんが、旅先から送った手紙に実績行程表として書き残したり、
感想なりも多少書いています。
幾分それらと重複するかと思うのですが、少し書いてみます。

 トルコでは古代遺跡を中心に見てきました。
もちろん、宮殿やモスク、教会内の美術工芸品などの数々、
建物そのものも街並みも一体となって、醸し出すもの全部が芸術を表現していると思いました。
狭義に絞って、絵と工芸品を見た感想で、くくりたいと考えています。
専門家でもないので偉そうなことは言えませんけれど、私なりの見方でいいと自分で勝手に決めました。

 前置きが長くなりましたが、記憶に残った所の絵画や工芸品です。
なお、記憶している範囲で、入場した美術館、博物館や教会などを列挙しました。
訪れた国別、都市別にまとめましたので、以下をそれぞれクリックしてみて下さい。

トルコ《イスタンブール》《中部アナトリア》《エーゲ海》
ギリシャ《ミコノス》《アテネ》
イタリア《ローマ》《フィレンツェ》《シエナ》《ミラノ》
スイス《ルツェルン》《チューリッヒ》
フィンランド《ヘルシンキ》
ドイツ《ベルリン》《カッセル》《ローテンブルク》《フッセン》《フランクフルト》《ボン》
オランダ《アムステルダム》《ロッテルダム》《デルフト》《デン・ハーグ》
ベルギー《ブリュッセル》《アントワープ》《ブルージュ》《ゲント》
フランス《パリ》《コールマール》
オーストリア《ウイーン》《ザルツブルク》
ハンガリー《ブダペスト》
チェコ《プラハ》
イギリス《ロンドン》《エディンバラ》《湖水地方》《カーディフ》
スペイン《マラガ》《グラナダ》《コルドバ》《セビーリャ》《マドリード》
ポルトガル《ファーロ》《リスボン》《シントラ》《ナザレ》
 
 以上いろいろな国の美術、工芸品を見てきたわけですが、
最初に言いましたように、全部を記憶して理解するには大変な知識と努力が必要でしょう。
平凡な主婦が見て来た芸術の世界が、なにかの形で心に蓄えられていれば、
いつの日か力を発揮するのではないでしょうか。
好奇心、感動はいくつになっても必要なことではありませんか。
若ければ若いほど、みずみずしい感性が養われていいなあとも思いました。

旅で見つけたもの

 想い出をたぐり寄せながら、気ままに書いていきます。
以下のテーマを、それぞれクリックしてみて下さい。

挨拶;ありがとう
親切;ふれあい
スペイン人の枕投げ
オリーブの木
各国の旗(ステッカー)
英会話
レストランのメニュー
料理の分量
落書きとゴミ
教会
ひったくりに思う
ヨーロッパの公園
インフォーメイション=(i)
宿の予約や切符はどのようにして買ったの?
両替
“Candle in the wind”
ひとり旅の決断
ひとり旅に思う
一番よかった国はどこですか?
21ヶ国の人々にふれあって
我が家の正夢
いろんな国のいろんな宿
お国変われば…ペット事情
おすすめの宿
おばあちゃんと呼ばないで!
オープン・ザ・ドアー・プリーズ〜鍵について
各国の通貨について
私のおみやげ
イスラームの世界:トルコとアンダルシア地方(スペイン)
てがみと切手
ヘンゼルとグレーテル&赤ずきんちゃん:ヨーロッパの森はこわい?
私の旅づくり
旅は道づれというけれど:VISAカード(セゾン・郵貯)、JCBカード
通りゃんせ通りゃんせ、行きはこわ〜いが、帰りはよいよい:銀行の入り方
ヘァーカットはどうしたの?
各国のスーパー・マーケットとコイン事情
切符の中身、あれこれ
時差に思う
国際電話
旅の服装
旅先でのトラブル
各国のトイレ事情
ロマンチック街道とメルヘン街道
ヨーロッパの北の果て、北極圏ノールカップでの白夜

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