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「日本の長寿村・短命村―緑黄野菜・海藻・大豆の食習慣が決める」近藤正二 (著) 荻原弘道(付帯報告と解説)(サンロード出版 1991年4月新版)

→目次など

■1935年から36年間にわたって、日本全国の長寿村・短命村を聞き取り調査したうえで行われた講演を基にまとめられた読みやすい本。食事の影響、当時の人々の暮らしや、人体を鍛える大切などがわかる。■

三重県の南伊勢町の地図を見ると、○○浦という地名と○○竈という地名が並んでいます。この○○竈という地名は、平家の落人が住みついた場所だそうです。先住者である○○浦の漁師たちに、「魚はとらないからここに住ませてくれ」と約束して塩作りを生業としてきた集落です。それ以降、ずっと約束が守られており、○○竈の人たちは畑を作り、魚を食べたければ○○浦の人たちから買って食べています。その結果、皮肉なことに○○浦は短命、○○窯は長命になっているそうです。

本書は、日本全国の長寿村・短命村990カ所を訪ねて、長寿と短命を食生活が左右していることを指摘した名著です。調査の時期は1972年までの36年間。何度も版を重ねた後で新装版とし出版されたのが1991年、現在も新刊で入手できます。

小さい集落単位で調査が行われており、村人たちとの会話を多く収めた具体的な記述が続いています。講演を基にしているため読みやすい記述になっており、当時の農村や漁村の様子などもよくわかります。巻末には、本書の出版以降に寄せられた批判や社会の変化を受けた付帯調査と解説が追加されています。

たとえば、志摩の海女の集落を調査したときの記述には、海女たちが男を働かせないこと、甘いものが好きだがいざというとき力がでなくなるから少ししか食べないこと、人参は逆に力が出ることなど、伝統的な暮らしのあり方や、経験からくる知識を知ることができます。海女たちは12月1月の寒い時期も海に入る過酷な暮らしでしたが、七十八歳でグループの先頭に立って働くなど健康長寿である様子です。

逆に米どころの秋田県のある短命村では40歳を超えるといつあたる(脳卒中になる)かとビクビクし、六十をすぎると農作業を引退し、数年後には死んでしまう様子だったといいます。

いろいろなポイントから読むことができそうです。

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内容の紹介


<大豆製品を毎日かかさないこと>
  今度はその反対に長寿者がたくさんいる村があります。
  たとえば、島根県の隠岐の島に行きますと、七〇歳どころではなく、八十歳以上の人がたくさんおります。 (数字はそうなっているが、多分大部分の老人は遊んでいるんだろう。中には寝たり起きたりで、家族のやっかいになっている人が多いんだろう)ぐらいに思いながら、行って驚きました。
  なんと老人がほとんど働いているのです。
  どの家にもおばあさんしかいないのです。 おじいさんはそぼふる雨の中を若いものに「今日は雨だから私だけ行くから、お前たちは休んでいなさい」と野良に出かけたというのです。 - 40ページ


<一寸二分の米を食べる輪島の海女>
  志摩の海女が長生きであることは前にお話ししました。
  ところが能登半島・輪島の海女が対称的です。 彼女たちは毎年夏を中心に五カ月は沖合にある舳倉島(へぐらじま)で作業をしています。
  ところが、ここの海女はおしなべて短命で、作業に出るのも五十歳前でやめてしまいます。
  志摩の海女は、魚がたくさんとれても大食はしませんが、輪島の海女は魚と白米を多食し、野菜のとり方が少ないのです。 身近に野菜はあるのですが、買って食べようとはしません。 - 104ページ


「結語」から)
  私も米作地である新潟県の生れで、米にかたよった食生活をなが年つづけてきたのですが、今度の戦争で家を焼かれて裸になり、 大学の部屋で自炊生活を半年あまりしたのですが、これを契機に長年の食生活を捨てて、前にのべたような健康長寿のために望ましいと思われる食生活に改めたのです。
  特に毎食、大豆製品と魚を少量ずつ必ず食べるようにつとめ、また油も毎日必ず摂るようにしました。 すると自然に米の食べ方が少なくても十分満足するようになりました。 それとともに疲労しやすい体がいつとはなしに疲れを感じない、根気のつづくような体に変わってきました。 - 143ページ

大豆は素晴らしい食品であるようです。ただし、近年の研究によると、発酵していない大豆はあまり体によくないようです。 また、大豆を押し出したCMが多くみられることからわかるように、遺伝子組み換えによって大企業が支配する大豆ばかりが流通するようになってしまいました。 日本は米の国と言われてきましたが健康面から言うと米はあまり食べないようにするほうがよいこと、霊長類のもともとの食べ物である野菜がやはりよいこと、 一方で人類史上では後になったようやく最近利用しはじめた水産資源が体によいこと(特に丸ごと利用)など、食にはさまざまな側面があるといえそうです。



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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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