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「日本起源の謎を解く―天照大神は卑弥呼ではない」山本 健造 (著)(福来出版 1991年7月初版、1992年1月3版)

→目次など

■飛騨に住み、学術研究、財団法人を設立した研究者が放つ、日本起源論から世界平和への道。一般書店では入手できない福来出版の本。■

この本は、2007年8月7日に老衰のため94歳で亡くなられた山本健造氏の著作です。

カバーの裏表紙に先祖崇拝の御神体と崇拝される石冠の発掘分布部があり、飛騨地方を中心に東日本から東北にかけて分布している様子が示されています。これを見て、面白そうだなと感じ、入手してきました。

古事記や日本書紀を基本的に認めながら、飛騨に伝わる口碑に真実が描かれていたとし、高天原は飛騨であり、天孫降臨は気候変動による集団移動であるとする説が展開されています。在位年数の推定から天照大神の年代を推定して、卑弥呼は天照大神の子孫であり、九州にも近畿にも、青森にもヤマトがあったといいます。

さらに、神代文字で書かれたとする文書(上つ記、秀真伝、竹内文書など)の分析、偽書『東日流外三郡誌』、古代の絵文字(ヒエログリフ)、サンカ、日本語の起源、ヒトT細胞白血病ウイルスの分布、ミトコンドリアDNAに基づく分析、言語の成り立ちに見る瞑想文化と征服文化の違い、平田篤胤の復古神道と念写など、日本の起源が多面的に探られています。最後には、共産主義や社会主義の誤りを指摘して、国防重視の世界永久平和論につなげられています。

私は、日本の歴史は藤原家の歴史であると考えていますし、組織の大規模化はとるべき方向ではないと考えていますから、大いに異論のある内容が展開されていますが、興味の対象に共通性があり驚きました。なかでも、『一万年前 気候大変動による食糧革命、そして文明誕生へ』の安田喜憲氏や、『盗掘でわかった天皇陵古墳の謎』の安本美典氏に言及されている点は意外でした。安本氏による日本語の起源の研究は面白そうです。「日本人の源流を探して」>「第5部  神々の故郷と子孫」>「03.日本語の起源を探る-語彙統計学から-」に詳しく説明されています。

著者は、少年時代から神秘現象を研究し、十六歳で福来博士の著書を読み、超能力を得て、多くの難病者を救ったといいます。独学を続け、通信教育で日大文学部を卒業。教員を三十八年努めたとあります。修士を取得したのが64歳、飛騨福来心理学研究所を設立し、財団法人として許可されています。本書には、樋口清之博士からの手紙も収録されていて、著者が積極的に他者と関わっていった人であることをうかがわせます。

主流から外れた部分に注目し、一つのテーマに沿って研究を続けていき、著作や研究所という形で社会に問うという生き方は、私のあこがれるところです。「嘘」かもしれないところまで調べて初めて全体像が明らかになってくるということを再確認したり、我こそが正当であると考える傾向を再確認したりという意味も含め、手元に置いておきたい本の一冊でした。

超能力の科学的な研究に関連する本:
超心理学
自己暗示
催眠法の実際
脳の神話が崩れるとき
『思考のすごい力』

内容の紹介


箸の原型や、柏の葉の小皿、あるいは大嘗宮(だいじょうぐう)の原始的な造りなどをみても、日本民族と皇室の起源がいかに古いかということを示しています。 - 97ページ

大嘗祭は悪魔崇拝の儀式そのものだと指摘する人もあります。何にせよ、人の本来の集団サイズは150人程度。これを大きく超える集団は不自然であると考えたほうがよいのではないかと私は考えます。


篤胤は支那は孟子に及ばすインドの梵語(サンスクリット)やエゲレス語(英語)まで精力的に学び、それ等は神代文字の真似(まね)をしたのだと言ったり、コペルニクスの地動説まで研究して天地開闢(かいびゃく)の話まで書いたのです。 - 135ページ

鉄砲伝来の頃から日本征服を狙い続けた勢力は、平田篤胤ら国内の統幕勢力に働きかけていた。こう見ると、彼が英語やキリスト教を学んでいたことも納得できます。


黒曜石は火山の噴火にともなって生成される天然ガラスです。 石器を造る材料として優れたもので、日本の先祖は太古よりこれを使用して北海道、本州中部、九州などの黒曜石産地を中心に黒曜石文化圏が形成されていました。
  ところがソ連邦、沿海州のウラジオストック・ナオホカ周辺の八カ所の集落で採集された後期旧石器時代末葉、早期新石器時代、新石器時代末葉と鑑定される黒曜石製器片三十八点のうち、二十五点が島根県隠岐、青森県、秋田県の日本海沿岸の黒曜石原産のものと判明しました。 又原産地不明の黒曜石十三点は日本のものだということだけは、はっきりしています。 - 243ページ

『黒曜石の流通と消費からみた環日本海北部地域における更新世人類社会の形成と変容(I)』(http://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/dspace/bitstream/2261/53603/1/tjk010.pdf)によれば、ロシアの石器は白頭山産のようです。 ただし、東大の研究なのであてになりません。


その他、成人T細胞白血病のウイルス感染率から見ると、必ずしも縄文人の分布とは重ならない(沖縄とアイヌに多いが、飛騨地方にはほとんどない)ことや、動詞が先に来るのは征服型言語なのではないかという仮説も興味深い指摘です。


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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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