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「超心理学―封印された超常現象の科学」石川幹人 (著)(紀伊国屋書店 2012年9月)

→目次など

■科学的な立場から超常現象を探ることで、拡がる観点■

テレパシーや透視は実在するのでしょうか。念じることで物質を動かすことは可能なのでしょうか。

このような超心理現象に関する実験は、盛んに行われてきましたが結論は出ていません。しかし、それは現象が存在しないということを示しているのではないようです。本書によれば、超心理現象は、その性質上、通常の実験以上に厳しい統制が要求されるにも関わらず、何らかの作用が存在することは確認されているのです。

たとえば、超心理現象を信じない被験者に対するESP実験では、通常見込まれる得点(偶然の一致による確率)よりもかえって低い得点しか得られないといいます。これは、被験者が正しいターゲットを知ったうえで、「無意識にわざと外す」ことによって自分の信念に合致する行動をとり、その結果、通常ではありえない低得点をはじきだしたのではないかと考えられるのです。

テレパシーと透視に関する実験からは、テレパシーと思われてきたものが実際には透視だったのではないかという結果が得られています。テレパシーの送り手によって結果が変ることはなく、受け手のみによって結果に差が出るのです。

高得点者によると透視の際には、全体像が見えるのではなく、暗闇で手探りをするときのように、対象の部分部分を知ることができるだけであるといい、水や人体よりも地中の鉱物のような物体のほうが透視しやすいといいます。

幽体離脱や生まれ変りなど霊魂を巡る現象についても言及されており、いずれも透視能力の延長線上で説明できる可能性が示されています。別の本で、幽体離脱したときに、屋根の上にあるスリッパが見えたなど、不思議な事象が上げられており、どうすれば霊魂の存在を前提としないで説明できるのか疑問に思っていましたが、透視能力が実在するとすれば説明はつきそうです。

実験で高得点を上げやすい人の特徴や、超心理現象を信じやすい人の特徴、マスメディアや学問の問題点、実験において確認しにくい理由、現象の発生がごく低頻度であれば日常生活では「ない」とみなして構わないとする理由の考察など多岐にわたる議論があり、手元に置いておきたい本でした。

テレパシーや霊魂がなく、物質の透視能力だけがあるのであるとすると、人は心よりも物質に反応しやすい存在なのかもしれません。

関連書評:
脳の神話が崩れるとき』:幽体離脱など


内容の紹介


ハインズ本の批判が長くなったが、この本の日本における影響力は非常に大きい。 さまざまな疑似科学の解説本に引用されて問題を深めてしまっている。 なかでもよく売れた池内了の『疑似科学入門』(岩波書店、二〇一一年)の有力な参考文献となっており、超心理学者の活動の真の姿がまた歪んで伝わっている。 - 95ページ

理屈がわからなくても地面から浮きあがる人はいません。厳密な実験によって確認できる現象を理屈に合わないからと否定していてはお話になりません。


  松井の諸分析を通して、男女の差が明確に見える。 一般に女性は、周囲との融和を図るために超常現象を信奉するのに対し、男性はむしろ逆で、周囲とはべつに独自の世界や論理を構築する目的で超常現象を信奉する「不適応者」なのだ。 自分をふりかえってみて、男性の私は、とくに高校生時代、この男性の典型的傾向にやや当てはまっていた気がする。 しかし、こうした男女の差異は、超常現象信奉にかぎらず、認知や行動のうえでの平均的男女差として広く知られている。
  アーウィンと松井の分析の大きな共通点は、超常現象信奉の背景に「不安」があるという点だ。 たしかに超常現象の真偽論争をみていると、論争者の心理構造の中で、不安解消がひとつのテーマになっている気配がある。 というのは、論争者は判断の根拠が十分にないにもかかわらず、ホンモノだニセモノだと白黒つけたがる。 そこには、負けてしまうと自分の信念はもとより、自分を支えている世界が崩壊するような不安感がかいま見える。 - 128ページ

真実を知って絶望するよりも、幻想を信じていたい。


一連の実験が終了し消耗しきったナターシャは、透視結果のつき合わせに立ち会うのを拒んだ。 きっと、精神的なプレッシャーにそれ以上たえられなかったのだろう。 つき合わせは、実験中は待機していた医師の主導でなされた。 1番は健常者で的中。 2番目は盲腸の手術と透視したが食道の切除で外れ。 3番は心臓の手術で的中。 4番は食道の切除と透視したが脳腫瘍の切除で外れ。 5番は肺を切除した人で的中。 6番は脳の切除としたが盲腸の切除で外れ。 7番は人工股関節で的中。 七名中四名の的中で、偶然だとすれば五〇分の一の確率だ。
部屋に戻ってきたナターシャにワイズマンが結果を伝える。 ワイズマンには心なしか安堵の表情が見える。 なにしろサイコップはかつて三〇年間一度も「能力者」を認めたことがない。 今回認めるとすれば、その反響ははかり知れない。 - 138ページ

ナターシャは、ロシアの人体透視能力者です。 視線で合図を送らないようサングラスをかけた、手術歴のある六名と健常な一名を前にして、手術箇所を透視しました。 透視でないとしても、実際に結果を出しているということが本当は重要なのに、否定論者は否定的な結果が出るまで実験条件を変えていこうとするのです。


霊感を生かした企業コンサルタントとして身を立てる秋山眞人は、臆面もなくUFOや宇宙人に数百回も遭遇したと語る。 しかし同時に、「それを信じないでください」とも言い添える。 自分の体験としては事実だが、体験しない人々が信じようとすることは、混乱を招くのだと言う。
求めに応じてけだるそうにスプーン曲げを実演する清田益章は、「超能力に未来はない」と断言する。 益章が子どものころから現象を間近で見てきた彼の父親は、「何十年もあるなし論争ばかりで、一向に変わらない」とマスメディアや研究者に対する批判に語気を強める。 私は、ある種の「責任」を感じずにはいられない。
三人目の堤祐司は、日本にダウジングを普及させた重鎮である。 ダウジングとは、振り子やY字棒を道具にもち歩いて、その道具の動きからターゲットとなる物品などを探し当てる手法だ。 道具を媒介とした超能力発揮と見られ、それを得意とする者はダウザーと呼ばれている。 つまりダウジングは、無意識下に感知したESPを、器具を使って意識上に知らせるテクニックと解釈される。 - 155ページ

実験ではスプーン曲げのように物体を動かす力は確認されていないようです。


なにしろ科学者のなかでは、心理学者がもっともESPを信じていない。 人類学者で超心理学者でもあるジェイムズ・マクノレンの米国科学振興協会(AAAS)メンバーへの調査では、工学者の四〇%がESPを信じていてもっとも多く、生物学者は三四%、医学者は二八%、物理学者は一八%で、心理学者に至ってはわずか五%でもっとも少なかった。 - 169ページ

日本では御船千鶴子らの実験以来、心理学で超心理現象を扱うことが「封印」されており、もっと差がでると推測されています。


ポルターガイストが幻覚や詐欺、あるいは自然現象ではない場合は、ウィリアム・ロールによって、多くの場合、特定の人物が超心理現象の源となった「反復性偶発的PK」であると解釈されている。 - 209ページ

実際にPKがあるとすれば、死者の霊を持ちだす必要はなくなります。


パーマーは、ホノートンが行なったガンツフェルト実験の結果のデータベースを、ESP発揮に重要な性格指標はなにかという観点から分析した。 そのデータベースには、全参加被験者について性格検査の結果があった。 パーマーはそのうち、直観指向、感情指向、知覚指向が、特異的な結果を出した被験者に高いことを見出し、それらを合わせた性格概念に注目し、「自発的想像傾向」とみなした。 自発的想像傾向は端的に言うと、心のうちに自然に現れるイメージを積極的に求め、重要視する傾向である。 - 195ページ

超常現象を科学的に扱うことでしか、このような知識は得られません。 最終的に判明することが、被験者は透視を行っているのではなく別の能力を発揮しているのだということであったとしてもそれはそれで意味のあることはでないでしょうか。


心霊研究ではかって、霊魂の存在をもとに心霊現象の究明を目指していた。 心霊研究を起源に持つ超心理学は、心霊現象とされた諸現象のなかでも、体脱体験、臨死体験、生まれ変わり、ポルターガイストなどを研究対象としている。 しかし究明を続けるに従って、それらの現象も、従来の科学で説明できる通常現象と解釈されたり、霊魂によらない超心理現象と解釈されたりするようになっている。 批判者の一部は、超心理学を霊魂の研究と同一視して封印の対象とするが、それは誤解である。 - 284ページ

霊魂の存在を前提としなくても、私たちは祖先を敬い、祖先を感じることも、精霊を感じることもできる存在です。 自然界の命を見て、命の循環を知ることもできます。 霊魂を否定したことで私たちは人間性を失うわけではなく、自然界の宿命を否定して人間の精神を理想化したことが今のような自然破壊、人間疎外を生んでいます。


先に述べた、生まれ変わりを主張する子どもの特徴に、心理的な安定さは別にして、ポルターガイスト少女と似ている側面があるのではないだろうか。 この共通性から、超心理発揮仮説を再度組み立ててみよう。
八歳とはおよそ、子どもが自我を確立する時期である。 環境のなかにおける自己を反省的にとらえ「自分はこのような人間だ」という安定した観念を成立させようとする。 その自我確立の過程に長身的能力の発揮が伴う、と仮説するのだ。 子どもはみな、さまざまな手がかりをもとに「自分らしい自我」を創造しようとする。 しかし、より簡便な方法は、模範となる他者の人格を模倣することだ。
ここで私が提示する超心理発揮仮説は、この他者模倣を、ESPを駆使して過去の生者に対して行っていると考える。 つまり、自分にはこのような母斑がある、同位置に傷を負って死亡した過去の人がいる、その人の生活や人格を自分のものと考える、といった過程が無意識に、それも超心理的能力を伴って起こる。 その結果、人格が生まれ変わったかのようにふるまうという解釈だ。 殺人の被害者はよく生まれ変わるが、加害者は生まれ変わらないという調査事実も、殺人者が「模範となる他者」になりにくいからと解釈できる。 - 304ページ

「過去の生者に対して行っている」の内容が不明ですが、生まれ変わりではなくESP能力であるかもしれないという視点から調べなおすと新しい事実が見えてくるかもしれません。


超心理現象があるとすると、それは人間が発揮するものでも、霊魂がひき起こすものでもなく、世界という場(環境)に拡がった心、およびその集合体が全体として、そして個々にも調和を求めた結果のように思えてくる。 - 310ページ

宇宙の質量を説明するために仮説として考えだされた暗黒物質のようなものを想定すれば、透視などの現象を説明できる日が来るのかもしれません。

本書では、参考文献も豊富に紹介されています。


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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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