違法(無断)駐車対策

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2015.4.30mf更新
弁護士河原崎弘
相談
私はマンションの管理組合の役員をしています。当マンションでは無断(違法)駐車に悩まされています。車を、コイン式パーキングの正規の位置に置かず、ずらして置き、メーターが作動しないようにしている人がいます。駐車料金を免れるためです。
車に「駐車禁止」の張り紙をしましたが、張り紙ではあまり効果がありません。どのようにしたら、よいでしょうか。
警察に頼んでも、「敷地内のことだから警察は関与できない」と言って、相手にしてくれません。
相談者は、弁護士を訪ね、話を聴きました

回答
これは、道路交通法が規定する駐車違反とは、異なります。
まず、車を正規の位置に置かず、ずらしておき、コイン式パーキングの「駐車料金を免れる行為をした場合には、1回につき1万円の使用料を頂きます」との掲示を出し、違法駐車を発見した場合には、写真を撮り、使用料を厳しく請求して下さい。
掲示を見て駐車した場合は、駐車料金1万円を支払う意思で駐車契約をしたと解釈できるからです(意思実現による契約の成立:民法526条2項)。ただし、裁判をした場合、裁判所が1万円を認めるかは若干問題です。この場合、金額が少ないので簡易裁判所の管轄となります。実際に、訴えを提起した人がいましたが、裁判官は戸惑ったようでした。
金額が高すぎると、暴利行為として無効になるのです。高すぎるかどうかの基準は、3倍です。 「通常の駐車料金の3倍を戴きます」との表示がいいです。鉄道などでも、約款で、不正乗車は、通常の運賃の3倍と規定されています。それ以上だと、暴利行為で無効となるでしょう。
さらに、前記掲示とともに、「無断駐車の車には鎖で車を柱に取付け、通常の3倍の駐車料金を払った場合に解除します」と掲示し、実際に、車の牽引用のフックなどに鎖を取付けたらいかがでしょう。
掲示は大きく、場合によっては数箇所出し、相手が「見なかった。知らなかった」と抗弁できないようにしておく必要があります。

相手が支払わない場合は、内容証明郵便で請求し、それでも支払わない場合は、支払督促の申立てをしてください。陸運事務所(東京陸運局は03-3458-9232)へ行けば、車の所有者の住所、氏名を知ることができます。
簡単な方法ですが、不正駐車をした者に対し、訪問先の部屋の番号を尋ね、(訪問先の)居住者から注意してもらうことも効果的です。

次に、無断駐車は、刑事上も違法でないかと考えます。業務妨害罪(刑法234条)の成立が考えられます。有料の駐車場提供という業務が、無断駐車の車により、無断駐車との威力で、妨害されています。
また、一定の囲いの敷地内あるいは建造物内に駐車場があれば、邸宅、あるいは建造物侵入罪(刑法130条)に該当します。
悪質な無断駐車に対しては、管理組合の理事長が、これらの犯罪で警察に告訴して下さい。告訴を受理すると、警察には捜査をする義務が生じます(刑事訴訟法242条)。警察は告訴の受理を嫌がるでしょう。あくまで、普通の態度で、警察に告訴の受理を粘り強く求めてください。

コメント
〇〇〇病院です。当病院も違法駐車で、大変困っています。大変参考になりました。だだ、刑法第 130 条の住居侵入罪の適用ですが、車が駐車することをもって、直ちに建造物侵入罪は、少々苦しくありませんか。130 条は、行為者の主体はあくまで人(自然人)であって、車は財物に過ぎませんので、適用は難しいと思いますが。

お答え
車に人が乗って敷地内あるいは建造物内に入ったのですから、刑法第 130 条が適用されます。特に問題はありません。

暴利行為
掲示金額が、通常の駐車料金あるいは通常の損害の3倍程度を超えると暴利行為として無効とされる可能性があります(民法90条)。その場合、裁判所が認めるのは通常の駐車料金程度です。
相手を威嚇するなら掲示金額は10倍程度の金額を掲示すると良いでしょう。
実際に取り立てる目的の場合は、どの程度なら暴利行為とされないかは難しい問題です。「旅客および鉄道荷物営業規則は運賃の3倍の制裁金を認めています。また、債務の8倍強の不動産の代物弁済予約は公序良俗に反すると判決されています(最高裁昭和32・2・15)。
平成13年4月1日施行の消費者契約法には、「消費者の利益を一方的に害する条項は無効とする」との規定があります(10条)。この規定も考慮しなくてはなりません。
そこで、実際に取り立てる目的の場合は、通常の駐車料金の2倍ないし3倍程度を心つもりにしておくと良いでしょう。

民法
第526条(隔地者間の契約の成立時期)
申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。

刑法
第130条(住居侵入等)
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
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・・・
第233条(信用毀損及び業務妨害)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第234条(威力業務妨害)
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

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