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2016.1.17mf
弁護士河原崎弘
貸主が不動産を共有している場合のサブリースにおける賃料減額
サブリースとしての共有建物の賃貸借契約における賃料減額の合意に共有者全員の同意が必要か
(工事中)
相談
当社(不動産会社)は、不動産のサブリースを主たる業務にしています。当社が賃貸借契約(サブリース契約)しているマンション1棟(114室)は、相続物件であるために、オーナー(貸主)5人の共有となっています。当社は、マンション1棟を5人から借りています。
当社は、3人とは賃料減額の合意をしたのですが、残りの2人と合意ができておりません。この契約期間は20年です。
貸主の過半数が同意していますので、賃料は減額されたと考えてよいでしょうか。そうでないと、協力して賃料減額の合意をしてくれたオーナーには、少ない賃料を支払うことになります。これは、どのように処置したらよいでしょうか。
相談者は、顧問の弁護士事務所を訪ねました。
回答
サブリース契約において、賃料を減額しないとの特約があっても、賃料減額請求は可能です。
一般にオーナー(賃貸人)が共有している不動産の賃貸借契約において、賃料の変更は管理行為であり、共有者の過半数で決めることができます(民法252条)。しかし、長期にわたるサブリースのような賃貸借契約では、このとおり管理行為になるか疑問です。
下級審ですが、判例では、民法605条の期間(建物については3年)を超える賃貸借契約締結は処分行為であり、従って、賃料変更も処分行為であり、貸主全員の同意を要するとしたものがあります(民法251条)。
あなたの会社が、一部のオーナーと賃料減額の合意をしても、それは他のオーナーに主張できない可能性が大きいです。そこで、賃料減額するには、一部のオーナーから減額の同意を取り付け、さらに、オーナー全員に対しては、借地借家法32条に基づき賃料減額請求をするとよいでしょう。
判例
- 東京地方裁判所平成14年7月16日判決(出典:金融法務事情1673-54)
上記合意によって本件賃貸借契約の賃料が減額されたかどうかについて検討する。
一般に共有物の賃貸借契約において賃料変更の合意は、共有物の管理行為に該当し、賃貸人である共有者の過半数でこれをすることができるものと解される。
しかしながら、民法602条所定の期間を超える賃貸借契約(長期賃貸借)を締結することは、共有物の管理行為ではなく処分行為であり、共有者全員の同意を要するものとされていること、本件のような大規模ビルを目的とするサブリース契約における賃貸借の合意においては、賃貸人である建物共有者の権利内容は賃料収受権のみであるといっても過言ではないところ、賃料の変更は共有者の権利に対して重大な影響を与えるものと考えられること、本件賃貸借契約においては、前記のとおり、賃貸借の中途解約権が契約上否定され、その反面、賃貸人は賃貸借存続期間中一定額の賃料を得ることを期待しうる地位にあること、本件賃貸借契約においては、賃料の変更につき、「賃料は、租税公課の大幅な改定、その他経済情勢に著しい変動があった場合、この契約締結後3年経過するごとに、他権者U及び被告が協議の上改定できる。」と定められており(第2の1(4)カ)、これは、賃料変更の合意については、賃貸人である共有者全員の同意を要するとの内容を示したものと解すべきこと等を考慮すると、本件賃貸借契約において、賃貸人、賃借人間の合意により賃料を変更する場合には、賃貸人である共有者の持分の過半数を有する者と賃借人の間における合意のみでは足りず、賃貸人である共有者全員の同意を得る必要があるものというべきである。
したがって、本件共有者(持分過半数)と被告との合意により賃料額を減額することはできない。
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