登山NO.0078 蔵    王( 熊野岳:1,841m ) 1998.10.12登山


 馬ノ背から見た御釜( 1998.10.12 )

【蔵 王登山記録】

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NO.78 蔵 王登山記録

八幡平・裏岩手連峰を縦走した後、その日は盛岡に泊まった。
翌日は、 6時21分盛岡駅発の新幹線に乗るべくホテルを6時にチェックアウトしたのだが、 外へ出てみると本日は晴という天気予報にもかかわらず、 周囲には霧が立ちこめており、 道路も濡れている状況だったのでビックリしてしまった。

確か、昨日早朝に盛岡駅に着いた時もこんな状況だったかなと思いながら、さして気にもせずに新幹線に乗ったのだが、 この霧は新幹線で仙台へ向かうに連れてひどくなり、 途中では全くといっていい程視界が利かない状況となって、 これはまずいゾという、 何とも言いいようのない情けない気分にさせられた。

しかし、仙台が近くなり、4つ程連続したトンネルを抜けた途端、今までの霧が嘘のように無くなって、仙台方面の町並みの上に美しい青空が広がっていたので、 この変化の激しさに 再度ビックリしてしまった。 大変嬉しい。

ところで、盛岡駅6時21分発のやまびこ32号は仙台行きの、いわゆる通勤新幹線というやつらしく、月曜日から金曜日の間だけ運行されるもので 全席自由席であった。
出発した盛岡駅ではほとんどガラガラだった席も、 途中の駅でどんどん人が乗り込んできて、 仙台駅に着いた時にはほぼ満席の状態となったのだが、 サラリーマンやOL、 そして旅行者風の人に混ざって、 制服姿の高校生が多く乗り込んできたのには驚かされた。

彼らは新幹線通学をしているのだろうか、それとも高校の関係で下宿をしており、土日を親元で過ごしたのであろうか、 などと余計なことを考えてしまった。

仙台駅着が7時43分、蔵王行きのバスは8時30分であるから、かなり余裕がある。
それではと、 フィルムと水、そして昼食用の駅弁を仕入れるべく、 少し仙台駅前をブラついたが、 多くのサラリーマンやOLがオフィスに向かう中、 リュックを担ぎながら歩くのは 何となく場違いな感じを受けた一方で、 「今日は休みだぞ。いいだろう」 などというつまらない優越感に浸ってしまったのは、 何とも情けない。

バスは平日ということもあって4人しかいない乗客を乗せて定刻に仙台駅を出発し、途中東北自動車道を通り、 遠刈田温泉で白石蔵王駅からの乗客を数人加え、 10時2分に表登山口に着いた。

昨日の八幡平と同様で、乗客の中には登山姿の人も数人いたのだが、皆、そのまま刈田岳頂上まで行くらしく、 この表登山口で降りたのは私一人であった (ここで下車した理由については、「山の雑記帳:八幡平、蔵王の山旅」 参照)

途中の滝見台でバスが停車してくれ、樹林の間をかなりの高さから落ちている三階滝を見せてくれたのだが、 運転手さんの話だと、 今年はどういう訳か紅葉が始まらないのだそうである。
今時分なら、 この三階滝は紅葉の中を流れ落ちる一筋の白糸といった感じで 大変見応えがあるようなのであるが、 運転手さんの言う通り まだ緑が多く目立つ状況であった。

表登山口からは、峨々温泉へと通じる道路を20分ほど進み、山裾に建つ立派な構えの峨々温泉の東側から山に取り付くこととなった (10時23分)

道は、いきなりクヌギやナラなどの林の中をジグザグに急登することとなり、昨日のロングコース縦走の後だけに、 どうも体が重く、 ついていかない。

汗をダラダラ流し、喘ぎながら登り続けると、一旦傾斜が緩やかになって小さな沢を横切ることになったが、 この水が大変美味しく感じられた。
沢を横切るとまた急な登りとなり、 ほとんど風もない中、 苦しい登りは続いたが、 汗を結構流しているうちに体も軽くなり、 やがて道も平らになって青根温泉への分岐である猫鼻へ着いた (11時5分)

猫鼻というからには、見晴らしの良い岩場を想像していたのだが、単に樹林の中のT字路に過ぎず、正面の木に 消えかかった文字の標識が打ち付けてあるだけであった。

岩場であれば大休止をとろうと思っていたのだが 休むのに適当な場所も見つからず、また猫鼻手前に 「熊出没 注意」 の標識もあったものだから、 休みたいのを我慢して左へと道をとった。
また、右の青根温泉への道は荒れているような感じで、 あまり人が歩いていないようであった。

猫鼻からは、先ほどまでの急登とは打って変わって緩やかな樹林帯の中の登りとなり、木漏れ日の中を気持ちよく歩けたのであるが、 先ほどの 「熊出没」 が気になったため、 携帯ラジオを取り出して、 ボリュームを上げながら歩くことにした (東北高校と金足農業高校との 高校野球東北地区大会決勝戦をやっていた。 金足農業が優勝)

緩やかな道も、それがあまりに長く続きすぎるとその単調さに辟易とさせられるものだが、 この道も同様でいい加減イヤになってきたところ、 樹林も切れ切れになり始め、 左手に刈田岳、 熊野岳、 そしてそこから続いている尾根 (そこへ向かっている) が見え始めたので、 やや元気が出てきた。

やがて、周囲の木々も低くなり、貧弱とは言え、赤や黄に染まった木々が目に付き始めると、 ヒョイと尾根に飛び出して 熊野岳からの縦走路に到達することができた (12時17分)

一旦、名号峰(みょうごうほう、みょうごぼう)に行くべく、右に道をとると、すぐに白砂の岩場となり、やがて 立派な標識が立つ名号峰頂上であった (12時21分)

名号峰は花崗岩の点在する明るい頂上で、西方が大きな熊野岳や刈田岳の山並みで視界を押さえられている以外は、 大変素晴らしい展望を有しており、 特に北に見えた月山 葉山、 鳥海山の雲に浮かぶ姿や、 北東に見えた形の良い雁戸岳 (がんどだけ) 仙台市街方面が印象的であった。

頂上で昼食を食べ、暫く休憩した後、目の前に大きく立ちはだかるような熊野岳を目指して出発した。
カモシカ温泉跡への分岐点となる追分を過ぎていくと (13時7分) 岩とハイマツとシャクナゲなどが上手い具合に配置された自然の庭園となったが、 ここが自然園と呼ばれるところである。

この自然園を過ぎると、いよいよ熊野岳への登りで、ガスなどが出たら迷ってしまいそうな溶岩帯の広い斜面になっており、 目印に置かれている丸太の棒を辿りながらの辛い登りとなった。

しかし、高度を上げていくにつれて、振り返った景色が素晴らしさを増し、また今までほとんど吹いていなかった風も吹き出してくれたので、 喘ぎながらではあるが 頑張って辛い斜面を登り切ることができた。

と、思ったのは間違いで、頂上の一角と思っていた先にはさらに平らな台地が広がり、その先に本物の熊野岳への最後の登りが待っていた。

この頃になると太陽がやや雲に覆われ出したので、せっかくの頂上での景色が心配であったのだが、どうにかガスなどは避けられそうであった。

ようやく頂上の一角にたどり着くと、右手にコンクリート作りの避難小屋が見えたので、そこが頂上と思い行ってみると、 確かに熊野岳と薄く消えかかった標識があり、 斉藤茂吉の歌碑らしきものもあったのだが、 どうも違うようである。

斉藤茂吉の歌碑と思ったのは何処 (いずこ) かの中学校の遭難碑で、では頂上はどこかと見回すと、少し先に赤い屋根が見えたので、 帰りのバスの時間との兼ね合いもあって やや駆け足になりながら平らな尾根道を進んだ。

赤い屋根は熊野神社の社 (やしろ) で、ここが熊野岳頂上であった (14時10分着)

神社に参拝した後、裏手に回ると、熊野岳と書かれた立派な標識や三角点、そして斉藤茂吉の歌碑があり、やれやれである。

熊野岳の展望は大変素晴らしく、先ほど名号峰で見た月山鳥海山はもとより、朝日連峰、飯豊連峰、そして刈田岳、 同じ蔵王連峰の屏風岳、 後烏帽子岳など360度の大展望であった。

もっと長時間居たかったのだが、バスの時間もあり、居合わせた人に記念写真を撮ってもらった後、御釜への道を下った。
御釜は、 蔵王のハイライトとも言うべきもので、 想像よりかなりスケールが大きく、 エメラルドグリーンの水を湛え、 周囲の茶褐色や灰色の世界の中にあって ひときわ目立つ姿は神秘的でさえあった。

馬ノ背を刈田岳へと一旦下っていくと、そこからは最早観光地へと様変わりし、スカート姿やジャケット姿、 革靴を履いた観光客で一杯であった (月曜日なのに何と人が多いことか)

最後の目的地である刈田岳は、馬ノ背から階段を昇るようになっており、着いた先には刈田嶺神社の他、色々なモニュメントが置かれていた (15時5分)

刈田岳と書かれた非常に背の高い立派な標識もあったにはあったのだが、記念写真を撮るには背が高すぎて、 結局刈田岳では記念写真も撮らずに下りてきてしまった。

観光客でごった返す頂上駐車場に下りていくと、既に15時20分発白石蔵王駅行きのバスが止まっていたので、 中で上半身を着替えさせてもらった。
バスは、 定刻通り蔵王を後にしたが、 乗客は私を含めてたった2人であった。

蔵王は刈田岳 − 御釜までは完全に観光の世界であったが、熊野岳から先は素晴らしい景観を持つ登山の世界であり、 その一端に触れられたことに大いに満足した山旅であった。


蔵 王登山データ

上記登山のデータ登山日:1998.10.12 天候:晴時々曇り単独行日帰り   (前日八幡平登山、盛岡泊)
登山路:表登山口−峨々温泉−猫鼻−名号峰−追分−自然園−熊野岳避難小屋−熊野岳− 御釜−馬ノ背−刈田岳−刈田山頂駐車場
交通往路八幡平登山、盛岡泊)   盛岡−(東北新幹線)−仙台−(バス)−表登山口
交通復路:刈田山頂駐車場−(バス)−白石蔵王−(東北新幹線)−東京−(東海道本線)−横浜−(相模鉄道)−瀬谷


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