登山NO.0034 黒 部 五 郎 岳( 黒部五郎岳:2,840m ) 1991.7.30登山


 鷲羽岳頂上から見た黒部五郎岳( 1991.7.29 )

【黒部五郎岳登山記録】

【黒部五郎岳登山データ】

フォト


NO.34 黒部五郎岳登山記録

注:ここまでの行程は黒岳の項及び鷲羽岳の項を参照下さい。

風は朝方には止んでいたものの、昨晩からの雨は朝になっても止まず、今日は一体どうなることやらと不安を抱きながら テントの中で朝食をとった。

暫くすると、雨が一時的に止んでくれたので、この間を利用して急いで三俣山荘へ行ってトイレを済ませ、 テントを畳み、 レインウェアを着て出発した。

テント場からすぐの所で大きな雪渓を横切る場所があったが、再び降り出した雨に加えてガスも発生してきたため 視界がきかず、 雪渓を横切る場所が分からなくなって 暫く雪渓の周りをウロウロしてしまい、 雪渓の向こう側からこちらへ来る人がいたので、 ようやく渡ることができた。

出だしから躓いた感じであるが、さらに失敗は続き、雪渓を渡って丘のような所を乗り越え、暫く進んだ後、 本当は左下の方へと下りるべきところを、 踏み跡らしきものを辿ってまっすぐ進んでしまい、 岩場の崖っぷちに出て 先に進むことができなくなってしまったのである。

崖の上から周囲を見渡すと左下の方に溝のような道があって、そこを歩いている色とりどりのレインウェアの一群が見えたので、 本来の道を確認できたが、 朝の雨で少々動揺していたのかもしれない。

さらに、本来は三俣蓮華岳に登ってから黒部五郎岳に向かうつもりであったが、どういう訳かここでも道を間違えたらしく、 三俣蓮華岳の頂上を避けて山腹を巻く道を進んでしまい、 いつの間にか黒部五郎小舎のある 五郎平の草原に飛び出して、 自分自身大変驚いてしまった。

これはどうもイカンということで、心を落ち着かせる意味で黒部五郎小舎に入ったところ、ラーメンの文字が目に飛び込んできたので、 朝っぱらから注文を聞いてもらえるのか と思いつつ頼んでみたところ、 作ってくれることになり、 狭い玄関口に座り込んで食べさせてもらった。

こういう山の中で食べると、格段に美味しく感じるもので、暖かいものが胃を満たしていくと、心も何か落ち着きを取り戻してきた様であった。

小舎にはリンゴが売られていたが、これから先、雨の中で昼食をとらねばならなくなることを想定して2つ買い、 レインウェアのポケットに入れて再び出発した。

小舎の前に広がる五郎平は、とても山の中にあるようには見えない広い牧草地のような所で、雨が降っていなければ さぞかし気持ちよいだろうと思いつつ 道を右にとり、 やがてまた山の中に入った。

登山道はよく踏まれており、途中多くの沢を横切りながら進んだが、こういう雨の中の歩きは、黙々と進むしかなく、 返って晴れた日よりもペースがあがる。

やがて五郎のカールの縁に辿り着いたものの、上の方は霧がかかっていたためカール全体を見渡すことはできず 大変残念であったが、 それでも多くの小川が流れ、 その名の通り羊が何匹もいるような 羊群岩が点在するのを見て、 カールの底の雰囲気を少しは味わうことができた。

石に付けられたマークを慎重に辿ってカールを詰めていくと、やがてカールの壁を登って五郎岳の肩へと続く道となったが、 そこは砂利を固めたような道で 足場もあまり良くなく、 ジグザグな登りは急で、 激しく降る雨といつの間にか強く吹き始めた風の中で たびたびよろけそうになり、 さらに上方を見ても雨で道の終点が確かめられないことから、 この苦しさが永遠に続くのではないかと思う程辛かった。

喘ぎ喘ぎして肩に辿り着いて、道を左に取り、黒部五郎岳の頂上に向かったが、頂上には野口五郎岳や鷲羽岳の頂上にあったような 黄色の立派な標識はなく、 石を積み重ねた中に安置された小さな石仏 ? と、 その傍らに、 黒部五郎岳と黄色い字で書かれた板きれがあるだけであった。

この頃になると、風は依然強く吹き荒れていたものの雨はほとんど止み、先ほどの登りの苦労が嘘のように思われる状態となり、 丁度登り合わせた人と 記念写真を撮り合うことができた。

肩まで戻り、太郎平の方へと下ったが、こちら側は先ほどのカールの登りとは違って、ハイマツの中を進む広々とした下りで、 台風のように強い風によろけながらも 気持ちよく歩くことができた。

北ノ俣岳、太郎山を経て薬師峠のキャンプ場へ行く道のりは大変長い上に、風が止んできたと思ったら今度は 霧が立ちこめてきたため、 周囲の景色を眺めることもできず、 単調で飽き飽きしてしまうものであった。

途中、昼食をとろうとしたが、荷を開けてコンロを取り出すのが非常に億劫だったので、 今朝ほど黒部五郎小舎で購入した リンゴ2つで済ませてしまった。

リンゴをかじっていると、私がこれから進もうとする方から登山者がやって来たので、言葉を交わしたところ、 驚いたことに その人はこれから薬師岳へ行くのだという。
方向が逆ではないかと問うたら、 先ほど黒部五郎岳を登ってきたので間違いない と主張するので、 地図を見たが、 周囲は霧で目印となるものが全く見えず、 またコンパスも持ち合わせていなかったため、 どちらが正しいか を証明できずに弱ってしまった。

私は自分が正しいことは信じて疑わないが、その人がこのまま進んだら気の毒なので何とかしたいと思っていたところ、 もう一人の登山者が通りかかり、 結局多数決のような形で間違いを修正することができた。
それにしても、 1本道なのにこのようなことがあるのか とビックリしてしまった。

北ノ俣岳を越えると、池塘の点在する場所になり、そこから広い草原の尾根を登っていくと太郎山で、 そこからは 太郎平小屋がすぐであった。

太郎平小屋によってチョコレートを買って糖分を補給し、そのままニッコウキスゲが咲く林道のような道をゆっくり下って 薬師峠に向かった。

薬師峠では既に多くのテントが張られていたが、奥の方に少々斜めであるがまあまあの場所をみつけてテントを張り、 まずはレインウェアをテント上に干し、 シュラフが少々濡れていたので ランタンを使ってその熱で乾かした。

キャンプ場の管理所にて冷やしたビールを買い、少々酔っぱらいながら夕食を食べ、明日は良い天気であることを祈って 9時にはシュラフに横になった。

この続きは 薬師岳の項を参照下さい。


黒 部 五 郎 岳 登 山 デ ー タ

上記登山のデータ登山日:1991.7.30 天候:雨(強風)後曇り単独行前日泊
登山路:三俣キャンプ場(テント泊)−黒部五郎小舎 −五郎のカール−黒部五郎岳肩−黒部五郎岳−黒部乗越−北ノ俣岳−太郎山−太郎平小屋−薬師峠キャンプ場(テント泊
交通往路黒岳の項参照
交通復路:薬師岳へ縦走。薬師岳の項参照
その他:7月29日は三俣キャンプ場泊。翌30日に黒部五郎岳登山。
30日は薬師峠キャンプ場泊。


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