自動化設備による組立、加工ライン(マシンネック工程のライン)の生産性を現す指標には、[設備総合効率]と[一人時間当り出来高]とがある。この自動化設備による組立、加工ラインの生産性を向上する改善の狙いと改善手法について以下に整理した。
生産性向上の狙い
1)出来高向上
生産要求量の拡大時、生産能力確保の為に、所要人員は一定で時間当り出来高を上げる改善。
2)省人化
生産要求量は一定で生産タクトを変えずに省人する改善。
又は、要求生産量が減少する中で省人と一人り当り出来高を上げる改善。
以上の狙いを明確にして次の改善手順で取組む。
ライン改善の手順と改善方策
手 順 | 改 善 内 容 解 説 | 改 善 方 策 例 |
1ステップ | ・設備総合効率を把握しラインの効率阻害ロスを明確にする、時間稼動率の阻害ロスの改善 [設備総合効率](ここをクリック)の中で、時間稼動率の阻害ロスである「段取り時間」と「工具交換」時間の短縮に取組む。 「段取り時間」の改善方策はここをクリック。 時間当り出来高のバラツキを合わせて調査する。この中で極端に出来高を落しているロスの改善である。 さらに、工程不良と手直しの実態を把握し、ワースト不良現象から取組む。 (品質保全の展開ここをクリック) 「設備・型故障ロスについては、別途「自主保全活動」と「計画保全活動」を展開する。 (「自主保全活動」と「計画保全活動」の詳細はここをクリック) |
・運転操作の標準化 ・設備総合効率の把握 ・生産進捗の時間当り 出来高把握方法の改善 ・段取り短縮個別改善 ・段取作業手順化と訓練 ・生産ロットサイズの改善 ・生産指示方法の改善 ・不良、手直しの改善 ・設備自主保全活動展開 ・設備故障解析と再発防止 |
2ステップ | ・設備総合効率をの性能稼動率の阻害ロスの改善 性能稼動率阻害ロスのうち「チョコ停」「空転」「部品供給出荷」の改善に取組む。 「チョコ停」の改善方策はここをクリック。 次に、「サイクルタイム短縮」に取組む。(注意:チョコ停を改善する前に取組まない事) 「サイクルタイム短縮」の改善方策はここをクリック。 |
・朝の作業準備短縮改善 ・管理記録作業の改善 ・設備チョコ停の個別改善 ・検査測定方法の改善 ・部品供給出荷容器入替 えのワンタッチ化改善 ・M/Cサイクルタイム短縮 の個別改善 |
3ステップ | ・連続自動運転(有人),昼休み・直間無人運転への改善 3ゼロ(不良ゼロ、故障ゼロ、チョコ停ゼロ)を実現し、連続自動運転時間(有人で材料の供給出荷、品質確認を行うが設備は止まらない状態)の延長に挑戦する。 連続自動運転が一時間以上達成したら、昼休みの完全無人運転実施の阻害作業の改善(材料の供給出荷、品質確認)を実施する。 昼休み無人運転の次に直間無人運転に挑戦する。但し要求生産量がない場合は無人運転の必要が無いが無人運転の実力が確認されれば、次のステップの有人稼動時間内で自動化ラインの一人掛け持ち台数の増加が可能になる。 |
・ノータッチMTBFを測定 ・部品供給出荷方法の 改善 ・自動検査装置の改善 ・自動工具交換の改善 ・無人異常停止防災装置 の改善 |
4ステップ | ・要求生産量の減少に対する作業編成組合せの改善 要求生産の変動に対して多少の減少は負荷時間の調整となるが、大きく変動した場合は当然所要人員の減少が必要になる。(自動化ラインの場合は生産量の増加に対しては設備のサイクルタイムで能力が限定されるため、所要人員での対応は出来ない。1〜2ステップの改善方策を行う。) この生産量の減少に対応し生産性を低下させないで自動化ラインの人員配置と設備レイアウトと生産方式を設定する。 この時に一人の掛け持ち生産による間欠停止(間欠発生する計画停止)が発生する、又一人で掛け持ち設備の工具交換や段取り作業を行うことから設備総合効率面ではロスが発生する。しかし一人時間当り出来高は向上する。 生産方式では、ラインを要求量に合わせたタクトで生産する「間欠生産」と、一定の量をまとめ生産してラインを渡り歩く「渡り鳥生産」のどちらが効率的かよく検討して決める。一見「渡り鳥生産」は効率的に見えるが、次工程間に在庫を大量に造ってしまい。容器、運搬、在庫のロスを生む。「間欠生産」生産は、設備の効率は低下するが。必要な要求量をこまごま生産するため、次工程間の在庫は極少ですむ。 生産要求量によって非量産は「まとめ渡り鳥生産」、中量生産以上は「間欠生産」を選択すると良い。 尚、「まとめ渡り鳥生産」の一回の生産ロットは、出荷サイクルの生産量の範囲内とする事。出荷サイクル内の一分割生産から始める、さらにニ分割生産に改善すると良い。(一分割生産のリスクは、生産中に設備故障等が発生するとその後に生産する製品の出荷に対して完全未納を発生するからである。二分割以上の生産では最低限の出荷が可能になる。) |
・要求量変動人員組合せ 配置の改善 ・最適生産方式の設定 ・出荷サイクルに対する 分割生産方式の改善 ・工程レイアウトの改善 ・他ラインとの結合及び 集合化(二の字化) ・非量産ラインの結合 汎用化改善 |
5ステップ | ・前後工程との物の流れ運搬、生産指示方式の改善 前工程からの物の流れ、後工程への物の流れ方(生産ロットサイズ、荷姿、SNP、運搬方法、運搬タクト)の改善を実施する。 前後工程間の仕掛かり在庫、段取りロット在庫、完成在庫、運搬ロス等生産方式の改善を行う。 |
・生産タクト同期化 ・容器、SNPの統一 ・運搬方法の改善 ・前後工程のライン直結化 ・生産指示、出荷指示の 目で見える化 |
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