段取改善マニュアル


1.段取り短縮改善の必要性

 製造ラインで製品の品種切り替えを行うラインは大変多い。そのために段取りロット在庫と段取り時間のロスが生産性を低下させている。
 段取り時間の短縮改善の効果は単に設備総合効率の向上だけでなく、段取りを細かく行う事によりロット在庫を削減し生産リードタイムを短縮することが出来る。即ち生産システム全体が弾力的になる。又、段取り短縮の改善内容はMP情報として、次に計画される設備の設計に反映される。


2.段取り換えの分類


 製造プロセスによって次のように分類される。
@金型の交換型
  ・プレス ・樹脂ゴム成型 ・鋳造 ・ダイキャスト ・鍛造 など
A切削工具、取り付け具の交換型
  ・機械加工 ・溶接 ・組立 など
B制御プログラム変更型
  ・自動組立 ・ロボット塗装 ・電子部品実装機 など
何れの場合も製品の搬送爪や製品供給出荷の交換などが伴っている。

3.段取り短縮改善の視点

 段取り作業を大別すると、「外段取り作業」と「内段取り作業」に分けられる。さらに「内段取り」は[準備作業][交換作業」[調整品質確認作業]に分類される。それぞれの作業改善の視点は次のようになる。

[準備作業]の改善視点
@準備の外段取り化
A工具の専用化と作業位置へ設置

[交換作業」の改善視点
B締付けのワンタッチ、クイックチェンジ、ボルトレス化
C移動歩行距離の短縮近接化
D同時作業化

[調整品質確認作業]の改善視点
E調整の調節化(目盛り合わせからブロック突き当て化)
F位置決め基準の不動化
G一発良品化(一発不良の要因解析実施−なぜなぜ解析、PM分析)

共通改善の視点
H作業の安全化
I作業手順の平準化

4.段取り改善の実施方法

 具体的な段取り改善の実施手順は次の改善ステップにより取組むが、常に[公開段取り]を基本にしている。この[公開段取り]は大勢の観察者の中で最も習熟したオペレーターで段取りを行う。そこで上記の改善の視点から改善アイテムを出し、改善を分担して実施する。この[公開段取り]を何回も繰り返し更なる改善を積み上げる。
 次にこの改善後の作業手順を標準化して、他のオペレーターも同じ段取り時間で出来るように訓練して、[公開段取り時間]=[通常段取り時間]にする。

[公開段取り]の実施方法
 公開段取りとは段取り作業の現状分析や改善アイテムの発掘、改善効果の確認を関係部署、スタッフ、管理者の立会い(総勢最低でも10名以上)の中で実施する段取りである。よって段取り改善活動の活性化と多くの人の目で改善アイテムと改善アイデアを摘出する場である。
実施要領
1.公開段取りの実施日時を参加者に事前通知する。
 (参加者:工場長、関係職制、生産技術スタッフ、監督者、推進事務局など)
2.必要帳票、道具の準備
 (・時間分析表・段取り時間グラフ・アイテム発掘表・ビデオカメラ・ストップウオッチ・万歩計・ゼッケンタスキ・ホイッスル。ホストイット)
3.参加者への役割分担指示
 (時間記録係り、ビデオ撮影係り、作業内容解説係り、その他は改善アイテム抽出と不安全作業の抽出を行う)
4.段取り作業者はゼッケンタスキと万歩計を付けて作業する。
5.段取り終了後は会議室に集まりビデオを見ながら改善アイテムの作業を論議する。アイテム発掘表にホストイットの張り付けを行う。さらに時間分析表に詳細な時間記録を作業線図に記入する。
6.改善の担当と実施予定と次回の公開段取り予定日を決める。

5.段取り改善の活動ステップ

ステップ  活 動 名 称  活 動 内 容
1ステップ 活動計画
目標設定
・段取り改善計画を作成する。活動メンバー、活動日程、目標値の設定
・目標値は第1段階は現状値の1/2とする。目標達成後さらに1/2にする。
2ステップ 現状把握
(公開段取−1)
・第一回現状把握の「公開段取り」を実施する。
・作業時間記録から「段取り作業線図」(ここをクリック−−まだ未入力)を作成する。
・参加者から出された改善アイテム(ホストイット)を改善アイテム表に張りつける。
(準備・交換・調整品確)別に(少改善、中改善、大改善)の枠に張り付ける)
3ステップ 改善アイテム発掘
・改善アイテム表から具体的な改善アイデアと実施項目を検討し整理する。
 (改善アイデア集−図書を準備しておく)
・改善実施の担当と日程を「改善実施進捗表」に整理する。
4ステップ 改善実施結果確認
(公開段取−2)
・改善の実施
・大改善を必要とするアイテムは費用対効果を計算して実施可否を決定する。
・少改善、中改善レベルが実施できたら、この改善効果の確認する「公開段取り」を実施する。
・2〜3ステップを繰り返し実施する。
5ステップ 一発良品化
要因解析と対策
・段取り後の一発不良について要因解析を実施する。
(解析ツール:「なぜなぜ解析」または「PM分析」を行う)
・要因解析の結果調査と不具合の復元改善対策を実施する。
6ステップ 段取り作業手順の
標準化
・改善後の作業手順を標準作業書に整理する
7ステップ 作業訓練の実施
MP情報の発行
・標準作業書に基づき、他のオペレーターに対して段取り作業訓練を実施して公開段取り時間と同等の時間で出来るまで訓練する。
・改善内容を「改善前−改善後」シートに整理(写真と解説)、これをMP情報として生産技術部門へ発行する。


6.段取り改善の事例


@樹脂成型金型段取り事例(クレーン吊り上下金型交換の場合)
 ・金型の置き場を樹脂成型機の型のセット中心位置に置き場を設置(クレーンの一方向移動を無くす)
 ・金型の置き台を高くする(クレーンの上下移動を少なくする)
 ・金型の予備温調を少し高め温度に設定する(交換中の温度低下を見込む)
 ・クレーンの移動停止位置に矢印合いマークを設置する(クレーンの移動微調整を無くす)
 ・金型と成型機の位置決めブロックを下部に取りつける(金型ベースの基準化)
 ・温調配管接続カプラーをマルチカプラー化にして前面(一定方向に)集結する
 ・型の締付けクランプを油圧クランプにする
 ・型締めの後退位置リミットSWのドッグを回転ドッグバーにする
 ・単独運転操作盤を段取り操作のみ作業位置に独立して設置する(操作のためにの歩行を無くす)
 ・成型条件の入力をワンタッチ入力化にする
 ・ホッパーをニ連にして色換えのホッパー清掃時間を無くす
 ・最低でも2発ショット良品にする(温調設定、射出色変えを最初のショットで出し切る)
 ・取りだしグリッパーをワンタッチ交換化する

Aトランスフアープレスの金型段取り事例(ボルスター入替え)
 ・型への接続配線配管のマルチカプラーにする、カプラーの位置合わせマークを入れる。
 ・ボルスターレール面のスクラップ清掃を前段取り準備で行う。
 ・ボルスター移動速度アップ化
 ・デスタックと型の接続ガイド類のワンタッチ脱着化にする
 ・二名作業の平準化

B機械加工、溶接機他一般設備の段取り改善事例
 ・冶具の位置決め突き当て基準化
 ・冶具の締付けボルトをLクランプ化(ボルトは180度以内の緩め締付け化にする)
 ・冶具の部品交換ボルトの長穴Cワッシャー化
 ・搬送グリップのワンタッチ脱着化
 ・検査具の入替えをメリーゴーランド式反転入替え化
 ・LSドツグの移動を突き当てバー移動化、又は回転ドッグバー化する
 ・小物部品(製品)のポリボックス入替えをメリーゴーランド式反転入替え化

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