品質保全展開の歴史
TPM活動における「品質保全の展開」は、1980年代にTPM活動を実施した兜s二越のTPMで生まれた(活動展開11ステップ)。その後日産自動車鞄ネ木工場のTPM活動で「品質保全活動の手順」と「設備型品質保全の展開7ステップ」にアレンジした(筆者がアレンジした)。現在もこの2通りの活動ステップが使われている。最近はJIPMコンサルタントの木村氏が著書「品質保全8の字展開」として活動のステップが創案されている。
しかし以上の品質保全の展開方法は加工型の製造プロセスで不良を作らないための要因管理の活動である。手作業主体の組立プロセスでは従来の活動展開方法は該当しなかつた。そこで「手作業型品質保全の展開7ステップ」を筆者が創案して、その活動事例を「プラントエンジニヤ誌」に紹介した。ここでは人の作業から作られる不良を全て洗い出す「品質総点検」を基にしている。その後不良を作らない活動から、不良を客先に流さない取組みとして「納入不良撲滅展開マニュアル」を創案し(未公開)、現在一部の関係会社で展開している。
ISO9000の認証活動で品質保証の仕組みとQFDからQA表への展開、これに品質保全展開を組み合わせて活動することが相乗効果を発揮する。
尚、品質保全の関連記事ページはここをクリックして下さい。
工程不良と客先への納入不良の違いについて
従来の品質保全展開は工程不良ゼロを目指し、工程不良がゼロになれば当然納入不良または市場への流出もゼロになるはずである。しかし現実は例え工程不良がゼロになっても納入不良はゼロに成らなかった。
そこで筆者は数年前から実際の納入不良の事例を解析してきた。その結果工程不良の発生原因と納入不良や市場流出の発生原因が全く異なっていることが分かった。筆者の調査した範囲では、工程不良と納入不良の不良現象が同一の事例は納入不良の僅か1〜2割位で残りの8〜9割は全く異なる不良現象と要因で発生していた。即ち「不良を作らない」と「不良を流さない」では要因も対策も異なるからである。
また、市場クレームとなる不良については、その7〜8割は製品設計段階での不具合である。製品の使用条件やユーザーの要求品質と設計品質の狭間で発生している。QFD(品質機能展開)の不充分さが設計不良に成っている。
筆者創案の「納入不良撲滅展開」は設計段階での不良を除き、製造段階の不良流出を撲滅する方策に限定した取り組みである。
筆者の実施した納入不良の要因解析(要因連関図)と、工程不良ことの納入不良の取組みの違い及び納入不良撲滅対策の考え方については、ここをクリックして下さい。
新・品質保全展開7ステップの紹介
以上の「加工型と手作業組立型品質保全展開」に「納入不良撲滅展開」の活動を統合した「新・品質保全展開7ステップ」を以下に紹介する。
展開のステップと活動概要は以下のようになる。
ステップ | 名 称 | 活 動 概 要 |
1ステップ | 品質保証度評価と 現状把握 |
・工場全体の品質保証度を別紙の「品質保証度評価診断表」(ここをクリック)を用いて自己評価を実施する。 これは過去6ケ月の工程不良、及び納入不良の実態とその再発防止の解析レベルを調査し、その結果を「納入不良現象と要因・改善方策マトリックス」(ここをクリック)に落とし込み。その結果から「納入不良の要因解析と対策方策のレベル表」(ここをクリック)に記入する。さらに「品質保証度評価」「設備管理評価」「現場管理評価」「5S診断評価」をそれぞれ行って、これらの結果を基にして「品質保証度評価診断表」を実施する。 この「品質保証度評価診断表」結果で、品質保証の仕組面、品質管理基準面、製造現場の設備管理面、作業管理面、標準基準とその運用面、検査面、5S面などの総合評価を行う。 ・この評価から過去の工程不良や納入不良の再発防止の対策が直接的要因だけにしか手が打たれていなかつたか?間接的要因の再発防止対策が十分だったかどうかが判断出来る。 ・以上の現状把握を基にして、品質保全展開の3年間活動マスタープランを作成する。1年目はモデルライン(プロセスごとに数ライン)を設定して活動する。2年目は主要ラインに拡大する。3年目は全ライン拡大と二次メーカーへ拡大指導する。 |
2ステップ | 品質総点検 | ・活動マスタープランに基づき活動の対象モデルラインを設定する。 モデルラインは工場の代表的プロセスと製品のラインを、初工程から最終組立までの流れで設定する。 ・活動メンバートと、モデルラインの詳細活動計画立てる。さらに目標値(工程不良、納入不良ゼロ)設定する ・次ぎに「品質総点検表」(ここをクリック)によりモデルラインの過去から現在まで発生した工程不良と納入不良および考えられる工程不良と納入不良について通常作業の要素動作単位、設備の加工運搬ステップ単位で全て洗い出す。 さらに段取り作業、異常処理作業単位、4M変更点単位で洗い出す。洗い出された不良モードに品質の影響度ランク、現在の検出機能を記入する。 ・尚、「品質総点検表」は設備型と手作業型の2通りの記入フォームを事例に掲載してあるが、両方を兼用したフォームの総点検表を作られると良い。 |
3ステップ | 直接・間接要因の 解析 |
・現在発生の工程不良、納入不良の要因解析を行う。 ・直接要因は「標準基準管理面」「標準基準運用面」「作業面」「設備面」「検出面」に分類して、それぞれ「何故流れるのか」、「何故作るのか」にそれぞれ分けて解析する。解析には「なぜなぜ解析」(ここをクリック)、慢性的加工不良の「設備面」には「PM分析」(ここをクリック)を用いる。「設備型、手作業型品質保全展開7ステップ」を参考にする。 ・間接要因は「標準基準の設定力面」「教育指導面」「工法、工程面」「環境・5S面」 「品質活動面」に分類して、1ステップで解析した間接要因の項目に対して「なぜなぜ解析」を実施する。 ・また現在発生している納入不良には「なぜ流したか」、「なぜ作ったか」に分けて「納入不良要因チェックリスト」(ここをクリック)で解析する、ここでは「納入不良撲滅ステップ」を参考にする。 ・将来考えられる不良モードも同様に直接要因、間接要因の簡易解析を行う。 |
4ステップ | 要因の復元改善と 対策 |
・要因解析結果から、まず過去及び現在発生している不良の要因を調査して、直接要因の不具合(原因)を復元・改善実施する。 ・直接要因の改善 標準基準欠如の作成、QFDとQA表のの見直し,守れる標準基準化、目で見る管理化、設備不具合の復元と点検基準化、ポカヨケの設置、全数検出装置化など。 ・間接要因については改善計画を立て、これを実施する。 ・間接要因の改善 現場管理活動(監督者作業管理、TWI)の導入、階層別人材育成と教育訓練体制の見直し、教育施設の見直し、5S活動の展開、工法改善など ・将来考えられる不良モードも同様に改善を行う。 |
5ステップ | 品質保証条件の 設定 |
・直接要因の品質保証条件を「標準基準管理面」「標準基準運用面」「作業面」「設備面」「検出面」ごとに、それぞれ流さない項目と作らない項目に分けて品質特性とのマトリックス表に整理する。 「QMマトリツクス表」(ここをクリック) ・QMマトリックスに基づき、標準基準チェックリト、作業点検基準書、設備点検基準書、ポカヨケ点検基準書、目で見る管理点検基準書などに落とし込む。 |
6ステップ | 品質保証条件の 管理と改善 |
・各点検基準に基づき日常管理を行い、点検の項目、方法、周期が適切か検証し、これらをより効率の良い方法に改善する。 |
7ステップ | 品質MP情報発行 対象ライン拡大 初期管理体制及び 初期流動管理に 組込み |
・以上の活動から生まれたことを「品質MP情報」として発行する。 ・活動の対象ラインを全ラインに拡大する。 ・新規に立ち上るラインの初期管理活動のDRに組込む。さらに初期流動活動に品質総点検活動を組込む。 |
|