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2.深川恋物語 3.雷桜(らいおう) 4.春風ぞ吹く−代書屋五郎太参る− 5.甘露梅−お針子おとせ吉原春秋− 6.涙堂−琴女葵酉日記(ことじょきゆうにっき)− 7.あやめ横丁の人々 8.無事、これ名馬 9.ひとつ灯せ 10.深川にゃんにゃん横丁 11.うめ婆行状記 ※ 堀留の家(藤水名子監修「しぐれ舟」収録) |
●「幻の声−髪結い伊三次捕物余話−」● ★☆ |
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2000年04月
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宇江佐さんのデビュー作。 「捕物余話」という題名ですけれど、作品の傾向としては“捕物帖”というより“市井もの”と言うべきでしょう。 幻の声/暁の雲/赤い闇/備後表 /星の降る夜 |
●「深川恋物語」● ★ 吉川英治文学新人賞 |
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2002年07月
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江戸の深川を舞台にして描く、恋物語6編。 下駄屋おけい/がたくり橋は渡らない/凧、凧、揚がれ/さびしい水音/仙台堀/狐拳 |
●「雷 桜」● ★★ |
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2004年02月
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瀬田村の庄屋・助左衛門の愛娘・遊が誘拐されてから15年後、遊は隠れ育てられてきた瀬田山を下り、父母の元に戻ってきます。しかし、その風体、振舞いは尋常の娘と異なり、村人達は彼女を“狼女”と呼びます。本書は、この遊の魅力により、一気呵成に読ませてしまう時代小説の佳作です。 これまでの宇江佐作品は、線の細さ故にもうひとつ魅力を欠いていましたが、本書は珍しく骨太である点が、とにかく魅力。 しかし、剛毅さのある一方、父母、兄を慕う遊の娘らしさ、家族の絆をしっかり描いているところに、宇江佐作品の良さをきちんと守っているという印象を受けます。 ストーリィは、遊の生涯と、次兄・助次郎が江戸で武家に取り立てられて仕えた御三卿・清水斉道の生涯が、絡み合って展開します。村人が畏れる山の中で育った故に、尋常の女性とは違った人生を送った遊。一方、斉道は、将軍の子としての重圧から精神を病み、自らその事に恐れを抱く人物。運命的な出会いをする2人の個性には、強く惹かれるものがあります。 本書の題名となった「雷桜」とは、折れた銀杏の途中から桜が育ち、下が銀杏、上が桜になった瀬田山中の樹のこと。遊を象徴するものですが、本作品に鮮やかな彩りを与えており、強い印象を残しています。 女性作家による時代小説としては、なかなか歯応えのある作品。楽しめることは確実です。 |
●「春風ぞ吹く−代書屋五郎太参る−」● ★ |
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2003年10月
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幕府小普請組・村椿五郎太は、西両国広小路の水茶屋ほおずきで代書の内職をしつつ、「学問吟味」に合格して御番入り(役職就き)を目指している身の上。学問の進捗状況は芳しくありませんが、御番入りを果たさないと、将来を約束した幼馴染の恋人・紀乃との仲も果たせないという切羽詰った状況にあります。目玉がとりわけ大きいというのが彼の特徴。 まずは題名の気持ち良さに惹かれて読み始めました。 月に祈りを/赤い簪、捨てかねて/魚族の夜空/千もの言葉より/春風ぞ吹く |
●「甘露梅−お針子おとせ吉原春秋−」● ★ |
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2004年06月
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岡っ引をしていた亭主が突然死んで、息子夫婦と同居もしづらいことから、吉原遊郭に住み込んでお針子として働くことになったおとせが主人公。そのおとせが1年の間に見聞きした、吉原での春秋譚。 市井話といっても、江戸市中ではなく、舞台が吉原遊郭内となれば、男女の情愛がストーリィの中心となるであろうこと、そこに悲哀さが混じることは当然に想像されます。 仲の町・夜桜/甘露梅/夏しぐれ/後の月/くくり猿/仮宅・雪景色 |
●「涙 堂−琴女葵酉日記−」● ★☆ |
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2005年08月
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元同心の妻・琴が、浮世絵師となった次男に誘われ、日本橋通油町の次男宅に移り住んでからの日々を描く連作短篇集。 長男および3人の娘の嫁ぎ先はいずれも町奉行所の役人、それに対して次男だけが風変わり、という設定。 白蛇騒動/近星/魑魅魍魎/笑い般若/土中の鯉/涙堂 |
●「あやめ横丁の人々」● ★★ |
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2006年03月
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祝言の最中に花嫁を奪われ、かっとなって相手を切り殺し、花嫁に自害された旗本の三男坊・慎之介が主人公。 つい森田誠吾「魚河岸ものがたり」のような、あやめ横丁の人々を描く連作短篇集と予想したのですが、それは誤り。 あめふりのにわっとり/ほめきざかり/ぼっとり新造/半夏生/雷の病/あさがら婆/そっと申せばぎゃっと申す/おっこちきる/あとみよそわか/六段目 |
●「無事、これ名馬」● ★★ |
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2008年05月
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武家の7歳になる男の子が火消し「は組」を突然訪ねてきて、「頭、拙者を男にして下さい」と頼み込む。 男の子は村椿太郎左衛門といういかめしい名前ですが、本人自ら告げるに、相当な泣き虫で臆病者。 「は組」に通ううち次第に太郎左衛門はしっかりしてきますが、どうもそれは、実母の紀乃だけでなく吉蔵やお栄の思っていた姿とは違うらしい。 好きよ、たろちゃん/すべった転んだ洟かんだ/つねりゃ紫、喰いつきゃ紅よ/ざまァかんかん/雀放生/無事、これ名馬 |
●「ひとつ灯せ 大江戸怪奇譚」● ★ |
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2010年01月
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評判の料理屋を営む平野屋清兵衛は、息子に店を譲って隠居してから急に老け込み寝付いてしまう。自分ももう長くないと覚悟したのですが、親友の甚助が見舞いに来てくれた翌日急に身体の調子が良くなってしまう。甚助はどうも霊感があるようで、甚助に見えた死神を追い払ってくれたおかげらしい。 単に見聞きした話を披露するというだけでなく、自分達もまたその渦中に巻き込まれるというのが、本書の持ち味。 ひとつ灯せ/首ふり地蔵/箱根にて/守/炒り豆/空き屋敷/入り口/長のお別れ |
●「深川にゃんにゃん横丁」● ★☆ |
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2011年03月
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深川にある山本町。その町にある小路は「にゃんにゃん横丁」と呼ばれている。住民に猫好きが多く、餌を与えたりするので、野良猫もよく通る、というのがその命名の由来。 つまり、アンダスン「ワインズバーグ・オハイオ」に代表される町とその住人たちを描く物語。舞台が江戸となれば、藤沢周平「本所しぐれ町物語」、北原亞以子「深川澪通り木戸番小屋」に連なる作品と言ってよいでしょう。 表題が「にゃんにゃん横丁」ですから、猫たちがどうストーリィに絡むかが読み処なのですが、その点では冒頭の「ちゃん」がお見事。 ちゃん/恩返し/菩薩/雀、蛤になる/香箱を作る/そんな仕儀 |
「うめ婆行状記」 ★★ |
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2017年10月
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久々の宇江佐真理作品、遺作ということもあり、未完とはいえストーリィ内容も面白そうに感じられましたので、これが最後と手に取りました。 久し振りということもあってか、宇江佐真理さんの伸びやかな温かさが感じられて、いいなぁーと実感。 また、本書については数多く登場する主人公うめの家族、親族、周辺人たちが生き生きと動き回っていて、それも魅力です。 さてストーリィ。大店伏見屋の娘で何不自由なく育ったうめですが、同心からの縁談申し入れに断れない状況も生じて、嫌々ながら北町奉行所同心・霜降三太夫の元に嫁入りします。そして長い年月が過ぎて二男二女も夫々に片付き、夫の三太夫も亡くなった今、堅苦しい武家の家から出て町中で独り暮らしをしたいと思うに至ります。 当然ながら賛成もあれば反対もある訳ですが、それを押し切っての独り暮らし。とはいえ、それから順調に進んだのはたまたま隣人が顔見知りの夫婦で、2人揃ってあれこれとうめの役に立ってくれたため、という次第。 しかし、嫁取りしないままの甥(伏見屋の跡取り)から、実は長年の恋人との間に5歳になる隠し子がいると打ち明けられ、うめの独り暮らしは一転賑やかなものとなります・・・。 ずっと家族の為に生きてきて、この際余生は羽を伸ばして気ままに暮らしてみたいと一家の主婦が考えるのは、現代にも通じる問題だと思います。 しかし、そう簡単にいくものかどうか。所詮は人と人、家族との繋がりがあってこそ独り暮らしも楽しく暮らせる、ということではないかと思います。 そしれにしても久々の宇江佐真理作品、とても楽しかったです。 最後になりますが、宇江佐真理さんのご冥福を心からお祈りします。 うめの決意/うめの旅立ち/うめの梅/うめ、悪態をつかれる/盂蘭盆のうめ/土用のうめ/祝言のうめ/弔いのうめ/うめ、倒れる/うめの再起/解説:諸田玲子 |