佐伯泰英作品のページ No.4



31.侘助ノ白−居眠り磐音江戸双紙30.−

32.更衣ノ鷹(上下)−居眠り磐音江戸双紙31・32.−

33.孤愁ノ春−居眠り磐音江戸双紙33.−

34.尾張ノ春−居眠り磐音江戸双紙34.−

35.姥捨ノ郷−居眠り磐音江戸双紙35.−

36.紀伊ノ変−居眠り磐音江戸双紙36.−

37.一矢ノ秋−居眠り磐音江戸双紙37.−

38.橋の上−居眠り磐音江戸双紙<帰着準備号>−(「居眠り磐音江戸双紙」編集部)

39.東雲ノ空−居眠り磐音江戸双紙38.−

40.秋思ノ人−居眠り磐音江戸双紙39.−


【作家歴】、陽炎ノ辻、寒雷ノ坂、花芒ノ海、雪華ノ里、龍天ノ門、雨降ノ山、狐火ノ杜、朔風ノ岸、遠霞ノ峠、朝虹ノ島

 → 佐伯泰英作品のページ No.1


無月ノ橋、探梅ノ家、残花ノ庭、夏燕ノ道、驟雨ノ町、蛍火ノ宿、紅椿ノ谷、捨雛ノ川、梅雨ノ蝶、野分ノ灘

 → 佐伯泰英作品のページ No.2


鯖雲ノ城、荒海ノ津、万両ノ雪、朧夜ノ桜、「居眠り磐音江戸双紙」読本、白桐ノ夢、紅花ノ邨、石榴ノ蝿、照葉ノ露、冬桜ノ雀

 → 佐伯泰英作品のページ No.3


春霞ノ乱、散華ノ刻、木槿ノ賦、徒然ノ冬、湯島ノ罠、空蝉ノ念、弓張ノ月、失意ノ方、白鶴ノ紅、意次ノ妄、竹屋ノ渡、旅立ノ朝

 → 佐伯泰英作品のページ No.5


声なき蝉(上下)、恨み残さじ、剣と十字架、異郷のぞみし、未だ行ならず(上下)、異変ありや、風に訊け、名乗らじ、荒ぶるや、奔れ空也

 → 佐伯泰英作品のページ No.6

  ※ → 「居眠り磐音 江戸双紙」公式サイト
 


        

31.

●「居眠り磐音江戸双紙30. 侘助ノ白」● ★☆


侘助ノ白画像

2009年07月
双葉文庫刊

(648円+税)

 

2009/08/13

 

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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズの第30巻。

尚武館道場で“でぶ軍鶏”と仇名されていた重富利次郎、土佐藩近習目付の職にある父親の供をして国許の高知へ。
その国許での利次郎の思わぬ活躍を描いた部分が、「斬り合い」「桂浜の宴」「漆会所の戦い」。本書ストーリィの約半分を占めます。

一方、江戸の神保小路・尚武館道場には、飄々として滋味溢れる人物が新登場。
年の暮れ、道場で餅つきが始まったところを、一手指南を請いたいと訪れてきた流浪の武芸者、富田天正流槍折れの小田平助
下士上がりだからと謙虚な平助、磐音の勧めに喜び、客分待遇を断って老門番=季助の手伝いとして、尚武館に留まることになります。
長年苦労を重ねてきたのに人柄良く、しかも腕は立つというキャラクター。その平助の尚武館道場の一員になったというだけで、これからのストーリィ展開が楽しみになります。

「餅搗き芸」は、その小田平助の登場を絡めて尚武館道場の年末風情を描いた篇。
「闘剣士」は古代ローマの剣闘士の如く、侍同士に斬り合いをさせて金を賭けて遊ぶという不埒な現場に磐音が臨むことになる、という篇。

斬り合い/餅搗き芸/闘剣士/桂浜の宴/漆会所の戦い

      

32.

●「居眠り磐音江戸双紙31.32. 更衣(きさらぎ)ノ鷹」● ★☆


更衣ノ鷹画像
 

2010年01月
双葉文庫刊
上下
(各648円+税)

 

2010/02/14

 

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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズの第31・32巻。

本シリーズ初の上下巻。それだけに、長い「居眠り磐音」物語の大きな節目となる巻といえるでしょう。

本ストーリィ中心は、将軍世子=家基をあくまで田沼の手から守ろうとする佐々木玲圓・磐音父子らと、田沼派との攻防。
権力を背景にして次々に繰り出す田沼派の攻勢に、磐音らの闘いは否応なく守勢に回らざるを得ない。
元々、家基が将軍職を継いだという史実がない以上、この暗闘が帰結するところも予め決められていたようなものですが、それは本巻で最高潮に達します。

ただ、前々からの巻から続く家基を境にしての田沼派との戦い、いささか倦んできているところもあって、上巻については面白さイマイチ。
しかし、下巻になりついに山場を迎えると、さすがにそうも言っていられなくなります。
最後の結末を知るに至ると、やはりショック。
磐音がおこんを娶り、尚武館佐々木道場の後継に入るところも大きな節目でしたが、本巻で迎える節目はそれ以上に大きなものかもしれません。
さて、これから磐音とおこんはどうなるのか。また、この後も本シリーズを読み続けるのか。
ゆっくり考えてみることにしましょう。

お告げ/辰平、福岡入り/ニの江村の放鷹/虚々実々/神田橋のお部屋様/誘い音/田沼の貌/違イ剣/川越行き/死と生

  

33.

●「居眠り磐音江戸双紙33. 孤愁ノ春」● 


孤愁ノ春画像

2010年05月
双葉文庫刊
(648円+税)

 

2010/06/05

 

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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズの第33巻。

前巻にて家基が毒殺され、佐々木玲圓おえい夫婦は自裁。
田沼意次がさらに佐々木家をはじめとする敵対勢力を一掃せんとする強引な振る舞いに出て、磐音・おこん夫婦は江戸を逃れ、旅の途につくという巻。

それ程何かが起きるという巻ではなく、お馴染みの人物たちが亡き佐々木玲圓のことを悼み、磐音・おこんの行く末を心配し、今はただ耐えるのみと覚悟する風景が描かれます。

今までの物語を第一部とするなら、これから始まる第二部のプロローグというべき巻。
何の当てもなく磐音とおこんが江戸を逃れたというだけなら、ファンとしては心穏やかではありませんが、弥助・霧子が2人を追って2人と行動を共にするということであれば、心強い。

喩えが悪いかもしれませんが、ある意味、振り出しに戻ったと言うこともできるでしょう。ただし、傍らにおこんの存在があることを除けば。おこんがいるからこそ、新たな一歩。
さて、新たな第二部は、佐々木磐音か、それとも坂崎磐音か。

弔いの日々/長屋の花見/川留め/遠湖騒乱/弥助走り

  

34.

●「居眠り磐音江戸双紙34. 尾張ノ夏」● ★☆


尾張ノ春画像

2010年09月
双葉文庫刊
(648円+税)

 

2010/10/11

 

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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズの第34巻。

江戸を出た磐音おこんは、小田原藩家臣の清水平四郎といね夫婦と名乗り、ひとまず尾張藩城下聞安寺の長屋に落ち着く。
もちろん弥助霧子も同行。
その磐音とおこん、城下を散策に出掛けたところ、大店「尾州茶屋」の大番頭=中島三郎清定に呼びとめられ、店頭で茶を馳走になります。ところがそこに尾州茶屋を脅かさんとする道場主が現れ、早速磐音が相手を取り押さえることに。
なにやら第1作陽炎の辻での磐音と両替商今津屋との出会いを彷彿させる場面ですが、数多の試練を得て磐音に貫禄が生じていること、おこんのみならず、弥助・霧子という助力者がいるところが、以前とは異なるところです。
そこから、尾張藩の細作御用も陰で務める尾州茶屋との交誼が始まり、その縁で柳生新陰流尾張派の総本山道場への出入りが許されたと思ったら、美林横流しの証拠をつかむための尾州茶屋の調査行に用心棒として雇われることになる、というテンポの良い展開。

尾張を新しい舞台とした第2部の始まりとしては、今後の巻を十分期待させる面白さです。
余り政治絡みのことに首を突っ込まず、自由な境地にいた方がヒーローには相応しいというもの。
当面は、江戸と尾張、両方を睨みながらの展開となりそうです。

おそめの夢/尾州茶屋家/拝領の陣羽織/美林横流し/雲耀と間

         

35.

●「居眠り磐音江戸双紙35. 姥捨ノ郷」● ★☆


姥捨ノ郷画像

2011年01月
双葉文庫刊
(648円+税)

 

2011/01/30

  

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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズの第35巻。

前巻にて、幸いにも尾張に安住の地をみつけた観のあった磐音・おこんたちでしたが、磐音の正体が公に明らかとなり、そこへ田沼が尾張へ強硬な横槍を入れたことから、尾張藩に迷惑をかけてはならずと主従2人は再び逃避行に旅立ちます。
とはいってもおこんの産み月はますます近付き、逃避行はますます厳しいものになるばかり。
雹田平一味の監視を目を逃れるため、尾州茶屋中島家の用意してくれた行き先を敢えて捨て、霧子の案内で主従4人が向かった先こそ“姥捨ノ郷”と呼ばれる隠し里だった、という次第。

他の登場人物で変化があったのは、1名+2名。
元将軍御側御用取次であった
速水左近は蟄居を解かれたものの、甲府勤番へ転任と、いわゆる“山流し”。そのうえさらに、甲府へ向かう速水一行を田沼一味が襲います。
一方、福岡と高知で武者修行中だった
松平辰平重富利次郎がついに合流、ともに磐音を探し求めるため旅立ちます。

本巻では、隠し里=姥捨ノ郷と磐音との出会いが一番の興味どころ、と言って良いでしょう。 

山流し/再びの逃避行/水行山行の計/空ノ道一ノ口/高野奥之院

       

36.

●「居眠り磐音江戸双紙36. 紀伊ノ変」● 


紀伊ノ変画像

2011年04月
双葉文庫刊
(648円+税)

 
2011/05/20

  
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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズの第36巻。

磐音おこんの間に嫡子=空也が生まれた後のストーリィ。
磐音ら一行が漸く落ち着くことのできた隠れ里=
姥捨ノ郷に存続の危機が迫ります。
姥捨ノ郷に隠れ住む
雑賀衆の秘めた資金源は、丹(銀)の採掘。
和歌山領内で銀が採掘されているのを知った
田沼意次は、その採掘権を手中にしようと動き出します。
危機感を覚えたのは、雑賀衆と同じく丹から利益を得ていた
高野山も同じこと。
和歌山藩と連携して幕府に抵抗しようと、その協議に赴く
雑賀草蔵、高野山奥之院の高僧=室町光然の供をして、磐音は和歌山藩城下に赴くことになります。
一方、江戸では、いよいよ
品川柳次郎椎葉有の祝言が。

大きな物語の流れからすると本巻もまた欠かせない一冊ですが、波乱万丈という程の大きな変化はなく、どちらかというと地味な巻。

田沼の影/煙管と梅/柳次郎の悩み/雹の迷い/家基の面影

     

37.

●「居眠り磐音江戸双紙37. 一矢ノ秋(いっしのとき)」● ★☆


一矢ノ秋画像

2010年07月
双葉文庫刊
(648円+税)

  

2011/07/18

  

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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズの第37巻。

磐音おこんが江戸を出て4巻目。2人が姥捨ノ郷に落ち着いてから1年半が経ち、2人の子=空也もしっかりしてきます。
その一方、田沼意次の側妾・
おすなの命を受けて磐音をつけ狙う唐人=雹田平は、依然として京に腰を据え、磐音が再び姿を現すのを待ち受けている、というのが本巻での状況。
そしておすながついに動き、自ら紀州高野山へ向かい、雹田平一味を使って磐音の命を絶とうという直接行動に出ます。

磐音、ついに江戸へ戻る時機が来たことを皆に表明、そのために越えるべき壁として、雑賀衆の力を借りて雹田平一味と対決することを決意します。
江戸、尾張、京、紀州、姥捨ノ郷と、磐音が築いてきた相互の信頼を基に各所で連携、いよいよ磐音らの反転攻勢が口火を切ります。
その意味では、家基急死の後苦難を味わってきた本物語の転機となる巻。

姥捨ノ郷の磐音ら6人(磐音・おこん・弥助・霧子・松平辰平・重富利次郎)に江戸から槍折れの小田平助も加わり、雑賀一党と共に雹田平一味と激闘。また高野山奥之院の室町光然も呼応した行動に出る辺り、久しぶりに興奮を味わえます。
次巻でどういう展開が繰り広げられるのか、楽しみです。

春之草−桜鯛さわぎ/夏之草−早苗蜻蛉/秋之草−ぴらぴら簪/冬之草−七人の侍/再び春之草−決戦

          

38.

●「居眠り磐音江戸双紙<帰着準備号> 橋の上」● 
  (「居眠り磐音江戸双紙」編集部 編)


橋の上画像

2011年10月
双葉文庫刊
(648円+税)

  
2011/10/28

  
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「居眠り磐音江戸双紙」読本に続く、シリーズガイドブック第2弾。
シリーズに登場する江戸各地を描いたカラー絵、磐音が歩いた江戸案内、佐伯泰英さんのインタビューに、中編小説
「橋の上」のおまけつき。

上記「読本」の「跡継ぎ」が、シリーズ開始前のおこん、由蔵を描いた物語だったのに対し、本書のおまけ「橋の上」は藩主=福坂実高に従って坂崎磐音が初めて江戸にやって来た時の物語。
直心影流佐々木道場への入門、それと時を同じくしてある事件に磐音が巻き込まれる、というストーリィ。
「跡継ぎ」と違って、シリーズの物語を前提にして、その開始前の時代にあてはめてストーリィを作ったというのが見え見えですので、面白さとしてはイマイチ。
でも、長いストーリィをこれからも楽しんでいくためには、こうしたガイドブックがあると重宝でしょう。

巻頭カラー口絵/前書き(佐伯泰英)/特別書き下ろし中編時代小説「橋の上」(佐伯泰英)/磐音が歩いた「江戸」案内/著者インタビュー「磐音とともに−佐伯泰英、十年の歩み」/「居眠り磐音江戸双紙」年表第24〜27巻

        

39.

●「居眠り磐音江戸双紙38. 東雲ノ空(しののめのそら)」● ★☆


東雲ノ空画像

2012年01月
双葉文庫刊
(648円+税)

  

2012/01/14

  

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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズの第38巻。

磐音・おこん・空也の親子3人が、待ち構える田沼一味を仲間たちの協力で躱し、無事に江戸に帰着するところから始まる巻。
今津屋の寮に落ち着いた磐音とおこん。早速隣接して設けられていた
直心影流尚武館坂崎道場で、新たな一歩を踏み出します。
そしておこんはというと、早や2人目の子を懐妊中。

本巻、磐音たちの3年ぶりの江戸帰還とあって、江戸でお馴染みの登場人物たちが順次登場し、主要人物の一同勢揃い、新たな幕開けを踏まえての顔見世、という風です。
そのため重要な展開という場面はあまり見えませんが、
姥捨ノ郷を出てから京、名古屋、江戸という道筋で磐音と心を一つにする人物たちと入念に打ち合わせをしてきた、反田沼への体制固めを十分行ってきたことが語られます。

脇役人物についていえば、重富利次郎、松平辰平の恋が一歩前進し、磐音を陰日向に支えてきた弥助の身分が明らかになる、というのが幕開けのプラスアルファ。
また、甲府へ山流しにされていた
速水左近について江戸復帰の道筋がつき、着々と磐音陣営の体制が固まっていくという展開。
物語としての新たな展開、その結果としての面白さは、次巻以降のお楽しみ、のようです。

橋上の待ち人/一同再会/霧子の迷い/挨拶回り/月命日

        

40.

●「居眠り磐音江戸双紙39. 秋思ノ人(しゅうしのひと)」● ★☆


秋思ノ人画像

2012年06月
双葉文庫刊
(648円+税)

  
2012/07/07

  
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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズの第39巻。

甲府勤番支配の職に左遷されていた速水左近、俗に“山流し”と言われる役職ながら3年の間善政に勤め、配下ならびに領民からも慕われていましたが、いよいよ磐音に続き江戸へ帰着する、の巻です。
とはいえ、
田沼意次・意知父子が指を咥えて見ている筈もなく、前半は左近を途中で暗殺しようとする田沼一派から左近を守ろうと、左近の子=杢之助と右近兄弟を連れて迎えに出た磐音(他に弥助霧子)との攻防ストーリィです。
後半は、速水左近が大名格の
奏者番に就任した中、江戸と磐音周辺の状況がひととおり語られるといった具合です。
田沼沖次による政治専横を憎む人々による反転攻勢の体制が漸く整った、というべき巻でしょう。
まだまだ本格的は楽しみは、次巻以降のようです。

速水左近の再起/抜け道/待ち伏せ/戻ってきた三味線/果てなき戦い

     

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