佐伯泰英作品のページ No.2



11.無月ノ橋−居眠り磐音江戸双紙11.−

12.探梅ノ家−居眠り磐音江戸双紙12.−

13.残花ノ庭−居眠り磐音江戸双紙13.−

14.夏燕ノ道−居眠り磐音江戸双紙14.−

15.驟雨ノ町−居眠り磐音江戸双紙15.−

16.蛍火ノ宿−居眠り磐音江戸双紙16.−

17.紅椿ノ谷−居眠り磐音江戸双紙17.−

18.捨雛ノ川−居眠り磐音江戸双紙18.−

19.梅雨ノ蝶−居眠り磐音江戸双紙19.−

20.野分ノ灘−居眠り磐音江戸双紙20.−


【作家歴】、陽炎ノ辻、寒雷ノ坂、花芒ノ海、雪華ノ里、龍天ノ門、雨降ノ山、狐火ノ杜、朔風ノ岸、遠霞ノ峠、朝虹ノ島

 → 佐伯泰英作品のページ No.1


鯖雲ノ城、荒海ノ津、万両ノ雪、朧夜ノ桜、「居眠り磐音江戸双紙」読本、白桐ノ夢、紅花ノ邨、石榴ノ蝿、照葉ノ露、冬桜ノ雀

 → 佐伯泰英作品のページ No.3


侘助ノ白、更衣ノ鷹(上下)、孤愁ノ春、尾張ノ春、姥捨ノ郷、紀伊ノ変、一矢ノ秋、橋の上、東雲ノ空、秋思ノ人

 → 佐伯泰英作品のページ No.4


春霞ノ乱、散華ノ刻、木槿ノ賦、徒然ノ冬、湯島ノ罠、空蝉ノ念、弓張ノ月、失意ノ方、白鶴ノ紅、意次ノ妄、竹屋ノ渡、旅立ノ朝

 → 佐伯泰英作品のページ No.5


声なき蝉(上下)、恨み残さじ、剣と十字架、異郷のぞみし、未だ行ならず(上下)、異変ありや、風に訊け、名乗らじ、荒ぶるや、奔れ空也

 → 佐伯泰英作品のページ No.6

  ※ → 「居眠り磐音 江戸双紙」公式サイト
 


     

11.

●「居眠り磐音江戸双紙11. 無月ノ橋」● ★☆


無月ノ橋画像

2004年11月
双葉文庫刊
第13刷
2006年08月

(648円+税)

 

2007/10/06

 

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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズの第11巻。

今回は傍若無人に振る舞う大身旗本、金貸し旗本に磐音が立ち向かい、これを解決する話が3篇。
冒頭の「法会の白萩」では品川柳次郎の母・幾代の墓参りの伴をして竜眼時で白萩鑑賞という、まず観光を楽しむ。
その「法会の白萩」「秋雨八丁堀」は、愛刀・包平の研ぎを頼んだ鵜飼百助を助けたことから、大身旗本に付け狙われることになります。しかも与力・笹塚孫一が襲われ瀕死の重傷を負う。
「金貸し旗本」では、磐音らが秩父から連れてきた娘たちを預けた一酔楼、その人の好い主・千右衛門を騙して楼を手に入れようとする悪計を娘たちの為に暴き、磐音が千右衛門を救い出す篇。

長篇ストーリィの一部として語れるのは最後の2篇。
「おこん恋々」は、磐音を慕う因幡鳥取藩三十二万石の重臣のお姫様、織田桜子が磐音に会うため六間湯にまで駕籠で乗り付けるところから。すっかり話のネタにされてしまったそのことが今津屋のおこんの耳に達し、機嫌の悪いこと、悪いこと。磐音も暫くは身を小さくしている他ない。
しかしそれがあって、初めておこんが自分の抑えていた想いを磐音に向かって露わにする、という巻。
おこんファンとしては、漸くここまで来たか、という思いです。
※また、磐音が江戸の長屋住まいで一生を通すことを、はっきり明言する部分もあり。

「鐘ヶ淵の打掛け」は、吉原会所の四郎兵衛の依頼を受けて、白鶴太夫に振りかかろうとする危機から再び磐音が守る巻。
磐音と白鶴太夫の因縁は、奈緒が吉原入りしただけでは終わらないようです。
なお、重要な人物として白鶴太夫側に、髭の意休が登場。

“居眠り磐音江戸双紙”シリーズ、読了した巻は10冊を越えましたが、興味、面白さは少しも薄れません。

法会の白萩/秋雨八丁堀/金貸し旗本/おこん恋々/鐘ヶ淵の打掛け

       

12.

●「居眠り磐音江戸双紙12. 探梅ノ家」● ★☆


探梅ノ家画像

2005年03月
双葉文庫刊
第3刷
2005年04月

(648円+税)

 

2007/10/07

 

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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズの第12巻。

由蔵に伴を請われ、鎌倉までの2人旅。今津屋の亡き内儀・お艶を供養するため名刹へのお参りと聞いていたが、実は吉右衛門の再縁話の段取り。
本巻は、その今津屋吉右衛門の後添い決定が主ストーリィとなります。今津屋の後見と目される磐音が、由蔵から頼りにされたという次第。
相手は小田原城下の脇本陣主、小清水屋右七の長女・香奈に、その年子の妹である佐紀も同行してきて、お艶の兄である赤木屋儀左衛門が仲介して由蔵、磐音と一同に会する。本人なき見合いというところです。
ところが、香奈が出奔して大騒ぎ、磐音が佐紀と共に香奈の後を追うことに。(「水仙坂の姉妹」

「白梅屋敷のお姫様」は、代々奥医師を務める名家の桂川国瑞が屋敷に磐音、中川淳庵、織田桜子を招いて天ぷらを馳走するところから始まるストーリィ。一行を襲ってきた七福神を装う一味が狙ったのは、国瑞か桜子か。
その中で、由蔵がおこんの磐音への想いに触れ、磐音を諭す場面が描かれます。本題ではないものの、<磐音=奈緒>から<磐音=おこん>へと新たな段階に入ったことを感じさせてくれる巻。

吉祥天の親方/水仙坂の姉妹/師走の騒ぎ/二羽の軍鶏/白梅屋敷のお姫様

  

13.

●「居眠り磐音江戸双紙13. 残花ノ庭」● ★★


残花ノ庭画像

2005年06月
双葉文庫刊

第5刷
2005年09月
(648円+税)

 

2007/10/12

 

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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズの第13巻。  

待ちかねていた、磐音おこんが新たな局面を迎える巻。
磐音への想いをはっきり示すようになったおこんと、それを受け止める磐音の想いが、ついにぶつかり合います。そこは深川という下町娘のおこん、丁々発止と火花を散らすようなやりとりがおこんファンにとっては楽しい限り。
剣においてはともかく、恋愛において女性上位であるのも本シリーズの現代的なところ。
当事者の2人に加えて、折角こしらえて見合いの席をおこんに蹴飛ばされて「娘の気持ちが判らない」と嘆く金兵衛、2人の仲を進展させようとしきりに唆す由蔵と対照的な2人の姿がストーリィを盛り上げてくれます。
さらに剣の師・佐々木玲圓が、内に篭ろうとする磐音を諭す言葉も実に好い。
また、後半では豊後国許から磐音の父・正睦が物産を積んだ船に同乗して江戸に出府、初めておこんと顔を合わせます。

一方、将軍家治の日光社参、その資金の用立てが江戸の両替商らに命じられます。熟慮の末今津屋が幕府に持ち出した条件が、社参途中の支出を両替商側で管理する、というもの。
その役割を担うのが老分の由蔵。そして、その後見役を吉右衛門から磐音が託されます。困惑する磐音ですが、将軍御側衆・速水左近と御小姓組・赤井主水正からも頭を下げられ尽力を頼まれる始末。坂崎磐音の存在感、ここに極めり、というところです。

その他、日暮里周辺に住む大店の隠居を狙った恐喝一味、その用心棒でありかつて直心陰流佐々木道場の剣士であった雑色右馬之介との対決、大身旗本のロリコン隠居に売り飛ばされそうになったおそめの救出、阿蘭陀医師ツュンベリーを襲う一味の撃退といつもながらに大車輪の活躍。各篇とも読み応え充分です。

花びら勝負/おそめの危難/夜半の待伏せ/正睦の上府/カピタン拝謁

    

14.

●「居眠り磐音江戸双紙14. 夏燕ノ道」● ★★


夏燕ノ道画像

2005年09月
双葉文庫刊

(648円+税)

 

2007/10/14

 

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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズの第14巻。  

いよいよ幕府を挙げての日光社参が始まる。
勘定方実務を共同で担う町方と武家方、その町方後見として磐音が由蔵に同行するのは、今津屋吉右衛門が既に申し出た条件。
そして本書にて、御側用人・速水左近と剣の師・佐々木玲圓から磐音に新たな役目が役割が託されます。それは江戸で留守を守るはずの将軍世子=家基が、将軍=家治の願いによって別途密かに日光社参に同行する、その護衛。
玲圓と磐音の子弟コンビが、田沼意次の命を受けた雑賀衆一党との激闘を繰り広げます。そこも見処のひとつ。
今津屋、家治及びその側近から信頼され、家基からも気に入られて頼りにされるということで、磐音の存在感さらに極まれり、というところでしょうか。
また、奈緒を小倉に追った時に道づれとなった弥助と再会、日光社参の最中その弥助の忍び働きの助けを借りることに。今や磐音の人脈の多彩ぶりには、皆が呆れる程。
本巻では、そんな磐音の獅子奮迅ぶりの活躍が読み応え充分。

元々本シリーズの面白さの要素に、経済(貨幣経済、幕藩経営)がありました。この度の日光社参が、勘定方役人をはるかに圧倒する両替商らの実務能力、また磐音らの尽力の上に成り立っていることを家基が気付き、危機感を新たにするところは注目点。

金兵衛がおこんの見合い相手を3人手当して喜んでいる一方で、磐音とおこんの間は順調に進展している様子。
その磐音に対するおこんの遠慮ない口ききは相変わらず。ことにおこんが磐音を侍言葉で押し込んでいく部分、おこんの頭脳明晰な諧謔ぶりが改めて感じられ、すこぶる楽しい。

卯月の風/出立前夜/若武者と隼/思川の剣客/女狐おてん

  

15.

●「居眠り磐音江戸双紙15. 驟雨ノ町」● ★☆


驟雨ノ町画像

2005年11月
双葉文庫刊
(648円+税)

 

2007/10/15

 

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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズの第15巻。

冒頭、日光社参の余韻が残る巻。
磐音の代わりに父・坂崎正睦が江戸城中の猿楽に招かれ、福坂実高今津屋若狭屋を下屋敷に招いて関前物産の商いが順調であることに礼を述べる。
それらの事から、磐音が江戸で自由に大きく羽ばたいている姿が改めて浮かび上がる、という趣向です。
一方、正睦が関前から出府した目的の2つがいよいよ果たされます。ひとつは不埒極まる江戸家老・福坂利高の成敗。そしてもうひとつはおこんのこと。
おこん、金兵衛の父娘を招き、正睦がおこんを倅の嫁に欲しいと率直に切り出します。おこんの恋が叶うクライマックスと言える場面。おこんファンとしては、やれやれやっとかと胸を撫で下ろします。

その他宮戸川から姿を消した幸吉を探して、磐音がお菰の真似をさせられる篇。南町奉行所の手伝いで捕まえた盗賊の首領を江戸に連れ帰るため甲斐に出向き、富士川上で派手な舟同士の戦いを繰り広げる篇。今津屋を襲う凶盗を佐々木道場の助けを借りて一網打尽にする篇と、いつもながらの活躍が語られます。
今津屋に奉公を始めたおそめが、二代目おこんというべき印象を残すところも楽しい。

暗殺の夜/暑念仏/鰍沢の満エ門/富士川乱れ打ち/蛍と鈴虫

   

16.

●「居眠り磐音江戸双紙16. 螢火ノ宿」● ★☆


蛍火ノ宿画像

2006年03月
双葉文庫刊
(648円+税)

  

2007/10/21

 

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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズの第16巻。

いよいよ今津屋吉右衛門と小田原脇本陣清水屋右七の次女・佐紀との祝言が近づく。さて仲人はという難問を、またもや磐音が仲介して将軍御側取次・速水左近に頼むこととなる。

一方、白鶴太夫(=元許婚の小林奈緒)に身請けの話が起こる。相手は出羽山形領内の紅花商人・前田屋内蔵助。どこか面差しが磐音に似るところがあるというが、その左顔には大きなあばたがあるという。
資産や外面よりも人物の中身を選んだところに、磐音は白鶴太夫ではない小林奈緒としての心根を感じ取る。
その白鶴太夫に届いた恐喝の文。奈緒を無事に吉原の外へ送り出すことこそ、最後の役割とばかりに磐音が活躍。
それが本書中4章を通じた主ストーリィ。第1巻「陽炎ノ辻」から始まった豊後関前藩騒動、ようやくその最後の幕を閉じる巻と言って良いでしょう。

そうなってくると、あとは磐音とおこんの話だけとなり、ストーリィが単調になってしまわないかとちと心配。

おいてけ堀勝負/白鶴の身請け/禿殺し/四人の容疑者/千住大橋道行

   

17.

●「居眠り磐音江戸双紙17. 紅椿ノ谷」● ★☆


紅椿ノ谷画像

2006年03月
双葉文庫刊
(648円+税)

 

2007/10/22

 

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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズの第17巻。

今津屋吉右衛門佐紀の盛大な祝言から始まる巻。
家治御側衆・速水左近が媒酌人を勤めますが、それも磐音あってのことと皆が承知のことで、改めて坂崎磐音の面目躍如というところ。
次いで磐音の師・佐々木玲圓道場の増築話。ところが、佐々木道場の弟子の名を騙り、近隣の武家から寄付を集める武士が出現。磐音が南町奉行の木下一郎太、地蔵蕎麦の竹蔵親分の力を借りて玲圓とともに決着を付ける。

後半は磐音とおこんの物語。
今津屋の先代内儀・お艶の死去以来、日光社参、祝言と大きな行事の続く今津屋の奥を取り仕切ってきたおこんだったが、ひと段落して何か放心したような表情を度々みせるようになる。
心配する磐音、友人の医師である中川淳庵、桂川国瑞も気遣ってくれ、今津屋の許しも得て上州・法師の湯に湯治に出かける。
主がおこんで磐音は付き添い、つまり用心棒だという。婚前旅行などとんでもないという時代の2人旅。
しかし、そんな2人を旅の途中襲うのが殺し請負丹下屋の一味。まぁ、剣戟はお約束事のようなもので、仕方ないところ。

藩騒動、そして小林奈緒を陰から見守るという役目が終わり、磐音自身の今後の行き方を紡ぎ出そうとする最初の巻。本シリーズにおける最後の幕が上がったと言ってよいでしょう。

十三夜祝言/鰻屋の新香/冥加樽の怪/ふたり道中/法師の湯

  

18.

●「居眠り磐音江戸双紙18. 捨雛ノ川」● ★☆


捨雛ノ川画像

2006年06月
双葉文庫刊
(648円+税)

 

2007/10/27

 

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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズの第18巻。

上州法師の湯から戻ったおこんは今までより落ち着きをみせ、人間がひと回り大きくなった、というのが由蔵評。
明けて正月、睦まじく寄り添う磐音とおこんの姿に、同心・木下一郎太とやくざと金貸し二枚看板の権造親分「三国一の花嫁花婿」だと語り、一郎太と品川柳次郎「おこんさんのような女はそうざらにいない」と呟く。
幾らなんでも持ち上げ過ぎと思いますが、金兵衛も長屋で住人皆に2人の仲を披露してしまうといった風で、ようやく長い冬があけて春が来たという巻であり、許すべし。

春が来たのは磐音、おこんの2人だけではありません。
おそめは1年に亘る今津屋奉公を終えていよいよ縫箔職人になる決意を固め、名人江三郎親方の元への弟子入りが決まる。
そしてもう一人、長らく佐々木玲圓道場で住み込みの師範代を務めてきた本多鐘四郎、若侍らに絡まれていたところを助けたのが縁となって旗本長女・お市に見初められ、西の丸御納戸組頭・依田新左衛門の婿養子に入る話がトントン拍子に進む。

相変わらずの剣戟は、密かに長崎から江戸にやってきた唐手の達人、唐人の偉陽明との対決等々。
長篇時代小説における最後の幕、その皮切りとなる、お馴染み登場人物たちの新たな旅立ちを描いた巻。

土中の甕/おこぼれ侍/鐘四郎の恋/履と剣/面影橋の蕾桜

     

19.

●「居眠り磐音江戸双紙19. 梅雨ノ蝶」● ★★


梅雨ノ蝶画像

2006年09月
双葉文庫刊

(648円+税)

 

2007/10/28

 

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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズの第19巻。  

直心影流・佐々木道場の増築工事が順調に進む傍ら、磐音は師の玲圓から、養子となって道場の後継者になってくれぬかとの申し出を受けます。
おこんと所帯を持つことが決まっているものの、2人の生活をどう築いていくか何も見通しの立っていない磐音とおこんにとっても、申し分のない話。
そんな磐音を突然に刺客が襲います。思わぬ不覚を取って傷を負った磐音は、ようやくにして今津屋に辿り着く。
懸命に看病するおこんの姿と、次々と見舞いに訪れる磐音の友人たちの姿を描かれる。
前半は、磐音の身を案じるおこんの真情、磐音を囲む友情の篤さぶりが見処です。

磐音の傷が癒えた頃、尚武館と新たに名付けられた佐々木道場の増築が完成。その杮落としとして、江戸市中の名だたる剣客らを集めての大試合が催されます。
傷が完全に癒えていない磐音は世話役に回り、佐々木道場から出場する本多鐘四郎ら4人を含めて出場者は合計40人に達し、大名や幕閣の一部、今津屋らも見物客として顔を揃えるという大試合。
出場しない筈だった磐音まで最後に否応なく引きずり出されるのは、当然の決まりごとのようなものでしょう。本書後半は、磐音のこれまで以上に颯爽としたヒーローぶりが見処です。
佐々木道場の後継者となるべき磐音の新たな一歩を描く巻。

なお、お馴染みの磐音が剣を振るっての活躍は、今津屋を襲う凶悪犯一味との戦い、そして刺客との二度目の立会い。
その刺客、四出縄綱の口にした「そなたを邪魔に思うお方が城中におられる」という言葉が、この物語にまだまだ緊張感を残します。

番頭殺し/不覚なり、磐音/怪我見舞い/千面のおさい/四十一人目の剣客

    

20.

●「居眠り磐音江戸双紙20. 野分ノ灘」● ★★


野分ノ灘画像

2007年01月
双葉文庫刊

(648円+税)

 

2007/10/29

 

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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズの第20巻。  

佐々木玲圓道場の後継となる件について豊後関前藩の父・正睦へ知らせた手紙の返信が磐音の元に届きます。
そこには母・照埜が動揺しているため一度墓参りを兼ねて関前へ戻って来れぬか、できればおこんを同道して、という願いが認められていた。
磐音はおこんと相談し、2人で豊後関前へ赴くことを決意する。
本書は、2人の新たな旅立ちへの準備と、豊後関前への船旅を描く巻です。

磐音は6年に亘る宮戸川の鰻割きの仕事も辞め、金兵衛長屋も引き払う。おこんもこれを機に10年勤めた今津屋から身を引くことが決まる。
2人揃って関前藩上屋敷に藩主の福坂実高・お代の方へ挨拶に出向き、金兵衛と3人でおこんの亡母おのぶの墓参りへ行く。
そして今津屋にて親しい人を集めての壮行会が開かれ、その席で2人の今後が披露され、ついに翌朝磐音とおこんは関前藩の御用船に乗船して江戸を旅立ちます。
ただし、すべて安穏とは言えない。磐音に対して田沼意次側から執拗に刺客が差し向けられ、そのあおりを食って同心・木下一郎太が蟄居の憂き目に見舞われます。
そして瀬戸内海とくれば、お約束事のように海賊が登場。

ストーリィとしては何ということもない巻ですが、長きにわたる本物語において最も晴れがましい部分であることでしょう。
新たな門出、そして旅好き人間としては帆を上げての旅立ちと聞くと、自然と胸の内がワクワクして来ます。
壮行会、親しき人々による見送りと続くと、何やら現代の結婚披露宴、成田空港での新婚旅行見送りと似ているような・・・。

紅薊の剣客/夏の灸/一郎太の蟄居/二つの長持ち/遠州灘真っ二つ

  

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