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31.昭和の犬 32.近所の犬 33.部長と池袋 34.謎の毒親 35.彼女は頭が悪いから 36.何が「いただく」ぢゃ! 37.青春とは、 38.悪口と幸せ |
【作家歴】、ひと呼んでミツコ、ガラスの仮面の告白、A.B.O.AB、変奏曲、ドールハウス、喪失記、H(アッシュ)、ブスのくせに!、終業式、バカさゆえ・・・ |
不倫(レンタル)、受難、初体験物語、みんなどうして結婚してゆくのだろう、整形美女、蕎麦屋の恋、すべての女は瘠せすぎである、サイケ、特急こだま東海道線を走る、よるねこ |
ほんとに「いい」と思ってる?、ツイラク、桃、ハルカ・エイティ、コルセット、ああ正妻、すっぴんは事件か?、もう私のことはわからないのだけれど、リアル・シンデレラ、ああ懐かしの少女漫画 |
31. | |
「昭和の犬 Perspective kid」 ★★ 直木賞 |
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2015年12月
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柏木イクという女性主人公の 5歳に始まり49歳までを描いた連作風の長編小説。そしてその傍らには常に犬がいた、というのがイクの物語の定例パターン。 各章の題名もまた愉快。かつて人気のあった米国製TVドラマばかりで懐かしい。もっとも私が覚えのあるのは8作中6作で実際に観ていたのは4作のみ。ただし、どれも本ストーリィに殆ど関係ないというところが、姫野さんらしい妙です。 ※なお、副題にある「パーセクティブ」とは、遠近法、透視図といった意味だそうです。 ララミー牧場/逃亡者/宇宙家族ロビンソン/インベーダー/鬼警部アイアンサイド/バイオニック・ジェミー/ペチコート作戦/ブラザーズ&シスターズ |
32. | |
「近所の犬」 ★☆ |
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2017年12月
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直木賞を受賞した「昭和の犬」の後に刊行された本の題名が「近所の犬」となれば、続編?と思うのは当然のこととでしょうけれど、そうではないところが姫野さんの曲者らしいところ。 いやはや姫野さんがそんなに犬好きであるとは、思ってもみませんでした。 姫野さん、子供の頃からずっと、「猫は人になつくが、犬はなつかない」「猫は忠実だが、犬はわがまま」であると思っていたのだそうです。一般的には犬と猫が逆ですよね。 |
33. | |
「部長と池袋」 ★☆ |
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書籍未掲載作品を大幅に改稿して収録した短篇集、したがって書下ろしに近い“文庫オリジナル”。そして収録作品を次の2パターンに分けているそうです。 |
「謎の毒親 【相談小説】」 ★★☆ | |
2018年11月
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“毒親”という言葉を私は本書で初めて知ったのですが、以前からある言葉で、「児童虐待等で一種の毒のような影響を子供に与える親のこと」だそうです。 主人公である日比野光世は、子供の頃から両親の<訳の分からぬ振る舞い>にさらされ、ずっと耐えてきた経験を抱える女性。 社会人になり、両親も死んだ今、ようやくかつて文容堂書店にあったタウンペーパー「城北新報」の「打ち明けてみませんか」の関係者に手紙で相談する、というチャンスに恵まれます。 光世が知りたかったのは、両親の信じ難い行動の原因は自分にあったのかということ、また、何故あんな言動を取っていたのか、ということ。 本ストーリィは、光世が当時の両親の言動を語る手紙、そしてそれに対する文容堂書店の店主夫妻、当時の相談回答者であった人の息子さんからの回答の手紙によって構成されています。それ故に【相談小説】と冠された次第。 私が最初に読んで魅せられた姫野作品は「終業式」でしたが、本書はそれ以来の“書簡体小説”と言える作品でもあります。 また、ストーリィ内容は姫野さん久々の、如何にも姫野さんらしい快作と言える一冊。 異常な振舞いをする親の存在、子供からすると堪ったものではないと思います。子供には、客観的に自分の親の適否を判断することなどできないのですから。 本書は決して謎解き小説ではありません。主眼は主人公に、全ては貴女の所為ではなかったと癒し、励まし、主人公に自分を取り戻させるため(両親の異常ぶりを呆れ、面白く味わう面がないとは言えませんが)の治療小説とも言って良い内容です。 ストーリィのあちこちに姫野さんらしい感覚や要素が散りばめられ、ファンとしては久しぶりに味わう待望の作品と言って良いのではないかと思います。 ファンなら殊に、ファンでない方にも、お薦めの一冊。 プロローグ:打ち明けてみませんか/名札貼り替え事件/恐怖の虫館/初めての一等賞/タクシーに乗って/オムニバス映画/素肌にそよぐ風/死人の臭い/緻密な脱出/エピローグ:昨日・今日・明日 |
「彼女は頭が悪いから」 ★★ 柴田錬三郎賞 | |
2021年04月
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深夜のマンションで起きた東大生5人による強制わいせつ事件。 女子大生は被害者であったにもかかわらず、非難されたのは彼女だった・・・。 「現実に起こった事件に着想を得た、非さわやか100%青春小説」とのこと。 如何にも姫野さんらしい、ならではと感じる作品。 被害者となった神立(かんだつ)美咲、最も罪が重いとされた竹内つばさ、2人の子供時代からストーリィは描かれていきます。 片やクリーニング店を営む家に生まれ、特に取り柄もなく、我慢することに慣れた長女。一方は、父親が農水省に勤め、兄と共に成績優秀で東大進学が当たり前と思われている次男。 出会う筈のない2人が出会ってしまったのは偶然というしかありませんが、それが美咲にとっての不幸を招く・・・。 と言えば、不幸で悲惨なドラマというだけのことですが、そこは姫野さんのこと、2人の生態を分析的に辿っていく、という風。 その結果浮かび上がってくるのは、「東大」というヒエラルキーに他なりません。 東大生ってそんなに偉いのか、東大生であれば何をしても許されるのか、等々と。 何故美咲は、被害を受けるようなことになったのか。何故つばさは、そこまで「東大」という虚像に囚われてしまったのか。 酷い目にあったのは美咲ですが、誰が不幸かと言えばむしろつばさたちのように感じられます。 問題は、東大生である自分たちは特権階級であると思い込んでいたつばさたちより、彼らにそうした尊大な思いを抱かせてしまった世間にあるように感じます。 最後のつばさの言葉には、あーぁ、の一言。 桶川ストーカー事件をふと思い起こさせられる他、いろいろと深く考えさせられることの多い作品です。 ※なお、東大生だからといって皆が皆、上記のような人間ばかりでないことは、勿論のこと。 プロローグ/第一章/第二章/第三章/第四章/エピローグ |
「何が「いただく」ぢゃ!」 ★☆ | |
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食の雑誌「dancyu」に2015年 4月号〜18年 3月号にわたって連載された食に関するエッセイ「料理を結婚」を、大幅に加筆修正してまとめた一冊の由。 一言で紹介するのなら、ヒメノ節炸裂の食&酒エッセイ、というところでしょう。 姫野エッセイの楽しみは、恰好づけをせず、本音で語ってくれるところ。 ですから、どのエッセイも普通の人の視線です。 そして時々、姫野さんらしい思い切ったコメントが混じるところが、ファンとしては楽しい。 表題の「何が「いただく」ぢゃ!」は、最近「いただく」という言葉が乱発されていることに対する姫野さんの怒り、批判の篇。 「店検索サイトに望むこと」は、姫野さんの要望3点。3点のうち2点は同感しますね〜。 ※昔親しんだ映画、TV番組等々が折に触れ登場するところ、懐かしいことしきり(小さな恋のメロディ、奥様は魔女、キーハンター、ザ・モンキーズ)。また、私の実家での使っていた、ナショナルの炊飯器も懐かしいなぁ。 ふきのとう/生八ツ橋とロドルフ殿下/何が「いただく」ぢゃ!/アジのヒメノ式−上戸と下戸のあいだに流れる深い川−/ウィスキーに合わせる「スパゲッティのガブリエル・デストレとその姉妹風」/「小さな恋のメロディ」のティータイム/さかのぼりコース和食/好きなもの、嫌いなもの/じゃがいも/お漬けもんの炊いたん/ざんねんな、おいしい場所/禁煙条例よりカミングアウト条例を/いい店とは?/「店検索サイト」に望むこと/ほどほどが肝心/酌をやめてくださらぬか/日本酒のネーミング/きっかけの話/かんずり礼賛/みょうが、クレソンは大好きなんだってば!/飲み相手/日本人はびっくり/ホントに名コンビ?/三流と三流感覚/魔性の女/「チーザ」の取り扱い/ロンパールーム/最強のレシピ/サンマ・グラフィティ/東京の雑煮、滋賀の雑煮/早食い・大食いに、涙する/ナショナルの炊飯器/とめてやれよおっかさん、手元のシャネルが泣いている |
「青春とは、」 ★☆ | |
2023年05月
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“青春”、すなわち高校時代。 定年退職後の今、東京都下の一戸建てシェアハウスで暮らす主人公=乾明子(めいこ)が、自身の滋賀県立虎水高校の日々を振り返る、高校青春回想ストーリィ。 小説ですから主人公はじめ登場人物は架空の人物(モデル人物はいるのかもしれませんが)でしょうけれど、時代背景や、当時の人気俳優や歌手は事実そのまま、私にとっても懐かしく思うこと多々あります。 姫野さんと私は4学年差(私の方が上)ですので、多少時期のズレは感じます。 また、滋賀県立高校と、23区内の都立高校という環境の差も大きい。 それでも高校時代が出発点、その時代があってこれまでの人生に繋がっている、という思いには共感すること大です。 今振り返ると、結構みな個性的でしたし、男女共学、決められた制服が無かった所為か常に自由な雰囲気がありました。 そこは本作品の舞台である虎水高校(虎高)と共通しているような気がします。 ※青春出版社の受験必須参考書だった「試験に出る英単語」、私達も<しけ単>と呼んでいましたね。 0.序/1.秋吉久美子の車、愛と革命の本/2.共学と体育、ギターと台風/3.化学の先生/4.ラブアタック出演と保健室と「連想記憶術」/5.青春の性欲/6.有名な名前/7.桜とサンノナナ、いないといる |
「悪口と幸せ BAD-MOUTHING AND HAPPINESS」 ★ | |
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本作は、ルッキズム Lookism(外見至上主義、見た目で人を判断したり、容姿を理由に差別したりすること)を題材にした連作ストーリィ。 前半2篇は姉妹にまつわるストーリィでしたので、それなりに得心ができましたが、後半2篇になると何だかよくわからない、というのが本音のところ。 また、判る、判らないを別にして、姫野作品にあった独特の癖というか、良い意味での毒っ気がすっかり抜けてしまったように感じてしまう処が、残念至極。 人の容姿についてあれこれ言うのは、昔からあったことだと思いますが、こうして名前がついてしまうのは、それが絶対的な評価基準になってきている、からでしょうか。 容姿が優れていれば人から称賛されることも多いのでしょうけれど、ではそれで幸せになれるかといえば、イコールではない筈。自分自身が何を評価基準とするか、にもよりますし。 所詮、それだけのことのように感じるので、ルッキズムを題材にすること自体がかなり難しいことだったのではないかと思う次第です。 1.王女 アンナ/2.王妃 グレース/3.女優 さぎり/4.モデル antiミリセント・ロバーツ |
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