姫野カオルコ作品のページ No.2



11.不倫(レンタル)

12.受難

13.初体験物語

14.みんな、どうして結婚してゆくのだろう

15.整形美女

16.蕎麦屋の恋

17.すべての女は瘠せすぎである

18.サイケ

19.特急こだま東海道線を走る(文庫改題:ちがうもん)

20.よるねこ

 

【作家歴】、ひと呼んでミツコ、ガラスの仮面の告白、A.B.O.AB、変奏曲、ドールハウス、喪失記、H(アッシュ)、ブスのくせに!、終業式、バカさゆえ・・・

→ 姫野カオルコ作品のページ bP


ほんとに「いい」と思ってる?、ツイラク、桃、ハルカ・エイティ、コルセット、ああ正妻、すっぴんは事件か?、もう私のことはわからないのだけれど、リアル・シンデレラ、ああ懐かしの少女漫画

→ 姫野カオルコ作品のページ bR


昭和の犬、近所の犬、部長と池袋、謎の毒親、彼女は頭が悪いから、何が「いただく」ぢゃ!、青春とは

→ 姫野カオルコ作品のページ bS

   


    

11.

●「不倫(レンタル)」● ★★


不倫画像

1996年07月
角川書店

2001年02月
角川文庫化



1999/03/25

姫野さんの「処女」三部作の完結編だそうです。でも一応単独の話。
姫野さん曰く、主題は“美意識”とか。

帯文句には「甘ったるい恋愛小説を凌駕する恐るべき純愛物語」と書かれていますが、読むと納得いく実感があります。
ただ、この文句と題名の「不倫」を結びつけると、この物語とまるで違うストーリィを想像してしまうのではないかと思えて可笑しい。
主人公は力石理気子。代々軍人の家に育ち祖父からスパルタ教育を受け、咄嗟に空手を使ってしまうという34歳、高齢処女。それでいてポルノ作家(SF大賞受賞)という設定。
この作品は、ストーリィ云々よりこの主人公のキャラクターだけで読ませてしまうところがあって、そこが姫野さんの凄いところかもしれません。
とにかく、一般に夢描くような恋愛ごっこをひっくり返すような主人公の発想が面白く、しかもそれが的を射ているから愉快。そして刺激もあり。ポルノ小説を裏返したようなストーリィ(と言っても判らないでしょうが)、そんなイメージにとらわれます。
ひと呼んでミツコの三子といい、本書の理気子といい、2作続けてキャラクターを楽しめる作品でした。主人公には恨まれるかもしれませんが、友人に持ちたいような女性です、やはり。

※ 私はこの完結編から読み始めてしまいましたが、3部作は順番どおり、一気に読む方が良いようです。その方が楽しめると思います。

  

12.

●「受 難 The Sufferings」● ★★☆


受難画像

1997年04月
文芸春秋

(1333円+税)

2002年03月
文春文庫化


2000/04/10


amazon.co.jp

何というヘンテコな話を書くのだろうと、呆れ返ってしまうのが第一の思い。
或る日、主人公・フランチェス子の身体に人面瘡ができます。最初は左腕だったのに、人面瘡はよりによって彼女の股間、性器の中に移り住んでしまいます。それ以降、フランチェス子は人面瘡を“古賀さん”と呼び、それなりに安定した共同生活を続けるというストーリィ。

生まれてからこの方一度も男性に縁が無く、生活は修道女の如くつつましい。そうであるのなら、無用の性器の中に人面瘡ができたって何の不自由も無い、ということなのですが、いくら姫野さんでもそこまで自分を貶めなくてもと、つい術中に嵌って目が離せなくなります。こんなストーリィ、姫野さん以外の誰にも書けません。

おまけに、フランチェス子が触れると男性は皆萎えてしまい、痴漢退治で何度も警察から表彰を受けるという始末。
古賀さんから「ダメな女」と罵られ続け、自分のことはもう諦めているが、他人には幸せになって欲しいというのがフランチェス子の願い。そんなことから妙な仕事を始めることとなり、その結果はまた思いもよらない結末にて終わります。

まぁーったく、どんな感想を書けば良いのか、途方に暮れてしまう小説なのです。

※ 映画化 → 「受難

   

13.

●「初体験物語」● ★★

  

1997年11月
朝日新聞社刊

1998年11月
角川文庫
(571円+税)


1999/03/31

姫野さんが初めて経験したり聞いたりしたことを集めたエッセイ集。
歯切れの良さと姫野さん独特の雰囲気のおかげで、ルンルンと楽しむことができました。気分爽快。
読んでいるうちに、不倫の主人公・力石理気子と姫野さんのイメージがダブってきます。こうなれば、一目なりとも実物を拝見したい、というのが私の望みです。
このエッセイから姫野さんのイメージを思い浮かべると、女子大生時代にフツーの女の子に脱皮し損なったまま社会に出てしまった女の子、エンデの「モモがそのまま大人になったしまった女性、そんな風になります。初キスをしてもらうのに 500円払ったなどと姫野さんから聞くと、親しみと愉快さを感じてしまうのは何故でしょうか。
群ようこさんのそれなりに大人のエッセイと比べると、やや若い同級生のエッセイ、そんな感じで楽しめます。

   

14.

●「みんな、どうして結婚してゆくのだろう」● ★★


みんな、どうして結婚してゆくんだろう画像

1997年11月
大和出版刊

2000年11月
集英社文庫
(495円+税)



2000/12/03

“結婚”に関する既成概念を足蹴にし、読者をして「目からウロコ」という気分にさせる、 ヒメノ流爽快なエッセイ集です。
本書をまとめるにあたっての姫野さんの方針は次の2つ。
(1) 結婚をすすめる、すすめないの、どちらの立場にも偏らないニュートラル・ポジションをキープ。
(2) 夢とか希望とか憧れは他の人にまかせ、ただ実情について考察する。

“結婚”とは、とかく夢をもたせる為、オブラートに包まれて語られることが多いもの。でも、そんなことは姫野さんには通じません。ビシビシとオブラートを突き破り、耳の痛いことも事実ありのままに披瀝 してみせます。
例えば、「結婚するなら三高」の条件が何故悪い? 老後に夫が寝たきりになることを心配すれば、健康そうな方が、介護費用を賄うのに収入が沢山あった方が良いじゃないか。相手の人格、性格に期待しないと覚悟すれば、三高を最後の条件とするのは当然のこと!という具合。
恋愛におよそ縁がないと自ら語る姫野さんが結婚についてエッセイを書くからには、「YES/NO枕は貧乏くさい!」等々、一切の遠慮はありません。“結婚する”=“SEXする”であり、妻になるというのは老後の介護人になるということである、と姫野さんは次々と“結婚”の実態を喝破していきます。
男女を問わず、目からウロコの一冊ですが、日頃結婚、結婚とうるさく言われている女性にとっては、まさに我が意を得たり!という痛快本ではないでしょうか。

はじめに/結婚の謎/結婚までの遠い道/男と女の深い河/結婚の定理/理想の結婚/おわりに

   

15.

●「整形美女」● ★★

整形美女画像

1999年01月
新潮社刊
(1500円+税)

2002年10月
新潮文庫化

2015年05月
光文社文庫化

1999/03/29

難しい題材を見事にまとめ上げたなァと感嘆しました。
今まで読んできた姫野作品と比較すると、ちょっと異色。

整形美容については、様々な立場から賛否両論があることでしょう。その中で姫野さんはどのような立場をとったのか。
繭村甲斐子、望月阿倍子、同じ僻地の村で同級生だった2人が、偶然にも同じ東京で整形を経験していた。
2人の動機、整形手術をするに至った経緯、そしてその結果まで、勿論対照的です。
作中で甲斐子が言うとおり、整形とは単に女性が美しく装うための手段でしかないのかもしれません。そうであっても、途中薄ら寒さを覚え、急いで読み進んでしまうという部分がありました。
整形で人の値打ちが変わるものではないのは当然ですが、対人関係において自信を持てるようになったり、プラス面も否定できません。
さて、この2人の場合はどうだったのか。それは読んでみてのお楽しみです。
読了後、思わず電車の中で整形美人を探してしまいました。

   

16.

●「蕎麦屋の恋」● 


蕎麦屋の恋画像

2000年02月
イースト
プレス刊
(1400円+税)

2004年09月
角川文庫化


2000/06/04

ふとした邂逅を共通テーマに描いた短篇集、と言えたらどんなに楽なことか。
表紙カバーの裏には、六つの「非・恋愛小説」と紹介されていますが、そんな単純な構成ではありません。
それぞれの題名自体パロティ的ですし、恋愛小説もどきからトレンディ・ドラマ、童話、社会派小説、学園小説もどきまで、という数々。読み終えた後に整理しようと思ったら、困惑してしまいました。本書はそんな短篇集です。
とは言っても、「蕎麦屋の恋」「お午後の紅茶」はじっくり読める内容・頁数を備えていて、それなりに読み応えのある作品。

とくに楽しいのは、表題作の「蕎麦屋の恋」。姫野さんならではのストーリィで、思わず微笑んでしまいます。
京浜急行の「快特」でふと知り合った2人の初デートが、蕎麦屋でせいろを食べ、そのあとラブ・ホテルで一緒にテレビを観るだけ、という“非・恋愛小説”。嘘みたいなストーリィですが、そこまでに至る展開は滑らかで納得感があります。主人公の秋原健一(43歳)と波多野妙子(30歳)の2人への親近感が生じ、ほのぼのとした気分に浸れる快さが魅力の一篇。

蕎麦屋の恋/お午後の紅茶/イーハトーブの小道/天国に一番近いグリーン/スワンの涙/色つきの男でいてくれよ

   

17.

●「すべての女は瘠せすぎである」● 


すべての女は痩せすぎである画像

2000年04月
大和出版刊

2004年06月
集英社文庫
(476円+税)


2004/07/04

単行本時の題名は、「すべての女は瘠せすぎである−真説・美人論−」というものだったという。
その題名が示すように、本書は姫野さんならではの美人論エッセィ。もっとも、文庫化に際して全面的に書き改め、新たに書き下ろした部分もある由。

姫野さんのエッセイ本は、いつも気分転換に読むのにちょうど良い。本音一途に語られているところと、次にどんな論理展開があるか全く予想つかない、そんなところが楽しい。
今回のように久しぶりに読むと、姫野さんへの愛おしさはより増すのである。
第5章中の「かわいそうな水野真紀」論はユニーク。まさに目からウロコ。
そして本書中最も貴重なのは、最後の「彼の声」。滋賀県田舎町の女子高校生だった姫野さんは、いきなり吉行淳之介宅へ電話をかけ、以後3ヶ月に1回程度電話でお話し相手をしてもらっていた、という。その思い出を語ったエッセイ。心楽しくなってくる一篇です。

まぼろしの美人論/すべての女は瘠せすぎである/ルックス&性格=見かけ&中身/すべての男はマザコンである/すべての人に好かれる方法/彼の声

   

18.

●「サイケ」● 


サイケ画像

2000年06月
集英社刊

2003年06月
集英社文庫
(476円+税)


2003/08/11

週刊少年ジャンプ連載の「ハレンチ学園」、小川ローザのTVCM「オー、モーレツ!」を見て育った世代、そんな世代を主人公にして語る短篇集。
どこからどこまでが姫野さん自身の思い出、あるいは感慨なのか判りませんが、僅か3年違いの私としては、上記2つにそんなに影響された思いはありません。
少なくとも「少年ジャンプがぼくをだめにした」こともなければ、「モーレツからナイーブ」へ変化することもなかった。その辺り、姫野さんと私の感性の違いと言ってしまえば、それまでなのですが。
自伝的な特急こだま東海道線を走るへの架け橋となる一冊と考えれば、理解できるような気もする短篇集。
なお、「イキドマリ」は、SM好きな同僚女性社員を自分のアパートに拉致し、力士のふんどしをつけて四股を踏ませようとする相撲好きの青年の話。本短篇集の中では異色ですけれど、姫野さんらしい展開で笑わされます。

オー、モーレツ!/少年ジャンプがぼくをだめにした/モーレツからナイーブへ/イキドマリ/チビ/お元気ですか、先生

   

19.

●「特急こだま東海道線を走る」● 
 (文庫改題:「ちがうもん」)


特急こだま東海道線を走る画像

2001年10月
文芸春秋刊
(1286円+税)

2004年10月
文春文庫化



2001/11/11

幼少の頃の記憶、その意味が判らなかった故に忘れられず、ずっと思い出の片隅に残っている。そんな記憶が、ふとした拍子に解き明かされることがあります。
本書は、そんな幼少の頃の記憶を振り返り、その意味が解き明かされるというストーリィ、5篇。
従来の姫野作品に比べると、とてもあっさりとした短篇集。姫野さんという作家に関心を抱いていなかったなら、すぅーっと読んでそのまま忘れてしまうような一冊ではないかと思います。しかし、姫野作品のファンにとって、この短篇集のもつ意義はとても大きい。
従来の姫野作品には、心の内にあって曝け出しにくい部分をデフォルメして小説化したような傾向があるのですが、この短篇集にはそうした向きが一切無く、素直に自分を開いているという印象を受けます。
5篇いずれも、主人公の家庭環境、とくに両親の夫婦関係がいびつなものであったと書かれています。どこまで姫野さん自身と一致することなのか判りませんが、本書には姫野さん自身の原風景を感じます。
つまり、本書については、作家・姫野カオルコが漸く自身を素直に書き出せるところまで達した、ことを感じるのです。その意味で、本書は大きな転換期となる一冊ではないかと思います。
本書を越えた後、姫野作品がどれだけ広がりをみせるか、それが楽しみです。

夏休み−九月になれば/高柳さん/みずうみのほとり/永遠の処女/特急こだま東海道線を走る

  

20

●「よるねこ」● 

よるねこ画像

2002年08月
集英社刊
(1600円+税)

2006年06月
集英社文庫化

2002/08/25

ちょっと薄気味悪い話、本書はそんな8作を収録した短篇集。

しかし、正直言って物足りず。ストーリィ自体が良く判らなかった、という方が適確かもしれません。
こうしたホラー系小説であれば内田百「冥途」が傑作ですし、薄気味悪い奇妙さという点ではジョン・コリアにはるかに及びません。なんとなく、中途半端という感じ。
姫野さんらしさが感じ取れなかったのも、物足りなさを感じた理由のひとつ。考えてみると、姫野作品の特徴は主人公における奇妙な感覚、風変わりな捉え方にあったと思います。ところが、本書8篇では、奇妙なのは主人公たちの置かれた状況であって、主人公たち自身ではない。

よるねこ/女優/探偵物語/心霊術師/X博士/ほんとうの話/通常潜伏期7日/貘

           

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