はやみね かおる作品のページ No.1


1964年三重県生、三重大学教育学部卒。小学校教諭をしていた26歳の時に書いた「怪盗道化師」が第30回講談社児童文学新人賞に入選し、作家デビュー。2001年教職を辞し、専業作家。


1.
怪盗道化師

2.バイバイ スクール

3.オタカラ ウォーズ

4.そして五人がいなくなる

5.亡霊は夜歩く

6.消える総生島

7.魔女の隠れ里

8.踊る夜光怪人

9.機巧館のかぞえ唄

 
ギヤマン壺の謎、徳利長屋の怪、虹北恭助の冒険、いつも心に好奇心!(怪盗クイーンからの予告状)、人形は笑わない、怪盗クイーンはサーカスがお好き、「ミステリーの館」へようこそ、虹北恭助の新冒険、虹北恭助の新・新冒険、怪盗クイーンの優雅な休暇、あやかし修学旅行

 → はやみねかおる作品のページ No.2

 
都会のトム&ソーヤ1、ぼくと未来屋の夏、僕と先輩のマジカル・ライフ、虹北恭助の冒険−高校編−、怪盗クイーンと魔窟王の対決、都会のトム&ソーヤ2、虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー、笛吹き男とサクセス塾の秘密、都会のトム&ソーヤ3、オリエント急行とパンドラの匣

 → はやみねかおる作品のページ No.3

 
都会のトム&ソーヤ4、ハワイ幽霊城の謎、赤い夢の迷宮(勇嶺薫)、卒業、恐竜がくれた夏休み、虹北恭助の冒険−フランス陽炎村事件−、モナミは世界を終わらせる?

 → はやみねかおる作品のページ No.4

  


 

1.

●「怪盗道化師(ピエロ)」● ★★★

 

 
1990年04月
講談社

2002年04
講談社刊
青い鳥文庫
(620円+税)

 
2003/11/16

 
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児童書ですが、出会えたことが嬉しくなる、そんな作品です。

西日本の小さな町「どんで」の商店街にある、西沢書店のおじさんが主人公。2人の子供も独立し、奥さんは既に亡く、お客さんは駅前の大きな書店に行く為、相棒の老犬ゴロと暇を持て余しています。
そんな西沢書店に、小学生の女の子が嬉しそうに怪盗ルパンの本を買いに来たことから、自分も怪盗になろうと決意します。
さっそく「やさしい変装入門」という本を読み、黒いマントとシルクハット、片眼鏡を買って、ファッションは完璧。そして出した広告は「なんでも盗みます。ただし、世の中にとって値打ちのないもの、みんなが笑顔になれるもの」というもの

お惚けおじさんを主人公にしたユーモア小説か、と思い読み始めたのですが、あにはからんやこれが大当たり。“道化師に不可能はない”とばかり、本当に活躍してみせるのです。それも、心温まるものばかり。そして、現実話と思っていたのに、どんどんファンタジーな領域にまでストーリィは広がり、そのうえユーモアも充分織り交ぜられています。
ちなみに、盗んで欲しいと依頼されたものは、悪口、ビルの影、クリスマス、悪い運動神経、怖い夢、雲、時間、等々。

読んでいて楽しかったなぁ。鯛焼きのシッポまでアンコ入り、という文句がありますが、まさに最後の1頁まで満ち足れリ。

  

2.

●「バイバイ スクール−学校の七不思議事件−」● ★☆

 

  
1991年07

講談社刊

(1117円+税)

1996年02月
青い鳥文庫化

 
2004/04/18

 
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“夏休み”もの第1作。舞台となるのは、全児童が6人という大奥村小学校です。
1学期の終わりをもって廃校となる終業式の日、学校のことを忘れないようにと、校長先生が6人に学校に伝わる「七不思議」を語ります。そして、夏休みにはいると、何と奇怪なことにその七不思議が次々と起こり始めます。

児童書だからと侮るなかれ。真相を推理するヒントはきちんとストーリィの中に提示されています。そのうえで、語り手である6年生の宮沢和子から「読者への挑戦」があったりと、構成は本格推理小説そのものです。また、すぐ真相を見破ってしまう名探偵も登場。
全児童6人に対して教師7人と、和気藹々とした家族的な学校ストーリィが楽しめます。そしてもうひとつの魅力は、本書が「名探偵夢水清志郎事件ノート」シリーズの原型となる作品であること。
寝てばかりで勉強もスポーツもできないのに、不思議な出来事の真相をいとも容易に見破ってしまうという5年生、コウくんこと法難(のりがた)功が夢水に通じる人物像であることは、一目瞭然です。ちなみに、「法難」は「ほうむず」とも読めるのだとか。

  

3.

●「オタカラ ウォーズ−迷路の町のUFO事件−」● 


  
1993年03

講談社刊

(1262円+税)

2006年02月
青い鳥文庫化

2004/01/10

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バイバイ スクールに続く“夏休み3部作”パート2の由。
遊歩、タイチ、千明の小学生3人組が活躍する、SF冒険ストーリィです。
舞台となるのは、3人の住む山之城町

山之城町が、タダの町ではない。4百年前に突如空から落ちてきた人物(絵者)が、1日にして城を作り、1週間で迷路のような町を作ってしまったという伝説の町。
その絵者が隠した宝の地図を探し出し、宝を見つけようと、夏休みの3人が活躍するストーリィ。
遊歩はその絵者の子孫らしい。ところが、3人の前には得体のしれない宇宙人が現れるのですから、ちと面喰います。
奇想天外、それなりに面白く読みましたが、本書はやはり児童向き図書でした。

   

4.

●「そして五人がいなくなる−名探偵夢水清志郎事件ノート−」● ★★

 

  
1994年02

講談社刊
青い鳥文庫
99.02:第15刷

(580円+税)

2006年07月
講談社文庫化

   
2003/11/17

  
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“名探偵夢水清志郎事件ノート”シリーズの第1作。
はやみねさんの語る推理小説の条件とは、(1) 名探偵が登場すること、(2) 不思議な謎が出てくること、(3) 「本格」の二文字がついていること、だそうです。
それを象徴するかのように、夢水清志郎は自ら「名探偵」と名乗る人物。年齢不詳、いつも黒いサングラスと黒い背広というスタイル。そして、その助手となるのが、岩崎家の亜衣・真衣・美衣という三つ子の姉妹。
自ら名探偵と称する人物に出会ったのは、北村薫「冬のオペラ」に続き2人目。北村版・巫探偵がペーソスを感じさせるのに対して、はやみね版・夢水探偵はノホホンとユーモラス。しかし、どちらの作品も、本格派推理小説であることに間違いありません。

いつ食事したか、自分の誕生日さえ忘れてしまう夢水の探偵能力に三つ子の3人は懐疑的ですが、巨大遊園地にて誘拐事件が発生し、夢水探偵の真価が問われることになります。
天才的な子供4人が、「伯爵」と名乗る人物によって白昼堂々遊園地から誘拐されます。それも、宙吊りの箱に始まり、走行中の絶叫マシン、ミラーハウス、蝋人形館から。そして、最後に伯爵自身も姿を消し、合計5人。
本格派推理でありながら、ユーモラス、後味さわやか。
殺人事件を持ち出さなくても、本格派推理小説を楽しむことができるのは、ちょっと嬉しいこと。

    

5.

●「亡霊は夜歩く−名探偵夢水清志郎事件ノート−」● ★☆

 

  
1994年12

講談社刊

青い鳥文庫
97.12:第10刷
(580円+税)

2007年01月
講談社文庫化

 
2004/01/25

“名探偵夢水清志郎事件ノート”シリーズの第2作。
亜衣・真衣・美衣が通う虹北学園にある四つの伝説−「時計台の鐘が鳴ると、人が死ぬ」「夕暮れどきの大イチョウは人を喰う」「校庭の魔法円に人がふる」「幽霊坂に霧がかかると、亡霊がよみがえる」
虹北学園祭が近づく頃、その伝説が実現するような奇々怪々な事件が、次々と虹北学園内に起きます。さて、その真相は?

なにやら学園ホラーのような出だしですが、本書はあくまで学園ミステリ。というより、本書の楽しさは、そんな事件より学園祭の準備に活気付く虹北学園の雰囲気にあります。高校生活、学園祭の頃と、つい自分自身のその頃の思い出が甦り、ワクワクした気分にさせられてしまうのです。
(ちなみに、亜衣は文芸部、真衣は陸上部、美衣は星占い同好会の所属)
特筆すべきは、この第2作で亜衣の同級生であり同じ文芸部員、“夢水”少年サイズとでも言うべき中井麗一(通称:レーチ)が初登場。また、フレッシュな独身女性、数学の真木先生が登場するのも、今後の展開に興味惹かれるところです。
事件の真相は、15年前にあった女子生徒の飛び降り自殺に関わります。まさしく、教職にあるはやみねさんだからこそ、というストーリィ。大切にしたいメッセージです。

       

6.

●「消える総生島−名探偵夢水清志郎事件ノート−」● 

 

  
1995年09月
講談社刊

青い鳥文庫
(544円+税)

2007年07月
講談社文庫化

 
2004/02/07

“名探偵夢水清志郎事件ノート”シリーズの第3作。

今回は、映画の予告編制作ロケの出演者に選ばれた岩崎家の三姉妹夢水もくっついて、万能財団の所有する無人島に出かけるというストーリィ。
撮影メンバー一行が島についた途端、乗って来た大型クルーザーが爆破され、万能財団の社長兼監督を初め、計13人が島に閉じ込められます。
夢水語るところによる“閉ざされた空間モノ”推理小説のパターン、「館」、「雪」、「島」という代表的な題材もすべてこの総生島には備わっている、という舞台設定。
そこで起きる事件は、島の中央にある山が消え、次いで島自体が消え、さらに滞在している霧越館まで消える、という摩訶不思議なもの。それに対する夢水の謎解きは如何。
というものの、あまりスケールが大き過ぎるミステリは、自ずと真相も限られることから、予想外という楽しみはあまりなし。
また、虹北学園から離れ、登場人物も限られることから、学園ストーリィといった楽しみもなし。
シリーズの中では、スケールの大きい割にやや物足りない一冊となりました。

   

7.

●「魔女の隠れ里−名探偵夢水清志郎事件ノート−」● ★☆

  

  
1996年10月
講談社刊

青い鳥文庫
(573円+税)

2008年01月
講談社文庫化

2004/03/27

“名探偵夢水清志郎事件ノート”シリーズの第4作。

雑誌「セ・シーマ」のタフでスピード狂の編集者・伊藤真里が、愛車ポチ1号とともに本書にて登場。
「名探偵夢水清志郎の謎解き紀行」シリーズの企画実現をと、スキー場の伝説の謎、村興しの推理ゲームへの参画と、夢水+三姉妹を引っ張り出します。

第1部はそれ程の謎ではないけれど、第2部における予想外の犯人像、過去に遡る推理劇に、意表をつく面白さあり。
その主たる2つの事件以外に楽しいのが、三姉妹の母親・羽衣母さんのエピソード。本を読み、軽くストレッチ体操をし、新聞をスクラップするという日常を知ること、夢水清志郎をアゴで使うそつのなさ、なかなかに愉しませてくれます。

第1部 消える足あとと幽霊のシュプール/休憩 羽衣母さんの華麗な一日/第2部 魔女の隠れ里

   

8.

●「踊る夜光怪人−名探偵夢水清志郎事件ノート−」● 

 

  
1997年07
講談社刊

青い鳥文庫
01.01:第13刷

(580円+税)

2008年08月
講談社文庫化

2004/01/25

“名探偵夢水清志郎事件ノート”シリーズの第5作にして、“踊る夜光怪人”が登場する巻。なにやら江戸川乱歩・少年探偵団を連想させられます。

亜衣・真衣・美衣の三姉妹は、本巻から虹北学園の2年生。
本書の前半では、虹斎寺に伝わる古い暗号をめぐり、“夢水”少年サイズのレーチが大活躍します。後半、レーチが行き詰まったところで、おもむろに夢水清志郎が動き出すという展開。
本書におけるユニークな初登場人物は、亜衣の後輩である千秋の父親、虹斎寺のダンディな住職・水野一人

今回は、ミステリというより、夏という季節柄か、暗号解読という要素もあってトム・ソーヤー的冒険物語風。
そして最後には、虹北商店街の人々、第1作登場の伯爵、おなじみの上越警部・岩清水刑事、タフな編集者・伊藤真里が一斉に登場し、賑やかな大団円となります。+青春風隠し味。
なお、主ストーリィとは関係ありませんが、度々繰り返されるレーチ(麗一)と文芸部のカマキリ部長(片桐)の掛け合い漫才のようなやり取りも、可笑しい。

  

9.

●「機巧館のかぞえ唄−名探偵夢水清志郎事件ノート−」● 

 

  
1998年06月
講談社刊

青い鳥文庫
(580円+税)

2009年01月
講談社文庫化

   
2004/04/04

“名探偵夢水清志郎事件ノート”シリーズの第6作。

主ストーリィである「夢の中の失楽」は、老推理作家・平井龍太郎の住む機巧館に伊藤真里と共に招待された夢水、三姉妹が、老推理作家の仕掛けた謎に挑戦するという話。
ミステリのタイプとしては“見立て殺人”。つまり、予め予告されたとおりに事件が起きていく、というストーリィ構成。
どこまでが現実か、推理作家の描いた小説の中の出来事なのか、そこが仕掛けとなっているミステリなのですが、趣向が判りにくく、納得し難いところあり。

むしろ、ショート・ストーリィである「怪談」「さよなら天使」の方が楽しめると言えます。
前者は、三姉妹、レーチ、水野父娘らが語る折角の怪談も、夢水にかかってはみな事件として簡単に真相が解明されてしまう、という話。後者は、夢水邸に置き去りにされた創人という幼児のために、夢水名探偵が子育てに奮闘するという話。夢水が創人にする物語がすべて事件ものばかり、というのが夢水らしい。果たして創人は将来名探偵になることができるのやら。

怪談/夢の中の失楽/さよなら天使

          

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