畠中 恵
(はたけなか・めぐみ)作品のページ No.5



41.むすびつき−「しゃばけ」シリーズNo.17−

42.新・しゃばけ読本−「しゃばけ」シリーズ副読本−

43.つくもがみ笑います−「つくもがみ」シリーズNo.3−

44.かわたれどき−「まんまこと」シリーズNo.7−

45.てんげんつう−「しゃばけ」シリーズNo.18−

46.わが殿

47.猫君

48.あしたの華姫−「まことの華姫」シリーズNo.2−

49.いちねんかん−「しゃばけ」シリーズNo.19−

50.いわいごと−「まんまこと」シリーズNo.8−


【作家歴】、しゃばけ、ぬしさまへ、百万の手、ねこのばば、アコギなのかリッパなのか、うそうそ、みぃつけた、まんまこと、ちんぷんかん

 → 畠中恵作品のページ No.1


つくもがみ貸します、しゃばけ読本、こころげそう、いっちばん、アイスクリン強し、こいしり、ころころろ、ゆんでめて、若様組まいる、ちょちょら

 → 畠中恵作品のページ No.2


やなりいなり、こいわすれ、ひなこまち、さくら聖・咲く、けさくしゃ、つくもがみ遊ぼうよ、ときぐすり、たぶんねこ、明治・妖モダン、すえずえ

 → 畠中恵作品のページ No.3


えどさがし 、まったなし、なりたい、うずら大名、明治・金色キタン、若様とロマン 、おおあたり、まことの華姫、ひとめぼれ 、とるとだす

 → 畠中恵作品のページ No.4


もういちど、御坊日々、こいごころ、忍びの副業、おやごころ、いつまで 

 → 畠中恵作品のページ No.6

  
 → しゃばけ倶楽部〜バーチャル長崎屋〜

 


                    

41.

「むすびつき ★☆


むすびつき

2018年08月
新潮社刊

(1400円+税)

2020年12月
新潮文庫


2018/08/12


amazon.co.jp

夏季恒例刊行の「しゃばけ」シリーズNo.17。

今回はこれまでにない、ちょっと変わった趣向が凝らされています。具体的には、転生・生まれ変わりがテーマ。

・「昔会った人」:付喪神になったばかりの蒼玉が「若・・・」と言ったと、広徳寺の寛朝から長崎屋に来てくれという依頼が。
・「ひと月半」:兄やたちに付き添われ箱根に湯治に出掛けた若だんなの不在中、長崎屋の離れに3人の死神が現れます。いずれも若だんなの生まれ変わりと主張するのですが・・・。
「むすびつき」鈴彦姫、自分が住まう五坂神社の故・星ノ倉宮司こそ、若だんなの前世の姿と言い出します。その星ノ蔵宮司が何故か幽霊に・・・。
・「くわれる」:昔「若さん」が困った時は助けてくれると言ったからと、鬼女のもみじがいきなり長崎屋へ。さて・・・。
・「こわいものなし」:転生して何度も生まれ変われるのなら、死を恐れずに行動しヒーローになれる、と思い込んでしまったのが青物振り売りの夕助。さてそんなにうまくいくのか・・・。

若だんなそっちのけで、若だんなの前世はどうだったのかという興味に走る妖たちが愉快。
どういわれようと、若だんなには何も言えないこと、と妖たちは判っているのでしょういか。(笑)


序/昔会った人/ひと月半/むすびつき/くわれる/こわいものなし/終

  

42.

「新・しゃばけ読本(作:畠中恵、絵:柴田ゆう) ★☆


新・しゃばけ読本

2018年12月
新潮文庫刊

(750円+税)


2019/01/26


amazon.co.jp

“しゃばけ”シリーズのファンにとっては嬉しい副読本にして、ガイドブック。
2007年11月刊
しゃばけ読本の増補改訂版。

現在第17巻までと、なが〜い間に亘って続く人気シリーズ。たまにこうしてお浚いする、振り返るのも楽しいものです。

とくに本書では、イラストを担当している柴田ゆうさんの仕事の様子、蔵出しギャラリーが嬉しい。

物語紹介(「しゃばけ」〜「むすびつき」)/主な登場人物関係図/
おこぐとあゆぞうによるしゃばけシリーズ登場人物解説/
<新><旧>「長崎屋間とり図」/「妖たちの一軒家」が見たい/
時代用語解説/
畠中恵−創作の秘密:「しゃばけ」はこうして生まれた!−戯作者畠中恵ロングインタビュー−/
江戸がよみがえる散歩道【皇居東御苑】/
絵師・柴田ゆう−しゃばけイラスト大解剖!/
蔵出しあやかしギャラリー/
若だんなと歩こう!−しゃばけお江戸散歩/鳴家絵描き歌/
特別収録:絵本「みぃつけた

 
【柴田ゆう−略歴】
1973年愛知県生、愛知県立芸術大学デザイン科卒。当初グラフィックデザイナーを志したが採用されず、パレットクラブ・スクールに通いながらイラストレーターを目指す。米村圭伍「風流冷飯伝]にてデビュー。主な仕事は時代小説の装画や挿絵。畠中恵「しゃばけ」シリーズ、米村圭伍「風見藩」シリーズ、酒見賢一「泣き虫弱虫諸葛孔明・第2部」等にて装画・挿絵を担当。

              

43.
「つくもがみ笑います 


つくもがみ笑います

2019年01月
角川書店

(1400円+税)

2020年09月
角川文庫



2019/01/31



amazon.co.jp

つくもがみ貸します」、「つくもがみ、遊ぼうよに続く“つくもがみ”シリーズ第3弾。

古道具屋兼損料屋=
出雲屋の跡取り息子である十夜(とおや)も早や15歳。父親であり店主の清次から道具貸出の差配ももう任されています。
ところが常連客の依頼で貸し出したはずの古道具(しかも付喪神となった道具たち)が先方に届いていない、それどころかこれは計画的な拉致に違いないと判り、慌てます。
今回はそこから始まる連作風ストーリィ。

さらに今回ストーリィの鍵ともなり、やたら胡散臭そうな人物として、自称「悪の親玉」と名乗る
阿久徳屋とその跡取り息子である春夜が登場します。
清次と十夜という父子、出雲屋の付喪神たち、阿久徳屋と春夜という父子が入り乱れ、付喪神たちを狙う人間たちと騒動を巻き起こします。

ただ本シリーズ、私としては余り楽しめない、というのが正直な思い。
付喪神たちの出来ることといえばホンの僅かなことばかり、だからこそチームワークで乗り切ろうとする訳ですが、それにしても窮屈な感じを否めません。

当然ながら本シリーズ、まだまだ続きそうですが、次作を読むかどうかは迷うところだなぁ。

つくもがみ戦います/二百年前/悪の親玉/見つかった/つくもがみ笑います

               

44.
「かわたれどき ★★


かたわれどき

2019年02月
文芸春秋

(1300円+税)

2022年02月
文春文庫



2019/03/05



amazon.co.jp

ひとめぼれ」に続く“まんまこと(真真事)”シリーズ第7弾。
町名主の跡取り息子=
麻之助を中心に、チーム<麻之助>が江戸市内で起きるトラブルごとの解決に奮闘するというパターンの本シリーズ、“お気楽者”を演じる麻之助のキャラクターが好ましく、相変わらず楽しき哉。

お寿々が亡くなりその痛みを長く引きずっていた麻之助ですが、それなりに時間も経ち、仲間たちの身の上がいろいろ定まっていく中(冒頭では
おこ乃の縁談が決定)、いよいよ麻之助の縁談(後妻探し)という雰囲気が整ってきます。
両国の大貞や金貸しの丸三、それを聞いた札差の大倉屋まで麻之助の縁談相手探しに大乗り気。麻之助のためというより、何やら面白がってのことという風です。
各篇において主ストーリィとはならないながら、麻之助の縁談話といつも無縁でなし。
しかし、若い
お雪から「おじさん」呼ばわりされた麻之助、流石にショックだったようです。(笑)

「きみならずして」:麻之助の前に突然、縁談相手だというかわいい娘が現れますが・・・。
「まちがい探し」:金魚の絵を描いた絵師は誰? 地本問屋に泣きつかれ、やむなく麻之助が絵師探しに。
「麻之助が捕まった」:幼い時に別れた息子の筈だが本物か? 麻之助が親子問題に巻き込まれます。
「はたらきもの」:西から来た天狗? 奇妙な噂話の出所探しを麻之助が押しつけられます。
「娘四人」:相馬小十郎家に四人の娘が。
吉五郎との縁談を望む与力の娘、過去の馬鹿な行為を悔やむ相馬一葉、麻之助との縁談に乗り気の緒りつ、呆然とするお雪
しかし、それよりもっと大事な出来事が・・・。
「かわたれどき」(彼誰時):本書各篇に登場する花梅屋お浜の孫娘=お雪が洪水に流され、記憶を一部を喪失してしまう。そんなお雪を心配してお浜が麻之助に頼み事。

さあ、麻之助の再縁、いよいよか?
その結果が早く知りたく、次巻が待ち遠しいです。


きみならずして/まちがい探し/麻之助が捕まった/はたらきもの/娘四人/かわたれどき

            

45.
「てんげんつう ★☆


てんげんつう

2019年07月
新潮社

(1400円+税)



2019/08/17



amazon.co.jp

夏季恒例刊行の「しゃばけ」シリーズNo.18。

暑い時期、毎度お馴染みの、楽しいファンタジーを読めるというのは幸せです。
今回特徴的なことは、いつも以上に寝込んでいるものの、それ以上に大事な人のために何とかしないと、トラブル解決に向けて頑張ろうとすること。
さてその大事な相手はというと、大妖である
祖母おぎん、万物を知るという妖怪“白沢”である兄やの仁吉、許嫁である於りんとその実家である材木問屋=中屋等、という次第。

まぁ年中寝込んでいる割にはそれ以上深刻にならずに済んでいるのですから、若だんな、ある意味、意外と丈夫なのかも。
という訳で本書、若だんなの成長と逞しさが感じられる巻となっています。

「てんぐさらい」:仁吉の嫁になることにつきおぎんと賭けをしたと、天狗姫の花風が、突然長崎屋の離れに。
また、於りんの実家である中屋が、店を閉じているばかりか、店の中が空っぽ。一体中屋、於りんの身に何があったのか。
「たたりづき」:荼枳尼天に仕えているという妖狐たちが突然長崎屋の離れに。おぎんと大喧嘩した仙狐の息子である仙太、仕返しに若だんなの知り合いに祟りをした、という報告。いったい誰を? そして何を? 若だんなたちが調べ始めます。
「恋の闇」:三春屋の栄吉に、札差の娘との縁談が。ただ、聞こえてくる栄吉像、実物とはかなり乖離している。若だんなたちは困惑すると同時に、縁談の行方を心配。
「てんげんつう」:天眼通、すなわち千里眼のこと。自分はてんげんつうだと名乗る男が若だんなの前に現れ、若だんなが自分を救ってくれるはずと脅してくる。仁吉、佐助が怒って張り飛ばしたものの・・・。
「くりかえし」:於りんから花見の誘い。ところが、深川の隅田川に新しく植えられた桜の木に、大量の毛虫が。おまけに於りんが毛虫にかぶれて大変と。一体何が・・・。

てんぐさらい/たたりづき/恋の闇/てんげんつう/くりかえし

              

46.
「わが殿 ★★


わが殿

2019年11月
文芸春秋

上下
(各1400円+税)

2023年01月
文春文庫
(上下)



2019/12/25



amazon.co.jp

幕末、膨大な藩の借金を整理し、藩校設立、洋式軍備導入、藩直営店の設置という藩政改革を成し遂げた越前大野藩4万石の藩主=土井利忠とその実践者となった家臣、僅か80石という内山七郎右衛門良休の主従関係を、史実を題材に詳細に描き出した力作長篇。
なお、七郎右衛門の弟である
隆佐(りゅうすけ)良隆も教育や軍事の面で大野藩に貢献した人物と言いますから、内山家兄弟、共に歴史に名を残すだけあって中々の人物だったのでしょう。

実はこの大野藩の話、以前にも読んだことがあります。
大島昌宏「そろばん武士道がそれ。20年以上も前の作品ですが、今でもその面白さは忘れられません。
武士が藩財政再建のため直営店を開き、商人たちに伍して店舗を増やし成功するなどという話は、事実はまさに小説より奇なり、というべき史実。

「そろばん武士道」はかなり面白可笑しく書かれた時代小説ですが、本作はかなり詳細に書き上げたという印象です。
藩主として小禄の藩士に藩の運命を託すということは相当の勇気がいることだったと思いますが、「打出の小槌」と言われて新たな施策が打ち出される度にその資金捻出を命じられる七郎右衛門の側も相当な苦労があった筈。
それでも七郎右衛門が藩主に従い続けたのは、利忠公の人物的魅力があったからこそ。
「わが殿」という題名は、そうした七郎右衛門の思いを表しているのでしょう。
 
時代に移り変わりは否応ないもの。望む望まないにかかわらず時代に応じて生きていこうとする者たちと、付いていけずにただ今までどおりでいたいと願う者たち。その対照的な姿が本作では明らかです。
読み応えと興味尽きない時代小説の力作。お薦めです。

なお、時代の変化に応じ率先して変わっていくべきという課題は、今の日本についても言えることではないかと思います。
また、日本の赤字財政も他人事ではなく、多いに心配です。


序.殿15歳 七郎右衛門19歳/第1章.殿27歳 七郎右衛 門31歳/第2章.殿28歳 七郎右衛門32歳/第3章.殿32歳 七郎右衛門36歳/第4章.殿33歳七郎右衛門37歳/第5章.殿36歳 七郎右衛門40歳/第6章.殿39歳 七郎右衛門43歳/第7章.殿44歳 七郎右衛門48歳/第8章.殿45歳 七郎右衛門49歳/第9章.殿46歳 七郎右衛門50歳/第10.殿50歳 七郎右衛門54歳/終章.殿50歳 七郎右衛門54歳/

                 

47.
「猫 君 ★☆


猫君

2020年01月
集英社

(1450円+税)

2023年02月
集英社文庫



2020/02/27



amazon.co.jp

江戸を舞台に新米“猫又”たちの奮闘を描く妖しファンタジー。

畠中恵作品の中心軸はやはり
“しゃばけ”にあるなぁと感じさせられる一冊。
江戸を舞台にいろいろな妖したちが登場するのが“しゃばけ”シリーズ。その中から付喪神を題材にしたのが
“つくもがみ”シリーズであり、猫又を主人公に据えたのが新たな本シリーズ、ということでしょう。

20年生きると猫又になるということですが、その20年にあと一ヶ月というところで飼い主の
お香に死なれた<みかん>。
人間たちに追われている処を助けてくれたのが先輩猫又たち。
江戸にはその猫又たちが暮らす
“陣”が6つあるのですが、新米猫又はまず新米猫又のための学校<猫宿>で学ぶことになっていると言われ、祭陣に親しむ間もなく猫宿に入学。

何となく既視感があるなぁと思ったら、
ハリー・ポッターと賢者の石によく似た展開です。新米、学校というだけでなく、みかんが仲良くなった白花、ぽん太という組み合わせも、ハリー&ハーマイオニ&ロンという仲良し三人組とよく似ています。

しかし、その後の展開がハリポタとは違う、畠中さんらしい楽しさに溢れているところ(ハリポタは所詮ヴォルデモートとの戦い物語に終わりましたし)。

先輩猫又たちに自分たちが軽んじられたと怒ったのが、みかんをはじめとする新米猫又ら。何と先輩猫又たちにやり返したいと勝負を挑みます。その顛末を描いたのが「合戦の一」と「合戦の二」。
なお、題名の
「猫君」とは伝説の猫又のこと。その猫君の再来が新米猫又たちの中にいるかもしれない、というのも騒ぎの一つです。

気軽に楽しめる大江戸ファンタジー。今後の展開が楽しみです。


猫君/猫宿の長/猫宿始まる/あわれみの令/合戦の一/合戦の二

                

48.
「あしたの華姫 ★☆


あしたの華姫

2020年06月
角川書店

(1500円+税)

2023年07月
角川文庫



2020/07/06



amazon.co.jp

まことの華姫に続く、シリーズ第2弾。

「まこと」では、“華姫”とは何ぞや?という戸惑いがあったのですが、本作ではもう理屈など横においておきましたので、十分に楽しめました。
姫様姿の木偶(でく)人形=
お華、芸人である月草が操り、腹話術で言葉を発しているだけの筈なのに、まるで現実に存在する人格のように語り始めます。
世間からは、真実を語るという意味で“まことの華姫”と呼ばれている。果たしてその本当の姿は・・・・? などと考えるのは興覚めでしかありません。
ちょっと不思議な存在・・・と考えておけば充分。それでこそ本ストーリィを楽しめるというものです。

華姫と月草のコンビ近くに登場するのは、前作につづき両国の盛り場を仕切る
山越の親分とその愛娘であるお夏・13歳
そのお夏はすっかりお華を大切な友達扱いしています。
本作では、そのお夏に関わって起きた揉め事に、その都度月草とお華が引っ張り出され、山越の親分から月草が解決を強要されるという次第。
何と言ってもお華の、月草、お夏らとのやり取りが楽しい。

月草とお華の探索に協力するのが、お華のファンである
“お華追い”の面々というのですから、まさしくホームズ風であり、現代アイドルタレント並みである処もまた面白い。

「お華の看病」:お夏と親分が揃って麻疹で闘病中。そんな時、親分の息子だという春太郎が現れ・・・。
「二人目の息子」:自分も息子だと名乗って現れた秋ノ助、こちらは山越の親分の跡目狙いか・・・。
「お夏危うし」:亡姉おそのの許婚者だった正五郎が失踪。あろうことかお夏が若い同心・岡っ引きから容疑者扱い・・・。
「かぐや姫の物語」:親分の目が行き届かないところで、勝手にお夏の婿候補争いが・・・。
「悪人月草」:大河内同心配下の小住親分、何故か山越の親分に敵対。一体何を狙ってのことなのか・・・・。

序/お華の看病/二人目の息子/お夏危うし/かぐや姫の物語/悪人月草/終

                      

49.
「いちねんかん ★★


いちねんかん

2020年07月
新潮社

(1400円+税)

2022年12月
新潮文庫



2020/08/08



amazon.co.jp

夏季恒例刊行の「しゃばけ」シリーズNo.19。
今回は、これまでの物語とはちょっと異なり、大人びた趣きに。本シリーズの転換点となる巻になるのかもしれません。

というのは、若だんなの両親=
藤兵衛おたえ遠縁のおきの(実は祖母おぎん)に誘われ、九州は別府にある温泉に出掛けることになったからです。この際だからとおたえ、帰りは船旅を途中までにして東海道をゆっくり旅したいと希望したことから、2人の不在は一年間程となる予定。
ちょうどよい機会だからと藤兵衛、
「少しずつ、一太郎に合った店の切り回し方を、覚えていって欲しい」と、薬種問屋・廻船問屋2つの店の主代行を若だんなに命じます。
しかし、そこで張り切ってしまうとかえって寝込みかねないのが若だんなの悩ましいところ。さて、どうなりますか。

さすがに主不在となると、
仁吉・佐助だけでは目の行き届かない処が出てくると、貧乏神の金次、屏風のぞき(風野)の2人が奉公人として若だんなの世話係につくよう強要されます。

「いちねんかん」:若だんなの旅用薬袋の新規販売というアイデアに大番頭忠七が暴走、その結果は・・・。若だんなが冒頭篇から見事な裁きを付けます。
「ほうこうにん」:主不在をつけ込んだのか、長崎屋に詐欺を仕掛けてきた熊助。若だんな、貧乏神の金次も熊助には勝てないと謎めいた予言。さてその意味は・・・。
「おにきたる」:西から江戸へ厄介な流行病が到来したと思ったら、何と長崎屋の庭に疫鬼(えきき)5人、さらに疫病神までが登場。ただでさえ直ぐ死にかけてしまう若だんななのに、と妖たちが大騒ぎ。若だんな、この危機をどう乗り越える?
「ともをえる」:大阪の大店である薬種仲買仲間の椿紀屋の婿選び、江戸椿紀屋の大元締である吉右衛門が若だんなに、誰が相応しいか考えを聞かせてほしいと強引に頼み込んできます。
若だんな、これを機会に新しい人間の友を得られるのか?
「帰宅」:長崎屋に強盗団の襲撃。若だんなと妖たちが籠る離れを城に攻防戦が展開されます。さて、どんな結末に・・・・。
※最後は、藤兵衛・おたえが無事帰宅し、大団円・・・?

若だんな、病弱であっても主としての才覚は頼もしい。若だんなの成長ぶりに手ごたえを感じられる、嬉しい巻です。


いちねんかん/ほうこうにん/おにきたる/ともをえる/帰宅

                  

50.
「いわいごと ★★


いわいごと

2021年02月
文芸春秋

(1400円+税)

2024年03月
文春文庫



2021/03/19



amazon.co.jp

かたわれどきに続く“まんまこと(真真事)”シリーズ、第8弾。
ずっとやもめのままだった
麻之助の縁談相手の候補者となった
花梅屋のお雪、事故で最近の記憶を失ってしまったことから、縁談は止まったまま。
息子の縁談を焦る父親の
宗右衛門から、高橋家に持ちこまれた相談事を試しに2人で裁定してみたらと言われ、麻之助はお雪と共に行動し始めます。

本巻はその麻之助のみならず、
相馬吉五郎の縁談についても描かれ、さらに麻之助が縁談の進行に助力する、という内容が多い。
麻之助自身の縁談は中々進まないというのにねぇ・・・。

しかし終盤、あれよあれよという間に麻之助の縁談が決まり、その勢いのままに祝言まで。
縁談が決まる時は、そんなものなのかもしれませんねぇ。

「こたえなし」:男3人が共同で買った富くじが当たり、15両が手許に。しかし、もし当たったら一緒に旅に出ようと約束したその旅先が決まらず、麻之助がお雪と共に裁定役に。
「吉五郎の縁談」吉五郎お紀乃との縁談が決まります。しかし、吉五郎の身の上に不可解な事件が・・・。
「八丁堀の引っ越し」:極めて異例なことに、相馬小十郎が定町廻り同心から吟味方与力に昇進。その背景にある事情は?
「名指し」:町名主父子が突然の溺死。そのため4町をどの町名主が引き受けるか決めなくてはならないのですが、決まらず。おかげでその間、麻之助が代役を務めさせられることに。
※江戸市中に3人しかいないという
町年寄の樽屋、町名主仲間で評判の良い西森金吾とその娘=和歌が新たに登場します。
 
・「えんむすび」:町年寄の樽屋が麻之助に縁談を斡旋しようとしたところ、何と3組も。そのうえいずれもまとまりそうのない話ばかりで樽屋も困惑。結局、麻之助と親友たちが背後事情を調べることに・・・。
「いわいごと」ついに麻之助の縁談成る! さて相手は?

こたえなし/吉五郎の縁談/八丁堀の引っ越し/名指し/えんむすび/いわいごと

       

畠中恵作品のページ No.1     畠中恵作品のページ No.2

畠中恵作品のページ No.3     畠中恵作品のページ No.4

畠中恵作品のページ No.6

 


  

to Top Page     to 国内作家 Index