畠中 恵
(はたけなか・めぐみ)作品のページ No.3



21.やなりいなり−「しゃばけ」シリーズNo.10−

22.こいわすれ−「まんまこと」シリーズNo.3−

23.ひなこまち−「しゃばけ」シリーズNo.11−

24.さくら聖・咲く

25.けさくしゃ

26.つくもがみ、遊ぼうよ−「つくもがみ」シリーズNo.2−

27.ときぐすり−「まんまこと」シリーズNo.4−

28.たぶんねこ−「しゃばけ」シリーズNo.12−

29.明治・妖モダン

30.すえずえ−「しゃばけ」シリーズNo.13−


【作家歴】、しゃばけ、ぬしさまへ、百万の手、ねこのばば、アコギなのかリッパなのか、うそうそ、みぃつけた、まんまこと、ちんぷんかん

 → 畠中恵作品のページ No.1


つくもがみ貸します、しゃばけ読本、こころげそう、いっちばん、アイスクリン強し、こいしり、ころころろ、ゆんでめて、若様組まいる、ちょちょら

 → 畠中恵作品のページ No.2


えどさがし 、まったなし、なりたい、うずら大名、明治・金色キタン、若様とロマン 、おおあたり、まことの華姫、ひとめぼれ 、とるとだす

 → 畠中恵作品のページ No.4


むすびつき、新・しゃばけ読本、つくもがみ笑います、かわたれどき、てんげんつう、わが殿、猫君、あしたの華姫、いちねんかん、いわいごと

 → 畠中恵作品のページ No.5


もういちど、御坊日々、こいごころ、忍びの副業、おやごころ、いつまで 

 → 畠中恵作品のページ No.6

  
 → しゃばけ倶楽部〜バーチャル長崎屋〜

 


 

21.

●「やなりいなり」● ★☆


やなりいなり画像

2011年07月
新潮社刊
(1400円+税)

2013年12月
新潮文庫化



2011/08/13



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しゃばけ」シリーズ、No.10。
今回の特徴は“しゃばけ”シリーズ10周年記念ということで、<鳴家携帯ストラップ>付の初版限定版が同時刊行。
もっとも私の読書は図書館からの借出本によるので、そのストラップ、目にしておりませんが。

10周年、よく続いたものです。こんなに続く人気シリーズになるとは最初に「しゃばけ」を読んだ時には思いもしませんでした。
畠中さん、まことにおめでとうございます。
これだけ続いたのも、競技マラソンではなく健康志向ジョギングというスタイルだったこと、その都度趣向をあれこれ変えて楽しみ、これといって始まりも終わりもないストーリィだった、ということが長命の秘訣だったのでしょう。

さて本10巻、ストラップ以外にもうひとつ特徴あり。それは、各篇冒頭に長崎屋特製レシピ(鳴家のカウント利用かつ注意付)が添えられていること。
具体的に紹介すると、
小豆粥(塩味&砂糖味)、やなり稲荷、栄吉の煤(あげ)出しいも、長崎屋特製ゆでたまご、お酒大好き妖の味噌漬け豆腐、という品々。

ストーリィはというと、本書での若だんな、病後の後とあって仁吉、佐助に離れから一歩も出させてもらえない、という状況。
そこへ数多の厄病神、生き霊、天からも妖と、いろいろな妖たちが訪れ大賑わい。
その中で愉快だったのは
「からかみなり」。行き先も告げず長崎屋の主=藤兵衛が3日間も帰らぬまま。
何があったのか。若だんなの部屋で妖たちが勝手に想像した謎解きストーリィを繰り広げるといった、安楽椅子探偵もどきの展開が楽しめます。
それと
「あましょう」、久々に栄吉が登場、若だんなとも友情を再確認する場面あり、です。

こいしくて/やなりいなり/からかみなり/長崎屋のたまご/あましょう

       

22.

●「こいわすれ」● ★☆


こいわすれ画像

2011年09月
文芸春秋刊
(1400円+税)

2014年04月
文春文庫化



2011/10/14



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町名主の息子で名代の麻之助が、幼馴染である今や町名主の清十郎、見習い同心の吉五郎らと共に町内の厄介毎ごと解決等々に活躍するまんまことシリーズ第3弾。

お気楽息子という看板を背負ってきた麻之助も、お寿ずという愛妻を得、さらにお寿ずが懐妊したとあって、良き夫・良き父親を目指すという風で変化が感じられます。
その一方、父親が死去し先に町名主となった清十郎、見習い同心の吉五郎の持ち込む厄介毎の所為で、麻之助も大忙し。

「おさかなばなし」:置いてけ堀に河童が現れ、小児をさらったり、金を奪ったりしているという噂が広まり、大騒ぎ。
「お江戸の一番」:狂歌を楽しむ花橘連と画家たちの集まりである朱雀連が対立、各々から相談を受けた清十郎と吉五郎が困り果て、麻之助に尻を持ち込んできます。
「御身の名は」:麻之助に、名前も定かならぬ女性からの呼び出し文が幾度も届きます。誰が、何のために?
「おとこだて」:よみうりに、御家人の妻女の不倫話が。その事件と、麻之助の団子を食い逃げした武家との間に何の関係が?
「鬼神のお告げ」:三尸の虫のお告げで富札に当たったという駒吉のお陰で、町名主は揉め事が増え、大弱り。
「こいわすれ」:橋から落ちそうになった娘を助けたことから麻之助、暦をめぐる騒動に巻き込まれ・・・・。

本シリーズも3冊目となり、“しゃばけ”シリーズと並んで、安心して楽しめるロングシリーズものになったと思ったところですのに、終盤にとんでもない展開が待ち受けていました。
まさか、畠中さんの物語の中でこんな悲しいことが起きるとは。
次の巻でどんな展開があるかは別として、本巻は切ない幕切れです。

おさかなばなし/お江戸の一番/御身の名は/おとこだて/鬼神のお告げ/こいわすれ

         

23.

●「ひなこまち」● ★☆


ひなこまち画像

2012年06月
新潮社刊
(1400円+税)

2014年12月
新潮文庫化



2012/07/16



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夏休み時期の恒例刊行となった観のあるしゃばけ」シリーズ、早やNo.11。
今回は、指物師の荷に迷い込んでか、若だんなの手元にひとつの木札が届きます。そこには
「お願いです。助けてください」と書かれており、しかも 5月10日までという期限付き。
さて誰からか、そして何のためか。

その
「序」にて設定された共通テーマを基に、若だんなが様々な人から様々な助力を求められるというのが、本巻の趣向。
開かない上に奇妙な影が現れる原因となった船箪笥の謎解き話の
「ろくでなしの船箪笥」。江戸市中に奇妙な出来事が続く上に若だんなまで悪夢を見る始末。悪夢を食べるというがいなくなったのか?という「ばくのふだ」
江戸市中の美しい娘を選んでその面を手本に雛人形を作り、大名家中に納めるという雛小町騒動。商売の古着を盗まれて困窮する娘=
於しな仁吉屏風のぞきが助け、若だんなは安楽椅子探偵として活躍する「ひなこまち」
若だんながお礼にもらった河童の秘薬をめぐって起きる騒動を描いた
「さくらがり」「河童の秘密」
どの篇も「しゃばけ」らしい面白さですが、一方で常連人物の登場が少ないところがやや寂しい。

ところで第11巻目ともなるとそろそろ若だんなに恋模様が起きてもいい頃と思いますが、作者の畠中さん、どうなのでしょう?
途中若だんな自身そう思う部分がありますが、こんなにも妖達に囲まれている自分のところへ嫁に来てくれる嫁などいようか、と自信なさげ。
本書中、女性の登場が少ない中で魅力を感じさせられるのは、露天の古着商の娘である於しな。
本書だけの登場ではもったいなく、是非また登場してもらいたいところです。

ろくでなしの船箪笥/ばくのふだ/ひなこまち/さくらがり/河童の秘薬

             

24.

●「さくら聖・咲く」● ★☆


さくら聖・咲く画像

2012年08月
実業之日本社
(1300円+税)

2016年07月
新潮文庫化



2012/09/29



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畠中さんにしては珍しい現代もの、政治家事務所を舞台にした軽妙な連作ミステリアコギなのかリッパなのか第2弾。この続編が書かれるのは思ってもみなかったなぁ(6年ぶりです)。

主人公は佐倉聖(せい)、21歳。大学3年生にして元大物政治家=大堂剛が主宰する政治勉強会事務所のバイト事務員兼弟の保護者兼就活学生、という人物設定。
この主人公のキャラクターが本作品の魅力。元暴走族で度胸がある上に大堂から鍛えられたお陰もあって、門下の政治家たちが持ち込む難題をキレ味鋭く次々と解決するのが常、という青年。
そんな聖、弟のためにも給料・保険・年金・勤務時間が安定した会社に就職したいと就活に挑みますが、成果はいま一つ。どうせなら自分の事務所で雇いたいという
加納衆議院議員から、自分で決められないなら俺たちで就職先を決めるぞと脅かされる始末。
とはいえ、就活中の最中にも、次々と大堂、加納らから難題が押し付けられてきます。され、聖の就活の成果は・・・?

本シリーズ、こんなに面白かったかなぁ、というのが読み始めて直ぐに感じた思い。ことに第一章「ナイショナイショ」。面接中に突然起きた大規模停電。社員たちが慌てる中、大堂の事務所で鍛えられた柔軟性をもってテキパキと指示、行動を繰り広げる聖の姿が真に圧巻。
ところが残念ながら、次章以降は就活の話題が繰り返されながらも難題そのものは皆政治家・選挙絡み。もっと普通の会社を舞台にしての聖の活躍を見たかったのに、惜しい次第です。

聖が「オヤジ」と呼び、遠慮ないタメ口で繰り広げる大堂とのやりとりは、人生の先人以上父親未満という風で、実に楽しい哉。また、その周辺に登場する加納議員、沙夜子議員、同秘書の真木、元秘書で現都議会議員の小原との和気藹々としたやりとりも愉快です。本書では聖の弟=も十分に登場しています。
珍問難問を賑やかに解決、楽しい現代ものエンターテイメント。

序章.プレエントリー/1.ナイショナイショ/2.羊羹こわい/3.聖、シューカツ中/4.神、降臨/5.電信柱は友か/終章.さくら咲く

              

25.

●「けさくしゃ」● ★★


けさくしゃ画像

2012年11月
新潮社刊
(1500円+税)

2015年05月
新潮文庫化



2012/12/10



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江戸時代の出版界の様子を描いてみたいという畠中さんの意欲から生まれた作品。
主人公は実在の戯作者=
柳亭種彦で、その正体は2百俵取りの旗本=高屋彦四郎知久、ただし役目のない小普請組。
この種彦、「南総里見八犬伝」を書いた滝沢馬琴のような現代まで知られる戯作者ではないものの、代表作「偐紫田舎源氏」ではグッズ販売も好調で江戸時代のベストセラー作家だったという。
本書に描かれるのはその
通称=彦さんが戯作者になろうとする頃のこと。版元稼業に乗り出そうとする山青堂を彦さんの傍らに配し、2人の丁々発止、愉快なやり取りを基調に描いた時代もの出版界ストーリィ。
各章冒頭に、当時の出版界用語の解説付き。

ストーリィとしての面白さは、出版界事情に事件もの要素が加えられていて、彦さんが戯作を思いつき語るという趣向にて事件の経緯を再構成、真相を明らかにするという展開にあります。
さらに畠中さんらしいところは、彦さんを囲む仲間たちの集い。彦さんとその恋女房=
勝子とのやりとりも微笑ましいのですが、そこに大身旗本=石川伊織&直子夫妻が加わり、さらにクセもの中間の善太、山青堂らも混じって、まるで戯作サークルのよう。楽しさたっぷりです。
本作品もまたシリーズ化を期待したいところですが、そうなりますよね、畠中さん?

これより、始まり、始まり、となりまする/1.運命の者、歩いて玄関よりいたる/2.世の中、義理と付き合いが、山とありまして/3.羨ましきは、売れっ子という名/4.難儀と困りごとと馬鹿騒ぎ/5.いや、恐ろしき/6.明日が知れぬ世であれば/これにて終わりますると、ご挨拶申し上げ

               

26.

「つくもがみ、遊ぼうよ」 ★★


つくもがみ、遊ぼうよ画像

2013年03月
角川書店刊
(1400円+税)

2016年04月
角川文庫化



2013/04/17



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つくもがみ貸しますに続くシリーズ第2弾。

前作で面白さを感じなかった大きな理由は、主人公と付喪神たちが直接会話をしなかったところになったのですが、その点が第2弾において改善。
また、主人公は前作の
出雲屋清次&お紅から2人の息子である十夜(とおや、11歳)とその遊び仲間=市助(11歳)とこゆり( 8歳)という3人にバトンタッチ、子供たちだからと油断して付喪神たちも語り出してしまった、という次第。

出雲屋の周辺で起きるちょっとした事件に、幼い子供たちと付喪神たちが協力し合って解決に挑むという趣向。もっとも子供たちにとっては事件解決というより遊びの延長のようですが。
さしづめ江戸時代もの子ども探偵&付喪神探偵団、という趣きです。
付喪神とは器物が生まれて百年経ち妖と化した者たちのこと。したがって根付、姫様人形、掛け軸、櫛、帯留め、双六等々皆ちっちゃな存在ばかりなのです。微力という点では子供たちと同様。
したがって思わぬ危機に陥れば、大人に助け出され、こっぴどく叱りつけられるという展開。
病弱な若旦那+妖たちという
しゃばけシリーズと似た趣向でありながら異なるのは、そうした点。

いずれにしても、幼い十夜たちの無邪気にして暴走気味な冒険、付喪神たちの珍妙な活躍が楽しい巻です。続巻を期待。

序/つくもがみ、遊ぼうよ/つくもがみ、探します/つくもがみ、叶えます/つくもがみ、家出します/つくもがみ、がんばるぞ/終

             

27.

「ときぐすり」 ★☆


ときぐすり画像

2013年05月
文芸春秋刊
(1400円+税)

2015年07月
文春文庫化



2013/06/23



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町名主の息子で名代の麻之助が、幼馴染である今や町名主の清十郎、見習い同心の吉五郎らと共に町内の厄介毎ごと解決等々に活躍するこいわすれに続くシリーズ第4弾。
本巻の特徴は、恋女房の
お寿ずと生まれた娘を同時に失ってから1年、未だにその傷心を引きずっている麻之助と、麻之助を見守る周囲の人々の温かい目線が印象的であること。
「ときぐすり」という題名は、本巻の内容を象徴しているように思えます。

「朝を覚えず」:若い医者が処方した売薬が問題に。相談を受けた麻之助は思い切った行動に・・・。
「たからづくし」:清十郎が行方不明。どうも親戚中から縁談を持ち込まれ逃げ出したらしいのだが・・・。
「きんこんかん」:団子・汁粉・煎餅の店を各々開いて好評のおきん・お紺・お寛。その三人娘が何故か吉五郎を追いかける。その裏に隠された事情とは・・・。
「すこたん」:瀬戸物問屋と茶屋問屋の跡取り息子同士の争いに麻之助が巻き込まれる。さらに難題は、2人の嫁候補に浮上した有名なわがまま娘=緒すなの扱い。
「ともすぎ」:悪名高い高利貸しの丸三が、麻之助たちと語らった後行方不明に。事件の真相は・・・。
「ときぐすり」:盗賊の手下だった滝助14歳、麻之助は滝助が暮して行ける手立てを世話しますが、滝助の胸の内は・・・。

朝を覚えず/たからづくし/きんこんかん/すこたん/ともすぎ/ときぐすり

                

28.

「たぶんねこ」 ★★


たぶんねこ画像

2013年07月
新潮社刊
(1400円+税)

2015年12月
新潮文庫化


2013/08/13


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夏休み恒例刊行のしゃばけ」シリーズNo.12。
今回は各篇の趣向が多彩で、たっぷり楽しめます。

「跡取り三人」は、若だんなを含む大店の跡取り息子3人が両国橋の親分=大貞にけしかけられ、自分で仕事を見つけかつどれだけ稼げるかを競う話。いつも元気に病気という若だんなが競争などできるのやら。
「こいさがし」は大貞の子分=富松の頼みで若だんなが見合いの仲人を務めることになったのですが、縁談にまるで縁のない若だんながうまく扱えるのやら? 母おたえの元で花嫁修業の若い娘=於こんが若だんなたちを引っかき回します。

「くたびれ砂糖」は、親友=栄吉が修行中の安野屋で起きた珍妙な事件の探偵役を若だんなが買って出るという、探偵仕立て篇。
「みどりのたま」は、兄やの一人である仁吉が頭に傷を負い、何と記憶を喪失してしまうというサスペンス仕立ての篇。

最後の「たぶんねこ」は、長崎屋に連れられてきた幽霊=月丸のおかげで若だんなが思わぬ危機に。本シリーズには珍しい、若だんなの冒険&サスペンス篇。

どの篇も面白さは平均以上、夏休暇の読書には格好の一冊です。

序/跡取り三人/こいさがし/くたびれ砂糖/みどりのたま/たぶんねこ/終

               

29.

「明治・妖モダン」 ★☆


明治・妖モダン画像

2013年09月
朝日新聞出版
(1400円+税)

2017年07月
朝日文庫化



2013/09/28



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明治の世、アーク灯が夜も明るく照らす銀座を舞台に、2人の巡査の元に持ち込まれる様々な妖しい事件を描いた連作短編集。

畠中恵さんと言えば妖たちが活躍するしゃばけ”シリーズが代表作ですが、明治時代を舞台にした青春ものアイスクリン”シリーズもあります。
本書はその2シリーズを掛け合わせ、さらにサスペンス要素を加えたスリリングな一冊。
アーク灯が明るく夜を照らし闇が減ったことから江戸の頃の妖たちも姿を消した筈・・・。いやいや銀座の中心街こそ明るくてもまだまだ周辺に闇は残っている。そう簡単に妖たちが一斉に姿を消す筈もなく・・・というのが本作品のコンセプト。
2人の若い巡査=
原田の前に次々と持ち込まれた妖しい事件は、2人が常連の牛鍋屋「百木屋」にて店主の百賢こと百木賢一、同じく常連客の三味線師匠=お高、煙草屋の赤手の前でいつも話題に上ります。それら様々な事件に本当に妖たちが絡んでいるのやら。

近代的な明治の世といっても、まだまだ世情定まらぬ状況。だからこそいろいろ暗躍したり策略をめぐらす人間たちも現れます。ですから読んでいる内にそれら悪党たちと妖たちの一体どっちが悪辣なのか、不気味なのかと感じてしまう次第。
その双方が競うように盛り上げるスリリングさが本書の魅力。
それに付け加え、中盤での謎かけ、最終話での謎解きと、畠中さんの仕掛けの面白さも存分に楽しめます。
妖好きの方にはお薦め。

煉瓦街の雨/赤手の拾い子/妖新聞/覚り 覚られ/花乃が死ぬまで

        

30.

「すえずえ」 ★★


すえずえ画像

2014年07月
新潮社刊
(1400円+税)

2016年12月
新潮文庫化



2014/08/15



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夏季恒例刊行のしゃばけ」シリーズNo.13。

今回はいつにも増して楽しい。
若だんなの幼馴染=
栄吉に、さらには若だんなにまでお見合い話が降って湧いてひと騒動に至るのですから。
さらに、気合を入れて寝込むことの多い若だんなが、何と小田原へ?、さらには上方にまで?という展開もあるのですから。

まず冒頭
「栄吉の来年」は、栄吉がお見合いをした、という噂が広がります。若だんな、衝撃を覚えると共に、自分たちもそうした年齢になったのだと実感。そのことに関わって生じた騒動に、若だんなと妖したちが協力して立ち向かいます。
そして結果はというと、栄吉が若だんなをついに一歩リード?

「寛朝の明日」は、天狗に頼まれて妖し退治に小田原へ出向く寛朝の話。心配した若だんなが猫又のおしろバクの本島亭場久に供をさせ、夢を介して若だんなはちょっとしたバーチャル旅。

「おたえの、とこしえ」の主役は、若だんなの母親=おたえ。
長崎屋の主人である
藤兵衛が商売で上方へ出掛けている留守中、とんでもない要求をしてきたのが大阪米会所の仲買人だという赤酢屋七郎右衛門
若だんな以上に人間離れしたのんびりさを見せるおたえ、どう処するのやら。稀なおたえの登場だけに興味津々です。

「仁吉と佐助の千年」、なんと若だんなに縁談が殺到。さてその騒動の結果は? とりあえずとはいえ、誰もが納得できる結末ではないかなァ。でもおかげで今後の巻がますます楽しみになった気がします。

「妖達の来月」は、今後のストーリィ展開に繋がる一篇です。

栄吉の来年/寛朝の明日/おたえの、とこしえ/仁吉と佐助の千年/妖達の来月

   

畠中恵作品のページ No.1    畠中恵作品のページ No.2

畠中恵作品のページ No.4    畠中恵作品のページ No.5

畠中恵作品のページ No.6

 


  

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