9月5日(下沼(豊富)→兜沼) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
全駅間歩き6日目(32.6km) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
実は、今日の「全駅間歩き」も 少しだけインチキをすることにしました。 本来であれば、列車で下沼まで移動し、 順番通り下沼から歩くべきところなのですが、 先に豊富まで列車で行き、豊富−下沼間を逆方向に歩き、 下沼から豊富までは列車で戻ることにしたのです。 理由は簡単、丁度良い時間に下沼駅に 停車する列車がなかったためです。 朝一番の列車であれば下沼駅にも停車するのですが、 幌延駅出発は6時21分であり、 宿屋に泊まって朝食食べて…と思うと、少し早すぎます。 逆に、そのつぎの列車となると11時前出発となってしまい、 そこまで待つと、目的地に着く前に陽が暮れてしまいます。 タクシーという選択肢もあったと思いますが、 幌延−下沼間のタクシー運賃は 大学生(当時)にとっては、ちょいと高すぎます。 ![]() この日は朝6時半に起きました。 昨日は疲れた体に、ビール2杯いってしまいましたが、 2日酔いの気配はありません。 いそいそと出発の用意をし、朝風呂に入りました。 風呂は割とぬるめだったのですが、 豆だらけの足はひりひりと痛みました。 幌延駅から普通列車に乗り込み、豊富駅を目指します。 幌延駅を出た列車はサロベツ原野の脇を快調に飛ばし、 昨日の終点・下沼駅を通過し、15分ほどで豊富駅に到着しました。 自分と同じく幌延駅から乗車したと思われる数人の乗客とともに 豊富駅で下車しました。 このまま1時間弱列車に乗っていれば、 明日の目的地・稚内まで着いてしまうと言ってはいけません。 |
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さて、「逆方向駅間歩き」で昨日のゴール、下沼駅を目指します。 国道に沿って15分ほど歩くと町並みは途絶え、牧草地帯に入ります。 今日は天気も良く、所々で牛が放牧されています。 豊富といえば、温泉と牛乳で有名な町です。 内地(本州他)ではあまり見かけないものの、「豊富牛乳」は北海道では非常に有名な牛乳のひとつです。 道が緩い上り坂に変わると、やがて幌延町に戻ります。 豊富町内の路側帯は広かったのですが、幌延町に入るとまた狭くなってしまいました。 路側帯が狭くなっても、そこは天下の国道40号、大型車もすぐ横を通過していきます。 しばらく進み、宗谷線の反対側に並行して伸びる脇道に入りました。 国道とはうって変わって交通量は非常に少なく、周囲は一面の牧草地帯でした。 やがて昨日見た景色が見えてくると、まもなく下沼駅に到着しました。 ![]() あらかじめ用意していたペットボトルの水は あっという間に空になってしまいました。 実は、下沼駅の駅前には湧水があります。 湧水と言っても、それほどしっかり整備されたものではなく、 蛇口が用意されているだけの簡素なものではありますが、 水量は豊富で、常に「涌きだし」続けています。 昨日の夜も、この湧水から空になったペットボトルに水をくみました。 この日私が訪れた時には、 この湧水の前に1台の車が止まっていました。 湧水では車の主と思われる人が、 ざっと数えて20本はある5リットルボトルに水をくんでいました。 しばらく待っていると、私に順番をゆずってくれたので、 空になっていた500mlのペットボトル2本に湧水の水を入れました。 この湧水は地元では有名らしく、「一度飲んだら水道水は飲めなくなる」そうです。 しばらくすると、また1台車がやってきました。やはり湧水目当てのようでした。 下沼駅の待合室でしばらく時間をつぶしていると、 これから豊富に向かうという地元の方が待合室に入ってきました。 時間があったので、その方から下沼地区の話を少し聞くことができました。 駅前の湧水は、20年くらい前まで存在した簡易郵便局の台所に出ていた水だそうです。 かつて、掘削技術が貧弱ということもあり、当地では泥炭の混じった水を飲んでいた人も多かったそうです。 泥炭が混じらない水を得るには、深く井戸を掘る必要があり、それには莫大な金が必要でした。 簡易郵便局に住んでいた方は当地一番のお金持ちだったそうで、 「きれいな水」が一種のステータスになっていたようです。 列車の到着時刻が近づいたので駅のホームに出ました。 日差しはきついものの、ひんやりとした風が吹き、とても気持ち良い天気でした。 やがて、列車のヘッドライトが見えました。 その列車は乗車位置から離れた場所で待っていた私達の前で停車しました。 運転士さんの細かな気遣いに感謝です。 列車は10分弱で豊富駅に着きました。 豊富は文字通り、豊富町の中心駅であり、豊富温泉に向かうバスも発着しています。 駅自体は無人駅ですが、駅に隣接して観光案内所が設置されています。 豊富駅からバスに10分ほど乗ると豊富温泉に行くことができます。 豊富温泉は石油の試掘中に発見されたという温泉で、温泉に石油成分が混じっている珍しい温泉です。 現在では数軒の温泉宿と日帰り入浴施設で「日本最北の温泉郷」を形成しています。 豊富温泉の日帰り入浴施設「ふれあいセンター」では、 石油成分が濃い旧館と、立ち寄り用に石油成分をコントロールした新館があります。 私は新館に行ってみたことがあるのですが、 「石油成分が薄い」とはいえ、中に入ればしっかり石油臭がしますし、お湯も油っぽい感じはするので 豊富温泉独特の雰囲気を十分に味わうことができます。今度は旧館に行ってみよう…。 さて、豊富駅の話に戻ります。 豊富駅には、駅舎内に喫茶店(レストラン)があります。 豊富に戻った頃には、もう11時を過ぎていたので、昼食がてら入ってみることにしました。 喫茶店の中にはたくさんの漫画本の他に、「感想ノート」が用意されていました。 「感想ノート」と書くと、お店の感想が書かれたノートかと思われがちですが、 お店の感想というよりは「〜から豊富駅に来ました」というような「感想」が多く、駅ノートに近い感覚です。 お店が管理しているので、かなり古い時期のものからありますが、 お店の中という分かりにくい場所にあるからか、書き込みの間隔は他の駅ノートよりも開いています。 ![]() ここから終点の稚内までは、順番通り進んでいきます。 歩き始めて10分もすると町並みは途絶え、 それから先は牧草地を見ながら進みます。 豊富市街を抜けると家もまばらになりますが、 奇跡的に歩道があるので、歩道の上を歩いて進みます。 1時間ほど歩くと、国道上に小さな集落が現れます。 ここが徳満の集落です。 徳満駅はこの集落の中に位置しています。 かつては木造駅舎があったこの駅ですが、 現在は取り壊され、小さな待合室だけの駅となってしまいました。 私が訪れた時は、丁度待合室の中に先客がいて、気持ちよさそうに寝ていました。 待合室の中には往時の写真が飾られていたと記憶していますが、 こんな状況では待合室に入るわけにもいかず、待合室内の状況を詳しく確認することはできませんでした。 駅の写真を撮っていると、稚内行きのスーパー宗谷が警笛を鳴らしながら通過していきました。 本当は徳満駅でもう少し休憩する予定だったのですが、 待合室で窓開けて寝ている人がいる中、外で休憩するのも少々バチが悪かったので、先を目指すことにしました。 今から考えてみれば、徳満駅から東に500メートルほど進んだ地点に サロベツ原野や利尻富士などを一望できる「宮の台展望台」があるので、そちらに行っても良かったのですが、 当時はそんなこと考えもつかず、そのまま北進してしまいました。 朝はすっきり晴れていたのに、いつのまにか空は一面雲で覆われていました。 結果として、この日は寄り道しなくて正解だった訳なのですが…。 ![]() 点在する民家の脇では道幅が少し広くなります。 これは高速道路などでいう減速&加速車線のような 役割をしているものなのでしょう。 線路側には鉄道林が覆い茂り、変化に乏しい景色が続きます。 徳満駅ではろくに休憩もせず、長い時間歩き続けたため 足のだるさもピークに達しようとしていました。 徳満駅を出発してから1時間以上過ぎ、 国道を左に折れ、小さな小道に入りました。 小道の途中には、今となっては使用されているのか分からない 「芦川会館」が建っていました。 この小道は会館の少し先で行き止まりになっていました。 行き止まり地点には、車の折り返しが出来るやや広い空間があり、 その先には宗谷線の線路に面して立ち入り禁止柵が設けられていました。ここが芦川駅の跡です。 芦川はアイヌ語では「サロベツ」と読みます。 |
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芦川駅は、利用者僅少のため2001年に廃止された駅です。 訪れた当時には、もはや芦川会館以外、駅前に建つ建物はありませんでした。 徳満とは異なり、駅近くの国道にも集落らしい集落はありません。 もちろん駅設備もすべて撤去されてしまっていますが、 駅舎が建っていたと思われる土台などはそのまま残っており、 駅への接続道路と併せて、ここに駅があったことをしっかりと物語っています。 ここから次の兜沼駅を目指す最短ルートは、 このまま北進を続け、2km先で道道1118号線に入り、西に進むルートです。 しかし、今回は敢えて少々大回りしてサロベツ原野の中央部を歩いてみることにします。 国道40号を500メートルほど戻り、右折して宗谷線の踏切を越えます。 この踏切にさしかかったとき、思わぬ光景を目にしました。 踏切には3日前に筬島駅で見かけた軌道自転車が止まっていました。 軌道自転車は私が近づくと芦川駅の方向へ向けて動き出しましたが、 踏切に向かって歩く私に向かって、大きく手を振ってくれた人がいました。佐久の旅館のご主人でした。 思わぬ再会に足取りも軽くなりました。 |
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踏切からしばらく歩くと原野に出ます。道路以外の人工物は見あたりません。 このあたりは、自分のイメージに近い湿地帯でした。 まもなくサロベツ川を渡ります。文字通りアシが茂る地帯の中を流れる川でした。 川の水は、前日雨が降ったわけでもないのに濃い茶色に濁っていました。 もしかすると、この川の色は、周囲の土に含まれる何らかの成分が混じって、 もともとこのような色をしているのかもしれません。 |
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さらに進むと、周囲は再び乾いた草地となりました。 このあたりは、一部で土地改良が行われ、原野を農地利用できるようにしているようです。 車の通行は全くといっていいほど無い道ですが、しっかりとした片側一車線道路がひたすらまっすく続きます。 宗谷線の踏切から2km余り進んだ地点の四つ角で北に進みます。 センターラインは無くなりましたが、しっかりとした舗装道路が続きます。 空を見上げると、空を覆う雲がだんだん分厚く、黒っぽくなってきました。 心持ち風が冷たくなり、風も強くなってきたような気がします。 どうやら雨雲が近づいているようです。 進行方向に見える森がじょじょに近づいてきます。この森の先に今日の宿、兜沼公園があります。 雨に降られる前に兜沼公園に着きたいという思いから歩くペースはどんどん速くなります。 しかし、その願いも叶わず、ようやく目前に森が迫った頃に雨がぱらぱらと降り出しました。 そして、その雨はあっという間に本降りとなり、ついには暴風雨となってしまいました。 兜沼公園まであと1kmは切っているだろう路上で傘を取り出します。 しかし、風が強すぎて傘が開きません。焦っているうちに傘で手を切ってしまいました。 なんとか兜沼公園にたどり着き、今日の宿であるコテージ(やすらぎの家)に荷物を置きに行きました。 予約したコテージは2人用なので、とてもこぢんまりしたサイズでした。 何を思い違いしたのか、コテージの中に水場もコンロもあると思っていたため、 それらが無いと知ったとき、かなりのショックを受けてしまいました。 はじめからバンガローだと思えば、ショックに感じることもなかったのかもしれませんが。 ![]() 雨脚が弱くなったところで兜沼駅へ行くことにしました。 公園からまっすぐ駅の方に向かう道もあったようですが、 よく分からなかったので、少し東に迂回して行くことにしました。 宗谷線の踏切を越え、道道を西に進めば集落に入ります。 これが兜沼の集落です。 兜沼駅は、集落の入口近くにありました。 兜沼集落は、駅から北に向かって広がります。 兜沼駅の駅舎は小ぶりですが、 駅ホームから名前の由来となった「兜沼」を望むことができます。 兜沼公園は稚内の小学生も遠足で来ることがあるようで、 この駅で降りて兜沼公園に向かう 児童達の姿を見かけたことがあります。 ひとまず、今日のゴールに到着です。 さて、ゴールに着いたところで、今日の夕食の買い出しに行きます。 近くにコンビニは無いので、夕食の買い出し先は集落内の商店となります。 集落の北にある足立商店は、見かけ以上に商品が揃っている「何でも屋」でした。 弁当・サンドイッチ類のほか、インスタント食品、野菜類、日用品、文房具、書籍類… 必要なものが一通り揃っている感じでした。 しかし、昨日コンロ類はすでに送り返しているので、買うことができるものは限られています。 陳列されていたインスタント食品が少しうらめしく見えてしまいました。 夕食と翌日の朝食を購入して、宿舎のコテージに戻ります。 相変わらず雨が降り続くので、シャワーを浴びに外に出る気も失せてしまいました。 とりあえず夕食を食べるのですが、疲れのせいなのか全然食が進みません。ああ、暖かいお湯が飲みたい…。 結局、予定の半分でギブアップ。残りは翌朝に回します。 雨が降り続いているので外に出ることもできず、本当にやることが何もありません。 結局、疲れもたまってきているので早く寝ることにしました。 しかし、考えてみれば、寝袋も昨日送り返してしまいました。 コテージの中に寝具も用意されていると考えたからなんだと思いますが、なんと浅はかな…。 コテージを「離れのホテル客室」と勘違いしていたとはなんとも恥ずかしや。 しかたなく、洋服や雨具を枕代わりに、上着類を布団代わりにして寝ることにしました。 明日は、いよいよ終着・稚内に到着です。 |
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