三重県の玩具
01. 四日市の大入道(四日市市)
02. 弾き猿(桑名市・松坂市)
03. 伊勢神宮のえと守(伊勢市)
04. 伊勢の御木曳車(伊勢市)

05. 伊勢の竹製玩具(伊勢市)
06. 伊勢の赤物(伊勢市)
07. 伊賀上野の楼車土鈴(伊賀市)
08. 伊賀のくみひも人形(伊賀市)

01. 四日市の大入道(四日市市)



昔、この町に化け狸が出て人をだまして困ったので、退治するために入道を作った。ところが狸もそれを真似て入道に化け、互いにその大きさを競ったが、さすがの狸もしまいには大入道に敵わず、兜を脱いだという伝説に基づいたもの。市内諏訪神社の祭礼には、この大入道を載せた山車が出る。身の丈4.5m、伸び縮みする首の長さが2.7mのからくり人形で、山車の上に立つと全高9mにもなる。紙製おもちゃの大入道は、中に通した竹の棒を上下に動かすと、右側のように首が伸び目玉と舌が動くような仕掛けになっている。以前は裏面に商店名を印刷して、宣伝用にも利用されたという。左の高さ43p。(H25.4.8)

02. 弾き猿(桑名市・松坂市)



「災厄を弾き去る(猿)」という語呂合わせの縁起物・弾き猿は、江戸中期に発生した幟(のぼり)猿08から着想を得て作られたものである。心棒に通した竹バネの反発力で、上の猿を弾き飛ばす趣向は何処も同じだが、猿の人形やテッペンの飾りには各地で違いがあって面白い。多くの場合、厄を背負う猿は赤い“括(くくり)猿”。これに対し、鹿児島神宮の猿は木製で顔も描かれている。一方、心棒の先には鳥の羽根、日の丸、御幣、短冊、紙太鼓、鈴など様々な飾りが付く06愛知29。因みに、多度(桑名市)の弾き猿(写真左)に付いている紙太鼓は、多度大社の上げ馬(奉納流鏑馬)の的を表しているという。松坂の猿弾き(松坂では何故かこう呼ぶ)は岡寺観音の初午に売り出される。以前には1mを超すものもあったらしいが、これは46cm。厄払いの参拝者で賑わう初午に、晴れ着に身を包んだ十九の娘たちが、厄に見立てたハンカチを境内に落としていく様は、とりわけ春らしい風情である。(H25.4.8)

03. 伊勢神宮のえと守(伊勢市)



「その手は桑名の焼き蛤」の桑名から始まる伊勢路は、四日市、津、松坂を経て伊勢神宮にいたる“お伊勢参りの道”である。三重県では、郷土玩具の多くが伊勢神宮に関わりがあるのも当然かもしれない。そのお伊勢さんでは、内宮神楽殿から毎年正月に十二支に因む動物の木彫が頒布される。「えと守」と箱書きされた桐の箱に納められており、説明書には「神苑に育った楠材を用いて神宮彫刻師が謹彫した」とある。神宮彫刻師といっても、必ずしも伊勢神宮お抱えの彫師ではなく、用命を受けた奈良や飛騨高山などの名のある彫刻師の手になる作品もあるという。高さ11p。(H25.4.21)

04. 伊勢の御木曳車(伊勢市)



伊勢神宮では20年毎の式年に、内宮・外宮(げくう)の諸殿舎を新造して神座をうつす「遷宮」の儀式が古式ゆかしく行われる。社殿の新築に使われる御用材は、旧神領地の住民らが2ヶ月間かけて両宮に曳き入れるのだが、天照大神を祀る内宮は宇治にあり、豊受姫を祀る外宮は山田にあるので、運搬手段が各々異なる。すなわち、内宮の領民は木ぞりに御用材を積んで五十鈴(いすず)川を「川曳」(かわひき)で、外宮の領民は巨大な御木曳車(おきひきくるま)に積んで「陸曳」(おかびき)で運ぶのである。写真はミニチュアの御木曳車。当地はお伊勢参りの土産物としてヨーヨーやコマなどの刳り物(くりもの)細工が盛んであるが、御木曳車はその技を生かした新作である。なお、現在は第62回式年遷宮の真っ最中で、今年10月の遷御を目指し、7年前から30余りの儀式が執り行われているところである。高さ15p。(H25.4.21)

05. 伊勢の竹製玩具(伊勢市)



伊勢土産では、竹の鳴りゴマも有名である。この地方の孟宗竹を輪切りにして胴体とし、上下に木製の蓋と底を付け、赤と緑でロクロ模様が入れてある。鳴りゴマは木製が一般的で竹製は珍しく、ほかに佐土原(宮崎県)の神代独楽があるくらいである山形15木地玩具1131。竹笛も昔ながらの参拝土産。表面には伊勢神宮の鳥居や社殿のほか、大王崎や二見ヶ浦などの風景も印刷されている。ほかに、大山や小田原のもの神奈川10とよく似た竹蛇や鶯笛なども売っている。鳴りゴマの高さ13p。(H25.4.21)

06. 伊勢の赤物(伊勢市)



刳り物細工と並んで、伊勢土産として名高いのが練り物である。伊勢は昔から木工業が盛んなところ。加工の際に出る木粉を糊で練った安価な練り物玩具が作られ、今も全国に販路を持っている。同じ練り物でも鴻巣の赤物埼玉01-04に比べると、亀や猪、テントウムシなど、動きのある楽しい玩具が多いのが特徴である水族館1808。この蛸も、頭に付いたゴムひもを伸縮させると、針金を巻いて作られた八本足がフラフラ動いて、先端の鈴が鳴る趣向である(高さ8p)。(H25.4.21)

07. 伊賀上野の楼車土鈴(伊賀市)



忍者の里として知られる上野は、伊勢、大和、近江の山々に囲まれた伊賀盆地にある城下町。毎年10月に行われる上野天満宮の大祭には、名工が粋を凝らして造った9基の楼車(だんじり)が提灯や雪洞を吊下げて繰り出す。また、疫病が流行した時に邪気を祓うために始まったという、大勢の人々がさまざまな能面を着けて練り歩く「鬼行列」もあって盛大である。写真は、美しい楼車を細部にまでこだわって土鈴にしたもので、色と造形の優雅さは他に類をみない。低温で焼いているので、鈴の音は低くこもる。昭和20年代に、土鈴収集家であった老舗漬物店の店主が自ら創り出した。大の高さ14p。(H25.4.21)

08. 伊賀のくみひも人形(伊賀市)



伊賀組紐(くみひも)は、旧藩時代には甲冑の縅毛(おどしげ)や刀の下げ緒など実用的なものが主で、服飾のための帯締めや羽織ひもは、明治になって東京より技術を移入してからという。当時、伊賀には目ぼしい産業もなかったので、各家庭で婦女子が競って組紐の手仕事をするようになり、昭和初期には組紐の機台(はただい)が嫁入り道具の一つとされるまでになった。和装小物の生産では今や全国一であるが、応用範囲はさらに拡がり、雛人形、十二支の動物、手まり、楼車まで組紐細工で作られるようになった。正月の縁起物として伊勢海老の代りに飾られる“えび結び”などは、とりわけ完成度の高いものである。馬の高さ5p。(H25.4.21)

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