作成:1999/07/05
追加改訂:1999/08/08

読書録

1999年7月分


作者名 島田 荘司しまだ そうじ
作品名 涙流れるままに [上],[下]
出版社 光文社カッパ・ノベルス
解説 [上]田中 博たなか ひろし探偵小説研究会
解説 [下]島田荘司
版数1999年6月30日初版第1刷
ISBNISBN4-334-07343-3 [上]
ISBNISBN4-334-07344-1 [下]
怒り、失意、希望・・・
人の業(ごう)を描ききった
島田文学の集大成
島田荘司自ら
「私の到達点だ」
二千枚の超大作

 真に、この作品を読むためには、最低2回は読む必要があるだろう。
 まず、通読。
 そして、これに関連する作品を全て読む(吉敷シリーズ全部である必要はないが)。
 そして再読。
という作業が必要に思われる。

 通子の過去と冤罪が交互に現れ、それがクロスし、融合していく、強烈な毒をまき散らしている作品である。
 だが、冤罪の謎の解明はおまけに等しい?のではと思うほどあっさりしたもの。
 勿論読むべきところは非常に多い、必読作品である。


作者名 北村 薫きたむら かおる
作品名 スキップ
出版社 新潮社新潮社文庫
解説 佐藤 夕子国際基督教大学勤務
解説 佐藤 正子詩人
版数平成11年7月1日発行
ISBNISBN4-10-137321-3
まどろみから覚めたとき、
17歳の<わたし>は、
25年の時空をかるがる飛んで
42歳の<わたし>に着地した。

 珍しく、サイン本を購入(別にサインを貰った訳ではない)。
 本編の主人公は私の現在の年と同じく、42歳である。果たして、17歳の当時の私が現在の私に飛び込んだ場合一体何が起こるであろうか?

 いわば、「リプレイ」(名作!ただし、解説ではSFであるように書かれているけど、リプレイはSFではない。テレビドラマでも堂本君主演でこの「リプレイ」をぱくったような土曜9時ドラマやっていましたね)とは逆パターン。強いて言えば、「私を殺した少女」(これは本格推理もの)的な作品だけど、やっぱ独自の作品ですね。実は比較的最近NHKの地上波でBSの再放送を一気に見たのですが、やはり原作が読みたくなり、文庫本になったのをトリガーで読みましたが、やはり北村さんの軽いタッチは結構好きだったりします。
 テレビは結構忠実だったけど、やはりちょっと最後の部分は代えていました。ネタバレになるから書かないけど、最後でちょっとぶるりと来た部分があります。

 次作は既に出版されている「ターン」(このネタってリプレイというよりもディックだとか、日本のSFの短編ネタ----時間の流れといえば広瀬正さんネタか----にあったような気がするけど、まあそれをどう料理しているかが問題。)。3作目が現在執筆中の「リセット」だそうです。

 ほんでももって、次の読書録の予定は「買ってはいけない」の予定。一応読んだんだけど、自分なりに整理したいと思っていますので、7月の講談社ノベルスになるかも。


作者名 霧舎 巧きりしゃ たくみ
作品名 ドッペルゲンガー宮 ≪あかずの扉≫研究会流氷館へ
出版社 講談社講談社ノベルス
あとがき霧舎 巧
版数平成11年7月5日第1刷発行
ISBNISBN4-06-482083-4

 傾いた屋敷、十角形の家から
時はめぐり、もうひとつ、不思議な
 館からの招待状。−島田荘司

 20世紀最後の新本格派新人!第12回メフィスト賞受賞作

 やはり、新本格推理復活の年か。と思わせる、オーソドックスな作品がこれ。島田荘司氏が命名した霧舎巧という名前もまあ凄いものがあります。

 京極夏彦の影響が強すぎたこの数年の傾向からやっと脱却したって感じで、次回作も楽しみであります。読めば判るけど、完全にシリーズものを狙った人物配置になっています。


作者名 鯨 統一郎くじら とういちろう
作品名 隕石誘拐宮澤賢治の迷宮
出版社 光文社カッパ・ノベルス
解説 千街 晶之せんがい あきゆき ミステリ評論家
版数平成11年6月30日初版第1刷発行
ISBNISBN4-334-07342-5
東野圭吾推薦
「進化に繋がる
  突然変異作!」

 ご存じ創元推理文庫の「邪馬台国はどこですか?」(歴史物短編おわらい系)で華々しくデビューした鯨統一郎氏の2作目は長編。しかも、ミステリなんだけど、本格ミステリではない、感触として、折原一風の作品(といっても叙述ものではない)。
 正直言って、歴史もの短編の前作に比べるといまいちという感触は拭えないのでした。前作の続編を読みたいぞ!


作者名 山根 一眞やまね かずま
作品名 モバイル書斎の遊戯術 スーパー書斎シリーズ
出版社 小学館
版数1999年7月10日初版第1刷発行
ISBNISBN4-09-346391-3
モバイル魂の原点

 雑誌DIME1996年6月6日号〜1999年3月4日号に掲載されたものの加筆・訂正・再編集したものと書かれたこのモバイル体験記は本当に面白い。と同時にこの数年間の世の中の見かけ上の進化がいかに速いものかが実感できる。見かけ上といったのは、実は本質的には殆ど改善されていなからである。
 しかし、まあ、この手の本を読むと物欲番長シンドローム(週間アスキー参照)に陥りそうで怖いっす。
 紹介されているものの多くは既に新機種にリプレースされているけど、やはり、未だに携帯電話を持っていない私としては、せめて音質の良い(PHS程度)の携帯が出たら欲しいと思うのであった。後PDAも欲しいなあ。デジタルビデオや200万画素以上のデジカメも欲しい(^^;;)。ああきりがない。


作者名 二階堂 黎人にかいどう れいと
作品名 吸血の家
出版社 講談社講談社文庫
解説鷹城 宏たかき ひろし
版数平成11年7月15日第1刷発行
ISBNISBN4-06-264626-9

美しき三姉妹の悲劇。二階堂蘭子が謎に挑む!
今回、『吸血の家』を文庫化するにあたり、結局のところ、<新版>とか<完全版>という形になりました。

二階堂黎人「文庫化による好事家へのノート」より

 完全版となるとやはり読まねば成るまい。ということで、再読した作品である。
 流石に面白い。元々フーダニットを狙ったシリーズではないので、再読に耐えうる作品であります。
 蘭子シリーズの長編は以下の通り。残念なのが一社から出ている訳ではないので、統一化ができないという問題があります。

  1. 地獄の奇術師
  2. 悪霊の館
  3. 聖アウスラ修道院の惨劇
  4. 吸血の家
  5. 人狼城の恐怖 (4部作)

 長編としては、上の5作目まで。作者によると、10作目までの予定で、最後の作品の構想は既にできているそうです(二階堂家の悲劇だとか。その伏線は上記作品に書かれているとか・・・いやはや)。
 因みに短編集は2冊出ています(「ユリ迷宮、「バラ迷宮」いずれも講談社)


作者名 京極 夏彦きょうごく なつひこ
作品名 百鬼夜行−陰 妖怪小説
出版社 講談社講談社ノベルス
版数平成11年7月15日第1刷発行
ISBNISBN4-06-182080-X
怪異。「姑獲鳥」から「塗仏」に至る事件の背後に何があった!?

 短編集。続編として「百鬼徒然袋−雨」が予定されている。
 ここに登場している人物が全て長編本体作品に出ているわけではないんだけど、実際「京極もの」シリーズの年表と人物一覧は必須ですねえ、と改めて感じました。
 昔、HPでその手のやつ見たことあるので、今でも探せば出てくると思います。
 と、ひとつだけ人物関連図を発見。
 京極夏彦ワールド:登場人物相関図(http://www.jidai-show.com/kyo_char.htm)

 以下簡単に、収録短編と長編との関連を取りあえずざっと調べてみたので・・。抜け間違いはあるでしょう(^^;;)。

(1)小袖の手(こそでのて)
 昭和27年8月31日
 杉浦隆夫
 魍魎の匣

(2)文車妖妃(ふぐるまようび)
 昭和25年晩秋
 久遠寺涼子
 姑獲鳥の夏

(3)目目連(もくもくれん)
 昭和27年5月
 平野祐吉
 絡新婦の理

(4)鬼一口(おにひとくち)
 昭和27年9月半ば
 鈴木敬太郎
 柿崎芳美
 魍魎の匣

(5)煙々羅(えんえんら)
 昭和28年早春
 棚橋祐介
 鉄鼠の檻

(6)倩兮女(けらけらおんな)
 昭和27年師走も押し詰まった年の暮れ
 山本純子(すみこ)
 絡新婦の理

(7)火間虫入道(ひまむしにゅうどう)
 昭和28年6月19日
 岩川真司
 塗仏の宴(時期的な判断と物語上の判断)

(8)襟立衣(えりたてごろも)
 円覚丹(まどか かくたん)
 鉄鼠の檻

(9)毛倡妓(けじょうろう)
 昭和28年8月
 木下圀治
 桑原豊子
 塗仏の宴(時期的な判断)

(10)川赤子(かわあかご)
 昭和27年梅雨明け直前
 関口巽
 関口雪絵
 中禅寺敦子
 姑獲鳥の夏


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