私は「機械仕掛け」が好き。特にロボットが好きです。さすがに小学生のときのように、巨大ロボに乗り込もうなんて考えていませんが、案外ルーツはそんなとこかもしれません。
ロボット好きな人、ロボット開発者のことをロボット野郎(ロボティスト-Robotist)というそうです。ロボットとのはじめての付き合いは、大学3年のときに「第2回NHK対抗ロボットコンテスト」にチームで参加して優勝したのが唯一の自慢です。私が手がけたのは駆動部のアイデアや、パーツの試作といった「仕掛けの工夫」が主でした。大学院時代の専攻も「制御工学研究室」というロボットを動かすところ。私の研究テーマは「ロボット強調動作システムの操作性改善」で要約すると、「ロボットの手先を人間が直接つかんで動かして、ロボットに動きを教え込む(ダイレクトティーチング)んだけど、このときにロボットの重さや堅さを自由に指定できるのが特徴で、どのくらいの値が適当なのかを考えよう」というもの。言い換えれば、自動車のハンドルの重さや堅さをいろいろ変えてみて、丁度具合の良いところってどこだろう?というイメージですね。この研究は動作教示のみならずその応用として、危険区域や遠隔地でのロボットコントロールや、義手開発や人間のパワー増幅アームが考えられます。
そんな訳でロボット工学や人間工学方面の知識が多少ありまして、3次元シミュレーション空間を自由自在にロボットが動かすことで、ロボットと人間の動きを3DCGでプレゼンしようと、人体モデルでありロボットモデルのアニメーションソフトを開発しました。1993年当時は、PC-98上で開発してました。
※1:「Robotist」は、太陽鉄工の北浦慎三氏の造語です(「100人のロボティスト」より)。
1年ほど前に、日本ロボット学会「ロボット工学ソフトウェアライブラリ」という、研究に有効なソフトをCD-ROMに収録する企画がありまして、たまたま拙作「HUMAN / TWIMAN / PUMAN」 が目に留まり収録していただきました。研究論文・資料等でお世話になっていた学会に小さい恩返しができたようで、うれしかったのを覚えています。
ロボットと聞いて始めに頭に浮かぶのはなんでしょう?
私たちメカ関係の人間は、産業用ロボットが浮かぶのですが、近頃はロボットコンテストが世間に認知されてきて、大会に出る相撲ロボットなどの競技型のものもありますね。一般の若い世代の人なら、ガンダムに代表されるアニメの巨大ロボットをイメージする人が多いでしょう。私も小学生の頃は、乗り物から変形合体する巨大ロボットにあこがれたモノです。
(ちなみに私が好きだったのは銀河漂流バイファム)先日、PlayStationの店頭デモで「VF-X」といういうゲームが動作していました。VF-Xとはかの昔、一世を風靡したアニメ超時空要塞マクロスで、戦闘機から人型に変形するロボットの名称で、このソフトはVF-Xが3D空間を飛び回るシューティングゲームでした。PlayStation上で画面狭しと360度方向に華麗に飛び、変形し、ミサイルを撃つ、という素晴らしい3D映像につい目を奪われてしまいました。
私の開発したソフトを使うと、変形するオリジナルロボットをPC上で実現できます。
1997/10/31
いってきました国際ロボット展97(10.28〜10.31)
知的な探求心/好奇心を失わない大人たちに送るCoolな技術情報雑誌 WIRED JAPAN。MicrosoftやLinuxなどコンピュータ関連の記事や、電機業界、メディア業界とその幅は広い。以前より、関心を持って読んでいた雑誌のひとつです(ただし取り扱い数が少ないのか、書店で売りきれていることが多い)。98.3月号でロボティクス業界の注目株である「アールキューブ」について研究者の舘東大工学部助教授のインタビュー記事が掲載されている。アールキューブ( R3:あーるの3乗)とは、RealTime-Remoto-Roboticsの略。 つまりは、時間と空間を超えた遠隔地にある人型ロボットに対して、人間が遠隔制御しようというもの。これにより、たとえば災害地の救助ロボットを安全な場所から遠隔操作する、離島での医療ロボットを使った遠隔治療、ロボットクライマーによるエベレスト登山の疑似体験など。
R3を実現するのに「ヒューマノイド技術」「ネットワーク技術」「サイバネティクス技術」「バーチャルリアリティー技術」の革新が必要となる。ちょっと説明を加えると、
大学時代に「人間と協調作業するロボットシステムの操作性改善」を研究テーマとして取り組んでいたわたしは、サイバネティクス分野の知識を多少持っていました。さらにご存知のように、ロボティクスとバーチャルリアリティーの融合についても研究をしています。そんななかで見つけたこのアールキューブには、非常に感銘を覚えたものです。そこにはわたしの考えていたロボティクスの最終形が提示されていた気がしたからです。
- ヒューマノイド技術…本田技研のP3に代表される人型ロボット技術。自立歩行が一番のテーマ。
- ネットワーク技術…遠隔地からリアルタイムで操作するための通信技術。インターネット需要に伴い高速通信網が整備されつつある。
- サイバネティクス技術…人が機械を操作するのに、よりよく人間の動きにフィットするようにする技術。よくいわれるのが、人間と機械とをひとつのシステム(人間-機械系)と考え、そのインターフェースを構築するための技術。
- バーチャルリアリティー技術…人間の網膜で受信した2次元画像は頭脳処理によって3次元画像として判断される。つまりは人工現実感によって生成された3DCGシーンさえも現実の映像とできるだろう。通常は視覚だけにとどまらず、触覚や聴覚までも人工的に作る技術の総称。
アールキューブについて初めて本を読んだのは2年ほど前ですが、その間に、インターネットを利用したより身近なテーマ(遠隔操作専用言語 RCML)が進行していたようですね。身近とはありますが、事実、上記の4テーマのうちの大部分について、実現の見通しができているような気がします(実用化はべつとして)。とりあえず、このインタビューを受けた舘すすむ(日章)助教授の研究室ページを紹介します。
後日談:
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いってきました国際ウェルディングショウ98(4.08〜4.11)
(Robotics Society of Japan) の公式ホームページから、ロボット学会員に有用なホームページとして、リンクを張っていただきました。ありがとうございます。私のページでは今後、日本のロボットメーカーのホームページへのリンクの充実を図っています。まえにも説明したことがあるのですが、大学ほかロボット研究論文の公開ページへのリンクが少ないのは大学の場合担当者(学生)の異動に伴ってその更新がストップしてしまうことがあるので。とはいえ学生と先生とが注力しているページはチェックしています。
あと、大学とは異なり、ロボットを商品として扱っているメーカーなら、責任を持って新しいデータを掲載してくれるだろうし、運営をまじめにやってくれてそう、というのが理由。大学などの研究機関へのリンクが充実しているのは、柴田氏の運営するRobotics in Japan。最近は、各月で更新されたリンク先を表示するようになり、更新状況が非常にわかりやすくなりました。
1996年12月に発表された本田技研のヒューマノイドタイプ、自律二足歩行型ロボットP2そしてP3はロボット研究者たちに大きな衝撃を与えました。わたしもその一人です。従来の二足歩行研究のロボットをビデオでみる機会があったのですが、「まだまだこの程度なのかなあ、ヒューマンロボットなんて先のことなんだな(古いビデオだったかも!?)」と思っていた矢先に、あれだけの完成度のものをみせられ、なにより完全な人型であったということに驚いた。そして驚きと同時に「あの中身はどうなっているんだろう? 知りたい!!」と強い関心をもったのは、技術者志望故でしょう(^_^;)
さて、今回一冊の新刊書を紹介します。6月発売の「巨大ロボット誕生」(鹿野司著 秀和システム)。本田技研開発のP2、P3は、アニメに登場した巨大ロボットの開発の夢を、一気に現実に近づけました。SF技術考証の鹿野氏が、20年前に大人気を博したロボットアニメ「機動戦士ガンダム」を建造する可能性を探りながら、最新のロボット工学を紹介するものです。本当にロボット工学用語をわかりやすく説明してくれています。マスタスレーブ、バイラテラル制御、ロバスト制御、コンプライアンス制御、テレイグジスタンスなどなど。なかには大学時代に参考文献としてとりよせた「人間増幅器エクステンダー」の記事があって懐かしく想いました。ロボットに多少なりとも興味をもつ人は必見の書です。
「空想科学読本」のように、TVヒーローのSF設定の間違いを論破するという意地悪さがなく、アニメという題材を通じてロボット工学を紹介し、その可能性を検証していくというスタンスには好感がもてます。(ただしニュータイプ論ついては、ガンダム独特なテーマであり、またそれぞれのシリーズで扱いを変え、そして解決をみなかったもの。一般の工学的な扱いが難しいと思われます)
もうひとつロボットに留まらない科学的な検証を行っている「鉄腕アトム ロボットサイエンス」(手塚プロ+綿引勝美 小学館)もお薦めです。真空管で動き、アナログメーターの計器類と、今考えるとズレたところもありますが、トータルとしての手塚治虫の作り上げた世界観は1951年のものであり、手塚先生の先見性、直感力、予知能力(!?)には今さらながら驚かされます。
1999
パーソナルロボットが大人気である。SONYのAIBOくん(右図)が, “1999グッドデザイン賞 ”で大賞をとったそうだ。なにかと話題をふりまいてくれるSONY。
さて,久しぶりに,パーソナルロボット関連をインターネットで調べてみると,いろいろとおもしろいことがわかる。 AIBOのホームページがちらほらと立ち上がっているようだ。Web上でAIBOくんらの飼い主は,自らを「保護者」とか「ケンネル」と呼び合っている。本当に,ペットロボットなんだなと思わせる。 「だれよりも強い子に育てる」「わたしだけに優しい子に育てる」など,愛情のかけ方も変わらない。パーソナルロボットのひとつの形ができつつあるのを感じる。
既にいくつかのメーカー(ロボットメーカーに限らず)が,ペットロボット,パーソナルロボットの販売や開発中であることの発表を始めている。ちょっと列挙してみよう。
- ソニー ペットロボット AIBO (AIBO保護者のページはYahooで探してね)
- 松下電器産業 高齢者用コミュニケーションロボット
- NEC R100
- 富士通 タッチおじさん
- オムロン 猫型ロボット
- 三菱重工神戸造船所 魚ロボット
- HirotaのHome Automation計画 「レゴ社 ROBOTICS INVENTION SYSTEM」を使ったハンドリングロボット製作
- 大阪大学のパーソナルロボットアンケート結果
鳥形ロボットとかもあったんだが,リンク先を忘れました。まだまだ書きたりないところはたくさんある。(私のパーソナルロボット観など) 。それはまた別の機会に。
2003/09/01
ホンダから 「ASIMO」 ,ソニーから 「SDR-3X」 ,テムザックから 「T-4」 といった人型ロボットが続々発表された。 どちらのニュースも,しばらくテレビのニュースに目を奪われてしまった。 とくに11/26「TOKIOの鉄腕ダッシュ」で,東京−大阪間遠隔操作によるお使いを成功させた「T-4」のVTRは,ガンダム世代にとってドキドキしたのではないか。 (ちなみに人型ロボット説明は次の記事がわかりやすい> ROBODEX 2000でのロボット紹介記事へのリンク )
報道ニュースでは,11/22日経新聞の「ロボットが工場から街へ」の見だしがふるっていた。3年ほど前に読んだ「アールキューブ」を本棚から引っ張って,また読みたくなってくる。
ソニーやホンダから「人型ロボットというプラットホーム」が提供されれば(仮定),知能ほかのアプリやサービスを提供するべくゲームメーカやソフトメーカが参入してくるだろう。 そうなると,ホンダは産業・医療用,ソニーはエンターティメント用という棲みわけも絶対的なものではない。
ずっと以前ゲームメーカのコナミだったか「われわれは人間のこころをつくっている」という発言をきいたことがある。 なるほど,手塚治虫以来ロボットに対して関心の高かった日本だからこそ,感情表現豊かな人型ロボット向けソフトが生まれるかもしれない。
そのうち産業用ロボットシミュレータみたく,人型ロボットのシミュレータという需要も生まれるかも。 でも教育系ソフトよりも,「電車でGO」のように「自分で操作してみたい」って人がいじりたおせるようなエンターティメント系ソフトの方が断然受けそう。