コラム



     就学前に不活化ポリオワクチンと三種混合ワクチンを


わが国ではポリオのワクチンを2012年9月から生ワクチンを不活化ワクチンに切り替えました。

現在、四種混合ワクチンとして乳幼児に接種されています。
不活化ワクチンは安全性が高いものの、免疫を維持することができるか懸念がありました。
そして、最近の報告で小学生における抗体価の低下が証明されています。
アジア、アフリカ地域では、ポリオは撲滅された感染症ではありません。
野生型ポリオの流行が続いているパキスタンやアフガニスタンだけではなく、
中国やタジキスタンなどでも近年、ポリオウイルスの流行がおきたことがあります。

日本小児科学会は、
就学前に不活化ポリオワクチンと三種混合ワクチンを
任意接種として追加接種することを推奨しました。

就学前に1度この4種類のワクチンを受けることを推奨します。
国の定期接種ではありませんから、国や自治体からの補助は有りません。 
                    有料(8800円)です。






      子宮頚癌予防のためのワクチン接種を

現在(2020年度)、2004年度以降生まれにおける子宮頸がん罹患者増加数が確定していっており、
特に2004年度生まれで推計4387人の増加が確定しつつあります。
そして、そのうち1000人が子宮頚癌で命を落とす様になります。

ワクチンは一定の割合で副反応と言われるものが出ます。
そしてその多くは、回復可能なものであり、
その人の人生に影響を及ぼすようなものはほとんどありません。
そして、それよりも遙かに多くの人の命を救うことが出来ます。
まだ子宮頚癌予防ワクチンを打っていない若い世代の人(特に女子)は打つことを検討ください。

HPVはヒトパピローマウイルスの略称です。
HPVには100種類以上の型があり、
15種類程度のウイルスはがんを引き起こす可能性が高いため「高リスク型」と呼ばれています。
中でも「16型」と「18型」が子宮頸がんの約65%を占めており、
ワクチンによる予防のターゲットにされています。

当院では2種類のワクチン接種を推奨しています。
いずれのワクチンも3回接種が必用です。

ガーダシル 4価
(ガーダシルには子宮頸がんの原因となるHPV16・18型に加え、
 尖圭コンジローマの原因のHPV6・11型をも予防する効果があります。)
(対象年齢以外は有料、1回目15000円、2回目以降14000円)

シルガード 9価 有料(1回目26000円、2回目以降25000円)
(ガーダシル®(4価HPVワクチン)に含まれるHPV6/11/16/18型に加え、
 HPV31/33/45/52/58型のVLP(ウイルス様粒子)を含みます。
 アジア人に特に感染が多くみられるHPV52/58型のVLPを含み、
 子宮頸がんの原因となるHPV型の88.2%をカバーします。
 さらに子宮頸がんの前がん病変に対する優れた予防効果
 [後期第Ⅱ相/第Ⅲ相国際共同試験(検証的)]
 ガーダシルによる予防効果に加え、
 新たに追加された5つのHPV型に関連したグレード2以上の
 子宮頸部上皮内腫瘍(CIN2/3)、上皮内腺がん(AIS)、外陰上皮内腫瘍(VIN2/3)
 および腟上皮内腫瘍(VaIN2/3)の発生率に対するシルガードの予防効果は96.7%でした。)



                無我について2017年5月講演の内容です



 前回から、ずいぶん時間が経ってしまいました。
今回は、無我についてお話しします。
無我、つまり「私はない」ということです。
このことに関しては、私自身なかなか自分の中で上手く消化できないで時間が経ってしまいました。


般若心経で、色即是空と説いています。色すなわち肉体は空だ。ということです。
さらに 受・想・行・識亦復如是と説いています。
これは、肉体で感じたもの、そのために思うこと、思いを巡らすこと
これら五蘊も空だと説いています。
だから、私も空だという理屈です。
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なるほどそうだと思って、話を進めていく内に、おかしな事に気がつきました。確かにこれが自分だといえる確かなものは何も無いようです。。
だったら、心の修行などする必要が無い事になります。
心も空だからです。心は無いのでしょうか?

 お釈迦様は、無我だと説かれました。
「私はない」ということです。
「私はない」のなら、どうして心の修行が必要なのでしょう?
そもそも心はないのではないでしょうか?
確かに「これが私だ。」といえる何かを見つけることはできません。
魂はあるのでしょうか?わかりません。そもそも魂とは何なのでしょう? 魂の定義さえ定かではありません。
「私はない」とは、「魂はない」ということになるのでしょうか?
もしそうなら、今までお話ししてきた「生きる事は、魂を育て磨くことだ。」ということと矛盾してしまいます。魂はないのでしょうか?
魂があるのか無いのかは、誰もわかりません。
魂が有ると信じて生きるのか、ないものとして生きるのか。それは、それぞれの個人がそう信じるしかないのです。
私の結論は、「魂はある」です。
では、「魂がある」と信じることと、「私はない」ということは矛盾しないのでしょうか?
まずは、そこからお話ししたいと思います。
「私はない」とは、どういうことでしょう?
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人は皆同じではありません。アミノ酸やタンパク質や脂肪や水分や電解質や微生物がたくさん集まって私たちの体が構成されています。
そして、それらの有機物や無機物も、最終的には分子や原子、さらに詳細に見れば、陽子や電子や素粒子で構成されています。今だけ、それらが私を構成しているだけで、死ねば、炭素やカルシウムや、いろんな原子に戻ります。そして、やがて散らばってすべて原子に戻ります。元々そうだったモノが、今だけ私を構成しているだけです。
そして、ゴキブリやミミズもまた同じです。彼らもまた、私たちを構成している同じ原子でできています。そういう意味で、私たちの命は、この世の生きとし生けるものすべての命と、共通であり、つながっているのです。その意味で、私はゴキブリと同じであり、ゴキブリは私と同じです。ゴキブリだと嫌な印象があるかもしれませんが、ゴキブリだけでなく、地球や宇宙とも、その構成は共通なのです。
生きとし生けるものの命は、大きな「命」という目に見えないモノでつながっているのです。
私もゴキブリも「大きな命」の文身なのです。
死んだら「大きな命の一部」に戻るのです。
それは肉体だけでなく、心も同じなのだと思います。
宇宙に散らばっている原子から私たちは作られて、そしてまた、宇宙の原子に戻るのです。宇宙を構成している原子と私たちを構成している原子は、同じものだと言うことは、ちょっと素敵なことだと思います。そして、私といえる確かなモノは、そこには何もありません。
たとえば、そこに石川が流れています。しかし、石川といえる確かなモノがそこにあるのでしょうか?地面の低いところに水が流れているだけです。流れは、別の所に変わるかもしれませんし、干上がって無くなるかもしれません。目の前の水は絶えず流れていって、別の水に置き換わっています。石川は今だけ有るのです。そして、その本体は存在しないのです。私たちの肉体も同じです。
確かに私はいません。私といえる確固としたモノはありません。
そこに流れている石川を考えてみてください。石川はやがて下流で大和川になります。どこからが石川でどこからが大和川かは、ヒトが境界を決めただけで、流れている水に違いはありませんし、その水も一瞬たりとも同じではありません。石川と認識している石川ですが、これが石川といえるモノは無いのです。水が流れているだけです。私たちも同じです。様々な物質で構成されていて、その物質は常に変化しています。確かに目の前に石川と言われる川があります。ただそれだけです。私たちも、自分と思われる存在がありますが、確固とした自分はありません。常に変化している肉体と精神が、生きている間はあると感じているだけです。

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私たちの体の基本的な物質はかなり共通なのに、ヒトはそれぞれ異なっています。そして外観だけではなく、考え方も異なっています。
脳の中のシナプスが電気的に興奮して、シナプスからシナプスに信号が送られて、思考が作られます。これだけなら、その思考もまた、やがて消えてしまう無常なモノです。
私たちの脳では、様々な想いが浮かびます。しかし、それらの想いの中から、私たちは特定の想いを選択して生きています。どのような想いを選択するかで、その人の行動が決まります。
困っているヒトに手をさしのべるのか、知らぬフリをするのかが、その人の心だと思います。

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やはり心はあるように思えます。ただその心も瞬間瞬間で変化していきますし、その人一代限りのモノで、その人が亡くなると、この世には存在してないようです。それが魂といえるモノなのかもしれません。有ると信じるしかしょうがないモノで、証明はできません。
そもそもこの宇宙の4%しか、私たちは感知できていません。科学技術が進んで見えない粒子や波動が観察できてきましたが、
それでも4%です。残りの96%は知ることさえできないのですから、
魂もその一部なのかもしれません。いわゆる「あちらの世界」の物になるのだと思います。

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私たちの肉体が、私のモノではなく、借り物であり、死んだら宇宙にお返しして、宇宙の構成要素の陽子や電子に戻るように、
私たちの心もまた、お返ししないといけないモノなのだと思います。私のモノではないのです。だから汚してお返ししてはいけません。きれいにしてお返しするのです。


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私たちは生まれてきたときには心は無いと思います。元々は無明なのです。赤ちゃんの時は、頭の中に良い思いも悪い想いも関係なく、勝手に「お腹がすいた」とか「おむつが気持ち悪い」とかいった想いが浮かんできます。そして、生きて成長していく過程で、出会いや教育などの経験を通じて心が形成されて、さまざまな想いに気がつき、どの想いを選んでいくのか決められるようになっていくのだと思います。「よき想い」を選ぶのか、「悪しき想い」を選ぶのか、心が決めるようになるのです。
そして、その心をきれいにすることは生きている間だけ、できるのだと思います。生きている間は「苦」が有るからです。以前、生きる事は「苦」と向きう事だという話をしました。つまり、生きている間は「苦」と向き合うことが必要なのです。そうでないと心が育たないからです。
そういう意味で、「苦」と「無我」は表裏一体なのです。
私が思うに、心は、大きな宇宙生命の一部が、一時的に私たちの肉体に宿っているモノで、私たちが死ぬと、大きな宇宙の生命体に帰って行くのだと思います。
たとえで言うと、心は一時的に私たちの肉体に備わった容器に入っている気体のようなモノで、死ぬとその容器はなくなって大気に混ざっていく様なものだと思います。

そして生きていられるのは今だけです。死ぬときに心が汚れたままならその汚れた心であの世に行くのです。憎しみや恨みを抱えていたら、それを抱えたままにあの世に行くのです。憎しみや恨みや怒りは、簡単に消すことはできません。普段から消すように努力をしておかないと、「明日死ぬから今日の内に心をきれいにしましょう」と言ってできるモノではありません。
今この一瞬に私たちは一つの選択しかできません。その選択のたびに何を選ぶのか、いつも意識して生きる事が大切です。
私たちは、ついつい無意識に惰性で行動を決めてしまいます。意識すらしないで行動していることがほとんどです。顔がかゆいと思ったら、無意識に顔を掻いてしまいます。腕を持ち上げて指を曲げて、爪で皮膚を傷つけないように、かゆいところを掻くことに、意識はしていません。でも、これらの選択は、今この瞬間しかできません。瞑想しているときには、顔がかゆくても掻きません。「そこに痒みがある」と認識していますが、掻かないという選択をしているからです。
常に自分の無意識の行動に気をつけて、自分が、「今何をなすべきか」を選択していくことが大切です。
トキソプラズマという寄生虫に感染したヒトは、危険を回避する行動をとらなくなります。恐怖を感じなくなるのです。これは、寄生虫であるトキソプラズマに脳が操られていることになります。もちろん本人は、そんなこととは知らずに行動しています。自分でその行動を選択したと思っていますが、トキソプラズマに操られているのです。
また脳内のオキシトシンというホルモンを雄のマウスに投与すると、誘惑があっても、その雄は浮気をしませんが、オキシトシンを欠乏させると浮気をします。ホルモンで脳が操られているのです。
自分で考えて行動をしていると思っても、当てにはなりません。しっかりと意識して、行動の選択をしないと、私はいなくなります。
私が私であるためには、しっかりと意識した行動が必要なのです。

前々回に、「生きることは苦である」というお話をしました。「生きることは苦である」事が必要なのです。苦に直面して、自分のなすべき事を選択して、この経験を積み重ねることで、魂が育つからです。

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これまでに「苦」と「無常」についてお話しして、今回「無我」についてのお話をしました。
お釈迦様の教えの3相は、この「無我」と「苦」と「無常」の3つです。
この3相は密接に関わり合って成り立っていることに気づいてもらえたでしょうか?
生まれたときには、私はありません。「無我」です。
そして、「苦」を経験して心が育ちます。
でも、心を育てるチャンスは生きている今だけです。人の一生は、(本人にしては長く感じるかもしれませんが))、宇宙の時間から見ればほんの一瞬です。そして、明日には終わってしまうかもしれません。終われば「無我」に返るのです。
今この一瞬を逃したら、次の心を育てるチャンスがいつ来るかわかりません。来ないかもしれません。すなわち「無常」です。
つまり、
「無常」は、今だけしか心を育てるチャンスは無いということです。
「苦」は、そのチャンスに与えられた試練です。
そして
「無我」は、元々は無い私が、今だけ有って、また無に返るということです。

このように。「無我」と「苦」と「無常」は、密接に関わり合っているのです。

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心をきれいにすることは、生きている間だけしかできない。
心もまたお返ししないといけない。
私たちの肉体も心も、宇宙の大きな命の文身であり、命はつながっている。


これで私の一連の話は終了です。


私事になりますが、最近自分が発達障害の一つであるADHDであることがわかりました。一般的には、ADHDでは、「不注意」「衝動性」「多動性」の3つの症状が強く表れます
ADHDは前頭葉の前頭前野や大脳辺縁系・大脳基底核の働きが不十分なための障害だと考えられています。他にも小脳も関係していると言われています。ドーパミンの濃度が低いことも報告されています。前頭葉は、行動を抑制し、セルフコントロールを促す部分であり、一番最後に成熟する脳の部位としても知られています。身体面では、自分のボディーイメージを認識する能力が低く、運動面の発達もやや未熟で、全般に不器用であり、歩き方や走り方がぎこちなく転びやすいことがあります。またハサミの使い方やスキップが下手だったり、利き手利き足の発達が未分化で、3.4歳になっても決まらずに両手利きのことがあります。
脳の前頭前野の障害のために、ワーキングメモリが少なくなっているといわれています。このために、長期的な記憶力は比較的良好ですが、いま聞いたことや頼まれたことがすっぽりと頭から抜けてしまいます。

その結果、
集中できない
計画的にできない
人の話が聞けない
先延ばしにする
忘れっぽい
飽きっぽい
何事にもはまりやすい
思いついたら実行する
単調作業が苦手
長い話を聞くことが苦手
などの症状が出ます。
自律神経系の発達も未熟なので、極度の偏食や少食、おねしょ、
夜眠れない、朝起きられないなどの睡眠異常もADHDには多く、概
日リズム睡眠障害を抱えます。


私は、小学校の時から、ずっと朝起きられなくてほぼ毎日遅刻していました。
宿題は完成させて提出したことは一度もありません。
いつも空想にふけってボーッとしていました。
授業を最初から最後まで熱心に興味を持って受けることは不可能でした。のびた型の注意欠陥障害が有ったようです。
字もきれいに書けません。止め・はねなどがちゃんとできないからで
す。字を書いている途中である程度かけたら、嫌になるからです。
忘れ物も頻繁にありますし、約束事もすぐに忘れてしまいます。
運動会などで、足と手を連動させて行進することすら上手くできませんでした。むずむず脚症候群の症状もあります。
何かをするときに、周到な計画を立てることはできません。行き当たりばったりです。旅行に行くときにも準備ができません。
元々忘れ物が多いのに、準備をしないから、必ず忘れ物をします。
相当の落ちこぼれです。当然周囲からの評価、特に先生など管理する人たちの評価は芳しくありません。

「このままでは、大人になってから社会に適応して上手く生きていけない」と思い、
医者なら何とかなるだろうと思って医者になりました。
幸いなことに、一時的な集中はできるので、成績面では落ちこぼれなくてすみました。
そして、周りの人たちの寛容のおかげで、今があります。
私自身も、そんな自分の特性には少なからず気がついてきましたから、
様々な努力をしてきました。
私の人生はADHDとどうやって 上手くつきあって生きていくかの葛藤の毎日です。
そして、それが私の人生を形作っています。
ADHDという生まれつきの障害が元々あって、それと葛藤しながら生きて、今の私があります。
物心が付いていない子供の頃の私は、トランプで言えば、ADHAが
付いている 配られたカードです。そこに私はまだありません。
今の私は、そのカードを使って作っていった結果の私です。今の私は生きている間は、あると思います。
つまり、「元々の私はない」のですが、「今の私はあります」
ADHAという発達障害を持って生まれた自分のことを、「そうでなかったらよかった」と思うようなことはありません。確かに、生きにくかったですが、ADHAが有ったからこそ今の人生があるからです。これが私の人生の課題なのだと思います。
この先、もっと大きな課題や、もっとつらい課題が、先の人生に待ち受けているのかどうかは、私にはわかりません。
私にできることは、ただ、今を意識して生きる事だけです。

それから、おまけです。

ここに集まっておられる方は、比較的高齢の方が多いと思います。
具体的に、「自分が死んだときに、墓はどうしようか?」などと思い悩んでおられる方も多いと思います。
私自身、死んだら私はいなくなるし、魂も、もうこの世には存在しないようになるし、墓に魂があるわけでもないし、子供たちの負担になるだけだから、墓など無くても良いと思っていました。しかし、最近少し考えが変わってきました。それは、私をかわいがってくれた叔母が亡くなってからです。叔母は子供は無くて、身内は私たち甥だけでした。お墓に入れても私たちがいなくなると、墓の維持管理をする人間がいなくなります。それで永代供養墓にしました。私たち甥がいる間は3回忌など法事はは執り行っていますが、墓が無いので、なんだか具体的なよすががありません。ずいぶん遠くに行ってしまったようで、寂しく感じます。残された者たちのことを考えると墓は必要なのかもしれません。顔を知らない子孫たちの代になれば、墓は必要ないのでしょうが・・・。墓を作るかどうかは、自分だけで決めないで、残される者たちと相談して決めることにします。



自分のおぞましい過去を思い出して、自己嫌悪に陥ることはしないでください。そのことで、おぞましい過去が消えて無くなることは無いからです。済んでしまったことは書き換えられません。
しかし、今の自分は書き換えられます。
今の自分を書き換えたら、もう過去は振り返ってはいけないのです。

まだ来ない未来を心配することは、意味が無いです。
後悔しないために準備すると言いますが、いつも100%の結果で終わることはありません。失敗することだって有るのです。そのときには、後悔しないためにした準備の仕方や選択肢が間違っていたと後悔することになります。
今できることをして、後悔をしない決心をすることが大切です。



        
      無常  2016年9月講演の内容です。

今日は無常についてお話しします。
その前に、少し私自身の事についてお話ししたいと思います。
皆さんもご存じの様に、私は少し変わっています。少しかどうかはわかりませんが・・・。
「変な医者」だということで、地域の評判も定着していることと、推測しています。
開業した最初の頃は、案外そうではなくて、患者さんの希望通りに薬を出す医者だったと思います。
それが、そうでなくなったのは、ダイビングをして、海の中の生き物たちを観てからだと思います。
海の中には様々な生き物がいて、みんなそれぞれ一生懸命に生きています。その一生懸命さが、けなげで、感動的なほど生き生きしていて、
それを観るのが楽しくて、海に潜っていました。

他の魚に食べられない様に彼らは一生懸命に工夫して生きています。


有名なカクレクマノミです。
彼らはイソギンチャクに守られて生きています。
かれらは、自然界では、ハタゴイソギンチャクかセンジュイソギンチャクと共生しています。そのイソギンチャクの裏側の岩に卵を産みます。
クマノミの幼魚は、生まれたときからイソギンチャクの中で暮らします。そして、イソギンチャクの毒に耐性を獲得して、イソギンチャクの中で暮らすことができるのです。
その代わりイソギンチャクに、えさを運んだりもします。
このイソギンチャクの中にいるクマノミは、一番大きなのがメスです。
そのメスが死ぬと、次に大きな雄が雌に性転換します。
動物界では、性別が変わる種は結構多いです。
ベラのハーレムでは、一番大きな雄が死ぬと、次に大きな体のメスが性転換して雄になります。
最近ではやっと人間でも、それが公に認められてきました。
雄と雌の境界は、そんなに大きな深い溝ではないのです。



これはオビテンスモドキの幼魚です。この子は1cm位ですが、もっとちいさい5mmに満たない大きさの物もいます。小さすぎてビデオや写真には納めにくいのでこの大きさでとっています。
ぱっと見たら、海草の切れ端が漂っている様にしか見えません。
こちらが気がついて近寄っていくと、さりげなく、流されているふりをして離れていきます。それでも一生懸命に海草のふりをしています。
さらに近づくと、海草のふりをやめて必死になって逃げるべきか、このままだまし続けるのが良いのか、悩みながら逃げようとします。この様子が何ともいじらしいです。

こちらはデバスズメダイです。


危険が近づくと、枝サンゴに隠れて身を守ります。そして集団で生活します。単体だと狙われたときに食べられてしまう確率が高いですが、たくさんでいると、運悪く、あるいは油断をした1匹だけで、被害がすむからです。慶良間のデバスズメダイはダイバーになれてしまって、こうしていっぱい姿を見せてくれますが、普通は、ダイバーが近づくとサンゴの隙間に入って出てきません。こちらが息をこらえて、気配を消して待っていると、やっと出てきますが、息が続かないので、また息をゴボゴボッとはくと、すぐに隠れてしまいます。その様子が、とてもいとおしく感じます。

これは、モンダルマカレイです。


隠れていないときのモンダルマガレイです。


岩に張り付いて隠れてしまうと、またわかりにくくなってしまいます。どこにいるかわかりますか? そして、砂に隠れるとほとんど見つけることが不可能になってしまいます。




砂に隠れるともっとわからないです。


こんな風に、彼らはけなげに、一生懸命、命を輝かせて生きています。

しかし、反対に、彼らは、一生懸命に命を輝かせながら生きていますが、傷つき弱って死んでいったり、突然に他の大きな魚に食べられて死んでいきます。
がんばって、命を輝かせて生きていても、突然にそれが終わることが、
海の中では普通のこととしてあるのです。


こうして海の中の生き物を見ているうちに、私自身の生き方が少し変わってきました。
命は一つだけしかない。自分の命も、他の人の命も一つこっきりしかなくて、一回しか生きられなくって、その一回はいつ終わるかはわからない。ということが何となく実感として、わかってきたからです。

このことを通して、私の生き方も、診療姿勢も少しずつ変化してきました。
1度しかない人生を、流されて生きるのはやめようと思いましたし、他の人の人生も、いっそう大切にしようと思うようになりました。
最初の頃は、ただそれだけでしたが、そうしているうちに、
だんだん、いろんな事がわかる様になってきました。

こうして、還暦を過ぎて、いろんな事を勉強して、さらにわかってきました。
実は、私が、ダイビングを通して、気がついたことは、
今日お話しする「無常」に気がついたということだったのです。

そして、日々の診療でも、違和感を持つようになってきました。
前回、「苦」についてお話をさせていただきました。
その中で、渇愛についても、お話させていただきました。
自分自身への苦しみの原因は、3種類の愛着です。
1.肉体に対する愛着
2.生き続けることに対する愛着
3.気に入らない物をすべてなくしたいという愛着
です。
これら3つの愛着を「渇愛」と言います。
これら3つの愛着は決して満たされることはありません。
渇愛の念がわき出ることは、仕方の無いことです。ただ、すべての渇愛と向き合っていてはきりがありません。これらの愛着はどうあがいても最終的には解決できない物です。ほどほどにしておかないと、自分が苦しくなるだけです。
つまり、医療では最終的に人を救うことはできないのです。



確かに医療が進歩して、一部の癌や白血病さえも治せる時代になってきました。癌を手術して直しても、骨髄移植をして白血病を治しても、直った後の体は元の体ではありません。抗癌剤や免疫抑制剤を飲み続けたり、無くなった臓器の機能を補うための治療が待っています。
肺炎を治す事はできるでしょう。治った後は元の健康な体を取り戻せるかもしれません。その意味では、一時的に役には立っているでしょう。しかし、最後には、肉体は衰えて、死ぬ運命であることには変わり有りません。慢性の腰痛や頭痛や便秘を、少しだけましにすることはできますが、完全には取り切ることはできません。生きている限り、そのようなことは必ずあるからです。
繰り返しになりますが、医療により一時的には、渇愛を少しだけ満たすことはできるかもしれませんが、最終的には、医療は人を救うことはできないのです。結局、肉体だけ治療しても、人は救えないのです。違和感の本質はそこにあることに気がついてきました。
では、人が救われるためには、何が必要なのでしょうか?
それは、それぞれの人が、そのことに気づいて、心を成長させて、悟りを開いて、解脱することです。

それでは、あらためまして、無常についてお話しします。

お釈迦様の教えの3つの柱は、苦・無常・無我です。
前回は苦について話しましたが、その話の中にも無常という言葉が出てきました。苦・無常・無我は互いに切り離せない関係なのですが、同時にこの3つのことを話すのは、難しいので、1つずつ話すことになったわけです。
無常というと、思い出されるのは平家物語の一節です。



「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。」という一説です。
私も好きな一説です。でも、何か見逃してます。。
私たちは「みたい物」だけ観て、「変わってほしい物だけ変わる」様に観ているのです。桜の花が散って無常だと感慨にふけりますが、桜の花が散るのは、無常の一部だけ切り取っただけです。桜のつぼみが膨らむのも無常ですし、その桜がいつかは枯れるのも無常です。
本当はおごれる人だけではなく、おごっていない人もまた久しからずなのです。人だけではありません、この世のすべての物は時とともに変わっていくのです。
変わらないと思っているコンクリートの壁さえも、時間とともに変質していくのです。



私たちには寿命があります。人の寿命は、日本人では80歳ちょっとです。その寿命の長さを尺度にして、物事の変化を眺めています。
宇宙の時間の長さで考えれば、私たちの寿命は一瞬ですから、私たちには変わらない様に見える物が多いのですが、長い時間で観れば、変わらない物は何一つありません。
すべての物はうつろい変化していくのです。だから、無常なのです。
そして、仏教では、すべては無常だから、こだわってはいけないと教えられます。
そうはいっても、私たちの短い人生の中では、変化していても、私たちにとっては、ほとんど変わらない様に見える物も多くあります。
無常だと言われても、納得しがたい物があるのが現状ではないでしょうか?
確かに、私たちが生きている間にほとんど変わらない物もあります。太陽の輝きや、星のきらめきは、変化はしていますが、実感しにくいです。でも、ほとんどの物は、私たちの短い人生の間でさえも、変わっていきます。政治も経済も地球環境さえも変化しています。
やっぱり、うつろい変化しているのです。



それでも、昨日と今日は、あまり変化は感じられません。今日とよく似た明日がきっと訪れると思って生きていますし、実際にほとんどの場合、昨日とよく似た今日が訪れます。
特に、私たちは、自分自身は変わらないと思って日々を過ごしています。明日死んでもおかしくないのに、ずっと同じように健康でいると思っています。
でも、いつかはそうではなくなることも、間違いのない事実です。
いつかは肉体が衰えて、いつかは病を得て、そしていつかは死んでいくのも確定した未来です。
いつまでも変わらないと思って生きると、そうではなくなったときに苦しみます。私たちの肉体も心も無常なのです。確かにさっきと今は変化が感じられないかもしれませんが、間違いなく変化して老化しています。そうだと気づきにくいかもしれませんが、そういう物だと知っておくことが大切です。知ることで執着が薄らぐからです。いつかはなくなる物に強い執着を持つと、なくなったときの苦しみが大きくなります。この世のすべての物が無常であることを知っておくことは、大切です。お金も無常です。元々人間が作り出した仮想の価値です。
アフリカの原住民に100万円の札束を出しても、紙切れにしか見えません。無常であるお金に執着すると、欲が出て、金の亡者になります。いくらお金を稼いでも、もっとほしくなって、限りが有りません。お金を稼ぐなと言っているわけではありません。執着するなとも言いませんが、必要以上には執着しない方が良いといっているのです。そうでないと、心が汚れて、分け与えられなくなるからです。

私たちがあると思っている物は、私たちの判断でそう思っているに過ぎません。



空が青いと思っていますが、いくら空に上っても青い世界はありません。空が青いのは、波長の短い青い光が空に散乱しているだけです。
赤い服は、波長の長い赤い色を反射しているだけです。赤い色を反射するモノを赤と認識しているだけです。赤も青も、私たちがそう感じ取っているだけで、実際には存在しないのです。

私たちの世界は、私たちが感じることができた物で、できているのです。
コウモリには、私たちと違った世界が見えているでしょう。彼らは超音波の反射で世界を判断しているからです。
これは、目で見た物だけではありません。音もにおいも感触も同じです。無常である私たちの肉体と心で感じた物だけを判断しているのです。時間でさえも同じです。時間は私たちが時系列を作って判断しているだけです。観察した瞬間からその時系列が存在するのです。
年をとると、月日が流れるのを早く感じるのはこのためです。
時の流れは、観察したヒトによって変わるからです。
物質も同じです。私たちが存在を確認した瞬間から存在するのです。
おかしな話だと思うでしょう。
最新物理学では、パラレルワールドの話が出てきます。
飛行機で、フィッシュorミート?と訪ねられて、ミートと答えて、ミートの皿が出てきたときにミートが確定します。しかし、もう一つの世界では、フィッシュが出ていて、そのどちらかは、見た瞬間に決まるという物です。何を馬鹿な!と思うでしょう。
最新の素粒子物理学の世界では、1つの素粒子が同時に複数の場所に存在できることが確認されています。光の粒子は、1個しかなくても、同時に同じ光の粒子が、別々の場所で観察できます。観察したから存在したのです。
でも、実は、観察した私たち自身が、すでに無常なのです。
「私はいない」のです。
納得できなければ、「変わらない私はいない」と言い換えてもかまいません。



私は常に変わっていきますから、私が認識した物も、私が得た物も、変わっていく物です。
前々回にお話ししましたが、私が思ったことは、本当に私が思ったことなのでしょうか?
頭に浮かんでくる思いが自分の思いであると思っているでしょうが、果たしてそうでしょうか?
様々なホルモンの働きや、お腹がすいているだけでも、私たちの思いは変わっていきます。そして、マウスでの実験では、脳内の特定のシナプスを刺激すると、特定の思いが浮かんでその行動をとることが証明されています。すなわち、脳を他人が支配できると言うことです。もちろん本人は、「自分が考えて自分で行動した」という自覚しか有りませんが・・・。
頭に浮かんできたことは、本当に私が思っているのでしょうか? 頭の中には、自動的にいろんな思いが浮かんできます。以前にお話ししたように、正しく思いを選ばないと、欲望や渇愛は暴走します。

私の本質は何でしょう?ココに私といえるモノがあるのでしょうか?
私たちの肉体は、様々な無機物質や有機物質が集まって、それらが、うまく機能・影響し合って一つの生命体となっています。でも物質の集まりです。これら物質の集まりは、私の本質ではありません。これら物質は、絶えず変化しています。絶えず変化している物質の集まりは、私の本質とはいえません。

水の入ったコップ を考えてみてください。このコップの水は、同じように見えます。でも、常に、水の分子が大気に蒸発しています。そして大気中から水蒸気が水になって入っていきます。その結果として、コップに水が入っていますが、特殊な条件下でなければ、徐々に水は蒸発してなくなっていきます。水は私たちと同じ、無常です。
色をつけても、味をつけても、やがてコップの水はなくなっていきます。
このように物理学的な観点からも、この世の中の物はすべて無常です。そして私たちは私たちが観察できる物しか観察できません。
そして、私たちが観察できる物はすべて変化しています。つまり、すべて無常なのです。

因縁律は、仏陀が編み出した因縁を導く公式です。
「雲があるから雨が降る。雲がなければ雨は降らない」というのが、因縁律です。
先ほどの素粒子の話も同じです。
「確認したから、有る」のです。「確認しなければ、無い」のです。




仏陀が世界を見たところ、3つの真理が見つかりました。
「生があるから、滅がある」 (生がないなら、滅はない)
「得るから、失う」 (得ないなら、失わない)
「変わるから、現象として現れる」 (変わらないなら、現象として現れない)(私たちが観察できる物はすべて、変わる物なのです)

私がいるから、私が苦しむのです。でも、私は、本当はいません。



そうはいっても、どうしても、私に執着してしまうのが人の常です。
それはなぜかというと、「変わらない私」という絶対的なモノはないのですが、ヒトは、「無常である私」を「私」として認識しているからです。ヒトは「私にとって、私は死ぬまである」と認識しながら生きている事も否定できないことです。
ですから、「私」に執着することは、致し方がないことですが、必要以上に執着しないことです。
そして、今この瞬間を大切に生きることです。

目的は、心の成長です。心が成長して、生きている間に悟ることが最終目的です。
悟るためには、「無常」「苦」「無我」に気づき、心を汚さないで生きる事です。そして、毎日瞑想をしてください。瞑想によって、これらの
「気づき」が、深くわかるときが来ます。
心が成長して、悟れば、解脱できます。
解脱できれば、輪廻転生から卒業です。
今回の人生で、死ぬまでに悟れば、また、苦しみのある次の人生に輪廻転生しないですむと思うからです。






   「苦」について   2016年5月 講演の原稿です。

今日は苦についてお話ししたいと思います。
仏教では、すべての存在の姿は、3つの本性を持っていると説かれています。
この3つが一切の現象の真の姿であると説かれています。
この3つが、苦・無常・無我です。
このうちの苦についての話を今日はします。

お釈迦様は、生きることは苦だと述べられています。
ただ、苦といっても、いわゆる苦しみとは少し意味が違います。
パーリ語でdukkhaという用語に苦という漢字を当てはめていますが、ずっと苦しんでいる状態のことではありません。
 このdukkhaという言葉に当てはまる意味の言葉は、日本にも西洋にもありません。
 私がわかる範囲で説明したいと思います。

生きていると様々な苦しみに遭遇します。
嫌な上司にいじめられたり、
子供が思うように育ってくれなかったり、
大事な財産を失ったり、
愛する人を失ったり、
つらい病気になったり、
老いてからだが思うように動かせなくなったり、

このように、苦しみに出会いながら私たちは生きています。
どうしてなんでしょう?
その答えと対処法を、今回は、お話ししたいと思います。

 おおざっぱには、生きることは苦と向き合うことなのです。
この「生きることは苦である」という話をするに当たって、私は大いに悩みました。この話を聞いた皆さんが、「生きることが嫌」になってはいけないと思ったからです。

これは、癌の告知とよく似ています。
聞きたくない話かもしれませんが、聞いても聞かなくても、現実は変わらないですすんでいきます。
知っておけば、対処の仕方も自分の意志で変えることができます。
「生きることは苦と向き合うこと」ですが、そう悲観的になる必要はありません。生きることは苦だと知ることで、苦に対する覚悟ができて、対処の仕方を変えられるからです。
徳川家康が、
「人の一生は、
 重荷を負うて遠き道をゆくがごとし。
 急ぐべからず。」
という名言を残しています。

生きていくことは苦と向き合って、一歩ずつ前に進むことです。
それが苦であると気がつかないで歩くと、「なんでこんなにつらいんだろう!」と思って、必要以上につらくなると思います。
生きていく上で、避けられない様々な困難やつらいことを、そういうことだととらえて生きていくと。気が楽になります。

もちろん、その困難やつらいことを乗り越えた喜びも含めて苦ということです。
喜びと苦は、パッケージなのです。


 この世のことはすべてパッケージになっています。
良いと思ったことには、悪いことも隠れて付いています。
悪いと思ったことにも、良いことが付いているのです。
私たちは、これらの一面しか見ていないことが多いのです。

薬には効果とともに副作用があります。
おいしいご飯を食べたら、お腹がいっぱいになって食べられなくなります。それ以上食べるのは苦痛です。
愛する人ができたら、幸せですが、悲しい別れも必ず訪れます。

嫌いな人がいれば、その人が私たちの心を育ててくれます。
何事もパッケージであることを忘れないでください。

前回、生まれ変わって生きる六道の話をしました。
その中に天道というのが有りました。
何の苦しみも、悩みもなく生きる道です。
一見幸せに見えるでしょう。
しかし、そんな物はないのです。
そもそも、幸せは求めてもどこにもありません。
それは、幸せは求めて得るものではないからです。
チルチルミチルの幸せの青い鳥の話は有名です。
幸せは、そのような生き方をした結果、付いてくる物なのです。
目的ではなく、結果なのです。


仏教では人には7つの苦があると言われています。
生老病死の4つの苦については、よく耳にすると思います。

生苦:生まれることは苦である
老苦:老いることは苦である
病苦:病は苦である。
死苦:死は苦である
この4つです。
それに加えて、3つの苦があります。
怨憎会苦(おんぞうえく):嫌な人とつきあうことは苦である
愛別離苦(あいべつりく):好きな人と離れることは苦である
求不得苦(ぐふとくく):期待するものを得られないことは苦である

これらの苦は、生きていく上で避けて通ることはできません。これらの苦と向き合いながら生きていくのが、生きると言うことなのです。
かといって、苦しいことや悲しいことばかりではないのが生きると言うことですから、悲観的にならないでください。生きているからこそ味わえる多くのことが間違いなくあります。
生きることは苦ですが、その苦もパッケージです。そのパッケージには、生きるという喜びもセットでついてきます。そして、苦を経験しながら、私たちの心は育つのです。

ただし、喜びは続きません。

おいしいご飯を食べて喜びを得るかもしれません。でも、食べ続けることはできません。一定以上食べたら苦しくなります。食べることは喜びであると同時に苦なのです。
息を止めると、苦しいです。そこで息を吸うと楽になります。でも吸い続けることはできません。途中からは苦しくなります。そこで息を吐きます。するとまた楽になりますが、また苦しくて息を吸います。
息を吸うことも吐くことも楽であり苦なのです。

私たち生き物は、苦があるから生きていけるのです。
生命とは何でしょう?

自己増殖能力、エネルギー変換能力、
恒常性(ホメオスタシス)維持能力、自己と外界との明確な隔離など、様々な定義があります。
しかし明確な回答はまだ人類は持っていません。
もう一つ、生命に必要なものがあります。それは感覚です。何かを感じる能力です。単細胞のアメーバーでさえも、毒からは逃げます。感覚があるから生きていける訳です。

私たちには多くの感覚が備わっています。
目でものを見て、耳で音を聞いて、鼻でにおいを嗅いで、舌で味を感じて、皮膚でものを感じて生きています。そしてその感覚に反応して行動します。そして、美しいものを見て、すばらしい音楽を聴いて、いいにおいを嗅いで、おいしい料理を味わって、居心地のいい環境を作ります。
ではそれらの感覚は私たちにとって苦ではないのでしょうか?ずっとすばらしい景色を見ていたら、やがて飽きます。同じ音楽を聴いていたら、やがてうるさく感じます。いいにおいも、ずっとにおっていたら鼻につきます。私たちが快感と感じるものは、実は不完全です。
やがて苦痛に変わるのです。そして苦があるおかげで私たちは生きていられるのです。実は私たちが感じるすべてのことは「苦」です。
苦でないと困るのです。快感だとそれに浸ってそのまま死んでしまうからです。息を吸うのは苦でないといけないのです。そして息を吐くのも苦でないといけません。
気持ちのいい温泉に入るのも苦でないといけないのです。

繰り返しになりますが、私たちは、ある苦を別の苦に置き換えながら生きているのです。
これが私たちの宿命なのですから、受け入れて生きていくしかありませんが、まんざら悪いものでもないと思います。

物の価値は、人それぞれ異なります。どうして異なるかというと、その人の苦のレベルや対照が異なるからです。
一文無しの人に1万円をあげると大いに喜んでもらえるでしょう。
しかし大金持ちに1万円をあげても喜んでもらえないか、逆に怒られるかもしれません。それは、1万円で消すことのできる苦が多いか、少ないか、あるいは、ないかの違いです。大金持ちの人には、お金がないことで起こる苦は存在しないからです。
お腹のすいている人には1個のおにぎりはすばらしくおいしく感じるでしょう。でも5個目のおにぎりは苦痛に感じると思います。おにぎりは同じなのに・・・。空腹という苦をおにぎりで置き換えたのですが、空腹という苦がなくなると、おにぎりを食べることが苦になってきたのです。
つまり、おにぎりを食べることは最初から苦だったのです。
ただ、最初は空腹という既存の苦の値が大きかったのです。その大きな空腹という苦をおにぎりを食べるという新たな苦で置き換えて、快感を得ていたと言うことです。しかし、大きな苦がなくなったら、おにぎりを食べることは苦になってしまったというわけです。

このように、生きることは苦なのです。私たちは苦を新たな別の苦で置き換えながら生きているのです。
では、生きることはつらくて苦しいことなのでしょうか?案外そうでもありません、苦で苦を置き換えながら、結構喜びも得ているからです。
今日わざわざこの話をしたのは、生きることは苦であると知ることで、智慧が現れるからです。

仕事や人生で悩みや障害が出てきたときに、それが当たり前だと気がつけば、心構えも対処の仕方も変わるはずです。
そして、苦があるからこそ、私たちの心は成長できるのです。
前回にお話ししましたが、生きる目的は心を育てることに他なりません。生きて、苦に接してこそ、私たちの心は育つのです。

五蘊と五取蘊
私たちの命は5つの構成要素があると仏教では考えます。
これを五蘊といいます。
五蘊は以下の5つです。

色蘊:肉体
受蘊:感覚
想蘊:眼耳鼻舌身で感じたことを概念に変えるシステム
 (般若心経で無眼耳鼻舌身意というフレーズでおなじみです。)
行蘊:衝動
(生きていたい。話したい。行動したい。考えたいなどの浮かんでき た想いのこと)
識蘊:認識するシステム

私には、想蘊と識蘊の区別がもう一つよくわかりませんが・・・。

要するに、身体と感覚と心のことを五蘊と呼んでいます。
そしてこれら5蘊に執着することを五取蘊と呼びます。

般若心経でも出てきます。
色即是空 空即是色 受想行識亦復如是は、有名ですね。
色即是空は、肉体は空だという意味になります。
そして、色も受想行識も(つまり肉体も、感覚も、その感覚を認識して行動することも)同じく空だという意味です。
ただし、空即是色は正しいとはいえません。
雪は白いけど、白い物は雪だとはいえないのと同じです。。
般若心経は、必ずしもすばらしいお経ではないかもしれませんね。

これら五蘊(つまり、肉体や感覚や心)は無常です。無常については日を改めてお話ししますが、
実態のない消えてなくなる物のことです。
つまり、肉体も感覚も心も消えてなくなる実態のないものだということです。
極論をすれば「私はいない」のです。
つまり、五蘊に執着しても、むなしくて苦しいだけだということです。
しかし、私たちはどうしてもこの五蘊に執着してしまいます。
どうしてでしょう?
どこか遠くの国のテロで、爆発と一緒にありんこが死んでも、心はあまり痛みません。
そのテロで、子供が死んだと聞くと少し心が痛みます。
新聞の死亡欄で、どこかの偉い社長さんが亡くなったという記事を見ても、少ししか心は痛みません。
でも、大好きな俳優が亡くなったと知ったら、少し心が痛みます。
自分の近しい人の場合はもっと心が痛みます。
そして自分自身が死にそうになったら、おおさわぎです。
同じ命がなくなっても、自分に関わる度合いに応じて心の痛み方が違います。命は同じなのに・・・。

物でも同じです。
どこかで車がぶつかって車が壊れても、痛くもかゆくもありません。でも、その車が自分の車だとわかると痛みが出ます。自分の物だと想うからです。
自分の物だと想ったときから、苦しみがわいてくるのです。

五蘊も同様です。自分の体、自分の心、自分の感覚だと想ったときから苦しみも伴ってくるのです。これら五蘊は自分の物ではありません。レンタルです。かりそめにこの人生を生きている今だけ自分が使っているだけです。必ず返さないといけない物なのです。五蘊に執着すると苦が生じます。でも、それは当たり前のことでどうすることもできません。そういうことだと受け入れて、そのことをあれこれ思い悩まないことです。

五蘊に執着したときから苦が生まれます。これを五取蘊といいます。
五蘊は自分の命そのものです。命に執着するのは、生き物にとっては共通の衝動であり、それを捨てろと言われても、簡単にできることではありません。もちろん、「自殺しなさい」と言っているわけではありません。自殺は生きることの最終目的である「心を育てること」の
放棄でしかありません。自殺したら、また同じ課題を持って新たに生き直さなくてはいけないだけです。
そして、もちろんのことですが、「命を粗末にしなさい」 と言っているわけでもありません。今この命があることが、心を育てる唯一のチャンスだからです。

「五蘊に対する執着を捨てなさい」と言っているのです。
自分の車を捨てるのではなく、自分の車に対する執着を捨てるということです。

私たちの執着は、物質に対してだけではありません。
自分の肉体や家族に対する執着は、特に強いものがあります。
自分への執着を捨てることは難しいことです。それは、逆に考えれば、自分に関わる苦はそれだけ大きいということになります。
自分への執着を捨てるということは、「自殺しなさい」といっているわけでもありませんし、「自分のことを大切にしなくても良い」と言っているわけではありません。自分を大切にすることは必要なことです。ただ、自分自身も、他のすべてのことと同じで、今たまたまここにいるだけの存在で、変化して消えていくものだということを認識していただきたいのです。

家族にたいしても同じです。「家族に対する執着を捨てる」ことは、子供や親や配偶者を「捨てたり、おろそかにしたりすること」ではありません。「大切に思ってください」しかし、「自分の思い通りになるように、自分の思いを押しつけないでください」。「大切にすること」は、「自分が正しいと思ったことを押しつけること」とは違います。相手が、間違っていれば、それに対して、アドバイスはしてかまいませんが、最後に物事を決めて、その責任をとるのは本人しかありません。それぞれの人の、それぞれ生命の尊厳を認めて尊重することが大切です。
   
自分自身への苦しみの原因は、3種類の愛着です。
1.肉体に対する愛着
2.生き続けることに対する愛着
3.気に入らない物をすべてなくしたいという愛着
です。
                          
これら3つの愛着を「渇愛」と言います。
これら3つの愛着は決して満たされることはありません。
完璧な肉体はありませんし、永遠の命もありません。
もちろん、気に入らない物をすべてなくしてしまうことも不可能です。
満たされない物に執着しても、心は満足することはありません。
満たされない物は、満たさせない物として受け入れなければ、苦しむだけです。

渇愛に対して私たちは、執着しないであきらめることを学ぶ必要があるのです。
そして、渇愛に気がつかないで渇愛に身を任せる状態を「無明」と言います。
生き物は、「無明」をもって生まれてきます。
精進して、智慧を得て渇愛と無明を心から根絶することが、求められているのです。

では、どうやって精進すればいいのでしょうか?

無明と渇愛を根絶する方法を「正八支道」と言います。
一般的には「八正道」あるいは「中道」として知られています。
1.正見 :物事を客観的に理解する
2.正思惟:思考が感情で汚れないように気をつける
3.正語 :偽りのない、他を欺かない、調和を乱さない、役に立つ      言葉を語る
4.正業 :行為をする場合、殺生、偸盗、邪淫を犯さない
5.正命 :仕事をする場合、悪を犯さない
6.正精進:悪を犯さないことと、善に達することに励む
7.正念 :今の瞬間に集中する(過去と未来に心がさまよわない)
8.正定 :一切の現象は、常にうつろい、変化し、生まれては滅し      ていくという事実(無常)を発見できるように集中力を      育てる

以上の正八支道は、まさに前回講演したときにお話しした内容そのものであるとお気づきいただけたでしょうか。
行き着く所は、同じなのです。
最終的に、心を支配して、心が汚れないように、よき思いを抱いて生きることに収束するのです。

いろいろと小難しいことをいいましたが、要するに、この世は無常であり、すべてものは、うつろい変わっていくということを、知ることです。無常ですから執着しても、しょうがありません。無常については、また日を改めてお話しさせていただきます。
無常であるということを知って、執着を捨てて、生きることです。
それが苦に対する対処法です。


一休さんが知人に宛てた手紙の一部を紹介します。

この手紙は、一休さんの知人が大地震にあって、家は崩壊し、子供も亡くなりました。そのときに、一休さんが出した手紙です。

災難に逢うときには、災難に逢うがよく候
死ぬ時節には、死ぬがよく候
是はこれ、災難をのがるる妙法にて候

一見突き放した様にも見える内容です。
しかし、通り一遍な慰みの言葉は、この不幸のどん底にいる知人には、むなしく響くばかりでしょう。
一休さんの言葉は慈愛に満ちています。
一休さんは、苦は受け入れるしかないと言っているのです。
起こってしまった出来事だけではありません。
その知人は、おそらく、
「どうしてこんなことが起こったのか?」
「なんで自分にこんな不幸が起こってしまったのか?」
「どうして自分だけ生き残ってしまったのか?」
このように自問自答して、苦しんでいるに違い有りません。
その知人に、不幸な現実を受け入れられない自分の心も受け入れてくださいという意味の手紙を送ったのだと思います。

テイクホームメッセージ
生きることは苦である。
(しかしまんざら捨てた物ではないし、そのおかげで心が育つ。)
完全な満足などはないし有っては困る。
良いことも悪いことも、何事もパッケージになっている。
苦であると知ることで、楽に生きられるようになる。
ただし苦がなくなるわけではない。
渇愛に気づき、3つの愛着への執着を捨てることが大切






いかに生きるか 2016年3月講演


今日は、お運びくださいましてありがとうございます。
私は、還暦を過ぎまして、若いときに気がつかなかった様々なことが、少しは判るようになってきました。
若いときは、自分のことで精一杯でしたが、年をとるにつれて、そしていろんな人たちとのふれあいの中で、多くのことを学ばせていただき、今日に至っています。この学びを自分一人で、独占するのでは無く、すこしでもお返しすることが社会に対しての義務ではないかと、最近思うようになってきました。そのような理由で、このような場を設けさせていただいた次第です。
話したいことは、たくさんありますが、今日はその総論をお話ししたいと思います。
今日は生き方について、いかに生きるかをお話ししたいと思います。

私はこの年になるまで、生きる目的は何だろうと答えを探し続けてきました。
アンパンマンの歌詞に
♪何の為に生まれて 何をして生きるのか
 答えられないなんて そんなのは嫌だ!
という部分があります。
私はこの質問に明確に答えられなくて
ずっと悶々として生きていました。
でも、意外とその答えは、簡単で単純で明快でした。




皆さんは、死ぬときのことを考えたことがありますか?
夢を叶えても、偉大な業績を残しても、大金持ちになっても、
素晴らしい地位や名誉を得ても、それらは死ぬときには手放して死なないといけません。自分のものだと思っている肉体も含めて、何一つあの世に持って行けないのです。
あの世には、心一つで旅立つのです。
ですから、心が一番大切なのです。
つまり、人生で一番大切な目的は、お金持ちになることでもないし、偉大な業績を上げることでもありません。
一番大切なのは、心を育てることなのです。


ラテン語で「メメント・モリ」 という言葉があります。
メメントは、メモリーです。記録しておきなさいということです。
モリは「死ぬべき運命」という意味です。
メメント・モリは、自分が、あるいは相手も、いつかは必ず死ぬ運命であるということを心のどこかにいつも思っておきなさいということです。そうすることで、自分を含めた、生きとし生きるものにたいする命への慈しみの思いはふかくなると思います。
命は奇跡のようなシステムのバランスの上に成り立っています。そのバランスが崩れたとき命はあっけなく終わります。本当にはかないモノです。そして、必ずいつかはそのバランスが壊れて命が終わります。自分が死ぬかもしれないし、相手が死ぬかもしれません。そして、それがいつ訪れるかは誰にも判りません。
そして、この一度きりしかない人生をどのように生きるかは、とても大切な人生の課題です。そして、この人生は、心を育てるたった一度のチャレンジであり、チャンスなのです。
私たちは、それを人生から試されているのです。
今生きているこの人生は、一度しかありません。
今のこの一瞬は、二度と戻ることはないのです。
そして必ず終わります。
今できることは、明日できる保証は無いのです。
いまできることを、今精一杯してください。



人間には品格があります。そしてその品格には上下があります。
上品・下品と書いてじょうぼん・げぼんと読みます。
上品の人格になるように心を育てて、心を清めることが、人生を通して求められているのです。
それは人格を差別して言っている言葉ではなく、生きてきた結果として得られた人格の質のことです。

程度の違いはありますが、子供の時は下品です。
赤ちゃんの頃は、みんな泣き叫んで、自分の要求を通しているのです。成長に伴って、心も成長してそのようなことをしなくなって、さらに社会と関わる中で、他人のことを思いやるようになるものなのです。
そして、どのように心が育っていったかの結果、上品・下品に分かれていくのです。
まわりの環境は大切です。
どのような本を読んだか、どのような人と出会うのか、導いてくれる人と出会えるのか、多くの要素がありますが、これらの要素も、それぞれの人がどのように生きていくかで左右されるものです。



仏教では、人は死んだ後に生まれ変わるという輪廻転生の考え方をします。その生まれ変わる先には6つの道があるといわれています。天道・人間道・修羅道・餓鬼道・獣道・地獄道です。

天道は、悩みや苦しみが無く生きられますが、その分心は育ちません。西郷隆盛が、「子供に田畑を残さず」と言ったのはこのことだと思います。

人間道は、悩みや苦しみがありますが、そのおかげで心が育てば、解脱できます。解脱すれば、輪廻転生の宿命から卒業です。

修羅道は、憎しみと戦いの世界です。

餓鬼道は、ねたみや欲で心がいっぱいです。

獣道は、良心は無く、本能のままに相手を殺して、その肉を食らいます。

地獄道は、希望のない苦しみの世界です。

私は、これら六道は
生まれ変わっていくのでは無く、今生きているときに、道を誤っても迷い込むと思います。実際に憎しみと戦いに明け暮れている人たちがいますし、欲の塊になっている人たちがいます。
迷い込むことが悪いことだとは思いません。
それを経験して、元のまっとうな道に戻ることが大切だと思います。その方が2度とその悪しき道に迷い込まないですむからです。道を間違えたと自覚できて元の道に戻る心を持つことが大切なことだと思います。


そのために、日々心を育てていくことが大切だと思います。
大切なことは、「心に支配されないで、心を支配すること。」です。多くの人たちは、自分で考えていると思い込んでいます。
でも、実際には、私たちの心には、思わなくてもよいことが次々に浮かんできています。それら思わなくてもよいことに、とりつかれてしまうと、心が暴走します。想いが浮かぶのは、仕方がありませんが、その想いをつかんではいけません。
誰かに殴られたら、殴り返そうとします。でも、それは、浮かんだ想いに支配された状態です。殴られたら第1の矢が自分に刺さります、そして殴り返そうとして第2の矢を放ちます。
でも、その第2の矢が刺さるのは相手ではなく自分です。
キリストが言っていた言葉を思い出してください。「右のほほを打たれたら、左のほほを出せ」これはまさにこのことを言っているのだと思います。
仕事中にあるいは勉強をしていて、怠けたいという想いに駆られます。
豊かに暮らしていても、老後の生活が心配だから、もっともっとお金が欲しいと思います。
いろんな理由をつけてそれら想いは、想いを正当化します。想いはよく気をつけていないと、いつも私たちの心を支配してしまいます。
想ってはいけないことは、想わないようにいつも気をつけてください。



仏教では3つの心の毒について語られています。
貪・瞋・癡 という3つの心の毒です。
貪は欲です。むさぼることです。
瞋は、怒りです。
癡は、無知です。知識が無いと言うことでは無くて、心に支配されている自分に気がつかないことです。そのために心は暴走しますから、想い通りに行くはずはありません。そして、そのために不平不満を言うことが癡です。

この3つの想いは、いずれも、心を汚します。
そして、いつも心に浮かんできて、心を支配しようとします。いつもそれに気をつけて、心に浮かんでも、それをつかまない練習をしてください。



逆に思うべきこともあります。それは他を利することです。
世のため人のために役立とうとする思いです。
できれば毎日5分でもいいです。
慈悲の瞑想を行ってください。
5つのことを思ってください
 自分が幸せでありますように
 自分の周りの人たちが幸せでありますように
ここまでは簡単です。 次は
 自分が嫌いな人が幸せでありますように
 自分を嫌っている人が幸せでありますように
 生きとし生けるものが幸せでありますように
この瞑想を行っている間は、心から本気でそう願ってください。
不思議なもので、これを行うと、嫌いな人がそれほど嫌いで無くなってきます。

そして、できれば、善いことは隠れて行ってください。
こっそり誰にも知られないように行う徳を陰徳といいます。
私は子供の頃によく母親から「陰徳を積むように」と教えられました。良いことをするときに、なるべく目立つようにしていたいやらしい子だったのだとおもいます。
ちなみに、
誰かに褒められたくて行う徳は、欲に駆られた行動です。



今は陰徳を積むという言葉を滅多に聞かなくなってしまいました。海外の文化では、個人の評価に善い行いをすることも含まれますから、善い行いを誰かにアピールするのが当たり前になっています。陰徳を積むというような文化は、日本だけかもしれません。昔の人は普通に言っていた言葉だったと思いますが、滅亡の危機に瀕しているように思います。
是非またこの言葉を私たちの心に取り戻したいと思います。
陰徳を積むことを覚えてください。 
マザーテレサの言葉を紹介します。
思いに気をつけなさい。 思いは言葉になります。
言葉に気をつけなさい。 言葉は行動になります。
行動に気をつけなさい。 行動は習慣になります。
習慣に気をつけなさい。 習慣は性格になります
性格に気をつけなさい。 性格は運命になります。

つまり
思いに気をつけることで、上品下品が決まるのです。
そしてそれが運命に結びつきます。



いつも気をつけていてください。
思いという種のことを。
農場の法則という法則があります。
人は自分の心という農場に想いという種を蒔きます。
私たちは、人生で、思いという種を蒔きながらいきています。
他人が蒔いた種は収穫できません。自分が蒔いた種だけを収穫します。そして自分の蒔いた種は必ず収穫しないといけません。それが人生の約束事です。
どんな種を蒔くのかは、いつも人生から試されているのです。雑草の種を蒔いたら、雑草を刈り取らないといけません。それが自分の人生に対する責任です。
今蒔いた「思いという種」が、将来のあなたの運命を司るのです。



これらのことは、簡単にできることではありません。毎日少しずつ努力してください。
ギリシャ神話に出てくるシジフォスは神との約束を破ったために罰を与えられました。毎日大きな岩を山の頂上まで運び上げるという罰です。しかし、その岩はあと一歩で頂上にたどり着くというときに、麓まで転がり落ちてしまいます。そのために永遠に、岩を運び上げないといけません。
私たちの日常によく似ています。
何も変わらなくても良いのです。その結果や成果には大きな意味はありません。岩が山の頂に運び上げられたからって、どうってこと無いです。後日詳しく話しますが、この行為には意味は無くて、毎日努力していることに意味があるのです。その意味で、シジフォスの神話は象徴的です。

毎日1%の努力をすれば365日で38倍になり、
5年で5万4千倍になります。



今日のメッセージです。
人生の目的は、心を育てることです。
できれば最終的には解脱(悟ること)することですが、
1回の人生で解脱できる人もいればできない人もいると思います。 
サブメッセージ
心に支配されないで、心を支配して、
3つの心の毒をうっかりつかまないようにしてください。
心の毒はいつも正義の衣を着ていますから、だまされないようにしてください。
そして、心に「善き思い」という種を蒔いてください。
これらを行っていくときっと近いうちに試練が訪れます。
どうか試練を楽しんでください




     MINDダイエット

今回は、MINDダイエットを紹介したいと思います。
MINDダイエットは認知症予防に焦点を当てたダイエット法です。
ラッシュ大学が推進して行われた研究です。
この大学で行われた「Memory and Aging Project」で
参加したのは認知症と診断されていない960人(平均年齢81.4歳、女性75%、平均観察期間4.7年)
を対象に行われました。
研究の目的は、脳や体の老化の解明、治療や予防法を開発することです。
その結果、
厳密にMINDダイエットを行った人は、
アルツハイマー病のリスクが53%低下し、
適度に行った人でも35%低下しました。
また、厳密にMINDダイエットを行った人は、
行わなかった人に比べて認知機能が7.5年も若くなりました。

研究の筆頭著者のモリス博士は、次のようにまとめます。

「アルツハイマー病の原因は、
遺伝子、環境や行動などさまざまな因子が関与していますが、
高齢になって発症するアルツハイマー病では遺伝子の影響は小さく、
過去の報告から、
食生活が大きく影響しています。
MINDダイエットを長く続けている人は、
アルツハイマー病の発症リスクが減ります。
つまり、正しいことを長く続ける人は、より健康になるのです」

すばらしいですね!
皆さんも是非MINDダイエットを実戦してみてください。

エッ? 難しいんじゃないか?って?
いえいえ、そんなに難しくありません。

まず食品分類を10種類のヘルシーな食品と、
5種類の不健康な食品の、合計15種類に分類します。

ヘルシーな食品
[1]緑色の野菜
[2]その他の野菜
[3]ナッツ
[4]ベリー
[5]豆
[6]全粒穀物
[7]魚
[8]家禽(かきん:家畜として飼育される鳥)
[9]オリーブオイル
[10]ワイン

不健康な食品
[1]赤身肉
[2]バターやマーガリン
[3]チーズ
[4]パン菓子やお菓子
[5]揚げ物やファーストフード


次に、この15種類をどのように摂取するかということですが、

 具体的には
[1]全粒穀物は少なくとも1日3食摂取する。
  さらに、緑色の野菜とそれ以外の野菜を1日1回は摂取する。
[2]間食にナッツをほぼ毎日取り入れる。
[3]豆類は1日おきに摂取する。
[4]週2回以上は家禽やベリーを摂取する。
[5]魚は少なくとも週に1度摂取する。
[6]毎日グラス1杯のワインは追加可能。
としています。

そして、不健康な食品は制限します。
[1]バターは1日テーブルスプーン1さじ以下。
[2]チーズ、揚げ物やファーストフードは、1つでも週に1食以下。
としています。

難しいことではないと思います。

MINDの食事に含まれる唯一の果物?はベリーです。
モリス博士は、学内ニュースに対して、次のように述べます。

「ブルーベリーは、脳を保護するという点で強力な食品の1つです。
過去の研究で、イチゴも認知機能に対するよい影響が示されています」



<<参考文献>>
Rush University Medical Center「DIET MAY HELP PREVENT ALZHEIMER'S MIND」
https://www.rush.edu/news/diet-may-help-prevent-alzheimers






         アルツハイマー病の予防

下の図は、アルツハイマー病の発症過程を示したものです。


                  
アルツハイマー病の発症過程

上図の様に、アルツハイマー病は、突然に発症しません。
まず最初に症状が無い時期から、脳内にアミロイドが沈着します。
一定のアミロイドが沈着した後に、タウ蛋白の蓄積が起こります。
そして、タウ蛋白の蓄積が一定量を超えると
脳内神経細胞の壊死や神経原線維の編成が起こってきて、
アルツハイマー病が発症します。

 つまり、アミロイドの蓄積が起こらなければ、
アルツハイマー病は発症しません。

では、予防法があるのか?
運動をすると、
アミロイドを溶解させる「ネプリライシン」と言う酵素活性が高まります。
マウスでは、運動で認知症の症状の改善が認められています。
アミロイドが蓄積していても症状が出現していない時期から
運動の習慣をつけておくことが、
アルツハイマー病の発症を予防することに有用であると思います。

日常的に30分以上の運動(歩行習慣で良いと思います)を
心がけることが大切だと思います。

 また、歩く習慣をつけておくことは、「大腸癌の予防」にもなります。





     やめられない!止まらない!     

 
最近、私たちの食について、気になっていることがいくつかあります。
その一つが、「やめられない!止まらない!」です。
知らず知らずのうちに依存症になっているのです。

「ちょっとだけ食べるつもり」で、
ポテチの袋を開けて食べ始めたら、
「やめられない!止まらない!」となって、
気がついたら全部食べてしまった経験は、
多くの人が持っていると思います。

この状態は、
自分の理性で行動をコントロールできていない状態です。
このように食べることがコントロールできなくなる状態は、
「食べ物依存症」です。

よくよく考えてみれば、
私たちは、ポテチだけで無く、
いろんな食物でこの状態に陥っているのでは無いでしょうか?

依存症は、衝動的で感情的な反応が増えるため、
アルコール、覚醒剤、睡眠剤などと同じように
脳に影響を及ぼします。
「たかがポテチで?」と思うかもしれません。
食べ物依存症はアルコールや覚醒剤と同じように、
脳内報酬系が活性化することが分かっています。
脳内報酬系が活性化すると、
欲望が暴走して、理性でのコントロールが難しくなってしまうわけです。
これがすなわち、
「やめられない!止まらない!」という行動として現れるわけです。

では、どんなものを食べるとそうなりやすいのでしょう?
たしかにポテチはそうなりやすいです。
では、玄米ご飯は?
白米は?
どうも、食品によって違いがありそうですね♪

そうなのです。

食品の加工度が関連しているのです。
玄米では、「やめられない!止まらない!」は、起こりにくいです。
白米は、少しそうなってしまいます。

私たちが口に入れた物質は、
体に吸収され、
全身に分布し、
代謝によって構造が変化し、
体外へと排泄されます。
この過程が、大きく関与しているのです。

加工されて濃縮された物質は、
その摂取量が多くなり、血中濃度の上昇も急激で、
その結果作用も強く出ます。
裏返してみれば、乱用の可能性が高くなるわけです。

水は、乱用の可能性はあっても低いです。
しかし、ビールは、水に比べると乱用する可能性が高まります。
さらにアルコール濃度の高い酒では、
乱用だけでなくさまざまな問題を引き起こす可能性が出てきます。

これは、アルコールに限ったことではありません。
加工された食品も注意が必要です。
加工度が上がれば上がるほど、
食品は純化されて、口当たりが良く、美味しくなります。
その代わりに失うモノがあることなど、思いもよらないことです。
しかし、私たちは失っているのです。
美味しいものを食べてはいけないと言っているわけではありません。
私も美味しいものが大好きです。
しかし、美味しいもののために、理性を奪われるのは嫌です。

たまに、理性が壊れるほど美味しいものを
食べてもかまわないと思いますが、
本当に美味しいものにとどめておく努力は、
しても良いのではないかと思います。
スーパーやコンビニのお菓子やポテチなどで
理性が奪われるのは、なるべく避けておきたいものです。

一般的に、自然に存在する食品は
そのままで依存性のあるものは
滅多に無いと思います。
加工されることで、依存度の高い食品に変わります。
麦が焼酎やウィスキーになり、玄米が白米や日本酒になり、
きびが砂糖になり、ケシがアヘンになるのです。
加工されることで、精製されて、
濃度が高くなり、吸収率も良くなって、
他の加工物質が添加されてさらに美味しくなって、
私たちの理性が壊れるほどの魔性の食品になるのです。

一般的に私たちが口にする依存症が起こり得る食品ランキング
ベスト10は、以下のようなものです。
1 ピザ
2 チョコレート
3 ポテトチップス
4 クッキー
5 アイスクリーム
6 フレンチフライ
7 チーズバーガー
8 ソーダ
9 ケーキ
10 チーズ
これらは、上記のことを思い起こして
やめておこうと思えばやめておけるものでは無いですか?


  甘いものは、やっぱりよくない

    スーパーのレジの手前には、パンとかお菓子売り場があります。
多くの人は、買い物のついでに、
何気なくパンやお菓子をかごにいれてしまいます。
そして、日常的にこれらのものを食べています。
大丈夫なんでしょうか?
これがどうやら、大丈夫ではなさそうです。
人はものを食べて満足すると、中枢からドーパミンが分泌されます。
おいしいものを食べると「幸福感」が出ますよね♪
あれがそうです。
ドーパミンが分泌されると、さらに食欲が増強します。
食事中毒になると、
このドーパミンの受容体が過剰に刺激された状態になって
食欲が止まらなくなります。
これはコカイン中毒でも同じ状態になります。

皆さん、甘いものを食べると、
毎日甘いものが欲しくなるのですが、大丈夫ですか?
甘いものは中毒になるのです。
多くの場合、
「自分が甘いものの中毒になっている」
と気がついてないだけに、問題があります。

さてここで甘いものですが、
現代社会では甘いものがあふれてますね。
例えば清涼飲料水一つとっても
そこに入っている甘みの成分で分類したら
1.砂糖の入ったジュース(缶コーヒーなど)
2.果物のジュース
3.果物と他のものが混じったジュース
4.カロリーオフと称される人工甘味料で甘さを作ったジュース
5.コーラなどの甘い飲み物
しかも,その中には
「脂肪の吸収を抑える」と言って、特保まで獲得したものがあります。
うさんくさいですね。
確かに脂肪の吸収を抑えるのでしょうが、
だからといって、「体に害があるもの」を特保に指定する厚労省や、
いくら営利目的の企業だからと言っても、
平気でそれを申請する企業の体質は、
その企業の本質的なアイデンティティーを疑ってしまいます。

ここで、この先の話をより深く理解してほしいので、
天然の甘味料について説明しておきます。
まず知っておいて欲しいのは、
糖の最小単位であるブドウ糖(グルコース)と
果糖(フルクトース)についてです。

ブドウ糖は、脳の唯一のエネルギー源であり、
また筋肉活動など全身の細胞を活性化するエネルギー源です。
ブドウ糖は、ごはんやパン、麺類、イモ類などに多く含まれています。
果糖は、果物や蜂蜜に含まれていて、甘みが強いです。
さて、ここで知って置いて欲しいことがあります。
ブドウ糖と果糖は、代謝経路が全く違います。
ブドウ糖は、小腸から吸収されて血液中に入り、
脳細胞以外ではインシュリンの助けを借りて、
エネルギーとして利用されます。
(脳細胞はインシュリンの作用無しでエネルギーとして利用されます。)
ここで、余ったブドウ糖が中性脂肪となって貯蓄されます。
ところが、果糖は100%肝臓で代謝され、肝臓で中性脂肪などに転換され、
脂肪として貯蓄されます。
以上が天然甘味料の話です。

まず、砂糖入りジュースです。
これらの砂糖にはグラニュー糖が使われることが多いですが、
グラニュー糖は、ブドウ糖と果糖が結合した糖(ショ糖)で、
サトウキビやサトウダイコンから抽出結晶化されます。
グラニュー糖は、糖類の中で一番カロリーが高く、21gあたり80kcalです。
吸収も良く、血糖値の上昇も急激に起こります。
糖尿病になりやすく、糖尿病の人はコントロールが悪化しやすいです。

次は、果糖入りジュースです。
ジュースと表示するには、その果物が100%使われないといけません。
考えてみてください。
ミカンジュースをコップ1パイ作るのに、
どのくらいのミカンをつぶすのでしょうか?
そこそこの量のミカンが入りますよね。
この大量のみかんをジュースにして摂取しているわけです。
しかも、果物に本来含まれている果肉や繊維は捨てて摂取するのです。

果糖とその他の甘味料が入ったジュースはどうでしょう?
例えば、コップ一杯のオレンジ味の飲料は、
濃縮還元で84 kcalで、コーラに匹敵します。
さらにオレンジ味の飲料に含まれる糖の種類は
ブドウ糖:果糖:ショ糖=1:2:2 でカロリーも高いし血糖も上昇しやすいです。

では、カロリーのない人工甘味料なら大丈夫なんでしょうか?
最近の研究で、カロリーがなくても、
アスパルテームやスクラロースなどの人工甘味料が、
肥満や糖尿病の原因になるということが判ってきました。
アスパルテームはダイエットシュガーの代表です。
これらカロリーのない甘いものを摂取すると、
血糖上昇はないにもかかわらず、体は甘さを感じて、
インシュリンが分泌されます。
インシュリンが分泌されて血糖値が下がるので、
空腹感が強くなり食意欲が増進されます。
そして、肥満や糖尿病引き起こすことが判ってきました。

コーラやスポーツ飲料などの一般的な甘い飲み物はどうでしょう?
コーラなどの炭酸飲料水やスポーツドリンクには異性化糖が含まれています。
異性化糖って聞き慣れないことばですね。
ところが、
一般的な甘い飲料水の材料表示には、
ほとんどこの異性化糖が記載されてます。
何となく判ったような判らないような単語なので、
我々はスルーしていただけなのです。

話は少し飛びますが、
高フルクトース・コーンシロップ(high-fructose corn syrup;HFCS)
というものをご存じですか?
HFCSは、トウモロコシなどのでん粉を酵素処理し生産されます。
この技術は日本で開発されましたが、安く大量生産ができるため、
1970年代にアメリカに導入され、アメリカでの食文化を大きく変化させました。
そのHFCSが、最近の研究で、
肥満、高血圧や糖尿病などの原因とわかってきました。
日本ではこのHFCSのことを
異性化糖:(以下の2種類の表記があります。)
ブドウ糖果糖液糖(果糖含有率50%未満)
あるいは、
果糖ブドウ糖液糖(果糖含有率50-90%)と表記しています。
そうです、結びつきましたね。
HFCSが甘い飲み物には入っているのです。

このHFCSは、現在砂糖類の約1/4の需要になっています。
果糖を果物や野菜から摂取(リンゴ一個果糖約16g程度)しても、
食物繊維、ビタミンやミネラルなど重要な栄養素も含んでいますし、
全体のボリュームが多くて一度に大量の果糖をとることはありません。
ですから、果糖のネガティブな効果は緩和されます。
しかし、これら清涼飲料水には異性化糖が12%程度、
すなわち500ML中60gも含まれており、
一気に大量の果糖を摂取することになります。

やっぱり、甘い飲み物は、日常的に摂取してはいけないように思います。
今の若い人達(我々オヤジ達も)は、
簡単に甘い飲み物が手には入って、
日常的に甘い飲み物を飲む機会が増えたように思います。
気をつけないと、一億総肥満・一億総糖尿病の日本になってしまいそうです。
海外では、甘い飲み物に税金をかけて規制する動きがあるのも
頷ける話ですが、
一見、飲料水に無理やり税金をかけて、
税収を増やしたいかのような政策にも思えますが
どうしてそのようなことをする必要があるのかを
まずきちんと説明してもらえたら納得の出来る話だと思います。


  
肺炎球菌・ヒブワクチンは危険かも?


これら2つのワクチンは、厚労省の発表では、安全と認定されました。
2011年2月28日から3月3日にかけて、4日間で3人が亡くなりました。
厚労省の発表では、
この4日間に3.6万人がこのワクチン接種を受けたとして統計処理をしています。
(従来は3千人/日の接種でした。
 同時接種の認可と公費助成が開始されて、接種数が3倍に増えたと試算したものです。
 ちなみに2倍で計算すると2.4万人です。)
海外での小児用肺炎球菌ワクチンによる死亡例は、概ね10万接種で0.1~1人
ヒブワクチンでは、概ね10万接種で0.02~1人です。
問題が起こった4日間で多めに見積もって3.6万人の乳幼児がワクチンを打ったとして、
小児用肺炎球菌ワクチンによる予想の死亡数は、3.6/10x0.1から1=0.036から0.36人
ヒブワクチンでは、0.0072~0.36人です。
4日間で3人という死亡数はこの8.3倍から416倍です。
(4日間の接種数が2.4万人と推定すれば、12.5倍から624倍にあがります。)
また、生後2ヶ月から5才未満の
乳幼児の年間死亡率から4日間の予想死亡数を計算すると0.15人です。
4日間で3人という死亡数はこの20倍です。

 予防接種に関連した一定の割合の死亡数
(予防接種が原因ではないと否定できない予想の出来ない避けられないもの)
から見ても 、一般の乳幼児死亡の割合からみても、遙かに多い数です。

 厚労省は安全宣言を出しましたが、????です。

 ひるがえって、これらのワクチンのメリットは何だったでしょう。
肺炎球菌やインフルエンザ菌タイプb(略してヒブ)による重篤な感染症の予防でした。
具体的には肺炎や髄膜炎・敗血症・急性喉頭蓋炎などです。
WHOの統計では、肺炎球菌による死亡者数が160万人/年、
ヒブで38.6万人です。
しかし、衛生状況の良い日本にそのまま当てはまりません。
日本では、細菌性髄膜炎による0~4才の児の死亡は11.7人/年(2007~2009年)
細菌性肺炎による死亡が5人/年。
肺炎球菌性肺炎で死亡した0~4才児は2004年以降の6年間で1人でした。

 この状況を考えたとき、
「今あえてこれらのワクチンを受けるメリットは少ない」と思います。
 また、これまで問題にされて報告されていなかっただけで、
これらのワクチンによる死亡者数は実はもっと多かった可能性もあります。
米国の報告では、
肺炎球菌ワクチン導入後最初の2年間で3150万回の接種があり、
117人が死亡しています。
このうち12人は接種後12日以降に死亡しています。
この12人は積極的な調査で明らかになりました。
残り105人は半数が接種後3日以内に死亡していました。
この105人は数日以内に異常があって自発的に報告された数です。
ということは、12日過ぎてからの死亡は、
積極的に調べないと報告されなかったと言うことです。
ということは、
もっと多くの児が、肺炎球菌ワクチンが原因で死亡していたが、
統計には上がってこなかった可能性があります。

私の結論は、
「これらのワクチンを打つことは、もう少し待ってもらいたい。」です。
何時までかはわかりませんが、安全性が確認できるまでは、
打たない方が安全だと思います。



  ポリオ不活化ワクチン
      今話題のポリオ・ワクチン。
現在、日本国内では一般に使われているのは、生ワクチンである。
この生ワクチンには、多くの問題点がある。
その一番大きな問題点は、
この生ワクチンのために、ポリオにかかってしまう人がいることである。
元々は、弱毒化された3種類のウィルスを生きたまま飲むことで
体に抗体を作るという目的のワクチンである。
しかし、赤ちゃんのおなかの中で、増殖を繰り返している内に
弱毒ウィルスが強毒の野生株に変異することがある。
その野生株が、当人やおむつを替えた親に感染してしまうのである。
ここで第2の問題点である。
ポリオ生ワクチンを2回投与後の免疫獲得率は
現在、1型、2型とも95%以上、3型80%以上である。
ということは、3型に関して言えば、
5人に一人は免疫がない可能性がある。
特に昭和50~52年生まれの方は、
ポリオウィルスのI型抗体保有率が低い。

昭和50年生まれの方は57%、51年は37%、52年は67%。
その中でも昭和51年生まれは突出して低いので、リスクが高い。

具体的に言えば、
予防接種健康被害認定審査会で
生ワクチン接種後にまひを発症したと認定された事例は、
平成元年から20年までの間に80件ある。
WHO(世界保健機関)は、
生ワクチンでは100万人に2~4人のポリオ患者が
発生すると警告している。


ポリオの生ワクチンが有効性を発揮するのは
実際にポリオが蔓延している地域限定である。
日本のように、ほぼ根絶状態の国では、
この生ワクチンのために発生したポリオ患者しか
いない状態になってしまう。

もうワクチンの切り替えをしないといけないのだが、
ワクチン後進国の日本が、何時切り替えを行うのか?

待っていてもらちはあかないので、
不活化ワクチンを個人輸入することにした。
いったいどのくらい需要があるのかわからないけど、
こっちも、考えてもらちがあかない。

ポリオ不活化ワクチンは、
2ヶ月を過ぎた赤ちゃんで接種可能である。
他のワクチン(3種混合・ヒブワクチン)との混合接種も可能である。
スケジュールは
赤ちゃんの場合
1回目から4-8週後に2回目を、そこから6-12ヶ月後に3回目をうつ
その後4才を過ぎて追加接種をする。
あるいは
8週おきに3回のワクチンを打って、
その後4-6才で追加免疫を1回。
いずれにしても、合計4回というのが国際的なスタンダード。
ただし、免疫は10年くらいしか持たないと考えてください。

ワクチン接種のスケジュールの一例
  • 2カ月時:Hib(1) + PCV7(1) + IPV(1)
  • 3カ月時:Hib(2) + PCV7(2) + 3種混合(1)
      その1週間後にBCG
  • 4カ月時:Hib(3) + PCV7(3) + 3種混合(2) + IPV(2)
  • 6カ月時:3種混合(3) + IPV(3)
  • 4才を過ぎてIPV(4)
  • ※略称の説明:
  • Hib=ヒブワクチン(アクトヒブ)、PCV7=7価肺炎球菌ワクチン(プレベナー)、
  • IPV=不活化ポリオワクチン、( )内の数字は、何回目の接種かを示す。


生ワクチンで免疫をつけたヒトは、
14-16才で追加免疫を打つ。
(現在日本では、2回の生ワクチンで済まされているが、
 前述の通り、本当はこれでは不十分である。
 やはり、合計4回が理想である。)
特に昭和50-52年生まれの大人で、
子供がポリオの生ワクチンを飲む場合などは、
受けておく方が安全だと思う。

ポリオ蔓延地域に定住するなどリスクの高い大人
(不活化ワクチンで免疫をつけた大人)では、
4-8週間隔で2回、その後6-12週後に3回目を打つ。

副作用に関しては、非常に少ないですが、
そもそもその非常に少ない副作用が気になって、
不活化ワクチンを打つわけですから、
記載しておく必要があると思われます。

IMOVAX POLIOに添付されている説明書には、
副作用について以下のように記載されています。

[1]よく見られる:接種箇所の疼痛、紅斑、腫れ。一過性、軽度の発熱
[2]0.01%未満の頻度
 (1)接種局所:1日~2日以上つづく接種箇所の浮腫・リンパ節腫脹
 (2)アレルギー反応:アナフィラキシー反応
 (3)数日以内に起こる一過性の軽度の関節痛、筋肉痛
 (4)2週間以内に起こるけいれん、頭痛、一過性の麻痺
 (5)接種数時間以内もしくは数日以内に起き、急速に改善する興奮、不眠、不機嫌
 (6)大きく拡がった紅斑


米国では、不活化ポリオ・ワクチン接種率は約92%です。
生ポリオ・ワクチンが廃止されて以降の2000年~2010年の
不活化ポリオ・ワクチン接種人数は約3700万人にのぼります。
これまで、ワクチン副作用被害補償制度で
不活化ポリオ・ワクチン接種後に補償がなされたのは
1988年~2010年までの22年間で7件です。
かりに、7件が2000年~2010年の間に発生したとしても、
確率は0.19/100万人です。
この数値を日本に当てはめると、
全員が不活化ポリオ・ワクチンを接種しても、
5年に1人程度しか補償対象となる副作用被害は発生しない計算です。
一方、日本では、
生ポリオ・ワクチン接種後に予防接種健康被害の認定を受け、
医療手当や障害年金、死亡一時金を受けた方が累積で138人にのぼります
(出典:厚生労働省ホームページ)。
毎年、4人から6人以上の方が、
ワクチン関連麻痺性灰白髄炎を発病し、新たに認定されています。

 輸入ワクチンは、個人輸入のものですから、
国の保障制度は適応されません。
業者の有限の保証制度はありますが、あくまで有限のものです。

当院で不活化ポリオ・ワクチンを接種される方は、上記をご理解の上接種をお受けください。

ワクチンは要予約です。費用は輸入価格により変動します。
現在の接種価格は、4500円/回です。
TEL:0721-63-3969

ところで、具体的に、
不活化ポリオワクチンと経口生ポリオワクチンを
どのように受けると良いか?という疑問があります。
まだ確定的なものは、ありませんが、以下の2通りの受け方が良いと思います。
1)不活化ポリオ・ワクチン (IPV)単独
2)IPVを2回受けて経口生ポリオ・ワクチン(OPV)

それぞれの長所と短所です。
1)不活化ポリオ・ワクチン (IPV)単独
1988年に enhanced IPV に変わってから、長期での抗体保有率の改善と
若干の腸管免疫誘導が期待されるようになりました。
海外では DPT 等との混合ワクチンで接種されることが多くなりましたが、
どのようなスケジュールであれ、4歳でのブースター接種が望まれます。

2回接種で 90~95%、3回接種でほぼ 100% の抗体保有率となります。
ただし、20年以上経過した際の抗体保有率に関しては、
まだデータが無い状況です。

IPV alone の場合、理論上も現実的にも、
被接種者および家族への
ワクチン関連麻痺性灰白髄炎(VAPP)リスクはありません。


2)IPVを2回受けてその後に経口生ポリオ・ワクチン(OPV)2回追加
先行する2回の IPV 接種により VAPP リスクを減じ、
さらに OPV接種をすることで、
長期間の抗体保有と腸管免疫の誘導を期待します。
IPV は2回で済むので、経済的負担は IPV alone の半分となりますが、
家族への感染のリスクがあります。(詳しくは後述)
それを防ぐために、家族(両親)にIPVをするのも良いと思います。
子供が2人以上なら、折り合いますし、両親にも免疫がつきます。
もっとも、両親がアフガニスタンに住むようなことが無いのなら
日本に住んでいる限りは、
子育ての時や保育園で働く以外には、
感染するリスクはほとんど無いですが・・・。
ただし、
最初のIPV 2回の時点で抗体保有率は 100% とならないため、
理論上 VAPP リスクが残ります。
CDC(アメリカの厚労省の様なもの)は、
アメリカで OPV alone での VAPP が年8~9人に対して、
この方法では2~5人の発生を推測しています。
また、
IPV による軽度の腸管免疫誘導により、
OPV 接種時のウィルス排泄期間が短縮される期待はありますが、
ウィルスは糞便に排泄されるため、
家族等周囲への二次感染による VAPP リスクは、OPV alone と同等です。
そのため、抗体保有率の低い保護者の場合、二次感染対策が必要となります。
二次感染対策としては、
保護者も子供と一緒にIPVを受けておくのが良いと思います。



  •     
    フィンランド症候群
        
          フィンランドは社会保障が進んでいて、
    仕事をしなくても食べていけるのだそうで、
    アルコール中毒も多い。
    そこで、フィンランドの保険局が
    「いかに健康管理が大切であるか」
    ということを証明するために実験を行った。
    その内容は、
    男性会社員600人ずつの2つのグループを作って、
    一方のグループは
    医者に行ってきちんと健康診断を受けて、
    禁煙をして、アルコールもほどほどにして、
    生活や健康状態をきちんと管理した。
    もう一方のグループは、
    酒もたばこも好きなようにさせて、
    まったく健康管理を行わなかった。

    この2つのグループを10年間フォローアップして
    いかに日常の健康管理が大切かを証明しようとしたわけである。

    さて、その結果、10年後にふたを開けてみると、
    厳重に健康管理したグループの方が、
    圧倒的にたくさん死んでいた。
    この結果が世に出ると、まずいので
    フィンランドの保険局は秘密裏に処理しようとしたのだが、
    この実験を指揮した医者が発表してしまって、
    世界で注目されることになった。
    これがフィンランド症候群である。

    なぜ、きちんと管理したグループの方が、死亡が多かったのか?
    2つのことが推測される。
    1つめは、
    今までも繰り返し述べてきたが、コレステロールとの関連である。
    コレステロールは、さも悪玉のように扱われている。
    あまり知識のない医者はコレステロールが少しでも高いと
    その必要が無いにもかかわらず、
    すぐにスタチンというコレステロールの合成を抑える薬を
    開始して通院を促す。
    しかし、コレステロールは体にとって、とても大切なモノである。
    コレステロールは、
    我々の体を構成する細胞の細胞膜の主要な成分であり、
    かつ、脳神経の活動や成長に大切な要素である。
    また、すべてのホルモンはコレステロールからできている。
    コレステロールが高い方が癌になりにくいこともわかっている。
    コレステロールを薬で無理矢理に下げると、
    精神的に陰鬱になる。
    フィンランド症候群の厳格コントロール群では自殺者が多かったという。

    アメリカでは、心筋梗塞で死ぬ人が多いので、
    アメリカの心臓医の言い分が、
    圧倒的に世界中で(特に日本で顕著である)まかり通って、
    コレステロールは下げるべきだということになっているが、
    物事は一面だけ見て判断すべきではないのである。

    もう一つの可能性は、免疫系との関わりである。
    強制的に規則正しい生活を強いられると、
    精神が滅入ってしまって、
    その結果、免疫系が弱まるのではないか?
    という考えである。
    精神活動と免疫系は大きく関連しているということが
    いくつかわかってきている。

    免疫の主役はリンパ球である。

    余談であるが、
    リンパ球がない生き物もたくさん存在する。
    ナメクジ、ミミズはリンパ球を持っていない。
    では、彼らには免疫システムはないのか?
    というと、答えは「きっと無い。」である。
    すくなくとも、今の科学のレベルではこの答である。
    しかし、ミミズが傷を負ってそこが化膿したり、
    ナメクジがインフルエンザに罹って死んだ
    という話は聞いたことがない。
    (もっとも、傷が化膿したミミズがいても、
     インフルエンザで死んだナメクジがいても 
     我々はそれを知るよしもないのであるが・・・。)
    とにかく彼らは、絶滅することなく命をつないでいる。
    どうして、免疫が無くても生きていけるのかはわからない。

       一つの仮説がある。
    元々、免疫系は
    外から来たモノを攻撃するためのシステムではないのかもしれない。
    進化の順番では、リンパ球が出現してくるのは
    ヤツメウナギとかヌタウナギあたりからだそうである。
    体が大きくなり、臓器や細胞の数が増えると、
    それらを統括制御するために、複雑で様々な装置が必要になる。
    そのために、
    神経系、内分泌系、免疫系のシステムができたと考えられる。
    つまり、体の内側を制御統制するシステムなのである。
    たまたまこの免疫系が
    外から入ってきた有害なモノを排除しているだけということである。

       話は戻って、
    リンパ球にはいくつかの種類がある。
    有名なのはT細胞とB細胞である。
    おおざっぱに言えば、
    T細胞は細胞性免疫をB細胞は液性免疫を担当する。
    これらは、体全体で反応する軍隊のようなモノである。
    そのほかにNK細胞(ナチュラルキラー細胞)という
    警官のような細胞がある。
    このNK細胞は、毎日、体中を巡回して、
    おかしな細胞があると処理をする。
    警官で手に負えなくなると、軍隊が出てくる。
    この警官が、
    体の中で無数に入れ替わっている細胞の中で、
    おかしな細胞(がん細胞)を見つけては、
    一つずつ処理していると考えられている。
    体の中で入れ替わる細胞は数が多く、
    一定の割合でがん細胞などは生まれてくると考えられているが、
    このNK細胞がそれらがん細胞を、数が少ない内に処理をして、
    その結果、簡単には癌に至らないと考えられている。
    ところが、
    このNK細胞が弱ってしまうと、癌ができやすくなるのである。

    このNK細胞の特徴の一つは、
    簡単に精神・神経系の影響を受けることである。
    笑うだけで、このNK細胞の活性は上がることも知られている。
    また、NK細胞はウィルス感染細胞も殺してしまうので、
    NK細胞活性の高いヒトは
    風邪などウィルス感染にかかりにくいこともわかっている。

    つまり、ストレスが多い人は
    NK細胞活性が低下している可能性があり、
    癌の発生や感染症に罹るリスクが高い可能性があるのである。

    医者の言うことを聞いて、
    ストイックに生きることも考え物である。



       脂質の話

         脂肪の組成が変わると、細胞が変わる。
    ヒトの細胞膜は脂質で構成される。
    その細胞膜の材料は、体に存在する脂質である。
    材料の脂質の構成比率にしたがって、
    細胞膜の構成比率も変化すると考えられている。
    現代人の細胞膜は、アラキドン酸が豊富でEPAが少ない。
    EPAを多く摂取するとこのアラキドン酸豊富な細胞膜が
    EPA豊富な細胞膜になる。

    これで、細胞が変わる。

          そこで、エゴマ油をはじめとした
    鰯などの背の青い魚の脂の成分であるEPA
    (エイコサペンタエン酸)の最近の知見の話である。


    脂肪酸は以下のように分類される。

       飽和脂肪酸
          I (肉やミルクなどの動物性脂肪)
          I
    脂肪酸-
          I    1価不飽和脂肪酸
          I         I  (オレイン酸:オリーブオイル)    
       不飽和脂肪酸-ーー 
                    I            n-6系
                    I    (植物性油・肉に含まれてアラキドン酸に代謝される)
                    I            I      (リノール酸系)
                    I             I         
              多価不飽和脂肪酸-ーーー     
                                I
                              n-3系
                              (α-リノレン酸系)
                              (シソ・エゴマ油・魚)

    ちなみに
    2重結合が1つあるモノを1価不飽和脂肪酸といって、
    複数あるモノを多価不飽和脂肪酸という。
    n-6系とかn-3系というのは、
    脂肪酸のω末端から
    最初の2重結合が何番目にあるかということを表している。

    魚には、はじめからn-3系が多く含まれているわけではなく、
    植物プランクトンに含まれるn-3系を摂取することで体内に蓄えられたモノである。
    アザラシの肉は、魚を主に食べるのでn-3系が豊富に含まれることになる。


        日本人は昔から魚を食べる民族であった。
    今でもそれに大きな変化があるわけではない。
    しかし、現代は
    EPA以外の植物性・動物性油の摂取が非常に多くなっている。
    その結果、摂取している脂質の中で
    n-3系の油の比率が低下しているのである。

    では、そうなると何が問題なのか?
    n-3系の相対的な比率が下がりだしてから、それに応じて
    脳梗塞や心筋梗塞などの心血管事故が増えているのである。

    その1例として有名なのは
    デンマーク本国の白人とイヌイットの比較である。
    どちらも、
    食事は、ほぼ同じカロリー摂取で、約40%が脂肪の食事である。
    しかし、白人はその脂肪を牛や豚と言った動物性脂肪で摂取しており、
    イヌイットは魚・アザラシから摂っている。
    その結果、
    白人の心血管病変による死亡率は34.7%であるのに、
    イヌイットのそれは5.3%と非常に低い。


        何故、EPAがそんなに体に良いのか?

    最初にも書いたが、ヒトの細胞膜は脂質で構成される。
    現代人の細胞膜は、アラキドン酸が豊富である。
    EPAを多く摂取するとこのアラキドン酸が豊富な細胞膜が
    EPAが豊富な細胞膜になる。

    アラキドン酸もEPAも
    サイクロオキシゲナーゼという酵素で代謝されて
    血小板では、
    アラキドン酸はスロンボキサンA2という血小板凝集作用の強い物質になる。
    EPAはスロンボキサンA3という血小板凝集作用のほとんどない物質になる。
    アラキドン酸が豊富な血小板は凝集が起こりやすく、
    EPAが豊富な血小板では凝集が起こりにくい。
    つまり血栓が起こりにくくなる。

    また、免疫細胞では
    アラキドン酸は代謝されて
    ロイコトルエンB4という炎症惹起作用の強い物質になる。
    EPAはロイコトルエンB5という炎症惹起作用の弱い物質になる。
    炎症が起こると血栓が起こる引き金になるので
    EPAが豊富な免疫細胞では炎症が起こりにくくなり
    血栓が起きにくくなる。

    それ以外にも
    EPAが豊富だと
    赤血球変形能の改善、血管の弾力の保持、血管内皮機能の改善、
    アディポネクチンの増加、抗不整脈作用まであることがわかってきた。

    以前から言っていたことであるが、
    LDL-コレステロールが高値であることが、
    それ単独では、心筋梗塞や脳梗塞のリスクにはならない。
    このLDL-コレステロールが酸化したときに血栓が起こりやすくなる。
    このことを説明できるいろんな研究結果が
    やっと出てきはじめたわけである。
    問題の本質は、
    LDL-コレステロールが高値であるということとは
    別のところにあるのである。

    薬で片っ端からLDL-コレステロールを下げるのは、
    間違っている。
    LDL-コレステロールが高値で元気はつらつのお年寄りは
    僕の周りにいっぱいおられる。
    肉食は少なめにして、
    タンパク質は、豆や魚から補給して、
    野菜を食べるという
    昔からの日本食の文化を大切にすべきなのだと思う。

    考えてみれば、
    プランクトンや植物に始まって、
    食物連鎖が広がっていくのである、
    その源に、命を守る物質が豊富に含まれていて
    その命をいただいて我々は生きているのだと思い知らされる。





        養生訓

        最近、糖尿病の初期の人に
    大いに時間をかけて説明することがある。
    しかしこれは、
    糖尿病の人に限らずすべての人に共通の大切な話でもある。
    つまり、
    基本的に、糖尿病の人に対して行う
    食餌療法や運動療法は、
    すべての健康な人も実践すべき大変に有効な養生訓なのである。

       最近、時々耳にしたり、テレビでも観ることがある
    低GIと言う言葉
    低グリセミック・インデックス(指数)の略である。

    グリセミックインデックス(GI)とは。
    同じ100Calを食べても、
    短時間に高い血糖値になる食品もあれば、
    血糖値のピークまで時間がかかり、
    かつ血糖値のピークも低い食品もある。
    これを指数化したモノがGIである。

    具体的には、
    高い食品は、
    砂糖:99,白いパン(食パン):95,白米:88
    低い食品は
    蜂蜜:57,玄米:55
    同じ甘いものでも、砂糖と蜂蜜ではえらい差がある。
    同じ米でも、白米と玄米は大きな違いである。
    基本的な考え方は、
    全粒穀物(玄米・麦類・トウモロコシ・きび・そば・豆類)
    など加工度が低く人工的に精製されていない食材は
    低GI食品と思ってもらっていい。
    できるだけこういう食品を選んで食べる様にするのがいい。
    玄米を食べるのが、つらければ、
    五穀を混ぜたり、7分あるいは5分つきにする
    などの工夫も有用である。



        脂はカロリーが高いと思われているが
    種類によって差がある。
    オリーブオイルは意外に低カロリーである。
    不健康エコナは、カロリーが高いか低いか知らないが、
    将来癌が出る可能性が高くなるし、
    発火点が低いのでやけどや火事の心配がある。
    マーガリンは健康に良いと思っている方が多いだろうが、
    いくら植物脂を材料にしたところで、
    固形化したときに「トランス脂肪酸」ができて、
    これが動脈硬化を起こすのだから、だまされてはいけない。
    同じ悪いのなら、
    香りも味もずっと良いバターを使えばいいと思うが、
    使わないのがいいという結論になる。
    (味が良くなるから、僕はバターをよく使うけど・・・。)
    まぁ、とにかく、人間が作り出した脂は、
    今のところ「ろくなモノ」ではない。
    昔から使われているオリーブオイルが一番いいようであるが、
    エゴマオイルやグレープシードオイルなども良いと思う。
    もちろん、
    魚の脂(n-3系不飽和脂肪酸)の摂取は、
    心血管イベントの抑制効果がある。


        以前から繰り返し述べているが、
    LDL-コレステロールは決して悪玉コレステロールではない。
    TVで
    「LDL-コレステロールが高いと大変なことになりますよ!」
    「すぐに、お医者さんに行かないと!」
    と心筋梗塞になった某アナウンサーが宣伝しているが、
    「そりゃ、あんたのストレスが過大で、
    血圧も高くて、たばこも吸っていたんじゃないですか?」
    と聞いてみたいところである。

    とにかく、
    LDL-コレステロールは細胞壁の構成成分であり、
    いろんなホルモンの材料であり、
    命の基本に関わる大切なコレステロールである。
    それを「悪玉」などというのは失礼千万ってものだ。

    最近、
    LDL-コレステロールが高いだけでは
    動脈硬化も起こらないし、
    心臓や脳の血管障害も出ないといわれてきた。
    どうしてか。
    仮説ではあるが分かってきた。
    つまり、
    LDL-コレステロールが酸化したときには動脈硬化が起こるが、
    LDL-コレステロールが高いだけで、酸化が起こらなければ
    動脈硬化は起こらないという説である。

    LDL-コレステロールを下げるのは、
    この酸化する材料を減らしておくと言う考え方と
    治療に使うスタチンという薬物が
    コレステロールを下げる以外にも薬効がありそうだからである。


    では、この酸化ストレスはなにか?
    高血圧症・たばこ・糖尿病・その他の疾患・ストレス
    そして、炎症である。

    体の中では時々炎症が起こる。
    風邪引きだったり、肺炎だったり、虫歯だったり、歯肉炎だったり。
    それ以外にも、
    目に見えない、本人も感じない微少な炎症も起こっている。
    この炎症反応を血液検査で測定するのは困難である。

    例えば、CRPという蛋白は体の炎症に反応して産生される。
    以前は、
    肺炎などはっきりとした感染症の時に上昇しているのが確認されていたが、
    最近は、高感度CRPが測定できるようになって、
    体に炎症反応が静かに継続的にある人は、
    酸化ストレスも多いということがわかってきた。
    今のところは、血液で測定できる酸化ストレスはこんなモノである。

    野菜や果物を摂取すると、
    このCRPが低下するという研究報告がある。
    野菜、果物中のビタミン類、フラボノイド、食物繊維などが
    炎症を抑制する可能性が考えられている。



         食生活だけではない。
    運動も大切な要素である。
    運動をすると、酸素需要量が増し、多くの酸素を取り入れる。
    ここまでは、酸化ストレスが増えるはずなのであるが、
    そうなることで、体からは抗酸化ストレスの反応が起こって
    差し引きすると、
    抗酸化ストレス反応は継続的になって、
    結局はプラスになることが経験的に分かっている。

    また、運動することで、新陳代謝が活発になり、
    老廃物の排出もスムースになる。
    基礎代謝が上がり、太りにくい体質になる。
    心肺機能も上がる。
    骨に体重をかけることで、骨粗鬆症の進行も抑制できる。
    脳にも適度な刺激があり、認知症の予防にもなる。
    大腸癌も運動することでリスクが下がる。




        まとめると、
    できるだけ、低GI食品を選んで食べて、
    野菜や果物を豊富にとって、
    タンパク質は、肉は食べないで、魚や豆類で供給する。
    脂はオリーブオイルや魚油でまかなう。
    そして運動をする。

    以前にも書いたが、
    アルコールは40g/日以上は毒である。

    慢性の歯肉炎や虫歯は治した方が良い。




    定期ワクチン接種以外で、
    受けておかれた方が良いと思うワクチン


          現時点では、以下のように考えています。
    子宮頚癌予防の可能性があるパピローマウィルスワクチンについては、
    まだ実用には入っていなくて、今後の進展を待っている状態です。

    65才以上の方
      
    水痘ワクチン
        帯状疱疹の予防目的です。神経痛にも効果があることがあります。

      
    肺炎球菌ワクチン
        肺炎球菌による肺炎の予防目的です。
        65才以上の死亡原因の第4位は肺炎です。
        その市中肺炎の30%は肺炎球菌が起炎菌です。
        肺炎球菌は、従来の抗生剤に対する耐性菌が多く
        治療に難渋することがあります。
        このワクチンは、肺炎球菌以外の肺炎の予防効果はありません。

    若者
      
    B型肝炎ウィルスワクチン
      B型肝炎の予防目的です。
        最近では、セックスを介した感染例も増加しており、
        新たに海外から入ってきたウィルスでは、
        治癒しないで慢性化することも増えてきました。
      
    子宮頸癌予防ワクチン
        子宮頚癌は、セックスを介してヒトパピローマウィルス(HPV)が感染して、
        その後に発生します。
        国内では毎年約7000人が子宮頸がんになり、
        約2500人が死亡しています。
        特に20~30歳代の若い女性で増えつつあります。
        HPVの感染を防御することで、
        子宮頸がんの原因の7割を占める2種類のHPVの感染が
        予防できると期待されています。
        10才以上の女性が接種対象になります。

    集団生活に入る前の(乳)幼児
      
    水痘ワクチン
        水痘の予防目的ですが、水痘後(成人以降)の
        帯状疱疹の予防目的でもあります。

      
    おたふくワクチン
        おたふくかぜの予防目的ですが、おたふくかぜの後に
        発症する難聴など、合併症の予防の目的の意味あいが強いです。

    5才未満の乳幼児
      
    ヒブ(Hib))ワクチン
        インフルエンザ菌b型という細菌感染(ウィルスのインフルエンザとは別です)
        の予防目的です。
        日本では年に約600人の乳幼児が感染し(半数は0才児です)
        20-30人が死亡し、100人以上に後遺症が残ります。
        諸外国では定期接種になっています。
      
    肺炎球菌ワクチン
        やっと入荷できるようになりました。
      ポリオ不活化ワクチン
        ポリオ生ワクチンは接種を受けた人(赤ちゃん)と
  •       その周囲の人にポリオを発症させる危険があります。
            
  •       


  • 肺炎球菌ワクチンについて
          肺炎球菌は、一般の人がかかる肺炎の中で
    マイコプラズマやウィルスを除けば、一番多い原因菌である。
    肺炎の起炎菌の30%は肺炎球菌と言われている。
    昔は、肺炎双球菌と呼ばれていた。
    肺炎患者の喀痰の塗抹検査で
    球状の細菌が、2つくっついているのが特徴的でそう呼ばれていた。

          最近、この肺炎球菌は
    ペニシリンやセフェム系抗生物質(一般的市使用される抗生物質)
    に耐性を持つことが多くなっている。
    そのような理由から、肺炎など重症感染症では、
    耐性を考慮して
    最初からカルバペネムなど強力な抗生剤が第一選択になっている。
    その後、喀痰培養で感受性を確認して、
    選択的に効果がある抗生剤に変更されることになる。

          現在の日本の現状は
    65歳以上の高齢者で、
    肺炎による死亡率は、がん、心臓病、脳卒中に次いで高い。
    また、前述のように耐性菌が増えているため、
    治療が困難になっている。

          また、
    乳幼児では、
    耳管(鼻と耳をつなぐ管)が短いので、
    鼻咽腔に常在する肺炎球菌が
    (ヒトは病原性の細菌とも共存して生きているのである。)
    中耳に進入して中耳炎を起こす。
    また、乳幼児では
    肺炎球菌特異抗体の産生が不十分であるために
    重篤な全身性感染症を引き起こしやすい。
    例えば、肺炎球菌による髄膜炎では、
    死亡率は数%で、
    神経学的後遺症も1~2割の患者で発症するとされている。


          これらのことは、
    ワクチンを接種することでかなり予防出来る。

          肺炎球菌には80種類以上の型がある。
    現行の肺炎球菌ワクチンは、
    感染する機会の多い23種類の型に対して免疫をつける。
    この23種類の型で、肺炎球菌による感染症の8割ぐらいを占めている。
    1回の接種で23の型ほとんどに対し、有効レベル以上の免疫ができ、
    この免疫は5-8年続くと考えられている。
    日本では、一生に一回しか受けられないが、
    アメリカでは65才の時点で、前回接種から5年以上経過している場合は
    再接種が推奨されている。
    日本でもいずれそうなるのだろう。
    何しろ、
    最近承認されたワクチンなので、まだ5年経っていない。

          一番の副作用は、注射局所の反応である。
    何しろ、痛い。
    注射局所が腫れて痛むことが75.4%で報告されている。
    この症状は、通常3日以内に消失すると言われている。
    国内では、
    アナフィラキシーなどの重篤な副反応は報告はなく、
    今のところ、安全なワクチンといえる。
    製品名は「ニューモバックス」
    ただし、2才未満の乳幼児には接種出来ない。

          2才未満の乳幼児には
    この12月から、プリブナーという7価のワクチンが承認された。
    Prevnar(プリブナー)は、7価肺炎球菌ワクチンで、
    肺炎球菌の7種の血清型に由来する抗原を利用した
    多糖体結合型ワクチンである。
    このワクチンは
    髄膜炎、敗血症など肺炎球菌による重篤な感染症の予防だけでなく、
    咽頭での本菌の定着を阻害する効果が期待されている。
    つまり、
    肺炎球菌による中耳炎の予防効果も期待出来る。

          しかし、その一方で、
    このワクチンがカバーする七つの血清型以外の肺炎球菌
    および肺炎球菌以外のインフルエンザ菌など
    他の菌による感染症の増加が危倶されている。
    今のところ、この問題はやってみないと分からない状態である。
    欧米では、すでに実用に入っているので、
    数年後には、この問題に関する報告も出てくると思われる。


        もっとも、認可はされたが、
    まったくの品薄状態で、
    当分は手に入るめどは立っていないけど・・・。

        以上の様なわけで、
    高齢者が、ニューモバックスを打つことは
    決して損なことではないと考える。
    2才以下の乳幼児がプリブナーを打つべきかどうかは
    今のところデーター不足で判断出来ない。




    水痘ワクチンについて
               多くの人は子供の頃にみずぼうそう(水痘)に感染する。
    体中に水泡が出来て、一週間くらいで、
    それら水疱が黒っぽいかさぶたになって治癒する。
    薬を飲むと治るのが早くなる。

         治った後も、
    水痘のウィルス(ヘルペス ゾスター、またはバリセラ ゾスター)は
    体の中の神経節で生き延びる。
    他のヘルペスウィルスも、人に感染した後、体内にとどまる。
    そして、その人の免疫能が落ちたり、体力が低下したときに
    活性化してまた症状を発現させる。
    これは、
    宿主(感染した相手の人間)の免疫が低下したため
    封印が解けて暴れ出す。
    というよりも、
    どうやらウィルスにも
    生き残りのための戦略があって、
    宿主が死んじゃうと自分たちも死んじゃうので、
    宿主がだめになる前に、
    宿主の異常を感知して、
    宿主が弱っていると判断すると
    (判断する脳があるわけではないが、何らかのシグナルで)
    宿主から飛び出すために活性化するという説が有力である。
    逆に言えば、
    体の中のヘルペス族が暴れ出したときは、
    彼らが、
    「宿主の健康状態が良くないと判断した」ということになる。
    これはこれで、
    一つの生物学的健康バロメーターと言えると思う。

        どうして、
    僕の話はかくも脱線しまくるのだろう?

        ワクチンの話だった。
    かくして、人の場合は
    年をとって、体が弱ったときに
    ヘルペスが顔を出してくるわけである。
    単純疱疹は、よく唇のまわりにでる。
    これは、多くの場合、日焼けが引き金になるので、
    日差しが強いところに外出するときは、
    日焼け止めを唇も含めて塗るのが良い。

        問題なのは、帯状疱疹である。
    発症当初に、
    「何かにかぶれた。」とか
    「虫に刺された。」とか勘違いして、治療開始が遅れると、
    痛みが取れなくなる。
    水痘ウィルスは神経に巣くっていて、
    発疹は神経に沿って出るのだが、
    皮疹が改善しても、神経痛がずっと続く。
    特に高齢者では、
    痛みが取れにくい(とれないこともある)方が多い。

         そこで、登場するのが水痘ワクチンである。
    元々免疫があるのだが、
    免疫は刺激を受けないとだんだんと弱くなってくる。
    一般の人は、水痘の免疫刺激を受ける機会が少ないので
    水痘の免疫が落ちている可能性がある。

         帯状疱疹が一番発症しない職種は
    小児科医や看護師など、
    普段に水痘患者と接することが多い職種の人である。
    時々患者に接して、免疫刺激を受けるからである。

         というわけで、70才を過ぎたら、
    水痘のワクチンを受けておくことは、
    損なことではないと思う。

        次に、
    まだ水痘に感染していない子供の場合について。
    水痘ワクチンは、
    水痘ウィルスを生きたまま弱毒化したものである。
    つまり、
    人工的に水痘に感染させて、
    水痘は発病させないで、免疫だけつけるというモノである。
    このワクチンを打った場合は、おそらく、
    この弱毒化されたウィルスが体内に残ると考えられる。
    ということは、帯状疱疹の危険も低いと考えられる。
    だから、自然感染を待つよりも、
    積極的にワクチンで免疫をつけた方が良いと思う。

         このワクチンの副作用はほとんど無い。
    水痘の発症があり得るとされているが、
    免疫異常がない限り、発症することはまず無いと思われる。
    効果(ワクチンを打って発病しない確率)に関しては、
    ワクチンの添付書には95%と書いてあるが、
    個人的な印象は85%くらいの印象がある。


    B型肝炎ワクチンについて
        
         B型肝炎は、血液や体液を介して感染する。
    (といっても、汗や唾液では感染しない)
    ということは、
    日常生活で感染する機会はほとんど無い。
    しかし、反面、
    感染力は強いし、少々の消毒では死なない。

    ウィルスを持った人が使ったカミソリを共有したり、
    指にちょっとした逆むけがある状態で、
    手袋をしないで汚染した血液をさわれば、感染の危険がある。
    また、セックスで感染する症例にたまに出会う。
    相手がウィルスを持っていた場合、
    防御しないと感染リスクは高いと思われる。。

         ところで、
    昔から日本にはB型肝炎は存在していた。
    B型肝炎ウイルスには、A~Hまでの遺伝子があり、
    昔から日本にあったのは
    慢性化しないCタイプのウイルスが大半であった。
    (人種の移動に伴っていろんな感染症も移動して、
     その地域独特のモノがあることは興味深い。
     例えば、
     長崎に多いT細胞型白血病は、
     出島に来航した人々から感染が広がったと考えられている。)

    Cタイプの遺伝子を持つB型肝炎に成人が感染した場合は、
    ほとんどの症例で、急性肝炎の症状が出現し、
    運悪く、劇症肝炎にならなければ、
    そのまま抗体だけが残ってウィルスは消滅してしまう。
    つまり治ってしまうのである。

        ところが、最近、
    性行為で感染し、
    慢性化し易い欧米型のAタイプのウイルスが増加して、
    急性肝炎の3割を占めるようになった。

        慢性化してしまうと、肝癌や肝硬変の危険があるし、
    肝炎を沈静化させるための薬も、
    今の医療では、ずっと飲み続けないといけなくなってしまう。
    人生の路線修正が必要になってしまうわけである。

        これは都合が悪い。

        というわけで、
    B型肝炎のワクチンは
    この先医療関係に進む人だけでなく、
    若い人一般に使っておいた方が良い
    時代になったように思う。










         
    『食事とガン』に関する報告書

       世界ガン研究基金(WCRF)という組織が昨年11月に、
    ワシントンとロンドンで、
    食事、栄養、運動とガンの予防に関する国際会議を開催した。
    そして、
    その会議の結論を
    『食事とガン』に関する第2回目の報告書としてまとめた。


        この報告書の中で、

    「肥満とお酒の飲み過ぎが、ガンを誘発しやすい」

    と明記されている。

    特に肥満は
    食道、大腸、膵すい臓、乳房、子宮内膜、腎臓等、
    多くの臓器のガンを誘発する。


      肥満というと、メタボリックシンドロームが話題になっているが、
    「日本でのメタボなんてくそ食らえ」である。
    日本では、
    腹囲が男性85cm、女性90cm 以上と定義されている。
    しかし男性の腹囲の方が女性よりも低い値なのは、
    世界的に見て日本だけである。
    そもそも、
    背の高い人でがっしりしていれば、
    腹囲は大きくなって当たり前である。
    逆に背の低い人で太っていても
    その基準に満たない人もいるだろう。
    そんなものを測定してどうなるというのか!
    国を挙げて騒いでいる役人も医者も
    「あほ!」としか言いようがない。
    いずれすたれるにきまっている。

    上述の報告書でも
    腹囲ではなく、body mass index(BMI)
    (体重kg/(身長m)2)を肥満の判定に用いている。
    世界的にはこの値が
    25以上の場合に肥満傾向、
    30以上を肥満としている。
    WCRF の報告書では21~23を至適BMI としている。


      さらに、
    肥満に次いで重要なのはアルコール

    である。

    過量のアルコールの摂取が
    口腔くう、咽頭とう、喉頭とう、食道、大腸、乳房
    のガンを誘発する。

    そしてさらに、肝硬変から肝ガンを引き起こす。


       しかし、
    適量のアルコールが健康上の利点をもつことも知られている。
    WCRFの報告書では
    男性は1日2単位、
    女性は1日1単位のアルコールを限度とすべきとしている。
    1単位はアルコール20g前後である。


    ビールなら750ml、日本酒なら300ml、が上限

    であるが、
    これはあくまで、酒に強い欧米人の値である。
    日本人は、この半分くらいで抑えて欲しい。

       さらに、この報告書では、
    レッドミートに属する牛、豚、羊等の肉、
    ハム、ソーセージ等の加工肉が
    大腸ガンを誘発することが明言された。
    レッドミートや加工肉の摂取によって
    大腸ガンの発症が30%増加すると報告されている。
    この結果に基づき、

    1週間に摂取するレッドミート、加工肉の量を300g以内

    とし、
    肉類に代わるタンパク源として大豆等の植物性食品を摂るべきである」
    と勧告されている。

    ついでに、
    食事とは別であるが、
    運動をしないと大腸癌が増えることも証明されている。





        DASHダイエット

    1980年代に米国の看護師さんの間で行われたダイエットで、
    (当然のことながら、男性のデーターではないが・・・。)
    最近この結果が報告されて、
    このダイエットを実践した場合としない場合には、
    有意に差が出ていた。

    ■ 日本の減塩
    塩分の摂取を少なくすれば、必ず血圧は下がります。
    最近、食塩感受性のために減塩は不要とする説や、
    塩分を増やしても血圧は上昇しなかった
    という実験までがテレビで紹介されたりしますが、
    けっしてそんなことはありません。
    十分に食塩を減らせば(4g/日以下)血圧は必ず下がります。
    下がりやすい人と下がりにくい人がいるだけです。

    塩分を減らせば血圧が下がるのに、
    それをしないで
    わけのわからん「血液さらさら効果」などといったお題目に惑わされて
    玉ねぎ、にんにく、納豆、昆布、黒豆などを食べて
    安易なことをして無理矢理に安心を得ているだけです。

    ■減塩のコツは簡単です。
    スーパーで買い物をするときに、
    塩分が入った食品を一切買わなければ良いのです。
    ハム、ソーセージ、練り物(ちくわ・かまぼこ・さつまあげなど)、
    缶詰、漬けもの、レトルト食品、調理済み食品、スナック菓子など
    あらゆる加工食品に多量の食塩が使われています。
    これらを止めると、確実に塩分の摂取量が下がります。

    ■なぜ果物が良いか
    里芋、納豆、たけのこ、かぼちゃ、ほうれん草、
    これらはカリウムの豊富な食品で、
    果物の2~3倍も多く含まれています。
    日本の食材はカリウムが多いので
    わざわざ果物を食べなくても良いのではないか
    と思われるかもしれませんが、それでも果物の方が良いのです。
    それは、
    野菜の調理には塩分が必要ですが、果物は必要でないからです。
    果物はそれ自体で味が完結していて満足感があり、
    減塩が苦になりません。
    DASHダイエットのように
    デザートや間食にフルーツを食べるのが減塩のコツなのです。
    目標が4gなら簡単に実現できます。

    ■減塩味噌や減塩醤油に走らないで!
    里芋、そら豆、枝豆、さつま芋、トマトなどは
    味付けしなくても美味しく食べられ、
    カリウムは果物よりも豊富です。
    安くてカロリーが低いのでダイエットにも好都合です。
    他にも味付けなしで食べられる食品があるかもしれません。
    減塩味噌、減塩しょうゆで僅かな節約をするよりも、
    調味料を使わないで食べられる食品を探した方が効果的です。
    減塩を薄味にすることや、
    濃い味と薄味を組み合わせることと捉えると苦しくなります。
    そうではなく、
    調味料を使わないで食べられる料理のレパートリーを広げること
    と捉えると楽になります。
    塩分摂取量をかぎりなくゼロに近づけると、
    味覚が驚くほど鋭くなり、
    薄い味付けの中に無限の広がりを感じて感動することになります。
    濃い味が好みでなくなり、
    それまで好物だった和菓子でさえ塩辛く感じられるようになります。
    海の天然塩にはカリウムが含まれているので良いとか、
    具たくさんの味噌汁は
    野菜のカリウムが中和してくれるので高血圧の人に良い
    などの説明を聞くことがありますが、
    世の中そんなに甘くありません。(からいはなしですが・・・)
    いったん体に入ったモノが、
    何かを摂取することでチャラになるなんて、
    今のところは無いと思ってください。
    血圧が下がるまでは、天然塩も具だくさんの味噌汁も止めてください。
    その上で、さらに果物やカリウムの多い野菜を食べます。
    味噌や漬物など発酵食品の代わりにヨーグルトを食べればいいです。
    塩分を使わないで食べられる美味しい食品を自分で見つけ、
    レパートリーを増やしていくと血圧が確実に下がります。
    自分の努力で毎日少しずつ血圧が下がるのを見るのは嬉しいものです。

    ■カリウム比
    カリウムは筋肉や内臓の細胞内に存在し、
    ナトリウムは血液やリンパ液中に存在します。
    カリウムとナトリウムの割合は常に一定になるように調節されています。
    もしも、
    血液中のナトリウム濃度が高くなると、
    ちょうど野菜に塩をかけたときのように
    筋肉や内臓壁の細胞から水分が沁みだして血管内に入ってくるため、
    血管内の圧力が高まります。
    血圧を下げるにはナトリウム摂取を少なくするだけでなく、
    カリウムの摂取を多くすることが必要です。

    注:食塩の換算
    アメリカやヨーロッパからの輸入食品には
    ナトリウムの量が必ず記載されています。
    ナトリウムを食塩に換算するには次式を用います。
    食塩 =  ナトリウム(mg)x  2.54 / 1000 (g)

    例:ナトリウム600mgなら塩に換算すると 600x2.54/1000=1.52g です。
    ナトリウム = 食塩(g) / 2.54  x 1000 (mg)

    ■減塩のコツ
    ・加工食品、調理済み食品をなるべく食べない。
    ・ドレッシングはノンオイルを使う。
    ・盛り付けを少なくする。
    ・低脂肪と書かれていてもラベルで脂肪の量を確認する。
     低脂肪製品にも脂肪が多いものがあるので要注意。
    ・味付けヨーグルト、アイスクリーム、ソフトドリンク、フルーツドリンクには
     砂糖が入っているので止める。
    ・ヨーグルトに果物をきざんで入れる。
    ・おやつはフルーツ、塩を使っていない野菜スティック。
    ・野菜は新鮮なもの、塩が使用されていないものを買う。
    ・肉、魚の缶詰を止める。生のものを買う。
    ・ハム、ベーコン、ピクルス、キムチは買わない。
    ・減塩しょうゆや減塩味噌を買わない。
    ・ハーブ、スパイス、レモンを使って塩を半分にする。
    ・パスタ、オートミールは塩なしで茹でる。焼きめし、パエリアは塩を使うのでやめる。
    ・コンビニでは塩分の少ない食品を選ぶ。
    ・レトルト食品、冷凍ピザ、缶詰スープ、サラダドレッシングを買わない。
    ・ツナの缶は水で洗って食べる。
    ・水を飲む。

    ■血圧を下げすぎない
    血圧を下げすぎると、血行が悪くなるためカラダが血圧を上げようとします。
    そうすると今度は平常時の血圧が上がるので、
    血圧は極端に下げないようにしてください。
    降圧剤などを飲んでいて、
    立ちくらみなどがあるときは
    そのときの血圧を測定して主治医に伝えた方がいいです。
    アルコールを飲むと血圧が極端に下がるので、
    晩酌をする人はしばらく止めましょう。


         
    葉酸の話

    葉酸は、はビタミンM、ビタミンB9とも呼ばれ、
    水溶性ビタミンに分類される生理活性物質である。
    タンパク質やアミノ酸の代謝や赤血球の産生に関与している。
    成人の一日必要量は0.2mg。
    ほうれん草なら200g(約4株)、
    インゲン豆なら150g、
    サツマイモなら650g(約3個)食べないといけない。
    (べつに、いけなくもないけど・・・。)

    なぜ、今日葉酸を取り上げたかというと、

    「妊娠を計画している女性、
     または妊娠の可能性がある女性は
     神経管閉鎖障害のリスク低減のために
     葉酸0.4mg/日の摂取(一般成人の倍)が望まれる。」

    という記載が、
    厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2005年版」
    にあるからである。

       しかし、0.4mgの葉酸を摂ろうと思ったら、
    ほうれん草で8株、インゲン豆なら300g、サツマイモなら6個
    これらを混ぜて食べても、
    とってもやないけど、食えまへんで!

       ほな、何でそんなことを今更取り上げて言うのか?
    というと・・・。

    神経管閉鎖障害は
    胎児の神経管の閉鎖不全によって起こる一連の疾患である。
    その中には無脳症、脳瘤、二分脊柱等があり、
    いずれも重篤な神経障害で、
    もし発症してしまったら
    親も子供も一生背負わないといけない重い障害である。
    そして、
    この神経管閉鎖不全発症のリスクを高める要因
    として妊娠初期の葉酸摂取の不足が、
    以前から指摘されている。
    そして、
    この疾患の子どもを出産した母親が
    次の出産に際し、
    1日4mgという大量の葉酸を
    妊娠前から妊娠12週まで服用すると、
    障害の再発のリスクが72%も減少する。

    しかし、
    これだけのことが判っているにもかかわらず、
    現実は、
    ある調査によると
    我が国では、90%以上の妊婦は
    葉酸の摂取が不十分なのである。
    (そりゃぁ、そうや!、調査せんでも、こんなに食えへん。
     10%足りてる人がいるのが不思議なくらいである。)

    さらに
    胎児の神経管の閉鎖は妊娠6週末で完成する。
    ということは、
    妊娠に気付いてから、葉酸を服用しても、遅すぎる。
    妊娠1カ月前からの服用が必要である。

    我が国の神経管閉鎖障害は、欧米よりは低いものの
    一定の頻度で発症している。

    というようなわけで、
    妊娠可能な女性は
    サプリメントの形ででも
    葉酸を0.4mg/日常用したほうがいいのである





        脳梗塞の前触れ


    1.身体の片側がしびれる。
      あるいは、片方の手足に力が入ら  ない。

    2.足がもつれて歩けない。

    3.ろれつが回らない。

    4.人の言うことが一時的に理解でき  ない。

    5.ものが二重に見える。

    6.一方の目が見えなくなる。
      あるいは、視界の半分が見えない。

    7.食べ物が一時的に飲み込めない。


    上記のいずれかの症状が一つでも出たときには、
    たとえ回復していても、放置しないで、

    必ず相談してください。





         はしか(麻疹)と風疹について

      「はしか」は、麻疹ウィルスが感染することによっておこる。
    正式な分類ではないが、麻疹ウィルスには2種類ある。
    ワクチン株と野生株である。

    ワクチン株は、
    人工的にウィルスの病原性や感染性を弱めたウィルスである。
    ワクチン株は、
    ワクチンを打たないと、感染しないと考えられている。
    (ワクチン株を打った人から他の人には感染しない。)
    ワクチンを打つと、
    ほとんどの人は発病することなく免疫だけ獲得する。
    軽い「はしか症状」になる人がいるが、問題になる程度ではない。

    それに対して、
    野生株は、一般に感染する普通の麻疹ウィルスである。
    免疫のない人が野生株に感染すると、
    症状は重症になり、一部には肺炎や、
    頻度は少ないが脳炎までも起こってしまう。
    さらに脳炎では、後遺症が残ってしまうことさえ有る。
    しかし、
    少しでも免疫が有れば、
    重症化することはないし、発病しないことが多い。

     次に「はしかワクチン」についてである。
    前述のように、「はしかワクチン」は病原性が弱いので、
    免疫原性も弱い。
    「はしかワクチン」を打った人すべてに、
    同じような免疫が出来るわけではない。
    しっかりとした免疫を獲得する人もいれば、
    わずかな免疫しか獲得出来ない人もある。
    場合によっては免疫が出来ないこともあり得る。
    (特殊な場合だが、例えば、輸送中にワクチンの温度が上がってしまって
     失活してしまうことも、昔はあったと思う。)
    さて、ここから、
    「免疫のブースター」の話が必要になってくる。
    ワクチンを打って、わずかでも免疫が出来れば、
    その後の社会生活のどこかで「はしか」に感染することがあれば、
    発病すること無しに、はしかの免疫はブースター(増強)される。
    このことで、
    はしかに対する免疫は確固たるものになるのである。

    ここで、今起こっている事である。
    近年、
    一般社会で「はしか」になる人が少なくなってしまった。
    そのために、自然にブースターがかからなくなった。
    「はしか」の免疫が弱くついたまま、
    ブースターがかからないと、免疫は弱くなってしまう。
    免疫には、細胞性免疫と、液性免疫がある。
    細胞性免疫は、リンパ球の記憶である。
    液性免疫とは、
    T細胞というリンパ球の指示の元に
    B細胞というリンパ球から産生される免疫グロブリンの事である。
    感染の当初は、IgMという抗体が産生されるが、
    やがて、IgMはIgGという抗体にクラススイッチがおこなわれ、
    その後は、その感染に対する対応効率が良くなる。
    免疫刺激が無くなると、(感染が終わると)
    リンパ球はその対照に対する免疫グロブリンの産生をやめる。
    免疫グロブリン(IgG)の寿命は、3~4週間である。
    つまり、液性免疫は、何年も持たない。
    しかし、
    細胞性免疫は、その後も10年以上は維持されていると思われる。

      具体的に言えば、予防接種後、
    はしかに対する免疫グロブリンは約1ヶ月半で半分以下になってしまうが、
    リンパ球の記憶は、ブースターがかからなくても、
    その後も10年近くは残ると考えられる。
    (10年目にはかなり低くなるので、中には10歳前後で
     はしかに感染する子供もでるが・・・。)
    リンパ球の記憶があると、
    はしかのウィルスが体内に入っても、
    ウィルスが増殖するよりも早く、
    リンパ球による攻撃と、速やかな抗体産生が起こるので
    発病に至らないというわけである。

    つまり、今回の出来事は、
    はしかのワクチンを打った後に、
    ブースターがかからないままに、
    10年以上経って(たしか、高校生の間で流行したときいている。)
    偶然、野生株に接して発病し、
    その野生株が彼等の間で流行したものと思われる。
    しかし、
    おそらく彼等の細胞性免疫はゼロにはなっていないだろうから
    重症化することはないのではないかと、思っている。
    (実際はどうなのかは、知らないのだけど・・・。)

         というようなわけで、
    今後の対応である。
    若い人達が、
    「はしかのワクチン」を打つように言われているが、
    1.小学校入学までは、急がなくてもいいのではないか?
    2.でも打っておいた方が確かだと思う。
    3.その場合、どうせ打つなら、
      女性の場合は特に
      「麻疹(はしか)・風疹混合ワクチン」の方がいいと思う。
      なぜなら、風疹も同じ事が言えるからである。
      どうして、「女性の場合は特に」かと言えば、
      風疹は、妊娠の初期に
      (特に3ヶ月以内:これは妊娠だとはじめてわかる時   期。)
    感染すると、胎児に風疹症候群といって奇形が出来る可能性が高いからである。
    そんな事態は、極力避けたいから、
    しっかりと風疹の免疫をつけておいて欲しいのである。

       ちなみに、
    医者から臨床症状だけで風疹と診断されても、
    その30%は誤診である。
    これは、医者が悪いわけではなくて
    臨床症状から診断できる限界である。
    血液検査をしないと正確な判断は出来ないが、
    風疹で、いちいち採血して検査をしないのが普通である。
    そんなことをしたら、きっと、
    「あの医者は何でも採血して検査する。大げさだ。」
    とレッテルを貼られてしまうからである。
    それに、一般的な状況では、
    それが風疹でもそうでなくても、
    妊娠可能な時期までに、
    確実に風疹のワクチンを打てばそれで事足りる問題であるからである。

    そんなわけで、
    「風疹にかかった。」と医者に言われても
    風疹かどうかはわからないから、
    ワクチンを打つべきである。
    本当に風疹にかかった人がワクチンを打っても
    発病することなくブースターがかかるだけのことだから。

       ただし、
    妊娠可能な女性は、
    風疹(MR2種混合も)ワクチンを受ける際には
    前述の理由で、
    必ず接種1ヶ月前から確実な避妊をして、
    接種後も2ヶ月は避妊をする必要がある。


     3月 6日 2006
      
新型インフルエンザ

今世界的な脅威となっている新型インフルエンザの筆頭は
H5N1というタイプのものである。
これが意味するものは、以下のようなことである。




  上図がインフルエンザウィルスの簡単な構造である。
ウィルス表面には、
「ヘムアグルチニン」という、細胞にくっつくいて感染する部分と
「ノイラミニダーゼ」という、くっついた細胞で増殖した後、
他の細胞に感染するために、
感染
細胞から離脱するために使われる部分がある。
(今使われている、
 タミフルやリレンザといった抗インフルエンザ薬は、
 このノイラミニダーゼを阻害して、
 感染細胞からインフルエンザウィルスが離脱できないようにして
 新たに別の細胞に感染できない様にすることで
 効果を上げる薬である。)
ヘムアグルチニンに15種類
ノイラミニダーゼに9種類の型があり、
理論的には 15x9=135 種類のウィルスの型が存在可能である。
今世間で流行っているのは。H3N2である。


人類に脅威をもたらして、
世界的に蔓延するようなインフルエンザが
文献に記載されたのは、スペイン風邪(H1N1)からである。

発端は、(大正7年)1918年3月頃、
第一次世界大戦の最中にあったアメリカ軍の兵営と考えられている。
発生するとすぐに、戦場で蔓延した。
人間同士の交流の密接さ、衛生状態の悪さ、栄養状態の悪さ
これら感染蔓延の好条件下で、
激しい流行と被害を引き起こした。
戦場は格好の繁殖地だったわけである。

4月にはフランス全土を覆い、まもなくスペインへと拡がる。
6月には、欧州大陸から英国へと渡り猛威を振るった。

その後、
インフルエンザウィルスのタイプは、
アジア風邪(H2N2)、を経て、
今、流行っているホンコン風邪(H3N2)となっている状況である。
      



今人類が新型インフルエンザに対しておかれている状況は、
「フェーズ4」と判断されている。
(ピンぼけ写真ですいません!
 会場が暗くて、200mmの望遠でフラッシュをたかないで
 三脚無しでとったら、手ぶれ防止機能があっても
 なかなか・・・・。) (言い訳です!)



現時点での対策は、
以下の図のようなことになる。
黄色の部分がフェーズ4である。





インフルエンザウィルスの宿主は、人以外にもたくさんいる。
今のところ、人類にはH1,H2,H3が感染しているが、
将来、ウィルスが変異して、
さらに広がる可能性は、まだまだあるわけである。




渡り鳥が媒体となってインフルエンザウィルスを世界中に広げる可能性は、
かなり確からしくなってきている。
シベリアの北部は世界中の渡り鳥が、
共通に接触する場所であり、
ここで渡り鳥同士の感染が起こっていると考えられている。



だけど、
渡り鳥に罪があるわけじゃないし、
彼等も多くがインフルエンザで命を落としているのだと思う。
シベリアは寒いし・・・。




だけど、
僕は不思議でしょうがない。
本当に新型インフルエンザって脅威なんだろうか?
専門家(僕は、ちょっとだけ専門家で、僕なんかよりはるかに専門家)の先生達は、
「新型インフルエンザは、人類が経験していないインフルエンザだから、
 人類には免疫が無く、感染すると重症化する。」と言う。

確かに、免疫がないのだから重症化するかもしれないけど、
「そんなにいっぱい死ぬの?」

その理屈で言えば、
生まれて初めてインフルエンザにかかる小児は、
たくさん死ぬはずだけど、
実際はほとんど死なない。

死亡率が高いのは、環境や栄養状態も悪かった昔だったからでは?
それに、
ウィルスが人に対して感染性を高めたときに、
果たして強病原性を維持したままでいるだろうか?

H5N1のインフルエンザの死亡例は、全部肺炎である。
片側の肺炎は、救命されているが、
両側肺炎の場合には死亡率が高い。
H5N1のインフルエンザで肺炎が起こるのは、
肺の末梢の肺胞に、
このウィルスのリセプターがあるからなのだそうだ。
タミフルは効果がないことが確認されている。
リレンザは、
吸入できれば効果がある可能性があるが
僕は、報告例をまだ確認していない。




    「目にごみが入ったら」

  症状
多くの場合は、
目にごみが入りそうな環境で
(風がきついとか、ほこりが舞っている状態)
異物が入ったときから、
目がゴロゴロして痛い。
充血がひどい、涙が出て止まらない。
目を開けていられない。
といった自覚症状がある。
目の表面は神経が豊富なため、非常に鋭い痛みが続く。

目に入った異物によっては対処が異なるので
代表的なものについて記載する。

1.液体 (僕がやってしまった水虫の薬など)

  
まず、絶対にしないで置いて欲しいこと:
     汚い手で目を擦る。


 入った液体の種類によって、ことの重大さは異なる。
 適切な処置をしないと、重篤な視力障害を残すこともあり得る。
 目の中に何が入っても、まずは大量の水で目をよく洗うことが基本である。
 洗面器があれ ば大量の水道水を入れた中で、
 目をパチパチとして、まばたきを繰り返す。
 なければ大きめのコップでも可。

2.鉄粉、ガラス片、とげなどが刺さった場合
 目に直接何かが突き刺さったら、自力で取り除くことは非常に困難。
 目の清潔を保ち、早めに眼科を受診。

3.小さなごみ
  まばたきを頻回に繰り返す。多くはこれで涙と一緒に流れ出てしまう。
  それでも取れない場合は、上まぶたの裏にあることが多いので、
  下を見るようにして、上まぶたをひっくり返し、綿棒で取り除く。

3.コンタクトレンズ装用中のごみ
  実はこれが、一番多いと思う。
  すぐにレンズをはずして、一度洗浄してから再度装用。
  それでも異常を感じたら、装用を中止。

4.スクラブ洗顔をしていて、異物感を感じたとき
  スクラブ洗顔料は、毛穴の汚れや皮脂を取り除くために使うものだが、
  目を閉じているつもりでも案外目の中に入ってくる。
  これが一度目の中に入ると、まぶたの裏に張り付いてなかなか取れない。
  目の健康を考える上では、使わないこと。

  これらの対策はあくまでファーストエイド。
自己判断で放置しておくと急激に症状が悪化することがある。
異常が半日以上続くようなら、必ず眼科専門医の診察を受けるべきである。







   
タミフルは危険かもしれない
    
  TIP誌(薬の正しい情報を提供するNPO発行の雑誌)に、
タミフルに関する記載が載っていました。そこには、
1.タミフルの予防投与は無効。
2.慢性喘息をもつ小児には無効(病気が長引く)。
3.日本でもっとも数の多いA香港型(H3N2)には無効。
4.糖尿病を悪化させる。
という記載がありました。

    そして、突然死に関する考察が載っていました。

  もともと、タミフルに関しては、
(珍しいことに)メーカー側から警告が出ていました。
すなわち、
昨年1月2日に、
「1才未満の乳児にはタミフルを投与しないように」
という警告文がアメリカで出され、これは日本にも報道されました。
日本のメーカーもこれを受けて、医療関係者に
1才未満児には投与しない様に呼びかけました。

 この警告は、7日齢幼若ラットに、タミフルを1000mg/kg投与すると、
成熟ラットに比べて脳内の薬剤濃度が
約1500倍(ピーク時には約3000倍)に上昇するということが判明したからです。
これを受けて、日本小児科医会は、2月2日に、厚労省に対して、
「1才未満の患児に対して、本当にタミフルを投与してはいけないのか?」
という質問状を出しました。
これに対して厚労省は、
「動物実験だけでは、禁忌(使ってはいけない。)
とする十分な根拠にはならない。
安全性・有効性が確立していないこと、
幼若ラットで薬物の脳内への高濃度の移行が確認されたデーターがあること
以上をふまえて、リスクとベネフィットを十分考慮して、かつ、
患児の保護者等に薬剤名、服用方法、効能、特に注意を要する副作用および
本剤の1才未満の患児に対する安全性及び有効性が
確率していないことなどについて、丁寧に説明して、
同意を得た上で、慎重に投与すべき」という趣旨の回答が示されました。
(まったく、全面的に現場の医者に責任をおっかぶせているとしか言いようがありません・・・。)

 メーカーが1才未満児にタミフルを投与することは推奨されないとする理由は、
動物実験での死亡は、血液脳関門の未成熟な離乳前の幼若ラットで生じていて、
ヒトでも血液脳関門の未成熟な乳児の暴露量が予測できないことをあげてます。
(血液脳関門:血中の物質はすべて脳にそのまま移行するわけではなくて、
         血液脳関門を通して移行するものと、移行しないものがある。
         また、移行するものでも100%移行するわけではない。
         重要な脳を守るための生体の機構の一つ。)

 ここで、従来インフルエンザ脳症の死亡とされていたものの中で、
脳症の症状が無く突然死する病態が、新たに2002年~2003年に発生してます。
果たして本当にそうだったのか?という疑問が浮かび上がってきます。

  幼若ラットは、タミフルを投与されてどの様に死んだのでしょう?
詳細は、省略しますが、
1.生後7-14日の幼若ラットが、タミフル1回投与10分~4時間後に死亡した。
2.死亡は、呼吸抑制の結果と考えられた。
3.呼吸抑制はタミフルの脳内への大量移行のためであることが推察された。
4.ラットが死亡する可能性のある最小用量(500mg/kg)は、
  ヒトの常用量の20倍程度。
5.ラットの生後7日は、ヒトの1才未満。

  ここで、ヒトのインフルエンザにかかって突然死した症例は、
どうだったのでしょうか?
塩見は、2002年~2003年のインフルエンザシーズン中に
睡眠中に急死した小児6例を報告しています。
この内の2人に関してインターネットで公開されている
詳細な聞き取り調査があります。

症例1
3才3ヶ月男児(体重13.5kg)。
いままで、インフルエンザにかかったことはない。
12月末午前0時に38.5℃の発熱、翌日も持続したため、
かかりつけの医院受診し、インフルエンザシーズンAと診断された。
タミフルを処方されて午後2時頃帰宅。
この時は、意識明瞭で、通常通り歩行も可能だった。
昼食後にタミフルだけ服用、
ビデオを見ながら入眠したと母親は思った。
母親は、目の届く範囲で家事をして時折様子を見ていたが、
眠ったと判断していた。
午後4時頃、患児は右側を下にした姿勢で、鼻水を流したまま、
呼吸停止状態で発見された。
救急車で病院に運ばれたが、5時15分死亡が確認された。

症例2
2才5ヶ月男児(体重13.5kg)
初めてのインフルエンザ。検査でA型と診断。
午後9時半~10時にタミフルと処方された他の薬を一回分服用後入眠。
午前0時にいったん覚醒し、再び入眠。
午前6時半に父親が触れたときにはチアノーゼがあり、心肺停止しており、
病院に運ばれたが、死後硬直を起こした状態であった。

死亡したのは、8才の一人を除き、5人が3才以下で、
5人の内4人はタミフルを服用していて、
初回のタミフル服用後に、睡眠中に死亡しました。
この4人は、死亡前には異変は気付かれていません。

タミフル服用後に睡眠中に突然死が起これば、
それが1人でもあれば、
重大な有害事象です。
因果関係が明白に否定されない限り、
その可能性を考えておかないといけないのです。
塩見は、「インフルエンザ脳症が今までにもあった。」と
言っているのであって、今回の突然死がそうなのかどうか?
塩見も、「従来のインフルエンザ脳症になかった新たな病態である。」
と指摘しています。

インフルエンザのために、あるいは、軽いインフルエンザ脳症があって、
血液脳関門に障害が起こって、脳内のタミフル濃度が上昇して
呼吸抑制が起こった可能性は十分にあります。
タミフルの副作用で亡くなった可能性は、否定できないのです。

 また新たに、TIP副編集長の浜六郎先生が、学会発表した2症例が追加されました。
テレビでも放映されて、興味を持たれた方もおられると思います。
中学生と高校生の男子が、タミフルを服用後に、
一人はマンションから飛び降りて、
もう一人は、裸足で雪の道に飛び出して、笑いながらトラックに突っ込んでいって亡くなりました。
いずれも、状況から自殺とは考えられず、タミフルの副作用かインフルエンザによる脳症の可能性が考えられました。
今の時点で、いずれかの結論は出せませんが、
インフルエンザで血液脳関門が破壊された状態でタミフルを服用してそうなった可能性は、十分にあり、今後さらなる検証が必要です。
日本もアメリカも薬害大国で、厚労省やFDAは、副作用の有る薬を、「危険かどうかまだわからない。」として、重大な副作用が多発して、事態が深刻化するまで、認可を取り消さない事は、過去にもしばしばありました。
エイズやC型肝炎のウィルスが混入した非加熱製剤、サリドマイド、スモンなど一向に懲りることなく薬害が繰り返されています。厚労省やFDAが「安全である。」といっても、信頼できないのが現状です。

   もう一つ、興味深い話があります。
「初体験のインフルエンザで生涯の免疫が左右されるかもしれない。」
という考えがです。
ここにA1,A2,A3というよく似たインフルエンザウィルスがあるとします。
ある子が生まれて初めて接したウィルスが、A1だとすると、
その子は、A1に対する記憶がもっとも強く刻印され、
その子には、A1に対する抗体が出来ます。
そして、その後、その子は、A2やA3のインフルエンザにかかったときも
A2やA3の抗体ではなく。A1の抗体を元にA1'を作る。とされています。
この原理は、(初感染)抗原原罪原理と呼ばれています。
もし、ここで、初めて感染したインフルエンザにタミフルを使って、
耐性のウィルスが出たら
(小児では30%に耐性のウィルスが出現していると報告されています。)
(タミフルを使って、病気が長引く時は耐性ウィルスが出現した可能性があります。)
耐性ウィルスに対して弱い免疫しかできない可能性があるのです。
そうなってしまうと、
将来も様々なウィルスの変異に弱い反応しか起こせなくなります。
つまり、インフルエンザにかかりやすく、
かつ、重症化しやすい子になってしまう可能性があるのです。

  これらのことを、合わせて考えたときに、
タミフルは、1才未満の子供はもちろん、
少年(さらには、成人)にも、安易に使うべきではないのではないか。
少なくとも、タミフルが安全であると確認されるまでは・・・。
と思います。
それから、他にも、インフルエンザ脳症に関連がある薬として、
抗ヒスタミン剤(鼻水の薬)やテオフィリン(喘息の気管支拡張剤)
があります。これらの薬もインフルエンザの時には使用をひかえた方が安全です。

 というわけで、僕のところでは、
「子供にはタミフルは極力使わない。」
という姿勢で臨もうと思います。





   
大腸癌の話
    検診で行う大腸癌の検査は、
大腸癌による死亡を減少させるはっきりとしたエビデンスがある検査として
この数年認知されるようになった。
うんちに人の血液の成分(ヒトHb)が含まれることを
免疫学的な方法で検出するのである。
もし、大腸や直腸から少量でも出血があると陽性になる。
しかし、癌から、必ずいつも出血しているとは限らない。
大腸癌のある人に、この検査を行っても、
陽性率はせいぜい40%くらいである。

それなのに、
なんでこの検査は大腸癌による死亡を減少させることが出来るのか?
胸のレントゲン検査や胃のバリウム検査の評価は、
せいぜい「有効である可能性がある。」という程度なのに・・・。

その理由は、大腸癌の成長過程にある。
大腸癌の80%は、線種から癌に成長すると言われている。
(残りの20%はデ・ノボといって、
 線種の過程を経ないで、癌になると言われている。)

つまり、80%は、以下のような段階を経て癌になると考えられている。

1.異型粘膜腺窩(虫眼鏡を使うとわかるくらいの粘膜の変化)
2.ちいさなポリープ(癌を持っているのはせいぜい1~2%)
  この頃から癌遺伝子(K-rasなど)が活性化されて、
  小さなポリープが大きさを増す。
3.大きなポリープ(ガンを持っているのは20~40%)
4.癌

だから、ポリープを見つけて取ってしまえば、
癌の予防になるわけである。

ポリープが出来てから癌になるのに、
短くて5年くらい、普通20年から30年といわれている。

この理屈からいくと、
80才の人のポリープを取るのは、
100才以上の人の癌を予防するためになる。
僕は、あんまり意味ないと思う。

日本では、大腸癌が増加している。
人口10万人あたりの粗死亡率は、
男性で33.6人、女性で26.7人である。
アメリカでは、男性20.6人、女性20.2人である。

もう、日本はアメリカを追い抜いているのである。
この差は、検診や治療の質とかの問題ではなくて、
「肉食の頻度の差」である。

大腸癌が増える主な原因は肉食といわれている。
肉の動物性脂肪がその原因と考えられていて、
以前にこの日記でも触れたことがあるが(こちら)、


赤身の肉や加工肉を日常的に食べることは
極めてリスクが高い


アメリカでは、この20~30年肉食を減らす努力がされている。
この成果がやっと1990年代後半から出てきたのである。
こういう、食事や、たばこをやめて癌が減るという効果は
20~30年後に出てくる。

それにつけて、腹立たしいことがある。
アメリカでは、自国民のために肉食を減らす政策をとっている。
肉食を減らして、
余った分を日本に売りつけているのである。

同じ事が、たばこでもいえる。

今や、日本人はアメリカ人より肉を食べているのである。
そして、アメリカ人よりたばこを吸っている。
本当にバカにされたものである。

国をあげて肉食の習慣を改める必要があるのだが、
だれも、そんなことは言わないので、
せめて、この日記を読んでくれた人だけでも、
このことを知っておいてもらいたい。







       不健康エコナ
 言わずと知れた、「花王の食用油」である。

脂肪が付きにくいのだそうな。

そして、本当に燃えやすい

発火点は、一般サラダ油にくらべて20℃も低い。
ある実験では、他のサラダ油より2分早く引火した。
健康に注意ばかりでなく、火事にも注意が必要な油である。

さて、それでは、そろそろ本題の「不健康」に関してである。
このエコナは、
癌の発生頻度が上昇する可能性がある。

この製品の主成分は、ジアシルグリセロールという物質である。
ほとんどの食用油は、トリアシルグリセロールという物質である。
グリセロールに2つの脂肪酸がくっつくとジアシルグリセロールという物質に、
3つの脂肪酸がくっつくとトリアシルグリセロールという物質になる。
有機化学で習ったと思うが、
「ジアシル」の「ジ」とは2を意味する。
「トリアシル」の「トリ」は3を意味する。

このジアシルグリセロールという物質は、
他の食用油にも、数%は含まれているのだが、
エコナはこれを
人工的に80%以上含むように調整した食用油なのである。
(どうも、この人工的に作った油というやつはろくなものがない。
 以前にも書いたが、マーガリンも然りである。)

さて、では、
このジアシルグリセロールという物質のなにが問題なのか?
というと、
ジアシルグリセロールという物質には、
グリセリンの結合位置が異なる
1,2-ジアシルグリセロールと
1,3-ジアシルグリセロールの
2種類が3:7の比率で存在している。
このうちの後者は、
体に脂肪が付きにくい作用があると考えられている。
(しかし、エコナに関して、米国の消費者情報誌は
 「作用の裏付けが不十分」と指摘している。)

さて、では、前者は?

「発癌プロモーター」の疑いが濃い。

「発癌プロモーター」って何か?

癌が出来るには、
イニシエーターと言って、最初に細胞のDNAに傷を付ける物質と
プロモーターと言って、そのDNAの傷を、修復されないままに残して、
癌を育てていく物質が必要なのである。

そして、ジアシルグリセロールという物質は、
動物実験で、
発癌プロモーターであることがはっきり示唆された。
つまり、

エコナは発癌プロモーターを多く含んでいる
のである。
  
ほんじゃ、
「なんで、そんなものが、食用品として、
 しかも、トクホ(特定保健用食品)として承認されるんじゃ?」
と言う疑問が出てくる。

エコナがトクホとして承認されたのは1998年(平成10年)である。
この時には、まだわからなかった。

しかし、

2000年に
花王はマヨネーズタイプについても特保の申請をした。
この時は、この発ガンプロモーターの疑いが問題になった。
しかし、参考人として招かれた専門家は、
「花王のデーターではわからないので、
 さらに例数を増やして、
 高濃度の検体を用いるなどの試験が必要である。」
とした。

厚労省は、
「念のために」さらなる試験の追加をするように指導して
2003年にトクホとして承認した。

だいたい、
「発癌プロモーター」の疑いがあるから、追加試験を要請したのに
なんでトクホの承認をしてしまうのか?
いつもの事ながら、お上は、訳のわからんことをする。
しかも、
許し難いことに花王は、
そんな疑いがあるにもかかわらず、承認される前の
2002年からマヨネーズタイプも販売開始している。

そして
2005年に
「念のために」行った追加試験で
エコナは、発癌プロモーターであることを示す結果が出た。

我々の健康をしっかりと守っていてくれるはずの
厚労省のなさることは、
本当に わけがわからん!
もっとも、今、始まった事じゃないから
もう、信じてないけど・・・。

それにしても「トクホ」承認された食品が
「発ガンプロモーター」では、かなり具合が悪いと思うけど・・・。

もっとも、いままでも、
「お薬」が「毒」だったことが、何回もあったんだから、
驚かないけど・・・。

企業が金儲けのために発癌物質を平気で売るのは、
今更始まった事じゃないけど、
これで、花王の企業アイデンティティは
よーくわかった。






       
メタボリック症候群
米国高脂血症治療ガイドライン
(ATPIII:Adult Treatment Panel III, NCEP National Cholesterol Education Program)
では、
下記5項目のうち3項目が該当するとメタボリック・シンドロームと診断ができる。
 1)ウエスト(腹囲)が男性で85cm以上、女性で90cm以上
  (ウエストは、臍のレベルで水平に測定。腰の一番くびれたレベルではない。
   おなかを引っ込めて測定しないで、普通の緊張状態で測定する。)
 2)中性脂肪が150mg/dl以上 (早朝空腹時測定)
 3)HDLコレステロールが男性で40mg/dl未満、女性で50mg/dl未満
 4)血圧が最大血圧で130mmHg以上または最小血圧で85mmHg以上
 5)空腹時血糖値が110mg/dl以上

WHOの診断基準もあるが、
今、一般に日本で通用しているのは上記のもので、
こちらの方が、一般の人にもわかりやすい。

   このメタボリック シンドロームの意味することが、
何であるかが重要である。 
要するに、これら一つ一つの異常は、
今までは、

「かるく、やばい!」
ものばかりなのである。

病院に行って、検査で引っかかっても、
「薬は要りませんが、生活習慣に注意して、
食べ過ぎないように、ほどほどに運動もしておいてください。」
と言われて、安心して家に帰されるものなのである。


   しかし、
これらの複合は、決して安心できるものではない。
血管の動脈硬化は加速度的に進んで、
そう遠くない将来、

はっきりとした「やばい病気」
が出てくる。

それが、単に
はっきりした糖尿病だったり、高血圧症だったのなら
まだいい。

   心筋梗塞だったり脳梗塞という形で現れることも
決して希ではないことが問題なのである。
要するに、メタボリック シンドロームの根本の状態は、
「内臓脂肪の蓄積」が問題なのである。
最近の研究でわかったことなのだが、
脂肪細胞は、それ自体でいろんな因子を分泌している。
例えば、
PAI-1(plasminogen activator inhibitor)
これは、血栓融解を促進する物質を抑制する。
・・・・つまり、血栓が起こりやすくなる。
Adiponectin
最近見つかった動脈硬化を押さえる物質。
脂肪細胞から分泌されるけれど、
脂肪細胞が増えると血中濃度が下がるという、まか不思議な物質。

 内臓脂肪が増えると、
これらの物質を介して、
動脈硬化の進展や血栓の形成が起こることになる。

   ちなみに、
「診断基準に2つは該当してるけど、3つからだから大丈夫」
などとは思わないで欲しい。
要するにそのようなことが該当しだしたら、
それは、生活習慣そのものが問題なので、
該当項目が3つに増えるのは時間の問題でしかない。

  40歳、50歳台で、大きな病気はなくて、
外見はそんなに太ってないけど、
おなかだけがポチャッと出ていて、
仕事が忙しくて、帰宅が遅くて、
夕食を食べたら風呂に入って寝るだけの毎日。
運動は、ほとんどしない。(HDL-コレステロールが低い可能性が高い。)
血液検査では、
「中性脂肪が高い、あるいは、血糖が高めだけど、
薬を飲むほどではないから、腹八分にして、運動の習慣を!」
と言われるが、特に守っているわけではない。
そういえば、
血圧も130台/80台後半でこちらも、
「薬を飲まないで、生活習慣の改善を!」
と言われている。
そんな人の中に、若くしてぽっくり逝く人が増えている。

  一つ一つは、「軽くやばい」だけど、

複合では、
「とってもやばい!」


   今からでも遅くないので、真剣に生活習慣の見直しを!




       3つの危険な「生」
       それは、「エイズ」「生レバ(ユッケ)」「生牡蠣」です。
それぞれ、日記に書いています。リンクで確認してください。


       ビタミンEは、飲まないでおいた方がいい。
       どうしてかは、2005年11月29日の日記を参照してください。


       胃薬って飲み続けて良いの?
    よく、他の病院で治療を受けている患者さんが
紹介されて僕のところに受診される。
その時に、現在どんな薬をもらっているかを確認する。
ほぼ全員が胃薬をもらって飲んでいる。
それも、よく効く胃薬を大量に!
胃薬といっても、最近の胃薬は、やたらよく効くものが多い。
「他の薬を飲むから、胃が荒れないように胃薬も飲む。」
という約束事を、患者側も医者側も盲目的に実行しているのだろうか?

     考えてみたら、数年前までは、僕のところでも、
抗生剤など何か薬を出すと
「先生、私、”胃が弱い”から、胃薬も出しておいて!」
と言う患者さんが多かった。
僕は、そのたびに(きっと嫌そうな顔をして)
「抗生剤でそんなに胃は荒れませんよ。
おなかの、細菌のバランスが崩れるから、
下痢はあるかもしれないけど・・・、
でも、どうしてもというなら出しとくね。」
と言ってなるべくあんまり効かない胃薬を出していた。
最近は、みんなあきらめたのか、
それとも、そういう要求をする患者さんたちは
僕を見限って他の医者に鞍替えしたのか、
めっきりそんな要求をされなくなった。
(そういえば、患者さん減ったかな?)

     どうして、「胃薬を出すのがいやなのか?」というと、
「訳もなく薬を飲むのは、やっぱり変でしょ?」ということである。
確かに、胃薬を飲むと、胃が楽に感じる。
食欲も出るし、食事も美味しく食べられるかもしれない。
だけど、毎日そうなるために
毎日、胃薬を飲み続ける必要があるのだろうか?
胃が痛くなるのは、体が何らかの異常に対して、
サインを出しているからだ。
暴飲暴食の翌日に食欲がないのは、
「胃が休ませて!」と言っているのだ。
胃薬を飲むよりは胃を休ませることが必要なのだ。

体の言うことは聞くに超したことはない。

そのサインを「ただ胃薬を飲む」ということで、
無視していいのだろうか?
良いわけがない!
軽い胃炎だったら、それで解決するかもしれない。
しかし、他の原因は、そのままマスクされて進行することになる。

     よく効く胃薬はさらに、胃の酸の分泌を抑えてしまう。
驚くべき事に、H2ブロッカーといわれる薬は薬局で買える。
もっとよく効く プロトン ポンプ阻害剤(PPI)は、
まだ薬局では買えないが・・・。
H2ブロッカーは、当たり前のように、
病院で薬をもらっている人はみんなが飲んでいる。
ガスター・ザンタック・タガメットなどが有名だけど、
星の数ほど種類がある。

     はたして、「胃酸の分泌を抑える。」ということは、
良いことなんだろうか?
その昔、「胃潰瘍は、胃酸の分泌(攻撃因子)と
胃粘膜を胃酸から守るために
胃の粘膜から分泌される粘液(防御因子)のバランスが崩れると発症する。」
と教科書に書いてあったような気がする。
(不勉強な僕は、あまり教科書を開かなかったので自信がない。
 友達のノートのコピーを熱心に勉強していたもので・・・。
  正確には「友達のノートに書いてあった。」が正しい。)
(本当に友達というのはありがたい!
 でも、僕はあまり逆貢献はしてないので、
 大変に申し訳なく思っている。 って話がそれてる。)

      そもそも、なんで胃から塩酸が出てるの?
自分自身も溶かしちゃうような塩酸を
無理してバリアーを作りながら出しているのは
それなりの理由があるからである。
胃酸は、食物を消化する機能もあるが、
細菌など外界から変なものが入ってこないように
そこで処理する機能もあるのだ。
確かに、現代は、食品は少し古くなると廃棄されるし、
冷蔵庫はあるし、加熱殺菌も出来る。
しかし、「それは頻度が圧倒的に減っただけのことではないか?」
と思っていたら、やっぱり!

     米国医師会誌「JAMA」10月27日号掲載のオランダでの研究で、
胸焼けを緩和する酸分泌抑制薬(制酸薬)の長期服用で
肺炎の発症リスクが高まることが判明した。
それによると、
36万4000人を超えるオランダの国民健康保険加入者を対象とした研究で、
プロトンポンプ阻害薬(PPI)の長期服用者で
肺炎リスクが2倍近く高まり、
また、H2ブロッカー服用者のリスクは3分の2近く上昇していた。
研究者でナイメーヘン大学医療センターの疫学者Robert J. F. Laheij氏は、
その理由として、酸の減少による胃内の生菌数増加を挙げている。
また、他の研究では、インフルエンザや気管支炎などの気道感染の増加も報告されている。

      胃薬と侮るなかれ!
よく効く薬は”それなりの何か”も持ち合わせている事が多いのだ。




    睡眠、ちゃんと取れてます?
   考えてみれば、人生の約3分の一は、睡眠に当てられる。
睡眠の質に気を配ってみることは、大切なことのように思う。
以下に、簡単なチェックリストを示してみた。

【夜間の症状】
1)布団に入ってもなかなか眠れない
2)夜中に何度も目が覚め、その後寝付きが悪い
3)非常に早くに目が覚めてしまい、その後朝まで眠れない
4)朝起床したときにぐっすり眠った感じがしない

【朝や昼間の症状】
1)朝起きなくてはいけない時刻になっても目が覚めない
2)朝、目が覚めているのに床から出られない
3)日中にひどい眠気がある
4)日中、体がだるい
5)日中、気分が悪く憂うつである

これらのうち、当てはまる症状の組み合わせによっては、
専門医の診察を受けた方がよい場合がある。
不眠の原因がほかの病気などによるものかどうか、
まずチェックしてみるのもいいかもしれない。

   大きく分けると、不眠には、
基礎にある病気が原因の場合と、
病気は無くて、不眠になっている場合がある。

   まず、病気が基礎にある場合は、
病気がはっきりと表立っていないものとしては、
1.うつ病。
     ・非常に早くに目が覚めてしまい、その後朝まで眠れない
     ・朝起床したときにぐっすり眠った感じがしない
     ・朝、目が覚めているのに床から出られない
     ・日中、体がだるい
     ・日中、気分が悪く憂うつである
     ・食欲が低下している、食べ物がおいしく感じられない
     ・新聞や雑誌に目を通す気になれない
     ・目が覚めた時に気分が落ち込んでいる

2.睡眠時無呼吸症候群
     ・朝、起床したときにぐっすり眠った感じがしない
     ・夜中に何度も目が覚める
     ・日中にひどい眠気がある
     ・ひどいいびきをかいて呼吸が苦しい、または止まる
     ・息苦しくて目が覚める

3.ムズムズ足症候群(restless leg syndrome )
     ・布団に入ってもなかなか眠れない
     ・日中、体がだるい
     ・安静時に脚がぴりぴり、むずむずするような不快感がある
     ・ひざの下から足の裏にかけてほてる

4.周期性四肢運動障害
     ・夜中に何度も目が覚め、その後寝付きが悪い
     ・朝起床したときにぐっすり眠った感じがしない
     ・日中にひどい眠気がある
     ・足首がぴくぴく動く
                               などがある。

     病気が表立ったものは、
5.気管支喘息などの呼吸困難・咳
6.前立腺肥大症などの頻尿
7.アトピー性皮膚炎などのかゆみ
8.腰痛や50肩などの関節痛
                   などがあるが、
これらは、原疾患の症状が主たる症状であり、
不眠はその結果だから、鑑別する必要がないことが多い。
それ以外に、薬物で不眠が起こることもあるので、
今飲んでいる薬が有れば、その薬のチェックも必要だ。

    そして、病気が基礎にない不眠がある。
(将来は、メラトニンなどの分泌障害などで
病気と分類される可能性があるものも含まれてはいるが・・・。)

ここでまず、一番重要なことを認識する必要がある、。
それは、睡眠は、生物として必要不可欠で、

「人は、自動的に眠るようになっている。」
                                    ということである。
逆に、寝たいからといって、すぐに自分の意思で眠れるものでもないのだ。
睡眠は、勝手に調節できないようになっているのである。
脳の睡眠中枢や体内時計によって、
眠りの長さや深さ、いつ眠くなるか、といったことが決まる。
人間は、生き物としての仕組みからみると、
昼に活動し、夜に休息をとる昼行性動物である。
脳がいくら発達しているからといって、生き物としての性質は変わる訳ではない。
眠りたいと思えば眠れるわけではなく、
理想的な睡眠を得るための特別な秘訣などないのだ。
まず生き物としての自分の睡眠のパターンを知ることが重要である。
不眠の背景に、明らかな別の病気や原因が考えられない場合、
生活面などに問題がある可能性がある。
また、就寝時間や睡眠時間の長さにこだわりすぎていることも考えられる。

まず挙げられるのが、「8時間睡眠」へのこだわりだ。
一般に、理想の睡眠時間として「1日8時間」という数字をよく聞くが、
これに医学的根拠があるわけではない。
実際、米国の大規模調査では、7時間睡眠の人が、
8時間以上の人と比べて寿命が長いという結果がある。
日本人の平均睡眠時間は7時間23分。
年代別では、30代が6時間57分、40代が6時間59分と、
働き盛りの年代で特に睡眠時間が短いという結果が得られた。
しかし、平均睡眠時間はあくまでも一つの目安でしかない。
重要なのは、その人にとって充分な睡眠が得られているかどうかである。

必要な睡眠時間にはかなりの個人差があり、
3~4時間の睡眠で十分な人もいれば、
10時間以上眠らないと体が持たない人もいるのだ。


例えば、3時間睡眠で有名なナポレオンがいる一方で、
アインシュタインは1日10時間眠っていたという。
必要な睡眠の長さには、
生まれつきの体質がかかわっていることが明らかになってきている。
「8時間眠らなくては健康に悪い」などと考えて、
無理に寝床で長い時間を過ごすと、
かえって夜中に目覚めやすくなったり、熟睡感が得られなくなったりする。
睡眠時間そのものにこだわりを持たないこと

が、不眠対策の重要なポイントの一つだ。

なお、睡眠が本当に足りているかどうかは、
日中に眠気がなく、きちんと過ごせるかどうかを目安にする。
日中の眠気がひどかったり、
平日と比べて週末に3時間以上長く眠らないといられないようならば、
「睡眠不足」といえそうだ。


     不眠対策におけるもう一つのポイントは、
「早寝・早起き」ではなく、「遅寝・早起き」への発想の転換にある。
不眠に悩む人は、少しでも眠ろうと早くから床に入ろうとする傾向がある。
しかし、これはかえって逆効果だ。
最近の研究では、
「普段の入眠時刻の2~4時間前は、1日の中で最も寝つきにくい時間帯である。」
ことが明らかになっている。
せっかく早く床に入っても、なかなか寝つけず、
よけい「眠れない」と不安になってしまう。
したがって、
「眠たくなってから床に就く」ことが、
スムーズに眠りに入るための近道だ。
また、就床時間よりも重要なのが、
「定時に起きる」こと。
起床後、太陽の光を浴びると、体内時計のリズムがリセットされ、
その約15~16時間後に眠気が出現することが分かってきたからだ。
これは、睡眠調節に関与するホルモンであるメラトニンの分泌リズムによる。
つまり、起きた時点で、寝つく時間はほぼ決まってしまうというわけだ。
平日の睡眠不足を補うために、週末に少しでも睡眠時間を稼ごうと昼近くまで寝ていると、
その晩はさらに寝つきが遅くなり、月曜日の朝起きるのが辛くなる。
どうしても平日の睡眠不足を休日に解消したい人は、
休日も頑張って一度早めに起きて日光を浴び、
その後午後3時くらいまでゆっくり過ごす方法が勧められる。
ただし、長時間の昼寝はかえって生活のリズムを崩し、
夜の睡眠に悪い影響を与えることがあるので要注意。
厚生労働省の「睡眠障害の診断・治療ガイドライン」では、
昼寝をするなら15時前とし、20~30分以内にとどめるよう推奨している。

   なお、睡眠薬代わりに酒を飲む人が少なからずいるのではなかろうか。
(僕もしばしばやるけど・・・)
しかし、
熟睡のためには寝酒は障害になる。

というのは、寝酒をすると一時的には寝つきが良くなっても、
アルコールが分解された後は眠りが浅くなり、途中で目が覚めたりするからだ。
また、飲酒は、睡眠時無呼吸症候群を悪化させる要因ともなる。
熟睡したいときは、寝酒はひかえた方がいい。






     最近ビオフェルミンRを使わなくなったわけは・・・。
     抗生物質や抗菌剤を使って、細菌感染症の治療をする。
この時に、抗生物質や抗菌剤は、正常な腸内細菌も殺してしまう。
そのために下痢が出たり、逆に便秘になったり、
便通がこれまでと変わってしまうことをよく経験する。
だから、
僕は、抗生物質や抗菌剤と一緒にビオフェルミンRを処方していた。
しかし、いつもどこかで引っかかっていた。
”R”である。
”R”とはレジスタント(耐性)の”R”である。
ようするに、抗生物質や抗菌剤に耐性のビフィズス菌なのである。
そりゃあ、そうなっていないと、
一緒に投与した抗生物質や抗菌剤によって、
死滅してしまって効果が無くなってしまうのだから、当然である。
リーズナブルだけど、”R”って、どうなっているの?
と思っていたわけである。
つまりは、
抗生物質や抗菌剤で死なないように、遺伝子操作されたか、
経代培養して耐性の株を増殖させて出来たものなのである。

    「そういうものを、使っていても安全なのか?」
という疑問があるのだが、今のところ何も問題にはなっていない。
だけど、最近使わなくなったのは、ある論文を読んだからだ。
ビオフェルミンRの論文ではないのだけども、
「ばい菌は、ばい菌同士で情報伝達をして進化する。」というものだ。
「細菌なんて、単細胞だし、頭脳があるわけでもないし・・・。」と
バカにしていたのだが、そうでもないようだ。
例えば、アミノ酸など自らの生存に必要な物質の濃度を感知してそこに集まり、
逆に、有害な物質に対してはそれを避けるように遊走する。
しかし、この機能は、
それぞれの細菌が、単独で
周囲の環境が自らにとって都合がいいものかどうかを判断する機能である。
そして、これまでは、
細菌が細菌同士で情報交換し、周囲の環境に応答する機構は無いと考えられていた。
しかし、実は、そういったことが行われていることが判明してきた。
Quorum-Sensing機構と呼ばれるものがそうである。
Quorumとは、「定足数」を意味しており、
Quorum-Sensingとは、細菌自身がある一定数に達するとそれを感知して、
様々な応答をする事をいうのだそうだ。
例えば、緑膿菌は増殖して一定数以上になると
「バイオフィルム」という膜を作る物質を分泌する。
緑膿菌は、この膜の中で繁殖する。
この膜があると、抗生物質が膜にさえぎられて
緑膿菌に届きにくくなって、その効果が出にくくなる。
ようするに、細菌は細菌同士で生き残りの戦略として、
都合のいい情報伝達を行っているわけだ。
・・・・・・・・・ということは、・・・・・・・・・。
間違えば、抗生物質耐性のビオフェルミンの耐性が、
他の細菌にも移行するかもしれない。
善玉の腸内細菌ばかりに移行してくれたら助かるが、
そんなに都合良く物事が運ぶ保証はどこにもない。
逆に、悪玉の細菌が耐性を獲得してしまうことだってあるわけだ。

     ということで、ビオフェルミンRは基本的には出さない事にした。
ホントに、自然の機構は奥が深い!
自然には逆らわない方がいいようだ。









     今年のSARS対策      
     SARSは、一時姿を潜めているが、根絶されたわけではない。
感染が終息したのも、感染予防対策が功を奏しただけではなくて、
暖かくなって、ウィルスの活動が治まったからと言う説もある。
いずれにしても、また、気温が下がり、空気が乾燥すると、
このウィルスの活動性が上がり、感染が起こる可能性がある。
   
     とりあえず、その危険が高いのは中国である。
日本には、SARASウィルスは今のところ存在していないと考えて良い。
日本で感染者が出るとすれば、海外から持ち込まれた場合だけである。

 また、
おそらく、SARSウィルスの空気感染は
”よほどの条件下”以外ではおこらないようだ。
つまり、一般的には、飛沫感染か、接触感染である。

     空気感染とは、感染性のある病原体が空気中を漂って、
健常者の呼吸の吸気に混入して、気道や肺に感染が起こるものである。
空気感染が起こる条件は、感染能力のある核が空気中を漂うことが必要なわけだ。
患者から排出された病原体を含んだ体液(たとえば、目に見えないくらい小さなつばなど)が
飛んでいく過程で水分が揮発して核だけになる。
この後、その核に感染能力がある場合は、空気感染が起こる。
核に感染能力のないものは、飛沫感染(後述)となるわけだ。
飛沫が飛んで落下する距離は、大体90cmくらいである。
具体的には、結核やはしか(麻疹)・水痘(みずぼうそう)が空気感染する。

     飛沫感染とは、、病原体が、患者の咳や呼気とともに喀出されて、
それを、直接に吸い込んでおこる感染である。
前述のように、面と向かって90cm離れていれば飛沫感染は起こらない理屈であるが、
一応、2mの距離で直接向かい合う様な接触がある場合は「接触歴有り」と考える。
SARSの主な感染形態はこれに当たるわけだが、
過去の例から考えて、町ですれ違ったなどの
具体的でないはっきりとしない接触で感染した症例は、
”例外的な事例”を除けば、ほとんどない。
例外的な事例とは、SARSが最初に蔓延したきっかけとなったホテルの場合と
アモイガーデンという高層マンションでの集団感染である。
前者は、”スーパースプレッダー”といって、ウィルスを多量に排出する重症患者が、
ホテルという閉鎖空間を咳をしながら歩き回ったことが問題のようだ。
スーパースプレッダーは、感染の極期(高熱が出て、肺炎が進行している状態)で
そうなる人がいるようだが、誰がそうなのかという判別は、今のところ不可能。
一応、高熱が出て、2-3日経っていて咳をしている人は要注意だ。

  後者は、排便中のウィルス(SARSは下痢も併発することがあり、
下痢便中のウィルスはその量も多く、
下痢便の中ではSARSウィルスは長期に生存する。
しかも、便のPHがウィルスの生存に適していて、
適度に湿度を保った状態が得られる。)が陰圧の浴室の空調
(浴室で換気扇を回すと、浴室は陰圧になり下水管から空気が逆流する。
しかも、下水管のU字管は、普段水を流さないので乾燥していて、その用をなさない。)
によってまき散らされたため、すなわち、
適度に湿度を保ったウィルス粒子を含んだ下水管の空気が
浴室に逆流して蔓延したためと考えられている。

接触感染とは、患者の体液に触れて、その手を洗わないで、
食べ物などをつかんで口にするなど、
病原体を含んだ体液が直接体に入り込んでおこるものである。

    SARSの感染は、前述のように、具体的なはっきりとした接触歴のない人では
ほとんどおこっていない。
そして、今まで言われていたようなN95マスクでなくても、


外科用マスクで十分に予防できることがわかってきた。


今年の冬は、これから、厚労省の指針が出ると思うが、
外科用マスクをしていれば、万が一SARS患者と接触しても、
10日間自宅待機をしなくてもいいことになるそうだ。

まとめ。
SARSは、主に、飛沫感染と接触感染で広まる。
潜伏期は      2-7日 まれに10日        ・・・・・・・・・ 感染性無しか非常に低い
前駆症状期    1-2日 (発熱・筋肉痛・咳・頭痛) ・・・・・・・・・ 感染性低い
下気道症状期   咳・呼吸困難              ・・・・・・・・・ 感染性は非常に高い

死亡率:4%くらいだが、56才以上は50%以上。逆に、17才以下は0。
(以前は、10%くらいといわれたが、そこまで多くないようだ。)
予防は、マスクと手洗い。水道の水で良いからよく洗うことが必要。
体液(血液・喀痰・尿・便・膿)は、感染性がある。
消毒は、消毒用アルコール(噴霧ではなく、拭くことが必要)・家庭用漂白剤・
(50-100倍に希釈した漂白剤)
中性洗剤も可

(界面活性剤が含まれる合成洗剤を水で二百倍に薄めた中に、百万個の同ウイルスを約二分間入れた。その後、ウイルスをサルの細胞に触れさせ感染力を調べると、まったく感染しないことが判明した。
 合成洗剤を薄めた水に浸したぞうきんでふき掃除をしたり、複数の人が共用する食器や衣類を洗うのに使うと、感染の危険性を減らすのに役立つ。)


衣類等は、80℃以上で10分の熱湯消毒。
(上記の理由によって、ふつうの洗濯でもいいようだ。)

というわけで、今年は、インフルエンザが流行り始めたら
職員も含めてマスク姿になることにした。
ある程度知識があれば、万が一の時、パニックにならないですむ。



 

   


インフルエンザワクチンをうつべきかどうか?の話。
毎年、わかりにくい話をしているが、どうしてか?
ワクチンが効くと言う医者もいるし、(これが大半だが)
効かないという医者もいる。
国立感染症研究所のHPでも、「効果があるから、予防に受けるように」と書いてある。
効果のある年には、
「インフルエンザワクチンを打たなくて、インフルエンザに罹った人の80%は、
ワクチンをしていれば、ならなかった。」と書いてある。
もちろんそれは、嘘ではない。
だったら、僕たち一部の医者がどうして効かないと言っているのか?
それは、統計の出し方の問題なのだ。

   さて、このインフルエンザワクチンだけど、
2005年1月から4月のデーターが手に入った。

   全国43医療施設で、
インフルエンザワクチンの予防接種を受けた人 1万4364人と、
受けなかった人 3101人を登録した。
その後、
2005年4月30日までにインフルエンザにかかったかどうかを調べた。

   その結果、
接種を受けながら発症したのは696人(発症率4.8%)。
逆に受けない人のうち発症したのは206人(同6.6%)だった。
接種でインフルエンザにかかる率がどの程度低下するかを見る
「有効率」は約27%となった。

  どうも、この有効率というのがあやしげな言葉である。
普通に聞くと、100人に使ったら27人は罹らなかった。
という風に聞こえる。
そうではない。
ワクチン接種者の発症率   4.8%
ワクチン非接種者の発症率  6.6%
これを割り算して、4.8÷6.6=0.727
これが相対危険比である。
相対的な危険がどれだけ減るのかは、
1-相対危険比=1-0.727=0.23
これが、相対危険比減少 
つまり、これを有効率として出しているのである。
この値を使うといかにも効いていそうな感じになってしまうが、
これを絶対危険減少で表すと、
6.6-4.8=1.8と少ない。
さらに治療必要人数(NNT)
(一人をインフルエンザに罹らないようにするために
 何人にワクチンを打つ必要があるかという数)
は、  1÷0.018=55.55555
つまり、55人に打つと一人罹らないですむということになる。


   要するに、去年も効いていない。
一昨年もそうだった。
ワクチンの型と、実際に流行ったインフルエンザの型が違ったのだろう。
と言われているが、 はたしてそうだろうか?
4年前と3年前は効いたそうである。
実は、そこに統計の怖さがある。
具体的には、
2002年
ワクチン接種者の発症率   0.3%
ワクチン非接種者の発症率 1.2%
有効率(相対リスク減少):75%
NNT:111人

2003年
ワクチン接種者の発症率  1.9%
ワクチン非接種者の発症率 5.9%
有効率(相対リスク減少):68%
NNT:25人

2004年
ワクチン接種者の発症率   1.7%
ワクチン非接種者の発症率  2.4%
有効率(相対リスク減少):29%
NNT:143人

2002年前は有効率75%だったけどNNTは111人
2003年前は有効率68%でNNTは25人

世間一般には2002年と2003年のワクチンは
よく効いたことになっている。
有効率が高いからだ。
でも、治療必要人数には大きな差がある
(効いているといわれている2002年で111人だった。)。

   この有効率と言う言葉は、
誰が定義したのか調べても出てこないし、
正式なものではないようだ。
正式には「相対リスク減少」のことである。
この「相対リスク減少」を使うと、
効いていないワクチンが
いかにも効いているように見える。
だから、
「相対リスク減少」を
「有効率」という言葉に置き換えて使っているとしか思えない。

    我々医者も、よく製薬企業のデーターで
この「有効率」に騙される。
つまり、
もともと、たいして効いてない薬を
いかにもよく効くように見せかけるために、
「相対リスク減少」を「有効率」という言葉に
置き換えただけのものなのである。
実に巧妙で、びっくりしてしまう。

以前、前橋市では、インフルエンザワクチンをいっさい試行しなくて、
周囲の都市とくらべた時、インフルエンザの発生に差がなかった。
(これは、前橋スタディといわれて、国際的に評価された事実である。)

ということで、インフルエンザワクチンは今のところ、積極的には奨めていない。

やめなさいとは言わないが、こちらから打ちなさいとも言えないのが現状である。
重大な副作用は、100万接種あたり1件といわれている。
宝くじに当たるくらいだけど、宝くじって当たる人がいるから、
命をかけてやるにはやはり勇気がいる。
今年も、納得してくれる人には鼻に噴霧しようと思う。


2004年10月20日 追加の話
     今年2004年の1月~4月の
インフルエンザワクチンの有効性についてのデーターが
札幌市で開かれた日本ワクチン学会で10日、発表された。
以下は、内容。 
27都府県の46医療機関で、
あらかじめ登録したワクチン接種者約1万2800人と非接種者約3200人を対象に、
今年1~4月にかけてインフルエンザにかかったかどうかを調べた。
インフルエンザの診断キットで陽性と判定された290人のうち、
ワクチン接種者は213人、非接種者は77人。
この結果をもとに、ワクチンがどれだけ効いたかを示す有効率を計算すると、
大人(15~64歳)で40.3%、子ども(15歳未満)で44.2%だった。
有効率は、3年前の冬が大人73.9%、子ども74.6%、
2年前の冬は大人75.0%、子ども58.8%だったので、昨冬は大きく下がっていた。
調査結果をまとめた臨床内科医会の河合直樹医師(岐阜市)は
「ワクチンに使ったウイルスと実際に流行したウイルスが一致していなかった可能性がある。
昨年は流行規模が大きくなかったのが幸いした」と話す。
インフルエンザの流行はここ数年A香港型が主流だが、
同じA香港型でも突然変異で少し変化したウイルス株が次々と現れている。
国立感染症研究所などによると、
02年ごろに、それまで見られなかった変異型のウイルス株が世界的に流行し始め、
日本で昨冬に患者から取れたウイルスも、ほとんどがこの変異型だった。
今冬のワクチンは、この変異型のウイルスをもとに作られているという。

    このデーターからは、大人と子供のそれぞれの人数がわからないが、
全体で計算すると、
相対リスク減少率は、31.1%
(ワクチンを打つことによってインフルエンザにかかる危険を、打たない場合より減らす率)
治療必要人数は、133.3人
(インフルエンザにかからないように
 133.3人にワクチンを打つと
 一人だけ罹らないですむ。)


・・・どう考えても、効いてるとは思えない。
133.3人の一人になるためにインフルエンザワクチンを打つ気には、
僕なら、とうていなれない。

    これまで、インフルエンザワクチンを積極的に推奨していた偉い(?)学者先生たちも、
今年は、ずいぶんトーンダウンしてきた。
「ハイリスクの人は打った方がいい。」といったニュアンスに変わってきた。





    医者からみた藪医者の見分け方

    とりあえず、身近な病気で医者にいったときに、
その医者が信頼できるかどうかを見分けなければいけない。
なにをもって信頼出来るとか出来ないとか決めるのか?
基準は、人それぞれの価値観も違うし、様々だとは思う。
しかし、少なくとも、僕が肝に銘じているのは、

「医者が患者に害をなさないこと。」である。

今はやりのEBMという言葉(根拠に基づいた医療)も、
元々は、根底に前述の考え方がなければいけないし、
実際その考え方に根ざして発展したものなのだ。
しかし、今では、そのことにふれる人は少なくなってしまった。

  そうした考え方に根ざして患者をみているかどうかが一番大事ではないかと思っている。
そういう意味では、患者の希望通りの治療をしないこともしばしば有るかもしれない。

  
風邪
1.やたらに、鎮痛解熱剤を出す医者。
(ロキソニン・ボルタレン・PL顆粒も含む)
  この薬を飲むと楽になるので患者の受けはいい。
  薬の副作用は、かなり多いし(特に胃腸障害)、風邪の治りも悪くなる。
  僕に言わせれば、悪魔に魂を売っているのか、何も考えていないばか医者である。
2.熱が有れば、とにかく抗生物質を出す医者
  よほど、自分の医療に自信が持てないのだろう。

  
頭痛
1.とにかく、鎮痛解熱剤を出す医者。
  金儲けだけを考えているのか、知識がないのかどちらか。
  鎮痛解熱剤は、痛みの原因をとっているわけではない。
  頭痛の90%は筋緊張性頭痛といって、肩から首の筋肉が緊張して収縮したために
  頭蓋骨を締め付けて起こるものである。
  従って、その筋肉の緊張をほぐす作業をすると頭痛は改善するし、
  肩こり予防などの体操を指導すれば、自己コントロールも出来るようになる。
  (薬を出さないし、説明や作業に時間がかかって経営上はマイナスだ。)
  
  
腰痛
1.とにかく、鎮痛解熱剤を出す医者。
  頭痛の時と同じ理由。
  ただ、痛みをやわらげてあげる必要もあるから、仕方のない一面もある。
2.電気・牽引をする医者
  まったく意味がない。気持ちがいいと感じるだけである。
  金儲け目的が主。
  患者の不安をやわらげたり、毎日経過観察できるといった点はあるかもしれないが・・・。

 
 おなかの風邪(感染性胃腸炎)
1.なぜか、この病気にも抗生物質を出す医者がいる。
  ウィルスによるものなので効くはずがない。
  これに至っては、理解に苦しむ。
  すべての病気に一律に抗生物質を出しているのだろうか?
2.ブスコパンなどの鎮痙剤
  痛みがひどいときに一時的に出すことがあるが、年に数回出すくらいだ。
  ほとんど全部の患者に、毎食後に出す医者は、そうとうあやしい。

 
 気管支喘息(風邪に伴った喘鳴も含めて)
1.気管支拡張剤や抗生物質だけ出して、気管支の炎症を抑える治療をしていない医者。
  治す気があるのか?
  この状態は、気管支の炎症がベースになって起こっているのだから、
  対症療法(原因を治療しないで、とりあえず症状の改善だけする治療)だけしていても・・・

  以上、思いつくままにあげてみたが、参考にしてほしい。





   
    
運動中の水分摂取

 最近の運動中の水分摂取に関する常識は、
「喉が渇く前に十分飲む」というものだ。
のどの渇きを満たしただけでは水分不足が生じるという知識は、
多くの人が書籍や指導者、仲間から得る。
ところが、この“常識”が時に死に至る危険をもたらすと指摘した論説が、
British Medical Journal誌の2003年7月7日号に掲載された。

  運動中の水分摂取に関する既存のガイドラインは
次の四つの前提に基づいている。
  1.運動中の健康をおびやかす最大の危険は水分不足であり、
   運動中の体重減少は補う必要がある。
  2.のどの渇きを満たすだけでは真の水分欠乏を解消できない。
  3.運動中の水分補給の必要性はどの運動でも同様。
  4.大量の水分摂取は無害。
この結果、アスリートは、体重減少に匹敵する量か、
飲める限り多く飲む量として1時間に600~1200ml飲むことが推奨されている。

 しかし、これらの前提はエビデンスに基づいたものではない。
こうした「飲めるだけ飲むべき」とする常識がもたらす危険の一つが
血液の希釈による低ナトリウム血性脳症だ。

 水分の過剰摂取は有害なことがあり、時に致命的な結果を招くこともある。
おそらく(現段階での)最良の水分摂取法は、
スポーツドリンクなどの電解質の入った水分を
(作るのなら、水1Lに食塩3g、砂糖40g、オレンジ果汁等を加えるのが目安)
(上記は、治療用のソリタT2顆粒の塩分を参考にしているので、
塩っぱいと感じるかもしれない。予防なので、
もう少し薄くしてもいいように思う。たとえば、塩2gから1g。)
飲むことで、持続的に運動をするなら
標準的な分量は1時間当たり400~800ml
体格や運動の激しさによって増減すべきだ。
ちなみに、ポカリスエットが、僕の知る限り(全部調べていないが)
一番ナトリウムが多い。
しかし、それでも、1L中に0.5g程度しか入っていない。
塩が多いと味が悪いせいだろうか?

 日本ではマラソンランナーの推奨摂取量は
15分間ごとに200ml程度とされている。
体格差を考慮すると、もう少し少なくてもよい計算になる。
常識としてきた「できるだけ水分を摂る」は、
「適正に、適正な電解質の入った水分をとる」と内容追加が必要だ。

 本論文の原題は、「Overconsumption of fluids by Athletes」。
全文はこちらまで。



  尊厳死を選択する意思表示 


尊厳死を選択する意思表示


 
  
 私(      )は、尊厳死を選択します。
 
  将来、私に病気あるいは事故により
致命的な事態が生じた時
単なる延命行為はしないように希望します。
具体的には、心肺蘇生、挿管です。
さらに、延命目的だけの点滴や注射(中心静脈栄養や経管栄養も含む)もしないで下さい。
この場合の致命的な事態とは、具体的には、
長くても1ヶ月程度しか生きられないことが明白な事態と考えていますが、その趣旨をくんで理解してください。
また、たとえば、致死的な原疾患のない状態での心室細動などでの突然死に対しての蘇生術(ACLS)は、この文書があるからといって、施行を差し控えないでください。

 また、私の苦痛を和らげる措置は最大限にしてください。
そのため、たとえば麻薬等の副作用で死ぬ時期が早まったとしてもかまいません。

 また、その医療処置により、たとえ生命が回復する可能性があっても、
意識障害などの重大な障害が残る場合は、同様に上記の処置はしないで下さい。

 最後に、この宣言を聞き入れて
私の要望に従ってくださった皆様に感謝いたします。
そして、私の要望に従って行われた一切の行為の責任は
私自身にあることを明記いたします。

日付     年  月  日

                                     住所:
                                     氏名: 

  上記のものは、僕の尊厳死選択の宣言です。
将来、修正や変更があるかもしれません。
尊厳死の宣言をしたいとお考えの方は、参考にして下さい。
お気づきの点があれば、是非教えて下さい。
2004年1月16日追加記載があります。(後述)


   この宣言を、出来れば自筆で書面にして、
誰かの目の届くところに置いておくことが重要です。
(万が一の時は、自分では、取り出せないので。)
そして、万が一の時は、(多くの場合、他の誰かが)
それを担当医に提示することです。
 
文章の部分はコピーでも良いかもしれませんが、
サインと日付は最低限自筆であることが必要です。
出来れば、捺印もした方がいいと思います。
僕は、診療所の待合いに貼っておきました。


(2004年1月16日)
尊厳死の宣言文書に下記のことを追加しました。

尊厳死宣言している場合、医療現場で、
助かるかもしれない状態での救命処置を差し控えられる可能性があるからです。

「たとえば、致死的な原疾患のない状態での心室細動などでの突然死に対しての蘇生術(ACLS)は、この文書があるからといって、施行を差し控えないでください。」



   たばこの害 (是非、禁煙しましょう!)
禁煙人口を減らすのに、一番有効な方法は、禁煙キャンペーンではなかった。


”たばこの値上げ”が一番効果的なのだそうだ。

だから、今回のたばこの値上げも、「もっと上げろ!」という運動があったが、
たばこ販売会社(JTだけではなくて、外国の強力な会社も含む)の
強力な反対にあって一本十円で押さえられたらしい。

 マルボロのキャンペーンでハリソンフォードのそっくりさんの俳優が
使われていて、彼が、休憩中にたばこを吸っていて、
たばこ会社のえらいさん達がたばこを吸わないので
いぶかしく思って聞いてみると、こんな答えが返ってきた。
「たばこは、貧乏人と黒人と若い奴らが吸うものだ。
我々は、そんなものは吸わない。」
「君の役割は、10代の若者を一人でも多く喫煙者にすることだ。」

  アメリカでも若年者の喫煙が問題になっている。
たばこ会社のターゲットは10代の若者なのだ。
一回たばこ中毒にしてしまえば、
その後、ずっと死ぬまでたばこを吸ってくれるのだから、
若ければ若いほど好都合なのだ。


「すまないね!
たばこが原因で死んでいく人が多いんだ。
喫煙人口はすぐに減るから・・・。
だから、
君たち若者が一人でも多く
喫煙者になってもらわないと困るんだ。」


といったナレーションが流れる中に
子供達にむかってたばこがゆっくり何本も空から降ってくる。
これが、アメリカの若者に禁煙を呼びかけるコマーシャルだ。
そして、もちろん、
いまはたばこのコマーシャルなんてむこうでは流れていないはずだ。
ちなみに、若年者が持続的にたばこを吸うのには、
自動販売機(児童販売機)がそれを助長している。


マルボロのコマーシャルで、
昔、たばこを吸っていたかっこいいカーボーイ達は、
今はみんな肺癌で死んだり、
あるいは、酸素吸入器につながれている。

  今度から、日本でも”肺癌や心筋梗塞”などの
具体的な病名をあげて、
たばこのパッケージに注意書きが書かれるらしいが、
僕から見れば、まだ生ぬるい。
日本の21世紀の肺癌死は、20世紀の10倍になることが予測されている。
肺癌の90%以上がたばこの害であることも証明されてきた。
外国のように、



「吸ったら、死ぬで!」とか、
「肺癌になるで!」




と、大きく正面に書くべきである。

  たばこの具体的な害は、近いうちにまたアップしようと思う。
とにかく、たばこは本人も、周りの人間にも
肺癌をはじめとした多くの害を及ぼしている。
 
    たばこの害は、これまで、たくさん言われている。
今更言うまでもないと思われるかもしれないが、改めて確認してもらいたい。

  前述のように、肺癌の90%以上は、その原因は喫煙(受動喫煙も含む)
にあることがわかってきた。
そして、肺癌死は、近い将来、日本人の死因のトップになる。

  人口10万人あたりの生涯死の確率というのがある、
毎年胸部レントゲン写真を撮ると、      0.05~0.5人
ディーゼルの排気ガスの多いところに住むと   300人
配偶者がたばこを吸うと               700人
  
  これだけでも、桁外れにたばこが有害であることがわかる。
それも、本人だけでなく周りを巻き込んだ害である。

  まだある、
母親がたばこを吸うと、胎児の精神構造に悪影響が出る。
生まれてきた子供のリスクを見ると
ADHDという病気
(じっとしていられないで絶えずあっちに行ったりこっちにきたり、
あれこれものをさわったりする子)が生まれる確率が  2.8倍
行為障害(平気で万引きなど悪いことをしてしまう子)  4.2倍

その後も、子供が病気になる確率も高い
中耳炎            1.6倍
喘息              1.5倍
アデノイドや扁桃腺炎   2.1倍
肺炎              2.5倍

受動喫煙だけでこれだけ害があるのである。
いわんや、当人おや!である。
そして、親がたばこを吸っていると、
子供がたばこを吸う確率が格段に高い。
親が、たばこを吸っていると、
その子供は、自然にたばこを吸うようになってしまう。
子供にまで、肺癌の道を歩ませているのである。
(そうでなくとも、受動喫煙させているのに・・・。)

たばこを吸ってないと、
たばこを吸っている人は、すぐにわかる。
においである。
当人の吐く息が臭いだけでなく、
衣服にも、手の指にもにおいがしみついている。
そして顔つきである。
目の下のクマが目立ち、しわが多い。
眉間に縦皺が寄っている。
歯にはヤニが着いているし、歯ぐきもどす黒い。
唇もきれいなピンクではなく、黒っぽいし、
顔色も悪い。
さらに進むと、首筋にも、しわが目立つようになる。

オードリヘップバーンの若い時は、すばらしく美しかった。
40歳代以降、ずいぶんしわくちゃになって、ふけ顔になってしまった。
たばこのせいである。
身近にはキムタクや工藤静香がそうらしい。
(僕は、よく知らないけど・・・・。)

このように、たばこは、毒なのである。
それも、周りを巻き込んだ毒である。
マリファナを禁止するように、たばこも禁止してもいいくらいである。
是非やめてもらいたい。
”減らすのではなく、やめる”のである。
よく、マイルドとかライトとか言っているが、
”タールやニコチンが減ったから癌になるリスクが減った”
ということではないのである。
それに、その、軽くなったと言っているたばこにもからくりがある。
あの記載の数字は、正確には覚えていないが、
3cmの長さを、一分間に一回軽く吸った時(たしか1秒か2秒)の量である。
しかも、機械なので、吸い口のフィルターは、指で押さえられていない。
実際は、もっと吸い込むし、頻度も多い。3cm以上吸うだろう。
そして、
フィルターの横にあいている、煙を逃がす小さな穴は、指が塞いでいる。
たばこ会社の戦略通りに、やられっぱなしである。
目を覚ましてほしい。
禁煙は、
誰でも、
いつでも出来るし、
お手伝いは諸手をあげてする。

禁煙しましょう!

そして、
周りの人も、禁煙させましょう!




愛する人を、たばこの作った癌で失いたくないから・・・。

 
 禁煙の仕方
  禁煙をしようと決めたら、具体的にどうするのがいいのだろうか?
禁煙をしようと決めた時点で、何もしなくても1/3の人は成功する。
そして、1/3の人は、ニコチンパッチなどの薬の助けで成功する。
最後の1/3の人たちは、がんばらないと失敗する。
後2者のグループは、(特に最後のグループは)
ニコチンの代謝酵素が遺伝的に少ないために、
たばこを吸っていた時の血中のニコチン濃度が高くなっていて、
ニコチン中毒が強いためにそうなるのである。
(もちろん、本人の意志の問題や、
やめようと思う気持ちの強さも関係があるが・・・。)

たばこを吸うと、すぐに10秒ほどで血中のニコチン濃度が急上昇する。
このニコチン濃度は、1時間で半減するので、また吸いたくなってくる。
3日やめると、体からニコチンは完全に消失する。
禁煙して3日目が一番つらいはずである。

では、いよいよ禁煙実行である。
思い立ったら吉日!すぐにやめる。というのもいい。
しかし、世の中いろいろと障害がある。
禁断症状の一番きつい日に、(禁煙後3~4日)
たばこが吸いたくなるような状況が予測されるのなら
その日を避けて、禁煙を開始するのもいいと思う。

意志の力だけで、禁煙できる人もいるが、
中毒になっている人は、意志の力だけでは、難しい。
中毒になっているかどうか判断するのは、簡単である。
朝目が覚めた時に、一番最初に何をするのかである。
前述のように、ニコチンは1時間で血中濃度は半減する。
だから、朝一番は、ニコチン中毒の人は、禁断症状が出ているので、
「とにかくたばこが欲しい。」のである。
目が覚めて、朝1番に布団の中からたばこに手を出している人は重症である。
気になる人は、後述の依存度チェックを参照されたい。
そんな人たちは、たばこ以外の方法で
ニコチンの血中濃度を上げて、禁断症状を和らげる必要がある。

現在日本では、ニコチンの血中濃度を上げるには
1.ニコレットというガムをかむ。
2.ニコチネルという貼附製剤を貼る。
のいずれかの方法がある。

 1.は薬局で売っている。
たばこが吸いたくなったら、ガムを口に入れてゆっくりかむ。
ゆっくりというのが重要である。
ピリッとした味を感じるまで、だいたい15回くらい噛みます。
落ち着いたら、歯ぐきとほっぺの間に挟んでおく。
味がなくなるまで、約1分かかる。
以上を繰り返して、約30分でもとのシートに入れて捨てる。
はじめは、6~12個/日から開始して、1~2個/日になったらやめる。
値段は、買ったことがないので不明。

 2.は医師の処方箋がないと手に入らない。
はじめは、30mgの製剤を貼る。
貼りっぱなしで24時間いてもいいし、夜は、はがしてもいい。
お風呂の時ははがす。
ただし、貼ってから効果が出るまで、2時間近くかかるので、
朝、たばこが欲しくなったら、ニコチネルを噛むと良い。
2~4週間で20mgに切り替える。
さらに2週間で10mgに変更して、都合6~8週で終了する。
中毒のきつい人は、8週考えた方が良い。
この方法は、結構評判がいい。
貼っているとあまり欲しいと思わないとのことだ。

いずれにしても、禁煙を始めたら
絶対に、1本も吸わないことが大切である。

ニコチネル30mg2週間分14枚で、17000円くらいだと思う。
高いとは思えない。
だって、300円のたばこを毎日1箱吸って、1ヶ月で9000円である。
一年で、10万8千円である。10年で100万円が煙で消えるのだ。
自分自身や周りの人たちの健康を損ねたうえにである。
将来ずっと、この出費がなくなるのだから。

禁煙をしていて、吸いたくなる時がある。
宴会や麻雀は出来るだけ避けた方が良い。
禁煙を初めて、3日目が一番つらい。
それから、2~3週間で大分楽になるのでがんばって欲しい。

  たばこを吸いたいと思ったら、
1.思いっきり冷やした水か、熱いお茶を飲む。
  朝起きて一口、食後に一口、吸いたくなるたびに一口である。
2.深呼吸をする。
  いっぱいに空気を吸い込んで、吐く時は口から糸を吐くように
  細く、ゆっくり肩の力を抜いて吐く。
3.体を動かす。
  歩く、体操をする、歌を歌う、電話をかける、音楽を聴く。
4.場所を変える。
  食後など、たばこが欲しくなる時は、
  食べ終わったらすぐに席を立つようにする。
5.歯を磨く。

たばこに火をつけるのは、これらを試した後でも遅くないはず!

禁煙後
1日目、1週間目、1ヶ月目に山がある。
それを過ぎると楽になるので、
前述の期間はつらくて当然、ここを乗り越えて欲しい。
くじけそうになったら、
どうして自分は禁煙したのか、その動悸を思い出したり、
禁煙して良かったこと
(周りからの評価、
食べ物の味やにおいがよくわかるようになったことなど)、
を思い出して欲しい。

たばこをやめると太る!
これは、
1.たばこにエネルギーの燃焼細胞を活性化させる作用がある。
2.たばこをやめると、口寂しくなりつい食べてしまう。
といった理由があるからである。
対策は、前述のニコチンガムや、
歯磨き、ノンカロリのガムやキャンディー、お茶、水である。
また、運動をする習慣をこの機会につけるのもいい。
たとえ、3~4kg太ったとしても、
それにまさる健康が手にはいるので、それを理由にしないで欲しい。
特に女性は、美しい顔が戻るのだから・・・。(男でもそうかな?)

ニコチン依存度チェーック!

1.起床後何分で最初の喫煙をしますか?
             5分以内      :3点
            6~30分      :2点
            31分~60分    :1点
            61分以降      :0点
2.寺院や図書館など禁煙の場所で禁煙することがつらいですか?
            はい         :1点
            いいえ        :0点
3.一日の喫煙でどれが一番やめ難いですか?
           朝最初の1本     :1点
           その他         :0点
4.一日に何本吸いますか?   
           10本以下      :0点
           11~20本      :1点
           21~30本      :2点
           31~         :3点
5.他の時間帯より、起床後数時間に多く喫煙しますか?
           はい         :1点
           いいえ        :0点
6.ほとんど一日中床に伏している病気の時も喫煙しますか?      
           はい         :1点
           いいえ        :0点

合計得点で
0~3点   依存度低い
4~6点   依存度普通
7~10点  依存度高い

最後に、禁煙に失敗しても、あきらめないで欲しい。
禁煙に成功しても、1年後に吸っている人は多い。
3人に1人しか、一年後禁煙を維持している人はいない。
一回で成功できることの方が珍しいのだ。
だから、失敗してあきらめないで、
再度、何度でもチャレンジして欲しい。
回数が増えるたびに、成功する確率も上がるからだ。
その時に、意識して欲しいことは、
「前回、失敗した時の原因は何だったか」はっきりと認識して
同じ轍を踏まない工夫をして欲しい。

最後に、モームの有名な一言を。
(受験時代、この人の文章が、一番苦手だったなぁ)




「禁煙なんて、簡単なものだ。 
 私は何回もやっている。」




 

      プロトピック
     プロトピックは、アトピー性皮膚炎の治療薬である。
もともとは、移植後の免疫抑制剤だ。
アトピー性皮膚炎は、繰り返し起こる皮膚の炎症で、
昔に比べて、ずいぶん患者が増えてきている印象がある。
アトピー性皮膚炎は、
副腎皮質ホルモン(ステロイド)の外用が効果があるが、
使い方を誤ると、副作用に苦しまないといけない。
基本的には、だらだらと付け続けないことが大切である。
3日連用したら、4日は休む必要がある。
そのために、ステロイドを使わない治療法、
あるいは、ステロイドを休む間の治療法として、
プロトピックが使われるようになった。

プロトピックが承認販売されて約4年経過した。
プロトピックは、日本でも外国でも、小児の移植後の全身使用で、
10%前後に悪性リンパ腫が発生している。
そして、アトピー性皮膚炎の掻破痕やびらん面からは吸収が多くて、
経口投与した時と同等の血中濃度になりうることから、
その承認の審議の際にも、厚生省審査事務当局から
「悪性リンパ腫は明らかに発生する。」という認識が表明されている。
また、プロトピックを塗った皮膚が紫外線に暴露された時には、
皮膚癌の発生率が増加し、死亡率が上がることが
動物実験で明らかにされている。

 そんな危険性のある薬を、実際に使用する医師に
十分に情報を伝えないで承認するやり方は、
もういい加減終わりにしてもらいたい。
MRという製薬メーカーに所属して、
自社の薬剤情報を医者に伝える活動をする人たちがいるが、
彼らは、自社の製品がより多く使われるように活動しており、
マイナスになる話はまず話さない。
こちらが知っていて、追求するとしゃべるが、
自分から言い出すことはない。
だから、僕はMRとは面会しない。

僕は、”正しい治療と薬の情報”誌を定期購読しているから、
情報を得ることが出来るが、
ほとんどの医者は、そんなことは知らないままに、
ある日そのことが社会問題になって取り上げられる日が来るまで、
使い続けるだろう。
(この雑誌を読んでる医者は、医者の数%だろう。)

 そして、そんな薬が、小児用として濃度は薄くなってはいるが、
もうすぐ承認されそうだ。
具体的には、
6月29日に開催される予定の薬事食品衛生審議会の
薬事分科会での審議と、
厚労省としての承認の手続きが残っているが・・・。

  どんな判断が下されるのか見守ってゆきたい。
もちろん、プロトピックは、今のところ、使うべき物質ではなさそうである。
(あえて、薬とはいわないでおく。)
なぜなら、アトピー性皮膚炎では、命の危険はないけど、
悪性リンパ腫や皮膚癌は命の危険があるから。

   前立腺癌(続編
  
  以前の前立腺癌の話に、
追加する情報が入ったので、それについて。
近大泌尿器科の助教授に
前立腺癌のことについていろいろと教わる機会が得られた。
前にも書いたが、アメリカでは、
前立腺癌が男性の死因の第2位である。
当然前立腺癌の治療も進んでいる。
日本では、早期のもの(PSAだけが高値で
腫瘤(癌のかたまり)がまだ認められないもの)は、
前立腺全摘出術が行われるのが主流である。
しかし、実は、その半分近くは、
癌が十分に取りきれてなくて残るのだそうだ。
その上、手術による障害も残る。(詳しくはコラムの前立腺癌を参照)
したがって、アメリカでは、放射線療法が主流になっている。
放射線療法も、そのまま当てれば、
直腸障害などの副作用が出るので、
病変部にだけ集中的に当てる技術がいろいろと工夫されている。
日本でも、兵庫県にある放射線施設で
重粒子を用いた治療がなされている。
重粒子は、その性格上、
照射した表面からさらに奥に入ったところで、
エネルギーが最大になるので
目的の部位だけに大きなエネルギーを当てることが出来るのだ。
でも、保険がきかなくて、300万円かかるそうである。
いま、有力な治療は、放射性のマイクロチップ(針)を
何本も前立腺に埋め込む方法である。
これだと、手技も簡単で、苦痛も少なく、
入院の翌日には歩いて退院できるそうだ。
アメリカはこれが主流である。
日本では、まだ保険がきかないが、
数年先には使えるようになるだろう。
前立腺癌は、ゆっくりとしか進行しないので、
今、早期癌だといわれた人も、
watchful waiting でその時期まで待てる可能性は高い。


  高血圧ガイドライン
   第7次米国合同委員会報告による高血圧ガイドライン
  (JNC7 2003年)を見てみると、
正常者        :120/80未満 (高い方も低い方もこれを満たす
                        必要がある。)
高血圧前症     :120-130/80-89(高い方か低い方のいずれかが
                         この範囲)
高血圧症ステージ1:140-159/90-99(高い方か低い方のいずれかが
                         この範囲)
高血圧症ステージ2:160以上/100以上(高い方か低い方のいずれかが
                         この範囲)
ということになった。
今までは、120台/80台の人たちを正常者としてきたが、
今後この人たちは、要注意者になってしまったわけだ。
これはしかし、年齢の要因を加味していない。
僕は、以前から20歳台までの人に関しては、
120台/80台の人たちに
「高いで! 身内に高血圧症があるなら、特に要注意やで!」
と話していた。
しかし、年配の人(特に60過ぎ)に関しては、
それくらいの血圧は問題ないと思っている。
70歳代なら160/90までは、薬を出さない。
なぜなら、高血圧症の治療の目標は、
”その人が、ほぼみんなが寿命と認めるくらいの年齢まで
元気に機嫌良く生きられること。”と思っているからだ。
そのために、”現在の血圧で、この先、血管や心臓が何年持つか”
を考えることになる。
若者は、50年先まで考えないといけない。
70歳台のひとは、その人に聞くことにしているが、
100まで生きたいという人にはまだ会っていない。
みんな、せいぜい80歳台で死ぬ直前まで、
麻痺や痴呆にならないで生きられたらいいと考えておられる。

 ちなみに、高血圧症の診断基準が厳しくなった理屈は、
動脈硬化のない、しなやかな血管なら
(たとえば、そこらあたりを歩いている高校生の血圧を測れば、)
血圧は、100/70位である。
そのくらいの血圧があれば、全身にくまなく血液が行き渡るのである。
それ以上に高いのは、必要以上に高いということである。
ということは、必要以上に血管や心臓の負担が
大きいということになるのであり、
動脈や心臓の傷みが進展することになる。
だから、全身にくまなく血液が行き渡る必要最小限の血圧で
生きているのが有利なのである。

 ただし、病院で医者がはかると、おうおうにして高い血圧が出る。
”白衣高血圧”というやつだ。
これに関しては、
「治療すべきだ」という意見と、「治療は必要ない」という意見があって
確定的なデーターがない。
しかし、”そこらあたりを歩いている高校生の血圧”は、
白衣の前でも高くない。
白衣高血圧は、高血圧症の前兆であることは間違いないと思う。
だから、塩分制限は指導させてもらっている。
理想的な血圧測定は、
1.座位(いすでも、畳でも座って)で
2.腕に服がまとわらない状態で、
3.上腕(肱から上)にマンシェットをまいて
  (自動血圧計なら左腕で)
  (家庭用の自動血圧計は左腕ではかるように作られているから)
  (本来は、病気で腕に行く血管が狭くなったりしていなければ、
   右も左も血圧は同じである。)
4.落ち着いた状態ではかる。
  (しゃべりながらはかると高くなる。)
5.風呂上がりや、お酒を飲んだ後、食後すぐは低いが、
  普段の血圧の反映にはならない。
  また、寒冷にさらされている時は高い。
6.肥満(腕に脂肪が分厚く付いている人)も高めに出る。
7.理想的な状態で血圧計を巻いて、医者や看護婦ではなくて
  機械ではかるのが普段の血圧を一番反映している。

  参考までに、僕の友人たちは、
少し高めでも、(ステージ1で)血圧の薬を飲み始めている。
その方が、さっき述べた理由から、
高血圧症を放っておくよりも、リスクが低いからだ。


  前立腺癌
   最近、PSA検査(前立腺特異抗原)が盛んに行われるようになって、
早期の前立腺癌が発見されるようになった。
これがいいことなのかどうか、頭を悩ましている。
アメリカでは、男性で最も多い癌で、
肺癌に次いで2番目に多い癌である。
全米では、
2002年には、18万9000人が前立腺癌の診断を受け、
3万200人がそのために死亡している。
生涯リスクは、罹患(前立腺癌にかかること)が、6人に一人。
死亡が29人に一人である。
日本では、1994年の罹患者は9088人、
1995年の粗死亡率は10万人あたり7.8人である。
男性の癌死亡の部位別順位は第10位である。

 発生率に人種差があり、
アメリカの黒人、白人、ハワイの日系人、日本人の順に
およそ、10:6:3:1の比である。
したがって、人種差だけでなく、
生活習慣なども発生に関与していると思われる。
日本でも、高齢化と生活の欧米化により
増加しつつあるといわれている。

 もうひとつの特徴は、潜在癌が非常に多いことである。
(つまり、何も症状がない状態でとどまっている癌である。)
日本人の最新データーでは、50歳以上で34.6%である。

 症状は、初期には無症状である。
進行してくると、前立腺肥大症のように
排尿しようと思っても、すぐに尿がでない。
尿の勢いが弱い。
などの症状が出てくる。
骨に転移すると(骨への転移が多い)その部位の痛みが出てくる。

 前立腺内限局癌は、日本では、
積極的に前立腺全摘術が実施されることが多い。
しかし、手術しないで観察した場合と比べて、
危険と利益のバランスはどうなのか?
世界的に議論の対象になっている。

 ヨーロッパでは、前立腺に限局した癌にたいする無治療は
珍しくない。

 昨年、695人の前立腺限局癌の患者(平均年齢64.7歳)を
前立腺摘徐術とwatchful waiting (注意しながら観察していく)
の2グループに分けて、中央値6.2年追跡した研究が発表された。
その結果、
癌死は、  手術群:16/347(4.6%)
watchful waiting 群:31/348(8.9%) と手術群で少なかったが、
(2%の危険率で有意差あり)
総死亡では、手術群:53/347(15.3%)
 watchful waiting 群:62/348(17.8%) と差が無くなった。
手術を受けた群では、
他の原因で死亡した人が多かったことを示している。
また、別の報告であるが、
手術群では、勃起障害(手術群:80%、watchful waiting 群:45%)
尿失禁(手術群:49%、watchful waiting 群:21%)などの
日常生活の質の低下があった。

 この二つの報告から、
前立腺摘徐術は、患者の総死亡を減少させないし、
患者の生活の質の改善もしないということが考えられる。

 にもかかわらず、マスコミも、指導的泌尿器科医も
癌による死亡の減少のことしか言わない。

 僕の身内も、前立腺癌にかかった。
ごく初期のもので、前立腺摘徐術を受けて現在は、
健康に過ごしてくれている。
しかし、僕は、術後の排尿障害など大変に気になった。
感謝されているが、本当にこれでよかったのか、
自分では、納得できていない。
多分永久に納得できないと思う。

天皇さんも手術を受けた。日本のスタンダードはそうなのだろう。
ひるがえって、僕ならどうするだろう。
きっと、ぎりぎりまで手術は受けないという選択は大いにあるように思う。

この、「PSA検査も、実は、意味がない」というデーターもある。
アメリカの、シアトル地区は、
PSA検査による健診を早くから熱心に行っていた。
コネチカット地区は、そうではなかった。
どちらも、白人と黒人の比はほぼ同じである。
医療保険の受給者21万5521人(65歳から79歳)を対象に
1987年から1997年まで11年間追跡している。
シアトル地区では、
PSA検査を受けた人はコネチカット地区の5.4倍
前立腺摘徐術を受けた人は、5倍であった。
ところが、前立腺癌による死亡率はほとんど変わらなかった。

 日本では、この先も、PSA検査は、推進されていくだろう。
なぜなら、
1.結果が陰性なら、感謝される。
2.結果が陽性でも、早期に癌を発見したと感謝される。
3.手術を受けて、たとえ、勃起障害が起こっても、
  尿失禁になっても、命を救ってくれたと感謝される。
したがって、ネガティブフィードバックのかかる要因が無いのである。

 僕は、この先、積極的にはPSA検査をしていかないだろう。
結果が同じなら、知らない方が、気楽だから・・・。


参考文献
 木元康介:前立腺癌のPSAによる検診の問題点、TIP、Apr.2003 Vol.18 No.4
 その他。  
   エルトゥールル号事件
  
  和歌山県の南端の大島。
そこは,黒潮が近くに接岸する。
島の東側は黒潮が当たることもある。
明治3年(1870年)に樫野崎灯台が作られ,
今も断崖の上に立っている。

 それは, 明治23年9月16日の夜の出来事だった。
台風が大島を襲った。大波が,断崖を洗い,灯台は強風にさらされた。

  夜の9時頃のことだった。
操舵不能になった木造軍艦が灯台に向かって,流されてきた。
全長76mもある船が,木の葉のように波に翻弄されていた。
灯台の立つ東側岸壁の下の海は,
海面にとがった岩が,あちこちに突き出していて
”魔の船甲羅”と呼ばれる場所である。
船は,轟音ととともに真っ二つに避けて,大爆発が起こった。
乗組員は海に投げ出され,波にさらわれた。
真っ暗な荒れ狂う海で,なすすべはなかった。
運良く断崖にたたきつけられた者も,
服は,もぎ取られ裸同然で,全身傷だらけであった。
死にものぐるいで,痛む体を引きずって,
暗闇の中に唯一見える灯り,灯台の灯りに向かって
40mもある断崖を登った。
灯りだけが,生きのびる希望であった。
 
 灯台守は,嵐の中で爆発音を聞いた。
心配になり,嵐の闇の中を断崖に向かった。
灯台守は,彼を一目見て,何が起こったのかわかった。
そして,奇跡的に彼が助かったことを驚き,喜んだ。
灯台の中に彼を招き入れたが,言葉は通じなかった。
そこで「万国信号音」を見せて,彼がトルコ人であることを初めて知った。
船はトルコ軍艦であり,
他に,多くの乗組員が海に投げ出されていることも知った。
傷ついた水兵を手当てしながら,
「一刻も早く,他の乗組員も救助しなければいけない。」と思った。
「樫野の人達に知らせよう!」
灯台守は,一番近くの樫野の村に向かって,
人が1人やっと通れる,灯りもない真っ暗な嵐の道を走った。
樫野の村人に急を告げて,灯台に戻ると10人ほどのトルコ人がいた。
みんな全身傷だらけで,憔悴しきっていた。
死にものぐるいで,やっと,断崖をよじ登ってきたのだった。

  その当時,樫野には50軒ばかりの家があった。
遭難の知らせを受けた男達は,総出で岩場を降りて救出に向かった。
だんだん空が白んでくると,
海面におびただしい数の船の破片と遺体が見えた。
目をそむけたくなる光景であった。
遠い外国からきて,嵐にあって日本で死んだ海の男達の事を思い
村の男達は胸が張り裂けそうであった。
「一人でも多く助けたい!」 そう思った。
しかし,海に浮かぶほとんどは遺体であった。
「息があるぞ!」
だが,触ってみると冷たかった。
村の男達は,裸になって乗組員を抱き起こし,
自らの体温で彼らを温めはじめた。
「死ぬな!」 ,「元気を出せ!」,「生きるんだ!」
村の男達は,我を忘れて乗組員達を温めた。
そして,次々に,乗組員達の意識が戻った。


600人あまりの乗組員の内,69人が助かった。

  助かった乗組員達は,樫野の小さな寺と小学校に収容された。
当時は,電気・ガス・水道は無く,電話ももちろんなかった。
井戸もなく,水は雨水を使っていた。

  樫野の人達は,漁をして捕れた魚を,
対岸の串本で売って,米に換える貧しい生活であった。
他には,サツマイモとミカンが採れた。そして,
各家庭では,ニワトリを飼って非常用に備えていた。

  このような貧しい村に,69人もの外国人が収容されたのだ。
しかし,村人達は,「どんなことをしても助けてあげたい。」と思った。
だが,思いとは裏腹に,みるみる蓄えはなくなっていった。
台風で漁に出られないため,すぐに食料が底をついたのだった。
「もう,食べさせてあげるものがない!」


すると,一人の婦人が言った。
「ニワトリが残っている!」
「でも,これを食べてしまったら・・・。」
「おてんとうさまが,守ってくださるよ!」
女達は,そう言って,最後に残ったニワトリを料理した。

  こうして,トルコの人達は一命を取り留めたのであった。
また,
村人達は,遺体を引き上げて丁重に葬った。


  船の名は”エルトゥールル号”と言った。
この遭難の報は,和歌山県知事に伝えられ,
そして,明治天皇に言上された。
明治天皇は,直ちに医者・看護婦を派遣し,
さらに礼を尽くして,生存者全員を
軍艦 ”比叡”,”金剛” に乗せて,トルコに送還した。
この出来事は,日本中に大きな衝撃を与えた。
日本全国から,弔慰金が寄せられ,トルコの遭難者家族に届けられた。


  この話には,後日物語がある。

  1985年,イラン・イラク戦争の時である。
サダム・フセインが
「今から48時間後に,イランの上空を飛ぶすべての飛行機を打ち落とす。」
と宣言した。
イランには,日本企業の派遣員やその家族が住んでいた。
その日本人達は,あわててテヘランの空港に向かった。
しかし,飛行機はどれも満席で乗ることが出来なかった。
世界各国は,自国の飛行機をだして邦人救出にあたった。
しかし,日本政府は対応が遅れていた。
日本からの邦人救出の飛行機は出されることはなかった。
空港にいた日本人はパニック状態になっていた。

  万策尽きて,あきらめかけた時に,2機の飛行機が空港に到着した。
そして,2機の飛行機は,日本人215名全員を乗せて成田に飛び立った。
タイムリミットの1時間15分前であった。




それは,トルコ航空の飛行機だった。



なぜ,トルコ航空の飛行機が来てくれたのか?
日本政府もマスコミも知らなかった。



  前駐日トルコ大使ネジアティ・ウトカン氏は,次のように語った。
「エルトゥールル号の事故に際し,
大島の人達や日本人がなしてくださった献身的な救助活動を,
今もトルコの人達は忘れていません。
私も,小学校の頃,歴史教科書で学びました。
トルコでは,子供達さえ,エルトゥールル号のことを知っています。
今の日本人が知らないだけです。
それで,テヘランで困っている日本人を助けようと,
トルコ航空機が飛んだのです。」

   日本でも,コーヒーを飲む人は糖尿になりにくい
  1日7杯以上コーヒーを飲む人は、1日2杯以下の人よりも、
7年間の2型糖尿病発症率が5割少ない--。
このオランダの研究はLancet誌11月9日号に掲載され、
大きな話題となったが(関連トピックス参照)、
同誌2月22日号の通信(correspondence)欄には
この研究に対する様々な意見が全世界から寄せられた。

 なかでも目を引くのは、東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科の
五十川陽洋氏、朝日生命糖尿病研究所の野田光彦氏、
国立がんセンター研究所支所臨床疫学研究部の津金昌一郎氏ら
が投稿した日本人データだ。
厚生労働省多目的コホート研究
(JPHC;Japan Public Health Center-based prospective study on cancer and cardiovascular diseases)
の参加者解析で、コーヒーを週1回以上飲む人には、
空腹時血糖が高いケースが少ないことが判明したという。

 解析対象者は男性1916人、女性2704人で、全員が40歳代。
コーヒーをほとんど飲まない(週1回未満の)人を基準とした場合、
週1回以上飲む人での高血糖オッズ比は、
性別や年齢、体格指数(BMI)、糖尿病の家族歴で補正した後も、
0.614(95%信頼区間:0.472~0.804)と低い水準に留まった。
一方、紅茶や緑茶、ウーロン茶については、こうした関連は認められなかった。

 オランダ人だけでなく日本人でも、
コーヒーが糖尿病を予防する方向に働くとの結果だが、
通信欄にはほかに、
フィンランドでは正反対の結果が得られていることも紹介されている。
この研究では、20歳以上の男女約2万人(平均年齢:45歳)を20年近く追跡したが、
コーヒーを飲む量と2型糖尿病の発症率とには何の関係もみられなかったという。

 また、オランダの研究に関しては、
「コーヒーに入れる砂糖などの影響は考慮したか」との質問も出された。
これに対し研究グループは、
「コーヒーに普段は砂糖を入れない人を除外して解析したが、
7杯以上飲む人が2型糖尿病になるリスクは0.50倍(95%信頼区間:0.27~0.93)となり、
結果は変わらない」と回答している。

 通信欄の質疑応答のタイトルは、
「Coffee consumption and risk of type 2 diabetes mellitus」。
現在、こちらで全文を閲読できる。
(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい。)

僕は,コーヒー大好き人間です。
最近は、コーヒー豆をドイコーヒーから、ネットで買っている。
ここでは、注文を受けてから豆を焙煎するので、
香りもこくも申し分ない。
このあたりでは,千代田のプシューケのマスターが入れたコーヒーが美味い。
(なぜか,マスターと他の何人かのエキスパートが入れたコーヒーは美味いが,
他の人が入れると美味くない。)

もちろん,僕の入れたコーヒーも美味い!(自画自賛!)
   いかさま療法(Quackery)
   最近、テレビ番組などで疲労回復などのために
健常者が酸素を吸う方法が紹介されている。
空気中の酸素の濃度を高める器械や酸素発生器が使われているようだ。
医療用の酸素ボンベや液体酸素は規制がなされているが、
業者で使われている器械は使用者に法的規制ができていない。
あらゆる人に酸素を使ってなんの問題もない・・・・わけないじゃん!
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○酸素療法本来の目的:

心臓や肺に障害をもつ方々や群発頭痛の治療に
吸入空気中の酸素濃度を高めることが
医療機関ではごく普通の治療法として行われおります。
呼吸するのに使われるエネルギーを減らしたり、
心臓の負担を軽くしてあげて
血液中の酸素濃度を適正に保つために使われるものです。
ご承知の通り人間の体にとって酸素は不可欠なものです。
息を吸うことで大気中の空気を肺に取り込んで、
肺の中の肺胞と呼ばれる空気がたまる場所に到達します。
肺胞にある空気と、全身から運ばれた静脈血が網目状の毛細血管と混ざります。
体内で酸素が使われ,酸素が少なくなって、炭酸ガスが多くなった静脈血が,
血液拡散と呼ばれる仕組みで、酸素がガス中から血液に、また炭酸ガスが血液
中からガス中へ移動してガス交換が行われます。
酸素は大気中に21%程度含まれています。
大気中の酸素の比率を人工的に酸素を付加して肺胞の酸素の濃度を増加させることで、
より多くの酸素を体内に取り込ませようとする治療法が用いられているのです。
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○酸素濃度が正常な人酸素吸入は本当に有効なのでしょうか

動脈中の酸素は主に、ヘモグロビンと呼ばれる蛋白と結合して存在する酸素と
血漿中に解けている酸素という2つの形で存在します。

健康なヒトの血液中の酸素の含まれる量(酸素含量)を計算してみます。
・ヘモグロビンと結合する酸素の量=1.34×ヘモグロビン濃度×酸素飽和度
・血漿中含まれる酸素の量=0.003×酸素分圧

通常Hb15g/dl、酸素分圧100mm水銀柱(Torr.)、酸素飽和度96%とす
ると、このヒトの血液中の酸素の含まれる量は19.3g/dlとなります。

吸入する酸素の濃度を増すと、酸素飽和度が増加し、血漿中に含まれる酸素の
量が増加することが期待できます。特に心臓や肺などが悪く動脈中の酸素飽和
度が低い低酸素血症のヒトは酸素飽和度が低いため酸素を外部から投与したと
きに酸素含量がずいぶん多くなります。これが低酸素血症患者さんへの酸素療
法の仕組みです。

しかし、通常の人間は大気の酸素程度ですでにヘモグロビンと酸素はほとんど
結合しており、低流量の酸素投与では、せいぜい1~2%しか増加致しません。
また血漿中に含まれる酸素が21%から40%に増加したとしても、0.003
g/dl程度しか増えませんのでほとんど無視できる量です。

健常者に酸素療法を勧めている業者は
後述する高濃度酸素療法の副作用が怖いため低濃度の酸素しか利用者に勧めないはずです。
仮に勧めたとしたら、後述の高濃度酸素療法の害を無視した加害行為です。
それで、せいぜい40%程度の吸入酸素と仮定致します。
この程度の低濃度の酸素で効果が期待できるのは
酸素含量は1-2%の増加があるかどうかです。
もともと低酸素の人は
ヘモグロビンと酸素が充分に結合していない酸素飽和度の低い人なので、有効なのです。
だから,心臓や肺に障害のある方々の治療法としては効果的です。
しかし、本来健常な方が酸素を吸っても全身へ運ばれる酸素の
量の増加は極わずかなのです。
-----------------------------------------------------------

○高濃度酸素の問題点:

酸素濃度が高いと
1)吸入の酸素濃度が50%を越えると健常な肺でも肺障害を生じます。
 これはフリー・ラジカルがその機序と考えられます。
2)換気能に問題があると動脈中の炭酸ガスが高くなり、時には意識障害を生
 じます。炭酸ガスナルコーシスなどと呼ばれています。
 呼吸が止まることもあります。
3)一部換気のわるい肺の部分があると窒素の量が多くなり、そこの部分の肺
 が小さくなり、逆に動脈中の酸素が少なくなります。

動脈中の酸素が正常なヒトに長期的・習慣性に酸素投与をしたときの有害作用
は不明なことが多いのです。
健康情報に敏感な方々はフリー・ラジカルという言葉に敏感なのにかかわらず
あえてフリー・ラジカル暴露の危険性を選ぶというのは皮肉なことと思えます。
------------------------------------------------------------
○QuackWatch:

Quackery(いかさま療法)というのがあります。
確定的でない健康に関する知識や
明らかに誤っている似非医学知識を披露して、
時にはその人自身もその知識を盲信してしまい、
無益あるいは有害でさえある治療法を喧伝されているのをよく見聞きします。
最近は科学番組風なテレビ番組でも見られるようになっています。
問題になりそうなQuackeryはかなりの部分が実は輸入品です。
Quackwatchというサイトをみると、
マイナスイオンなどを含め多くのおなじみのQuackery関連記事を見いだすことができます。

“酸素バー”(oxygen bar)はファッションとして米国でも流行しているらし
く、FDA(http://www.fda.gov/fdac/features/2002/602_air.html
でも注意を促しております。
一部引用すると
---------------------------------------------------
・長期酸素投与が必要な患者さんたちがいるが、それ以外の人には不要
・酸素投与にて呼吸抑制を生じる人たちがいる
・芳香剤を添加しているところがあり、肺への炎症(リポイド肺炎)やアレ
 ルゲンとして作用する可能性もある。
・たばこの火からの引火
・酸素ボンベの取り扱いの難しさ
・スポーツでの使用も偽薬効果で、空気の吸入と効果に違いはない
----------------------------------------------------
など多くの問題が指摘され、効果が懐疑的であることが見てとれます。

高濃度の酸素を投与しても体内に蓄積することはできません。
仕事帰りに疲れをとるために酸素を吸ったとしても
そのときしか肺内の酸素を高めることができません。
たとえば15分すったとしても酸素療法を終了した次の一呼吸では
もう酸素は高めることはできません。
------------------------------------------------------------
○酸素濃縮装置:

酸素を好きなときに取り出す装置は、
1)液化酸素、
2)圧縮ボンベ、
3)酸素濃縮装置の3つが一般的です。
他に化学的反応を利用した酸素発生器がありますが、
酸素濃度の調整コントロールが難しく、一定でないため医療機関では滅多に使われません。
1)2)の酸素は人体に使用する場合、日本薬局方にさだめられている酸素を
利用しますので、だれでも、人体に使用することはできません。
酸素濃縮装置は日本で開発が先行している機器です。
これは特殊な吸着装置や膜を利用して酸素を集め、
慢性的に動脈中の酸素が低い方のために開発された器械です。
日本ではこれを利用して在宅で酸素を利用している方が多いのです。
この器械は当初の取り扱いが簡単なため、
家庭用の電源があれば簡単に自宅でも酸素を吸うことができます。
しかしながら、大気中の空気を取り込むために
フィルターにゴミが付着しやすく、
また、酸素のチューブなども定期的に交換したり、
乾燥した気体のため粘膜を損傷するのを防ぐため気泡を通す
などの管理をしながら使用する器械です。
管理上の知識が少ない者が安直に使用することで、
アレルギー性疾患や呼吸器疾患の引き金になる可能性も有ります。
化学的反応を利用した酸素発生パウダーなどに使用されている過酸化水素は
喘息などの気道過敏性のある方には危険性があります。
-----------------------------------------------------------
○まとめ:

在宅で酸素を利用するために作られた器械がQuackeryに利用されているのは
医療従事者として悲しいと思います。
シャピロさんの書かれた呼吸療法士の教科書には、
「酸素というのは薬剤であり、
重篤な患者さんには有効な薬剤であることはよく知られているが、
不幸なことにその副作用についてはあまり知られていない」とかかれています。
酸素という薬剤を人体に使用する場合にも慎重な取り扱いが必要です。
単なるファッションとして酸素という薬剤を健康ドリンクのように利用することが、
無駄で危険を含むものであることをご理解頂きたいと思います。
---------------------------------------------------------------
○ おまけ
  ナイトロックス:

ダイビングで使うナイトロックスは,通常36%から40%の酸素濃度である。
このときは,酸素濃度を上げることが目的ではなく,
窒素濃度を下げるのが目的である。
だから,ヘリウムを使ってもいいわけだが,簡単に手に入らないから酸素でまかなっている。
テクニカルダイビングで,減圧の時に使う
高濃度の酸素を使ったナイトロックスは,僕は吸いたくない。
出来れば,ナイトロックスも,酸素濃度を上げないで,
窒素をヘリウムに置き換えて作ってほしいものだ。

そもそも,生命の起源から考えると,もともとは,酸素は猛毒だったのだ。
しかし,エネルギー効率がいいので,酸素を使う生物が発生してきた。
もちろん,自分自身の体が酸化することを引き替えに・・・。
我々も,酸化しながら生きているのである。
進化の過程で,抗酸化物質を取り込み,
酸化を極力ゆっくりになるようにしながら,生きているのである。
活性酸素の発生は極力避けた方がいい。

   ウィルスの脅威(西ナイルウィルス編)
   1999年からアメリカで発生している西ナイルウィルス感染症は,
2001年まで,二桁(昨年は42例)の発症だったのに,
昨年は3873例(死亡246例)と100倍近くに急増した。
アメリカになかったウィルス感染症が,アメリカ大陸に定着したのである。

  西ナイルウィルスは,ウガンダの西ナイル地方で,
1937年に発熱患者から初めて分離された。
アフリカ諸国,欧州,中近東,西アジアに分布し,アメリカ大陸には存在しないとされていた。
しかし,99年8月ニューヨーク市周辺で7例の死亡を含む62例の集団感染が報告された。
西ナイルウィルスは,黄熱やテング熱,日本脳炎ウィルスと同じフラビウィルスに属する。
イエカ種のほか,シマカ,ヤブカなどの吸血によって感染し,
アジアでは,コガタアカイエカ,アカイエカが主要な媒介蚊である。
西ナイルウィルスの感染サイクルは,鳥と蚊によって維持され,
人やその他の哺乳動物は終末宿主とされている。
蚊が媒介する事や,中枢神経系の症状を呈する事は日本脳炎と同じであるが,
鳥(野生も飼育も)が宿主でウィルス増殖動物として重要な役割を果たすことが,
日本脳炎と違う。
   
  1999年8月にニューヨーク周辺で何が起こったのだろう。
1999年にニューヨーク市でカラスやスズメの大量死が突然に起こった。
それからしばらくして,
1999年8月にニューヨーク市のある病院に2例の原因不明の脳炎患者が入院した。
その病院に勤務する内科医は,
同じ地区に同時に脳炎患者が発生したことに疑問を抱き,
市保健部に,その他の病院での脳炎発生の有無を問い合わせた。
市当局が調査を開始したところ,
8月27日にさらに2例,29日までに8例の
原因不明のウィルス性脳炎患者が発生していることが判明した。
患者発生は,同市のクイーンズ地区に集中しており,
8例全例が58~87歳の高齢者であり,
1日の多くの時間を庭や公園など野外で過ごしていた。
9月3日にはCDCで患者血清から,フラビウィルスに対する抗体が検出された。
アメリカに常在するセントルイスウィルス脳炎の疑いがもたれたため,
全市で蚊の駆除対策が実施された。
しかし,CDCでの詳細な抗体検査と患者,鳥,蚊のウィルス分離の結果,
西ナイルウィルスであることが判明した。
市当局の殺虫剤噴霧やマスコミを動員した広報活動などの媒介蚊対策,
そして,秋の到来で9月末に流行は終息した。
99年の最終的な健康被害は,62例,死亡は7例であった。
輸入されるペットの鳥類,人や動物,渡り鳥,バイオテロリズムなど
考えられたが,結論は出ていない。いずれも可能性があるからだ。
遺伝子解析の結果は,1997年~2000年に
イスラエルで流行したものと類似の株であることが判明した。

ニューヨーク市のクイーンズ地区は,アルボウィルス(蚊媒介性ウィルス)
の流行とは無縁に思える閑静な住宅街である。
地理的には,JFケネディ国際空港,ラガーディア空港が近くにあり,
航空機でウィルスが上陸した可能性は大である。

 アメリカで中心的な媒介蚊であったアカイエカ類は,
日本では都会にも,田舎にも多く発生する。
ウィルス増幅動物である鳥も身近に多く生息している。





西ナイルウィルスの生息環境は日本中どこも整っているのである。



  ヒトへの感染の80%は不顕性感染であり,
脳炎を併発して重篤になるのは,感染者の1%以下である。
脳炎は高齢者に多く,致死率は5~14%と高率である。
ヒトからヒトへの感染は通常無いが,
輸血,母乳を介する場合はあり得る。
潜伏期間は3-15日(通常2-6日)。
39℃以上の突然の発熱で発症し,頭痛,筋肉痛,食欲不振,倦怠感など
多彩な症状を呈する。発熱は2峰性を示すことがあり,
発熱の中期から後期にかけて約半数の症例で,
胸部,背中,上肢に発疹が認められ,リンパ節腫脹がある。
西ナイル脳炎は,高齢者に多く,
激しい頭痛,方向感覚の欠如,麻痺,
意識障害(「私は誰?ここはどこ?」から「寝たまま起きない」まで障害の程度で症状は違う。),
痙攣などの症状が出る。

鳥はほとんど不顕性感染と考えられていたが,
ニューヨーク周辺では,
ヒトの流行に先立って数千羽の鳥(特にカラスやスズメ)の突然死が
発生したことが判明している。

日本でも,もし,ウィルスが侵入した場合,
まず,カラスやスズメの大量死が起こる可能性が高く,
カラスやスズメの調査観察が必要である。
(誰かしてるのだろうか?きっとしていないと思う。
もし,鳥の大量死があったら,教えて下さい。)

  アメリカなど流行地から帰国後2週間以内の発熱,脳炎は,
(そして,その地で,蚊に刺されたことがある場合は特に)
西ナイルウィルス感染を念頭に置かないといけない。
ややこしい時代になったものだ。
 

   ビタミンB6とB12と葉酸の話
     高ホモシステイン血症は動脈硬化性疾患の危険因子のひとつである。
その相対危険度は、高コレステロール血症、喫煙と同程度とされる。
そのわりには、日本における高ホモシステイン血症への注目度は低い。

 基礎的研究にてホモシステインは、
内皮細胞障害、血管平滑筋増殖、血小板凝集亢進、凝固機能異常などを
引き起こすことがわかってきている。
臨床的にも高ホモシステイン血症は動脈硬化の結果ではなく、原因であるとされた(1)。

 ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸はホモシステインが
メチオニンに代謝される際に必要なビタミンである。
これらの摂取により血液中ホモシステイン濃度が低下する。
つまり、これらのビタミンを摂取することで
動脈硬化性疾患を予防することができるかもしれない。

 ホモシステインに関連した最近の話題から幾つか拾ってみた。
1)食事からの葉酸摂取量の多い人(300μg/日以上)は
 摂取量の少ない人(136μg/日以下)に比べて
 脳卒中発症率が20%、心血管疾患発症率が13%少ない(2)。
2)ホモシステインが高い(>15mol/l)と突然死をきたしやすい(オッズ比3.8)(3)。
3)ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸投与により、
 経皮的冠動脈インターベンション後(心臓カテーテルで,心臓の冠動脈を拡げる治療。)
 の再狭窄率、再治療率が低くなる(相対危険度0.62)(4,5)。
4)血液中ホモシステイン濃度が高いほど血圧が高い(6)。

 上記の結果は、血液中ホモシステイン濃度を低下させることに
臨床的な意味があることを示唆するが、
まだビタミンB6、ビタミンB12、葉酸服用が動脈硬化性疾患の予防に
本当に有効かどうかについては結論が出ていない。
海外では高ホモシステイン血症への介入試験が進行中であるというから、
近いうちに結論が出ることだろう。

 私たちはどうしても製薬会社の開発する新薬に目がいってしまう。
製薬会社は大規模な臨床研究に資金を提供し、
その結果をいろいろなメディアを通じて大々的に宣伝する。
それに対し、ビタミン類を使った介入試験はあまり目立たない。
製薬会社の提供する情報ばかりに頼っていると、
ビタミンなど身近な医薬品やサプリメントに関する情報も不足するし、
それらの効果に対し懐疑的にもなりやすい。
しかし、ビタミン服用が動脈硬化性疾患の予防に効果があるということとなれば、
これほど安全で安価な治療法はないだろう。

 ここで紹介した論文はすべて海外のものである。
血液中ホモシステイン濃度は食生活にも左右されることから、
海外での研究結果をそのまま日本人に当てはめることはできない。
製薬会社に頼らない、研究者主導の臨床研究の出番ではなかろうか。

ビタミンB6(ピリドキシン):成人一日の摂取目安量 2mg
     2mgとるには,鮭267g(3切れ) or いわし200g(中4匹) or バナナ500g(4本)
ビタミンB12(コバラミン):成人一日の摂取目安量 2μg     
     2μgとるには,牛レバー3g  or 鶏レバー6g or カキ(貝)16g(約2個)
葉酸:成人一日の摂取目安量 0.2mg
     0.2mgとるには,ほうれん草200g(約4株) or インゲン豆150g
               or サツマイモ650g(3個)

■参考文献■
(1) BMJ 325:1202-1208, 2002
(2) Stroke 33:1183-9, 2002
(3) Arterioscler Thromb Vasc Biol 22:1936-1941, 2002
(4) N Engl J Med 345:1593-1600, 2001
(5) JAMA 288:973-979, 2002
(6) Am J Epidemiol 156:1105-1113, 2002

               高血圧治療の最前線 

   昨年末に,高血圧治療の史上最大規模の大規模臨床試験が終了してその結果が公表された。
この臨床試験の大きな特徴は,
1.今までで一番大規模な臨床試験である。(史上最
  大といっているのだから,当たり前だけど・・・。)
2.55歳以上の高齢者を対象にしている。
3.血圧を出来るだけ低い値まで下げて検討している。
  (以前は140/90mmHgまでといわれていたが,今回
  は,それ以下に下げて検討された。)
 といった特徴がある。
  
  その結果,
血圧は出来るだけ下げた方が良い。
利尿剤とカルシウム拮抗剤およびACE阻害剤で,心筋梗塞になることを予防する効果に差はなかった。
全死亡・全冠動脈疾患・全血管疾患・末期腎疾患・脳卒中では,利尿剤とカルシウム拮抗剤の間で差はなかった。
脳卒中・全血管疾患では,ACE阻害剤治療群が他の2群に較べて,有意に多かった。などのことが判明した。
詳細は,以下の通りである。

55歳以上のハイリスク高血圧患者40,000人以上を対象に、降圧療法の心血管疾患予防効果をみた米国の大規模臨床試験、ALLHAT(Antihypertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack Trial)の結果が、12月17日に米国ワシントンD.Cで発表された。ALLHATは、NIH(National Institute of Health)によって実施された史上最大規模の臨床試験であり、各治療群の対象者数は、クロルタリドン(利尿薬)群15,255人、アムロジピン(カルシウム拮抗薬)群9,048人、リシノプリル(アンジオテンシン変換酵素阻害剤)(ACE阻害剤と略す)群9,054人。各群の2型糖尿病患者の割合は、35.5~36.7%と3分の1以上を占めている。すでに予後改善効果が認められている利尿薬クロルタリドンを対照薬として、Ca拮抗薬のアムロジピン、ACE阻害薬のリシノプリル、α遮断薬のドキサゾシンが比較された。ドキサゾシンの試験は、2000年2月に試験が中止されており、今回はクロルタリドンとアムロジピン、リシノプリルを比較した結果が発表された。


試験結果の概要


致死性冠動脈疾患および非致死性心筋梗塞


一次エンドポイント

 致死的冠動脈疾患および非致死的心筋梗塞の抑制において、アムロジピンとリシノプリルの効果は、クロルタリドンと同等であった。


二次エンドポイント

 全死亡、全冠動脈疾患、脳卒中、全心血管疾患、末期腎疾患などにおいて、アムロジピンは、クロルタリドンと同等のイベント抑制効果を示した。リシノプリル群では、クロルタリドン群と比較して、脳卒中、全心血管疾患が有意に多かった。

 脳卒中の相対リスクは、クロルタリドン群に比較して、アムロジピン群は7%低く(有意差なし)、リシノプリル群は15%有意に高かった。

 2型糖尿病患者でCa拮抗薬が第1選択薬になりうるかどうかが議論されていたが、この試験ではアムロジピンは糖尿病群でも、利尿薬と上述のイベントに対してほぼ同じ効果を示した。ACE阻害薬でも同様の結果であった。

 クロルタリドン群では、心不全の発症は他の2群に比べて少なかった。

脳卒中


全心血管疾患




血圧値

 試験開始5年後に達成された血圧値は、収縮期血圧133.9~135.9mmHg、拡張期血圧74.6~75.4mmHgと、これまでの大規模臨床試験の中でも最も低いレベルに達している。一次エンドポイントで、3剤が同等であったことは、こうした低い血圧レベルの達成によっているところが大きいと考えられ、高血圧治療における確実な降圧の重要性を示しているとみられる。


安全性


NHLBI所長のClaude Lenfant氏

 これまでCa拮抗薬の安全性に関する議論があったが、アムロジピン群とクロルタリドン群の間で、癌、消化管出血の発生率に差はなかった。


その他の主な結果

 従来指摘されてきたACE阻害薬によるレニン・アンジオテンシン(RA)系の抑制による心保護作用が他の降圧薬を上回ることはなく、冠動脈疾患の抑制については3群間に有意差は見られなかった。

 クロルタリドン群では、コレステロールレベル、低カリウム血症、糖尿病発症数は、他の2群に比べて高かった。

 試験開始4年後の成績でみると、コレステロールレベルが240mg/dL以上であった割合は、クロルタリドン群14.4%、アムロジピン群13.4%、リシノプリル群12.8%であった。また、低カリウム血症(3.5mEq/L未満)は、クロタリドン群8.5%、アムロジピン群1.9%、リシノプリル群0.8%であった。

 試験開始時に、空腹時血糖値が126mg/dL未満で非糖尿病と判断された対象者のうち、4年後に126mg/dL以上となり糖尿病と診断された患者の割合は、クロルタリドン群11.6%、アムロジピン群9.8%、リシノプリル群8.1%であった。

 リシノプリル群では、血管浮腫の発生率はクロルタリドン群の4倍であった。

 ALLHATの試験を中心となって行ったNIHの研究機関、NHLBI(National Heart, Lung and Blood Institute)所長のClaude Lenfant氏は、「ALLHATや最近の臨床試験の結果をもとにJNC Ⅶの改訂を進め、2003年5月に開催される米国高血圧学会で発表する予定」としている。ALLHATの結果は、JNCのみならず各国の高血圧診療ガイドラインに影響を及ぼすことは必至だ。「降圧作用」そのものが心血管疾患抑制の重要な要素であることを示す今回の報告は、わが国の臨床現場にも大きな影響を及ぼしそうだ。




提供:ファイザー製薬株式会社

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      夢の診断装置 PET
      最近マスコミでも「PET検査」がさかんに取り上げられるようになり、
ご存じの方も多いと思います。
PET(ペット)と、かわいい名前で呼ばれていますが、PETとは、Positron
Emission Tomography の略で、ポジトロン(陽電子)を放出するアイソトープ
で標識された薬剤を注射し、一定時間後その体内分布を特殊なカメラで映像化す
る新しい診断法なのです。
ポジトロンCTやポジトロン断層撮影などとも呼ばれています。
この検査はマスコミ的な表現では「数ミリ単位の微小のがんを発見し、良・悪
性の鑑別から、手術後の転移・再発、病期、治療効果の判定などもできる最先端
装置である」とも言われています。
また、この検査は従来の「腫瘍の形を見る」、画像診断とは原理的に異なり、
「腫瘍の機能をみる」、つまり機能画像診断として非常に有用性が高いものだと
言われています。しかしながらまだマスコミで宣伝されているように「すべての
がんが早期発見できる」「100%確実に診断可能」といった、夢のような診断法
とは言えません。そこで今回は簡単にPETの原理や有用性、弱点などを説明し、
日常診療と、がんの検診への応用について紹介します。

○PETで何がわかるの?

PETはがんの性質(悪性度)診断や転移・再発巣の診断、あるいは治療効果判
定に有用性が高い検査です。
通常の画像診断(CT検査やMRI検査、超音波検査など)は腫瘍の「形や大きさ」
など形態を見る検査ですが、PETは腫瘍細胞の「活動性」、言葉を変えれば「悪
性度」まで知ることができると考えられています。
なぜかというと同じ断層検査でも検査の方法が違うからです。がん細胞は正常
の細胞よりも分裂が盛んに行われるため、グルコース(糖分)をたくさん必要と
します。そのため検査の薬剤(FDG:フルオロデオキシグルコースというくすり)
を静脈から注射しますと、分裂が盛んながんの病巣にたくさん集まります。その
様子を、PET装置で身体の外から撮影すると、がんがどこにあるのか(存在の有
無)、その大きさはどのくらいか(病巣の大きさ)がわかるのです。
放射線の量は腫瘍細胞がブドウ糖を取り込む量、つまり活動性に比例するため、
PETはがん細胞の機能(活動性)を反映する検査といってもよいのです。

そこで形は小さくてもPETで悪性度の高いがんであることがわかれば、手術の
範囲を広くしたり、あるいは抗がん剤を併用するなど適切な治療方針に変更する
ことが可能になります。
また、がんは離れた臓器に転移したり、いったん治療してもまた再発してくる
場合があります。がんの転移や再発が、どの臓器に出現するかを予測することは
困難です。従来は可能性の高い臓器に対してだけCTや超音波検査などが行われて
いました。その点、PETは一回の撮影で全身を検査できる優れた特徴をもってい
るため、予期せぬところに生じた転移や再発を早期に発見できる検査としても期
待されています。
さらに、がん細胞は死滅するよりも先に活動性が低下するので、PETを使って
放射線治療や化学療法の効果判定を従来よりも早い時期に診断することが可能に
なります。これにより次の段階の治療方針を早く決めることができる場合もあり
ます。
このようにがんの存在や悪性度、再発、転移などが分かり、臨床では今後ます
ます有用性が高まっていく検査法です。

○PET検査の保険適用

平成14年3月8日から一部の「がん」とてんかん、心疾患などでPET検査が日常
の診療に保険が適応されることになりました。
いずれも「他の検査、画像診断により癌の存在を疑うが、病理診断により確定診
断が得られない患者、他の検査、画像診断により病期診断、転移・再発の診断が確
定できない患者」という制約がありむやみにPET検査を受けることは出来ない仕組
みになっています。
勿論「がんの検診」の目的では保険適応はありません。

○PETの弱点は?

PETにも弱点がいくつかあります。そのひとつは空間分解能が悪いという点で、
PETの画像だけでは、異常が発見されても「病気がどこにあるのか」ということが
はっきりとわからない場合があると言われています。
(平面の投影図として表されるから)
この解決策として、PETの画像を評価する際には必ずCT検査やMRI検査といった、
空間分解能のよい画像と対比
させて診断することが重要となります。
また、検査のための薬剤FDGは炎症巣にも集積する
ことが知られていますので、
肺炎なども異常集積としてとらえられ、
がんとの区別が難しい場合があると言われています。
さらに、PETでは診断が難しい、あるいはその有用性が低い癌が
いくつか知られており、
例えば胃がん・腎がん・尿管がん・膀胱がん・前立腺がん・肝細胞がん
・胆道がん・白血病などでの診断率は低いようです。
尿路系の腫瘍は尿に排泄されたFDGと紛れて判定が困難なことや、
肝がん、腎がん、胃がん等のようにFDGが集積しないがんがあること等のようです。
ただし、これらのがんは「原発巣の診断には向かない」ということですが、遠隔
転移や再発診断にはPETが有効な場合もあると言われています。
いずれにせよ、ある患者さんに対してPETが有用か有用でないかに関しては専門
的な判断が必要ですので、検査を受ける前に専門医(放射線科医)へのご相談をお
勧めします。
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○検査の方法は?

検査はまず静脈注射をした後、薬剤が全身に分布するまで約1時間ほど待ちます。
その後はポジトロンカメラのベッドに寝ているだけです。カメラはCTの装置に似て
いますが、大きな音もせず、狭くもありません。撮影時間は30~60分程度で、この
間は安静が必要です。勿論検査中に痛みや苦痛はありませんし、前日からの前処置
も必要ありませんので簡単に検査を受けられます。
ただし血糖が高いと腫瘍への取り込みが低下しますので、糖尿病の方はコントロ
ールした上で検査することが必要と言われています。
また、一度に全身の検査が可能で、臓器ごとの検査ではありません。これは有利
な点です。

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○PET検査の安全性

PET検査の安全性としては、検査自体の侵襲度と被爆の問題があります。このうち
検査での侵襲は静注以外には全くありません。内視鏡を挿入したり、バリウムを
飲んだり、浣腸したり、カテーテルを挿入したりという事はないのです。検査前の
食事を1回絶食するだけです。これがPET検査を受ける時の被験者の一番のメリット
かも知れません。
次に検査で受ける放射線量(被爆の問題)ですが、PET検査ではごくわずかの放射線を
出す薬を、静脈からの注射や吸入によって体内に取り込みますので、ごくわずかに
放射線被爆があります。しかし、この被爆量は、私たちが日常の生活で1年間に
自然界から受ける放射線とほぼ同じ量の約2~3mSv(ミリシーベルト)です。
PET検査で使うくすり(FDG)は、半減期が短く短時間で放射線を出す能力を失うこ
とと、体外へ排泄されることから、 翌日にはほぼ体内からなくなります。
○がん検診に利用できないのか

さて、今回のテーマはPETは「夢のがん検診法となるか」ですが、まずPETによ
るがん診断のメリットとしては
1. 正確ながん診断により適切な治療選択につながる事。
2. 早期診断(発見)による医療費の節減が期待できる。
この2点があり、前者のメリットは絶大で議論の余地はありませんし、最近では後
者の点に関しても欧米では広く認知されているようです。
従って、今後PETを使ったがん検診は、時間をかけて臓器別に癌の検査をしなけ
ればならいない現在の他の検査方法と比べるとはるかに検査の侵襲が少なく、発見
率も高いためがんのスクリーニング検査として有用だと思います。

また実際にPET検査の出来る施設の中でもPETによるがんの検診をはじめたとこ
ろもあります。その施設のデータによると、「がん発見率は2.1%、PETだけでは
5369例中62例(1.2%)という数字があります。これは、会員制の検診という母集
団の偏りがあるにしてもがん検診としては驚異の発見率です。従来の人間ドックで
の発見率は0.02%と言われており、この100倍以上の発見率といえます。また手術
後、腫瘍マーカーの数値が上がって再発が疑われたのに、他の検査では転移先が分
からなかった患者が、PET検査で見つかったケースもあり、特に、1cm以下の乳が
ん、肺がん、甲状腺がんが見つかり完治しています。」とがん検診の有用性が述べ
られています。

PETによる検診の特長は、早期発見が出来ること、特定の臓器ではなく全身臓器
が対象となること、苦痛がなく2時間程度ですぐに結果が分かること、分かった時
点で病期診断まで出来てしまうことが挙げられ、検診への応用の有用性も高まって
います。
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○今後の問題点

がん検診のためのPET検査は全額自己負担です。検査料金は各施設によって異な
りますが1回約10万円程度だと言われています。またがん検診には入会金や会費を
徴収し会員制をとっている施設もあります。
現在国内ではPET検査の出来る施設は50施設程度ですが、診療や研究のため予約
状況もいっぱいで、がんの検診事業は行っていない施設の方が多いようです。そこ
でお隣の韓国の病院での韓国ツアーをかねたPETのがん検診もインターネットでは
紹介されています。

もう一つ検査の普及に関する問題点は装置の規模の大きさです。PET検査には
PET本体が7億~8億円、そのほか注射の薬18F-FDGは半減期が約110分と短い
ため、院内に専用のボジトロンを放出する陽電子を作るためのサイクロトロン施設
を設置することが必要で、静脈に注入する薬剤を合成するホットラボラトリーの使
用機器も6億~7億円と、1施設あたりの建設費は最低でも15-6億円にもなると言
われています。ただ日本ではすでに諸外国に比べて人口比のPET施設はおおく、今
後も増えてくるものと思います。

またPETの弱点を補ったPETとCTの複合機等も開発されていますので、癌の存在
部位と悪性度診断なども近いうちに解決するものと考えられます。
欧米ではがんの検診にはいろいろ検査しないでまず「PET」、「PET First !」
という言葉があるように普及しつつあり、日本でも遠からずそういう時代になるも
のと思います。
すべてがわかる夢のがん検診法ではありませんが、人間ドックでのがん検診など
には、がんのスクリーニングとして取り入れられる検査法になると思います。
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○高額医療機器と医療費高騰の問題

これまではPETの臨床応用と診断のメリットばかりを述べましたが、やはり今後
このような高額医療機器が普及することは、医療費の高騰の原因となることは確実
です。
技術革新のサイクルが早り、近年、医療機器の性能も飛躍的に高まっており、今
回紹介したPETの様に新しい医療機器が病気の早期発見や的確な診断に大きく寄与
していることは、誰もが認めざるを得ない事実でしょう。
ただ、その一方で、高額な医療機器が必要以上に多くの医療機関で導入されるこ
とで、「原価を償却するために、過剰な検査が行われている」といった弊害が指摘
されていることも事実です。また保険診療は画一化されているため、病医院のサー
ビス差を患者にアピールするために、競って個別に高額医療機器を購入して最新の
医療を行っていることをアピールする場合もあります。
実際、日本におけるCTやMRIといった高額医療機器は、諸外国に比較しても多く、
人口対のCT台数はイギリスの10倍以上、アメリカと比較しても約2.5倍、さらに
MRIの台数も欧米諸国を上回っています。

しかし、日本のようにどこにでもCTやMRI検査設備があると言う便利性は、必要
な時いつでも検査が低負担で行える訳で、現場の医師や患者さんには非常に役立っ
ています。イギリスのように検査まで長い期間予約待ちにされたり、アメリカのよ
うに保険の都合で検査を拒否されたりすることは無いのです。
「過剰な検査」かどうかは別にして、患者さんから検査を頼まれるほど一般化した
検査になっています。現実に今の日本で日常診療にCTやMRI検査を制限することは
出来ませんし、医療費の高騰よりも、すぐに検査が出来、診断されることのメリット
の方が大きいかも知れません。
また診療報酬制度でも、これらCTやMRI検査は回数による逓減制や、同月の検査
は請求できない場合もありますので、むしろ医療機関の過剰検査は少なくなってい
るものと思います。

このような現状を踏まえ、平成11年4月に医療保健福祉審議会がまとめた「診療
報酬体系のあり方についての意見書」では、高額医療機器について「無秩序な導入
を避け、共同利用の促進などによって、その利用の効率化を図らなければならない」
とし、医療提供体制の効率化という観点から、診療報酬上で何らかの措置を取るべ
きことが示唆されました。ただ、「共同利用」とひとことで言っても、連携そのも
のが思うように進展していない現状では、機器の共同利用もまた、一朝一夕には成
果をあげることはできないと思います。
今後は個々の医療機関が、それぞれの機能や地域における役割を活かしつつ、積
極的な取り組みを実践することが必要でしょう。

今回紹介したPET検査は、今後CTやMRI検査と併用され検査も多くなるものと予
想されます。PET検査が臨床に有用な検査である事は否定しませんし、こんな検査
が身近で行えることは、患者さんにとって悪いとは言えませんが、医療費全体を考
えた時高額医療機器の設置と適応についてはもっと厳しくあるべきだと思います。

ただし、今回紹介した「がんの検診としてのPET検査は」と言う意味では、全額自
己負担で行われるべきで、その意味では医療費の高騰とは別の問題だといえます。

一方日本アイソトープ協会PETワーキンググループの試算によると、PETによって
早期発見された例では、"大腸がん"を対象とした医療経済効果は、本邦全体で年間
65億円位の節減であり、また乳がん患者2万8千人では年間16億円もの医療経費が
節約できると発表しています。今後このような高額医療機器による検査がもたらす
医療費の増加と、その診断による臨床の医療費抑制効果についても検討されるべき
だと思います。

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PET検査を行っている施設一覧
http://kakuyaku.cyric.tohoku.ac.jp/petlink.htm

現在分かった範囲のPET検査施設は全国で約50弱の施設です。このうち公的な医療
機関では主に臨床診断と研究用で「がん検診」としてのPET検査は行っていない様
です。自費のがん検診は民間施設が主です。

北海道 北海道3施設、
東北  秋田県、岩手県、宮城県、
信越・北陸 新潟県、福井県、石川県2施設、
関東  東京都5施設、神奈川県2施設、千葉県3施設、山梨県、
栃木県、群馬県2施設、
東海  愛知県5施設、岐阜県、静岡県3施設、三重県、
近畿  大阪府4施設、兵庫県2施設、京都府2施設、奈良県、滋賀県、
中国  なし
四国  香川県
九州  福岡県2施設、宮崎県、鹿児島県

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参考サイト
癌の最新検査法
http://www.fis-net.co.jp/meisei/pet.html
PET検査 Q&A 日本アイソトープ協会
http://www.jrias.or.jp/jrias/index.cfm/17,0,117,html
PET検査について 香川医大
http://www.kms.ac.jp/~radiol/WNright.html
PET検診事業 先端医療センター
http://www.sentan-iryo.or.jp/center/ce004.htm
韓国旅行を兼ねたPET検診
http://www.mokuren.sakura.ne.jp/~rena-y/spider/wa-ki-01.htm
中日新聞『微小がんキャッチ 最先端装置「PET」』
http://www.ncdic.org/newstopics/index001215.html
PET  癌診療新時代の幕開け
http://www3.synapse.ne.jp/pet/PET_Center/shiryou/aboutpet.html




                   ハムのコロッケ!

     僕の大好きな、ハムのコロッケの作り方!34個分
材料:
 ハム:出来るだけ薄いものがいい。 34枚
 卵  : 8個
 後は、塩胡椒フライのためのパン粉やサラダ油

まず、卵は、ゆで卵にして、みじん切りにする。
それに、塩胡椒でしっかり味を付ける。
後で、完成品をに味を付けなくていいようにしっかり味付けする。
それを、ハムで包んで半月から三日月状にする。
それをフライにする。

簡単でしょ! でも、この作業ってけっこう手間らしい。
ハムで卵を包むのがめんどくさいらしい。
できたては、それなりに美味いが、冷めたほうがもっと美味い。
なぜか、弁当になると最高に美味い。
出来たものには、味を新たには付けないでいい様に、
最初に塩胡椒するときにしっかり味付けしておく。



 1      医薬品ビジランスセミナー
医薬ビジランスセミナーに出席した。聞き慣れない言葉だと思うが、医薬品に対して、それを正しく認識して、正しく使う事を目標にして、医師だけでなく薬剤師や看護婦、患者を含めたすべての人を対象にした活動を「医薬ビジランスセンター」という特定非営利法が行っていて、その年一回のセミナーである。
 医薬品を正しく評価すると言うことは言葉では簡単であるが、実際は大変なことがたくさんある。まず、お金の問題である。普通は、XX学会とかXX研究会とか名の付いたものは、製薬企業が協賛して学会誌の発行費用や学会会場費用をかなりの部分負担する。あの有名な世界保険機構(WHO)でさえ、高血圧の第一選択薬の選定で、カルシウム拮抗剤を製薬企業の圧力によって入れたと言う黒い噂が流れている。
 医薬ビジランスセンターは、いっさい製薬企業の宣伝を受け付けていない。したがって、とっても貧乏である。何から何まで、自分たちとボランティアの人々(医師から患者まで様々の人たち)が協力して成り立っている。
 実は、僕も一時は協力していたのだけど、あまりの忙しさにとうとう逃げ出してしまった。ここでは、日頃の医学会の常識はいっさい通用しない。「権威のある人がそう言ったからそうだ。」と言う話は通用しないのである。
 正しいデーター処理をして、正しく評価された論文にもとづいた話でないと通用しない(証拠に基づいた医療)。と言うと、なかなか入り込みがたい印象があるが、そうではないところが大切な点である。
 一般の人たちにもオープンのセミナーなので、その人たちにも解るように専門用語は出来るだけ使わないし、わかりにくい内容にはその都度、注釈がつけられたりする。(それでも、少しくらいは予習がいるかもしれないと僕は感じている。)
 セミナーは、はじめは、分科会に別れて各自が興味のある分科会に出席して、いくつかのセミナーが終わってから最後に、それぞれのセミナーのまとめと総合の討論会をする。
 僕は、最初は「精神疾患用薬剤」のセミナーに出席した。
 
 最初の議題は「睡眠薬」である。今では、すっかり有名になった「ハルシオン」の害についての説明(依存が出来やすく、連用すると効きにくくなって量が増える。また、せんもう状態(ぼーっとなって、周りの状況が判断できなくなる)になることもある。)や、「睡眠薬を出来るだけ服用しないように、不眠の原因を探ってまずその原因をとる方が大切である。」などの話があった。
 
 次の議題は統合失調症(精神分裂病)に対する新しい薬剤の評価の話があった。
 この機会に是非聞いておきたいことがあったので質問をした。内容は、「医者になって20年以上になるが、どうしても精神科の医者のやっている治療が納得できない。精神科の治療を受けた方が、さらに患者は精神病然としてしまって、ぶくっと太って動作が緩慢になって表情が乏しくなる。どう考えても、治療しない方が生き生きとして人間らしいし、話も通じやすい。精神科の医者にパーキンソン症候群が出ているので、治療を考えてみてくれと手紙を書いても返ってきたためしがない。一体どういう状態になるようにしたいと思って(エンドポイントと言って治療の結果目指すもの)治療しているのか?」 
 この先生は、さすがに患者思いの人で(話題がそれるが、このセミナーでは、「先生」は出来るだけ使わないで「さん」付けで呼ぶことになっている。)「それは、確かにエンドポイントの設定に問題がある。患者が暴れないようにすることがエンドポイントではなくて、何年か先に患者が正常に社会復帰できるように考えなければならない。しかし、そのエンドポイントを誤る場合が多々ある。」と話してくれた。
 しかし、どうすればそれが改善されるのかの話までには時間がなくて至らなかった。
 
 他にも、様々な話題が討議されたが、書ききれない。まずは医薬品ビジランスセミナーとその主催の医薬品ビジランスセンター(NPOJIP)の紹介にしておく。受付に、このNPOJIPの発行した雑誌(「薬のチェックは命のチェック」という題名)があるので是非見て、気に入ったら定期購読していただきたい。何しろ貧乏な非営利法人なので、この収入が数少ない収入源なのである。製薬会社などの広告はいっさいないし、一般の人向けに大変わかりやすく、医療の本質が解るように書いてある。このNPOJIPの主催者の浜六郎先生は、以前、朝日新聞に「薬の診察室」というコラムを連載していた先生なのでご存じの方も多いと思う。
更新日時:
2002/10/27

 2      はじめてのダイビング
今から5年前の夏に、はじめてCカードを取った。おばぁちゃんの患者さんに勧められておっかなびっくりで、とることに決めた。もともと、海が好きだったし、素潜りも好きだったので、ダイビングをすることには抵抗はなかった。しかし、Cカードを取るのは、大変なことなんだろうと思っていたので、なかなか第1歩がふみだせないでいた。聞いてみると、神戸のホテルオークラで日曜日に2回続けて学科講習を受ける。2回目の日曜にはプール講習も受ける。その後、串本で1泊2日で海洋講習(合計4本のダイビング)を受けて、合格したら晴れてCカード取得となる。 と言う内容だった。家内と娘、末の息子もやるというので4人でやってみることにした。そのころは診療を休んで遊びをするなんてとんでもないことだと思っていたので、休まないでも出来るというのが魅力だった。今から考えれば、そんなことは、わざわざ神戸のホテルに行かなくても、そこらのダイビングショップに行けば、喜んでやってくれることだったのだが、知らなかった。(余談だが、その講習をした、ショップは今あるのかどうかわからないが、相当悪徳なショップだったと思う。理由は、読んでもらえば、わかると思う。大体、高い金を取って大仰にホテルで講習する必要などなかった。機材も、自分のところで売った機材以外の機材では、ダイビングさせないと言っていた。)何も知らない僕たちは、日曜の朝からいそいそと神戸のホテルオークラまで出かけて、学科講習を受けた。2回目の講習では、実際にウェットスーツを着てタンクを担いでホテルのプールにはいるわけだけど、8月終わり頃だったと思うけど、結構寒かった。ウェットスーツがオーダーではないので、着たり脱いだりに大変苦労した。当然そこで、ウェットスーツのオーダーメードの販売があった。(もちろん購入したわけだが、これが結構着やすくていいものだった。アポロの製品だったが、おかげで今でも、アポロの製品は、表面では馬鹿にしながら、侮れないと思っている。)
 そして、いよいよ海洋講習である。まず、串本に行かなければならない。(串本と言えば、今までは、名前は聞いたことがあっても、まさか自分が行くとは思わなかったところである。大学病院にいた頃、串本町立病院に数年間、誰かが行かされることになっていて、みんな自分が指名されないように戦々恐々としていたことを思い出す。実は、給料もいいし、とっても大事にされるし、つりやダイビングも出来るし天国のようなところだったらしいが・・・。とにかく地の果ての感がある。)車で、阪和自動車道から終点御坊で降りて、延々国道42号を走る。カーナビを見るといつまでたっても紀伊半島の途中で、半島の先端はほど遠い。 夜中にやっと海中公園に到着。4時間弱の行程だったように思う。宿は、海中公園のログハウス。なかなかロマンチックだけど、狭い。夜の海は、結構波しぶきがたっている。大丈夫なんだろうか。翌日の朝は、インストラクターが潜れるところを探しに、近くの海岸を調査中とのことだった。不安に思いながら待っていると、車で数分のところに移動して島影の、波のきつくないところでダイビングをすることになった。まず、オーダーメイドしたウェットスーツを着てみると、今まで苦労したのが嘘のように楽に着られる。タンクのセッティングなど、一通り指導を受けて、岩場を歩いていよいよ海の中に!まず、しばらくは腰のあたりの深さまで歩いて進んで、それからフィンをはくのだけど、波が来るのでなかなかバランスが崩されてうまくはけない。何とかはいて、マスクをつけてインストラクターについて行く。一グループ20分くらいで何組かやったように思う。よく覚えていないのだが、僕たちは一家4人で入った。子供や家内のことが気になって自分がどうやって潜ったのかなどは全然記憶にない。潜行のためにジャケットの空気を抜いたりなんてことはしてなかったと思うが、多分オーバーウェイトでもぐっていたのだろう、沈まないということはなかった。海の中では、あれていて視界が極端に悪かった。インストラクターの後ろ姿をひたすら追いかけていたように思う。恐怖感などは全くなかった。家内や子供達も同じだった。一通りの、マスククリアーやレギュレーターリカバリーやオクトパスブリージングなどの手技をやらされたのだろうが覚えていない。
翌日は、串本は、前日からの波風がさらにひどくなって、嵐だった。海洋公園の水中展望台に行くコンクリートの道は、大きな波をかぶっていた。そんな中を海中公園の船着き場の中で潜った。海から上がってきたダイバーが「こんな中を潜ったら危ないからやめておけ!」と僕たちに言っていたけど、インストラクターが一緒だから心配ないのだろうと思っていた。船着き場から海に入ると、真夜中4時のNHKの世界だった。(砂嵐)インストラクターは我々に手をつなぐように言った。船着き場を一周してそのダイビングは終わった。この時、僕はダイビングの時には、バディは手をつなぐものだと思ってしまった。後で、別のところで潜ったときも、ずっと家内と手をつないでいたので、その時一緒に潜ったダイブマスターから「仲がいいですねぇ」と言われた。どうしてそんなことを言われるのかその時はわからなかったが、今なら、僕もそう発言するだろう。
 その後、無事にcカードをもらったが実際にどうやってダイビングをするのかわからない。そのショップは、たまにしかツアーにでなかったし、やたらに高額だった。偶然通りがかったダイビングショップに立ち寄るとえらい親切でわかりやすく説明をしてくれる。そこで、機材を買ってその店のツアーに参加した。はじめていったのが越前海岸のログ前と言うところであった。9月の連休のことだった。ちょうどこの時には、最初のショップのツアーで串本に行くことになっていたが、台風が接近していて太平洋側は大荒れでツアーは中止になった。後の方のショップは、行く先を変更して日本海側に行くとのことだった。太平洋側は大時化なのに日本海側は穏やかで透明度の20mは超えていてとっても綺麗だった。もちろん、みんなお手手つないでダイビングだった。連休だったけど、台風接近のため日帰りのツアーだった。是非、もう一日潜りたいと思ったが、翌日のダイビングは、帰ってから決めるとのこと。大阪に帰ると、何とか翌日もいけるとのこと、子供達はもう疲れて帰りたい様子。家内がつれて帰ってくれるとのことで、僕だけもう一回越前に行った。(今だに、この時のことは、責められている。家内も、ダイビングがいたく気に入ったようだった。)家内は、足が立たないところでは、泳げないという、「自称金槌ではない」ひとだ。当然、ダイビングは足が立たないところで潜ることが多い。不安がないのか気になったが、今から思うとはじめはずっとお手手つないでダイビングだったので不安が無く潜れたのかも知れない。今では、もう、お手手つないでくれないけど、それって、もう、不安がないからなのかな? 
 
更新日時:
2002/10/04

 3      インフルエンザ ワクチンについて
 インフルエンザワクチンについて
 
ワクチンは、体の中に目的の病原体に対する抗体を作ることによって感染を防いだり、病気の程度を軽くするために行われます。
 ここで、問題となってくることは、抗体があるからといって、その抗体が必ずしも病気にかかることを防いだり、病気を治したりするわけではないと言うことです。たとえば、エイズやC型肝炎の抗体は、病気を防いだり、病気を治したりする働きはありません。でも、麻疹の抗体は、麻疹になるのを防いだり、麻疹を治す働きがあります。どうして、そのような違いが起こるのでしょう? 
 体の中にウィルスが入ってきても、ただ入っただけでは、病気は起こりません。体に入ったウィルスは、体の細胞にしっかりとくっついて、その後、細胞の中に進入して増殖して初めて病気が発病します。たとえば、牛の風邪を人間はひかないし、人間の風邪は牛にうつりません。どうしてでしょう?それは、細胞に、リセプターとよばれる部分があってそのリセプターと形状が一致する部分を持つウィルスだけがその細胞にくっつくことが出来るからです。つまり、牛の風邪のウィルスはそのウィルスのリセプターを持っている牛の細胞には結合できますが、人の細胞には、そのリセプターがないので、結合できないのです。人間の風邪を牛がひかないのも同様の理由です。
 数年前に、鳥のインフルエンザが人にうつって”人類の驚異か”と問題になりましたが、ウィルスは突然変異によって動物の種を越えて感染する能力を獲得することがあります。つまり、リセプターに結合する表面の分子構造を変えることがあるのです。いつそんなことが起こるのか判らないので、戦々恐々としているのが実体です。話がそれましたが、そのようなわけで、リセプターと結合することが感染成立には重要なわけです。
そこで、抗体の話ですが、抗体が出来たときにその抗体がウィルスのリセプターに結合する部分を認識して、その部分に対する抗体が出来ると感染防御能力のある抗体が出来ます。しかし、その結合部分を認識しなかったときには抗体は出来ても、感染防御能力のない抗体になります。わかりやすく言うと、ウィルスが感染の時に腕を使って細胞の突起に捕まると考えてください。この腕を縛ってしまうような抗体が作られたときにはウィルスは細胞の突起に捕まることが出来ないので感染が成立しません。しかし、腕を縛ることの出来ない抗体が出来たときは(たとえば、おなかに巻き付くだけの抗体では)ウィルスは細胞の突起に捕まって細胞の中に入っていけます。エイズやC型肝炎の抗体はこの後者の抗体と考えられています。そして、インフルエンザのワクチンで出来た抗体もこのタイプのものと考えられます。
 
 
インフルエンザワクチン接種に関するお知らせ
 
 
今年も、インフルエンザのシーズンが近づいてきました。当院にもワクチンの接種希望者がいらっしゃいます。 ただ、マスコミや世間一般で言われているインフルエンザワクチンの有効性は、きちんとした統計的処理では、はっきりと有効であると証明されていません。
 また、インフルエンザワクチンによる脳症の死亡、後遺症認定者は1993年末で121人となり、その翌年、国はワクチン被害裁判で敗訴しています。また、基本的なワクチンの製法は現在も変わっていません。また、今年になって、新たにインフルエンザワクチンの副反応にギランバレー症候群とけいれんが追加されました。(ギランバレー症候群は、神経麻痺が起こって、全身の筋肉を支配する神経が麻痺するために、呼吸筋も麻痺して、放置すると最悪の場合は呼吸が出来なくて死に至ります。)
ワクチンを注射することによる利益と注射の危険を較べると割が合わないということです。
 インフルエンザワクチンを注射すると血液中にIgG抗体ができますが、インフルエンザワクチンで誘導されるこのIgG抗体は感染予防効果は弱いと考えられています。
 Uptodateで検索すると、感染予防効果は50%~86%です。これは、1100人の労働者を対象に調べたデータで、最初の年は、インフルエンザワクチンがその年に流行したインフルエンザの型とよくあわなかったために予防効果は50%で、翌年は、インフルエンザの型が一致したので予防効果は86%でした。 
 
 それでもいいからワクチンを打ちたいという方にはワクチン接種をいたします。電話でご予約ください。
 
参考文献: Effectiveness and cost-benefit of influenza vaccination of healthy working adults: A randomized controlled trial [In Process Citation]
AU - Bridges CB; Thompson WW; Meltzer MI; Reeve GR; Talamonti WJ; Cox NJ; Lilac HA; Hall H; Klimov A; Fukuda K
SO - JAMA 2000 Oct 4;284(13):1655-63
更新日時:
2002/09/17

 4      ダイバーになるには
よく、ダイビングは金がかかると言われる。果たしてそうだろうか、確かに、町のショップに行くと、オープンウォーター6万円とか書いてある。あんなものは、時間がなくて、どうしても仕事しながら取らないといけない人以外はやめた方がいいと思う。沖縄とか海外に行くと、よく3万円くらいでとれる話を聞く。それで良いと思うが、海外だと、英語で講習の内容がわかる人以外は、ちょっと危ないかもしれない。(十分に理解して守らないといけないことがいくつかあるから。)日本人のインストラクターがいて、その人が良心的であれば、それでOKである。でも、海外はそれっきりになってしまうから、国内のリゾートで探すのが一番かもしれない。それなら、またそこに行けばいいし、近くの信頼できる店を紹介してもらえるから。機材はいろいろわかってから、ほしくなったら買えばいい。最初から、ショップでショップの儲けの良いものなんかを買わされたら、あとで良いのが欲しくなってしまうから。最近の機材は、どれでも、最低の機能は十分あって、なおかつ丈夫なので、いつまでもそれを使い続けないといけないのも悲しいから、後から、自分が欲しいのを量販店やインターネットで安く買うのが良いと思う。そのことでごちゃごちゃ言うようなショップは縁を切っても問題なしである。それから、アドバンスなどのステップアップは、どう考えても業界の金儲けの手段でやる必要がないと思う。リゾートで、「君はアドバンスのレベルでないから、18mより深く潜ってはいけない。」とか「ナイトはやらせない。」などと言うことはまずない。オープンウォーターでも、100本も潜っていれば、20本のアドバンスダイバーよりも遙かにあてになっているはずである。そんな金があれば、少しでもよけいに潜った方が良い。ショップの甘い言葉にだまされない方が良いように思う。ただ、確かにレスキューは役に立つのでアドバンスなしでレスキューが受講できるシステムが必要だと思う。
 ダイビングに必要なのは、ほかには、健康な体である。糖尿病や高血圧や、肺の病気がある人は、どうしても勧められない人がある。個々の問題は健康相談のコーナーか、直接メールで相談を。
 そして何より必要なのは、時間!これは作り出すしかない。と言うか自分の生き方を変えるしか作り出せないかもしれない。僕は、少し、生き方が変わった。
更新日時:
2002/08/16

 5      鎮痛解熱剤について
当医院で解熱剤を必要最低限しか使わないようにしている理由について説明したいと思います。
 
1.ライ症候群との関連性
  ライ症候群とは、インフルエンザや水痘に感染した小児に発症して死に至るものです。解剖所見では、脳や肝臓などに脂肪変性がみられ、原因は今のところ特定できませんがアスピリン使用との関連が考えられています。
アメリカではこのため「水痘または、インフルエンザが疑われる小児に対してアスピリンを処方すべきではない」という警告が出されてアスピリンの使用量が減りそれとともにライ症候群が減りました。
 
2.急性脳症との関連
  ライ症候群よりもっと急激な脳症が日本と台湾にだけあるといわれています。脳幹部に点状出血と壊死を伴う急性脳症でどうも日本と台湾にしか無いという報告です。欧米にない脳症が日本と台湾で多発している。その原因の1つとして非ステロイド系鎮痛解熱剤が考えられています。非ステロイド系鎮痛解熱剤とは、ポンタール・ボルタレン・イブプロフェン・スルピリン等です。それも熱を下げるために2種類使われることもあります。(例:小児用PL顆粒とポンタールシロップ)
 
3.発熱は生体防衛反応(熱で死ぬことも、脳がとけることもあり  ません)
  インフルエンザのウィルスは40℃では増殖できません。熱を出して身体が治ろうとしているのをじゃましてはいけないのです。
例:ウサギにリンダーペストウィルス(ヒトのはしかウィルスの近縁ウィルス)を注射してポンタールをのませて熱を下げたグループと、なにもしないグループの比較をした実験があります。(詳しい資料が必要なら受付にいってください)なにもしないグループの死亡率は0%、ポンタールをのませて熱を下げたグループの死亡率は75%でした。死亡したウサギを解剖すると胃、腸管など消化器系に潰瘍が認められ、腸間膜リンパ節のウィルス量は3,500~3,000,000単位でした。ちなみに対照群のそれは500~3,500単位でした。臨床症状の増悪・死亡率の上昇とこのウィルスの大量増殖は密接に関係があるものと考えられます。
 
  まとめ
  鎮痛解熱剤は、「風邪症候群」に対して多くの医者が処方します。薬局でも入手可能でテレビのCMにも登場して安易に使用されています。確かに使用すれば、熱は下がるし、身体のしんどさも楽になるし、関節痛や頭痛も和らぎます。しかし、それはうわべだけのことであり薬が効いている間は、見た目は楽になっていますが、病気はかえって悪くなっています。熱も身体のしんどさも関節痛や頭痛も体の中でウィルスを排除する過程で出現する症状です。身体が治ろうとしているのを邪魔してはいけないのです。確かにしんどくって辛くって寝られないときもあるでしょう。そういうときだけ臨時で使っても良いでしょうが、ずっと使い続けて熱を下げっぱなしにはしないでください。アセトアミノフェンなどの解熱剤を使うとこの薬が効いている間(多くは5時間前後)熱が少しだけ(数分から1℃くらい)下がって本人が楽になりますから、その間に水分や消化の良いものを与えると良いでしょう。基本は水分を十分に補給して保温に気を付けて安静にすることです。今回はポンタールという薬を1例として取り上げましたがアスピリンがこれに次いで副作用が強いです。アセトアミノフェン(アルピニー・カロナール)がこれらに比較してマイルドでした。使うとすれば、世界的にも安全性の評価が高いアセトアミノフェンだと思います。ただし、辛いときに臨時で。
 では、高熱をほっておいて良いのか?
  42℃の熱が続くと人は死に至る可能性があります。このような高熱は、非常に特殊な場合(生体に本来ある体温調節機構が壊れてしまった状態)にしか出ません。たとえば、熱中症など高温にさらされて脱水があるような状態、あるいは、特殊な薬剤の副作用などです。一般の感染症では、一時的に40℃台になることがあっても続かないはずです。もし続けば、風邪ではない状態を考えないと行けません。また、38℃後半から39℃台が何日も続くときには風邪以外の重大な病気が潜んでいないか念頭に置いて慎重に経過観察する必要があります。その熱のために脳に障害が起こることはありません。
一般的には、37.5℃以上あると熱があるかもしれないと考えます。
38℃を超えると明らかな発熱と考えます。
この時の対処法は、

生後0~1ヶ月:一見元気で食欲があると思ってもとにかく診察を受けてください。
生後2~3ヶ月:ミルクを飲んで、機嫌が良ければ慌てないでもいいです。ただし、翌日には診察を受けてください。
生後4~5ヶ月:発熱だけで他に症状がなければ、慌てる必要はありません。翌日診察で問題なしです。
生後6ヶ月以上:食欲・機嫌が良ければ慌てる必要無しです。 翌日以降にでも診察を。

熱性痙攀がある子には解熱剤は使うべきか?
  熱性痙攀があってもなくても解熱剤の使用の基準は同じです。
解熱剤を使ったから熱性痙攀を防ぐことが出来たという証明はありません。逆に解熱剤を使ったために痙攀を誘発する危険もあります。
まず、抗痙攀剤(ダイアップ座薬)を最初に入れてください。その後8時間してまだ、38℃を超えていたらもう一回座薬を入れてください。だいたいはこれで痙攀は予防できるはずです。(それ以後に熱が続いたとしても)
もう一回質問、本当にほっておいて良いの?
  発熱だけで元気ならすぐに救急車を呼ばなくて良いです。
重大なことは、
  1.意識障害がある。(周囲に反応しない。)
  2.激しい頭痛と嘔吐がある。
  3.呼吸の状態がおかしい。(座って苦しそうに呼吸 
    する。顔色が青い。唇が紫色になっている。)
  4.痙攀が治まらない。
  5.初めての引きつけ。
これらのいずれか一つでもあれば、すぐに救急車を呼ぶべきです。 
更新日時:
2002/08/07
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Last updated: 2002/10/27