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 6      おなかのかぜ(感染性胃腸炎)
 感染性胃腸炎(おなかのかぜ)

<原因>:ウィルス感染によってひきおこされるかぜです。何回も発病する事があります。このウィルスは消化管とくっつき易いので胃腸の症状がでます。多くは、、ノロウィルスが原因です。感染しやすく、集団感染もあります。ウィルスが、口にはいって感染します。予防は、食品の加熱と手洗いです。
二枚貝を生で食べるのは、感染の危険が高いです。潜伏期は24〜48時間です。
ノロウイルスは経口的に消化管に入ると小腸上部に移行して一気に増え、十二指腸付近の小腸上皮細胞をほとんど全滅させてしまいます。下痢や嘔吐を起こす仕組みははっきりとは分かっていませんが、特に嘔吐はこうした粘膜への刺激による可能性が考えられます。毒素を出すわけではなく、上皮細胞が脱落することでウイルス繁殖も止まるので、比較的短期で回復します。嘔吐は主に胃内容で、十二指腸の内容の一部に及ぶ場合もありえます。
 感染に必要なウイルス量は数10個程度と少なく、一方、吐物には1g当たり106個、便には1g当たり108個程度と多量に含まれます。便からは1週間前後の間、検出されますが、残滓が排出されているにすぎません。発熱も見られますが多くは38度以下の微熱で、腸管の炎症によるものと考えられます
<症状>:吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、関節痛、筋肉痛、頭痛、発熱、ふらつき、全身倦怠感が主な症状です。これらの症状の内、いくつかの症状が、様々な程度に組合わさって出現します。多くの場合は、急激に全身倦怠感、吐き気、嘔吐、腰痛、寒気が出現して高熱は1日以内に微熱になりますが、全身倦怠感は、3日くらいは続きます。中には高熱が3日から7日続く場合もあります。
下痢が合併することもありますが、多くは1日で治まってきます。下痢が主症状の時もあります。胃腸の動きが低下しますので食べると症状が悪化することがあります。
<治療>:特に効く薬があるわけではありません。何もしなくても、食養生で多くは3日で治ります。胃腸の安静のために絶食とします。「治すためにがんばって食べる。」のは逆効果です。欲しくないときは食べないでください。
食欲が出てきたら、すり下ろしたリンゴ、エネルギーインゼリーといった胃の負担の軽いものを少量とってみてください。それが食べられたら、おかゆやうどんなどの消化しやすい炭水化物を開始して下さい。
嘔吐、下痢、発熱のために水分の喪失が増えます。脱水にならないように水分は少量づつとって下さい。1回にたくさん飲むと嘔吐するかもしれないから少量づつ飲んで下さい。吐き気が強いときは、おちょこにいっぱいづつくらいにして頻回に水分をとって下さい。水、お茶、電解質含有ドリンク等がいいです。塩分が失われますのでいっしょに塩をなめたり、梅干しを食べたほうが良いです。電解質含有ドリンクでは、OS-1が一番塩分が多いです(薬局等に置いています)。ジュースや、炭酸飲料は止めておいたほうが無難です。
甘味は胃の運動を悪くしてむかつきが強くなります。
アイスクリーム、まんじゅう、ケーキ等、甘味の強いものはしばらくはさけて下さい。
下痢をしやすいので牛乳、柑橘系の果物(みかん)、スイカ、トマトなどはさけてください。
入浴は元気があればかまいません。おなかをぬくめた方がいいです。

 クスリは、以下のものを主に使って、その他症状によって胃の粘膜保護剤や胃酸をおさえるクスリを併用します。
ただし、症状の緩和に使うだけで、治すのはあくまでも本人の治癒能力です。
胃の動きを良くするクスリ:
   ドンペリドン・ナウゼリン・六君子湯・ガナトン・
   エリーテンシロップ・プリンペラン。
熱を下げたり、痛みをやわらげるクスリ:
   アセトアミノフェン(カロナール)
  (ただしできるだけ使用は控えてください。
   つらくてしょうがないときだけ頓服で使用してください。)
抗生物質は、細菌感染にしか効きません。
熱があってもウィルス感染には効きませんから、
基本的には使いません。

         感染予防に関して

感染者の便、おう吐物などの処理の三原則。
 @すぐに拭き取る。  A乾燥させない。  B消毒する。

吐物や糞便で汚れた衣類等を片付けるときは、
できるだけ、ビニール手袋、使い捨てマスク等を使ってください。
また、汚れた衣類等は他の衣類とは分けて洗ってください。

吐物などで汚れた床は、
ペーパータオル等で拭き取り、
すぐに家庭・台所用塩素系漂白剤(市販品を約10倍に薄めたもの)
を浸した雑巾等で拭き取り、消毒。
拭き取ったペーパータオル等は、
ただちにゴミ袋に入れ、
約10倍に薄めた塩素系漂白剤を入れ、消毒・密閉してください。

吐物などを片付けた用具、雑巾類は、
約50倍に薄めた塩素系漂白剤で付け置き洗いをしてください。

ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い、
これが口に入って感染することがあるので、
おう吐物や糞便は乾燥させないことが感染防止に重要です。
ちなみに、80℃で1分間の加熱でノロウィルスは不活化されます。
だから、食品は、加熱すれば、安全です。
ただし、
湯通しくらいでは、中心まで熱が通ってないので、まだ危険です。

アルコールなどの消毒薬も一定の効果が期待できます。
食べる前には、毎回よく手洗いをしてウィルスを洗い流すのがいいです。

 排便後の注意点
基本的には糞口感染です。
ウィルスは、紙の繊維のスキマを十分に通過できます。
したがって、トイレットペーパーを使った手にはウィルスが付着しているかもしれません。また、排便後に便器のふたをしないで流したときには、目に見えない粒子が飛散します。トイレのドアのノブなどは汚染があると考えてください。
従って、予防する方法は、手で何かをつかんで口に入れる行為の前には手洗いをするのが良いと考えられます。



更新日時:
2006/1/30
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Last updated: 2002/10/27