3 夜明けの珍客野郎
…コンコンコン。
ノックの音。
(やばい、寝過ごした…!)外は明るい。私は、とっさにそう思った。
焦って飛び起きて、「あ、はい。オハヨウゴザイマスっ!」とか言いながらドアを開けたら、立っていたのはSECOMのいわゆる警備員服を着たお兄ちゃんだった。
「……。」←何が起きているのか理解できていない。
「あの、今日お泊まりのお客さんとかいらっしゃるんですか?」
「…?!」
私は完全に寝ぼけていて、SECOMのお兄さん(ちょっと三上 博似)の言っている事が全く理解できない。三上 博もどきも、警棒を持ったまま廊下で立ちつくしている。
このままつっ立っていても仕方ないので、2人でペンション内をスタッフの姿を求めてさまよい歩く。
私は何だってこんな早朝にたたき起こされて(この宿はレイトチェックアウトで、朝はのんびり寝ていられるのがウリなのに!!)、知らない人と途方に暮れながらふらふら歩き回っているんだ?!
どうやら三上もどきは、私のことをペンションのスタッフだと思っていたらしい。
ようやく動き始めた頭で、私が「宿泊客なんです…」と、言うと彼はいきなり恐縮してしまった。
三上 「…もういいですよ。部屋で寝てて下さって…。」
一世 「いやぁ…(もう遅いって。完全に目が冴えた)。でも、お店の人がいないと困りますよねぇ…。」
三上 「ここ、良くあるんですよ。夜中に警報機が鳴ったから来てみると、酔っ払っちゃったオーナーが2Fで寝てたり…。」
一時は侵入者扱いされたものの、15分くらいで無罪放免。
やれやれ。
部屋に帰ると、ベッドの上で放心状態の裕里がいた。
…そういえばこいつ、全く起きてこなかったなぁ。こういうタイプの人が、火事があったら真っ先に焼けてしまうのかも知らんなぁ…、なんて思った。
「…あ、かづよ…。」
あ、かづよ、も、ないもんである。
何があったか知りたがっているようだったので手短に説明したら「あ、そ。ふ〜ん…。」と、言ったきり寝てしまった。
ふと、時計を見れば5:30。
やれやれ、目が覚めてしまったぞ。
24時間入浴OKだったことを思い出して、裕里を残してお風呂へ。
昨日は気合いを入れて焚いていたせいか、湯温は異常に高かった。多分45度くらいあったと思う。…それでは長風呂が出来ない。
この時間、入る人が少ないので、気合いを入れて焚いていないせいで湯温は露天が38度、室内が39度くらい。
露天に入りたかったのだが、外気温が低すぎる(7度)ので、寒くて入っていられない。仕方なく室内浴。
ともあれ、早朝の貸し切り風呂は気持ちいい!!
思わず「どぇぇぇ〜ぃ…」と、呟いてしまった。
ハプニングに苦笑しつつも、まぁいいか…、と、妙に寛大な気持ちになっているこの瞬間。窓が広いので、なかなか開放感があってよろしい。
…ちなみに、ここは日帰り入浴も出来るらしい(入浴料はいくらか分からず)。
30分くらい浸かって、程良くふやけたところでベッドへダイブ。
さっきまでの覚醒がウソのようにするすると眠りが降りてきた。
8:00。ノブからのモーニングコール(私のケータイ、新しくしてからアラーム機能がなくなってしまった。後日、スケジュール機能というヤツで代用できることが判明。…そして、裕里のケータイは古すぎる機種で、アラーム機能なんて存在しない!)。
二度寝してしまったので、私はなかなか起きられない。
今度はそんなあたしを見捨てて、裕里はさっさとお風呂に入りに行ってしまった。
8:30までぐずぐずしていたのだが、仕方なく起きて支度する。
9:00に朝食。
お客さんは私たちだけなので、食堂は貸し切りである。
ペンションだし、まずコーヒーが出てきたから、てっきりパンとか洋食が出されると思ってたら、焼き鮭や玉子焼き、青菜のごまよごし、豆もやしのナムル、ひじきの煮付け、みそ汁、ごはん…と、和食。
…これにはびっくり。
ナムルが美味しいなぁ、と思っていたら、ここのコックさん、昼間は近所の焼き肉屋さんで働いているそうだ。
朝食を食べ終えてからチェックアウトまで、2時間ほどあった。
やはりのんびり出来るのはいいねぇ。
その間、裕里に即席メイクアップ講座(私なんかにメイクを教えられるというのもいかがかと思うが…)をしたり、だらだらと語りあったり、まったりとした時間を過ごした。
途中、たかしさんから電話がかかってきたんだけどねぇぇ、てれてれと話しをしている裕里はいつもの裕里と違って、何だか女の私から見ててもかわいらしい。…と、本人に言ったら調子づいて「あたしに惚れた?」とか、言ってきた。
何を今さらっ!惚れるかっつーの(笑)。
さて。「ビバ→ラ那須」を後にする。
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