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 小慢フォーラムでの谷口課長発言についての「全国心臓病の子どもを守る会」の見解

2003年5月に開催された「小慢フォーラム〜新しい小慢制度を考える」にパネラーとして出席された、厚生労働省母子保健課の谷口課長の発言内容に対する「全国心臓病の子どもを守る会」の見解と要望です。小慢法制化に関する「全国心臓病の子どもを守る会」の要望も別にまとめられています。

 

→小児慢性特定疾患法制化関連情報

 

新しい小児慢性特定疾患制度をつくるにあたって

−小慢フォーラムでの課長発言についての見解と要望−

2003年7月 全国心臓病の子どもを守る会                       


 5月3日、難病のこども支援全国ネットワーク主催の「小慢フォーラム〜新しい小慢制度を考える」が、都内で開催されました。そのなかで谷口隆厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課長が発表された厚生労働省のめざす新しい小慢制度の中身について、私たちの見解と要望をまとめました。(課長発言の内容は4〜5ページ)

1.今回の法制化の背景・目的について

都道府県ごとの「格差」をなくすためのルール作りには賛成です。とくに日本の医療システムが「短期入院・在宅治療の促進」傾向にあるなかで、心臓疾患の場合、「1ヶ月以上の入院見込みによる内科的治療」に限定されているため、通院治療にまで拡大してほしいという疾患児家族の願いは強く、16都府県6政令市5中核市が単独事業として対象拡大を行っています。全国どこにいても、不公平感なく受けられる制度として、拡充の方向での整備を望みます。

2.対象疾患の範囲について

  はずす対象とされる「医学の進歩でかなり治癒が期待できる疾患」については、予後の予測を慎重に行って判断することが必要と考えます。
  小慢制度が難病対策と違う点は、「慢性疾患」を対象としているところにあります。対象疾患の範囲を重症者優先にシフトする考え方は、今後の治療研究にも大きな影響を与え、難病対策(特定疾患治療研究事業)との区別をもあいまいにされかねません。何をもって重症と決めるかについては、心臓疾患の場合、予後の予測も含めて、線引きは難しい問題です。治療費への助成制度ということから考えれば、重症疾患ほど医療費がかかるとは言い切れないし、軽い症状でも負担がかかる場合もあります。また、治療研究のうえでも、「慢性疾患群」ということで裾野を広く保ち、軽症の疾患児をも含むことは不可欠ではないでしょうか。

3.年齢延長について

心臓疾患の場合、現行では、新規申請は18歳までとされ、継続の場合のみ20歳まで延長されています。最低でもこれは維持していただきたいと考えます。児童を対象とした法制度でも、特別児童扶養手当は20歳未満までを支給対象としています。20歳までの年齢延長はぜひ実現させていただきたいと考えます。
また、20歳以降の内科的治療費への助成制度は、長期慢性疾患児をもつ親の強い願いであることから、そのための制度作りについても早急に検討を行うよう、母子保健課として関係部署に強くはたらきかけをお願いしたいと考えます。

4.通院までの拡大について

通院までの対象拡大は、心臓疾患児をもつ親の強い願いであり、国の制度としてぜひ認めていただきたいと考えます。「重症者に限り認めることもありうる」と言われたが、その線引きはほとんど不可能であり、疾患児家族の間に新たな不公平感をもちこむことになります。
さらに、治療研究事業として今後、データベースを作成していくならば、入院疾患児に限ったデータでは片手落ちであり、通院による患者のデータを含めることは不可欠と考えます。
  また、通院治療を行っている患者の多くは治療費も少なくて済んでおり、単独事業として通院まで拡大している東京都の心臓疾患児の場合、制度申請時に必要な診断書料や交通費などと同額の場合には申請を控えているのが実情であり、そのこともふまえて試算すべきであると考えます。

5.重症度基準の導入について

  これは、私たちは絶対に受け入れ難いものです。
  第1に、何をもって「重症」とみなすのかの基準設定には、無理があります。例をいくつか挙げられたが、難治性疾患のみを対象としている特定疾患治療研究事業でも統一した基準設定はできず、重症度基準が設けられている疾患はわずかです。まして、小児慢性疾患児を対象としている制度で、将来的な予後も見通して、この子は「重症」であり、この子は「軽症」であるということの判断できる公平な基準というのはとうてい不可能であると考えます。
  第2に、等級基準の導入を実際に導入するとなれば、1級と認定される疾患児や親への精神的なショックを想定し、医療機関でのフォロー態勢を整備することなしに実施することは、大きな問題であると考えます。
  第3に、そもそも軽度の疾患児の医療費は一般的には負担度は軽くなり、予算をさほど圧迫するものとはならないはずです。また、重症ほど医療費がかかり、軽症ほどかからないとは言えず、小慢制度が、長期に高額の医療費がかかる慢性疾患児家族への医療費負担を公的に補助する制度であることが根幹の制度であることを考えた場合、医学的重症度で線を引くのは無理があると考えます。
  第4に、軽症の疾患児をはずすとなれば、「治療研究」のうえでもマイナスになります。
  以上の点から、重症度基準は導入せず、これまでどおり、疾患群として病名がついた疾患児はすべて対象に含めるよう要望します。

6.自己負担について

差額ベッドなど特定療養費の拡大による保険外負担医療費の増大、治療のために疾患児と一緒に通院するための交通費、入院時に待機するための宿泊費、看病で仕事を休むための給料からの減額など、疾患児にかかる諸経費は、若い親にとってはかなりの負担になります。せめて保険医療に関しては自己負担のない制度にしてもらいたいという願いは、疾患児をもつ親の当然の願いです。私たちはこの立場から、新しい制度においても、全額公費負担は続けてほしいとの態度を表明してきました。
厚生労働省が、制度の存続のためにどうしても自己負担を導入しなければならないとすれば、それに見合ってどういうサービスが拡充されるのかを示してほしいと、私たちはずっと主張し続けてきました。今回の課長発言でもこの点は明確でなく、「法制化するためには他の法制度が一部の補償制度を除いてすべて自己負担があることを考慮せざるをえない」と言うだけであり、私たちもこの基本的態度を変えることはできません。
  「育成医療を基準に」との考え方についていえば、育成医療は、心臓疾患でいえば外科的治療(手術)に限られているように、短期間の集中的治療の場合の公費負担医療制度であり、長期に治療を続けなければならない小児慢性疾患児の内科的治療に当てはめるのは適当ではありません。長期慢性疾患時をかかえる家族にとっては負担が重すぎます。慎重な検討をお願いします。
 

7.治療研究について

事業の目的にてらして、適正な事業評価を行うことは当然です。国はそのための整備予算を確保して、都道府県レベルの認定審査会が、疾患群ごとの専門医を揃えることや、疾患群ごとの疾患児家族の声が反映できるようなしくみをしっかりつくるよう要望します。また、制度の内容について、定期的に国の検討会で検証し見直しのできるシステムを導入することも賛成です。
  意見書からのデータベースの活用についても、国立成育医療センター内に小慢データベースをしっかり構築することはおおいに賛成です。さらにプライバシーに配慮することを前提に、そのデータベースが、どこの医師や研究者でも難なく利用することができるようにすることが大切と考えます。

8.福祉サービスについて

  特定疾患治療研究事業のなかの日常生活用具は、ベースが身障の制度にあり、その補完的なものとして付け加えた制度となっているために、実際には活用できる患者がかなり限られています。法制化となれば、独立した制度としての給付事業が期待でき、具体的サービス内容は、その規模や考え方を具体的に早期に公表し、疾患児家族の要望も聞きながら決めてほしいと考えます。心臓疾患でいえば、指さきで血中酸素濃度が計れるパルスオキシメーターなど、保険適用や福祉制度には「なじまない」としてはずされている機器への要望があります。疾患群ごとに具体的なサービスを早めに提示し、当事者団体の意見もとりいれて、不公平感のない実情にあった制度作りを要望します。
  相談事業への支援についても述べられたが、現在、国の補助事業で行われている相談事業は多々あり、それらの再構成にもつながるものであるのか、関心のあるところです。難病のこども支援全国ネットワークの相談事業は、すでに実績もあり助成先の一つとして妥当な考えですが、相談内容が多様であることを考慮するなら、それに加えて疾患群ごとの主要な親の会で、一定の要件を満たすようなところには助成をすべきであると考えます。

9.予算の「枠」を越えた新しい法制度として

「子どもは国の将来を担うための特別な存在である」との考え方のもとに、少子高齢化社会対策の一環としても、また、日本経済の働き手の中心としての若い親たちの負担を軽減する意味からも、担当課の枠をこえた特別措置として、国が新しい対策を行うことが急務と考えます。小児慢性疾患児の特別対策として、特別な財源を確保することも含めて、新しい制度が現在の小児慢性特定疾患治療研究事業を拡充させ、さらに発展された制度として創設されることを望みます。

※全国心臓病の子どもを守る会の承諾を得て掲載しております。

(2003/11/14)


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