SUMIKO Starling
MCカートリッジ
アジマス精密調整と測定結果

ヘッドシェルを水平にした程度では不十分っぽいです。
カートリッジの内部がそこまで精度よくできてないかもしれないから。

DENON DL-103での同様の成果の報告はこちら
結論は同様で、シェル水平では全く不十分です

アジマス確認写真を追加(2020/5/2)



アジマスの調整
ドイツのサイトで、SUMIKO Starling の周波数特性とチャンネルセパレーションを実測しているサイトがありました LowBeats というこちらのサイトです。針先などの写真もシャープだし、すごいサイトですねえ。

そこに掲載されている Starlingの特性チャートがこちら。
https://www.lowbeats.de/site/wp-content/uploads/2018/09/Sumiko-Starling-Frequenzgang_Uebersprechen_.png

この特性は、ちょっと驚きですね。周波数特性がフラットで左右がそろっていることに加え、1kHzでのチャンネルセパレーションが本当に「-35dB以上」を達成しているではありませんか。
 これに刺激され、私も、日本オーディオ協会によるオーディオ計測用LPレコード、AD-1(3500円)を入手し、ピンクノイズとDEQ2496のRTA機能を使って、左右の周波数特性を計測してみました。


   SUMIKO Starlingの周波数特性実測値

Lが青、Rが赤です。上が周波数特性、下がクロストークです。

私の測定は、トーンスイープではなく、ピンクノイズを使っているので、トーンスイープで測定したクロストーより悪い結果になると思います。つまり、単音のスイープとことなり、同時にあらゆる周波数が出ているため、他の周波数帯の高調波ノイズ、ひずみ成分などが乗ってくるはずです。

ドイツのサイトにある通り、Starlingの左右偏差の少なさはすごいですね。
ボーカルも、独奏バイオリンも、なるほど、ぴたりと真ん中に定位するのも、もっともです。

ドイツサイトの計測結果に比べると、左右でクロストークが微妙に違っている。
これでも、左右差は5dB以下ですから、普通のカートリッジでは、かなり良い方(というか、きわめてよいほう)なのですが、Starlingならアジマスを調整すれば、もっと一致するのではないか、と感じました。

トーレンスTD126mkIIIでは、アジマスの調整は、ヘッドシェル部を捩じって回す、という乱暴なことしかできなかったので、再現性がまったくなく、調整を追い込めませんでした。

しかし、プレーヤーが Pro-Ject Xtension9TAに変わり、ヘッドシェルも、アジマス調整がネジを緩めて可能な、LUXMAN製(JELCOのOEM)になりましたので、微調整も可能かもしれない。シェル根本の六角ネジを緩めることが出来るのです。



しかしながら、実際にやってみますと、緩めるたびに大きくアジマスが変わってしまって、微調整以前に、その再現性がまったくないため、少しずつ修正して行く、というのは困難でした。
 せいぜい、ヘッドシェルの上に水準器をおいて水平を出す、程度しかできない。これではトーレンスの時と変わりません。

 そこで、じっくり考えて思いついたのが、このアジマススケール(ってほどのもんじゃないけど)です。速攻で自作。



これで、指掛けの先端の高さを計測し、同じアジマスを再現でき、それを見て、少しずつ修正していくこともできる。行き過ぎれば、もとに戻ることもできる。


 アジマスを微調整するたびに、周波数特性とクロストークを計ってみますと、
周波数特性は、アジマスを多少狂わせてもあまり変わらないのですが、クロストークは激変します

そこで、クロストークが左右でそろったときが最適アジマスと考えられます。

 調整は、非常に敏感でした。上のスケール上で、1/4mmくらいの範囲に理想値を見出し、その付近で何度か調整を繰返して、(つまり0.1mmくらいで追い込む必要がある)、ついにたどり着いた最適アジマスの時の特性が以下です。




630Hzを中心に、広い範囲で-30dB以下のクロストーク。カタログ値-35dBにはわずかに及びませんが、これはピンクノイズ計測であるせいでしょう。クロストークが低い範囲が広いという意味で、驚異的に良いクロストーク特性です。低域、高域でも、かなりそろっている。こんなクロストーク特性のカートリッジは、これまで見たことないです。

では、見た目ではどう見えるか、確認してみましょう。針がレコード面に垂直などということはまったく考えずに、クロストークに着目してアジマスを調整した結果、その見た目は以下のようでした。写真は、盤面に針を下ろし、盤面の反射像(下側)とともに撮っています。



結果として、ちゃんと盤面に垂直になっていそうですねえ。

DL-103では、針先が若干曲がってついていましたが、Starlingはどうか。もっと拡大して撮ってみると、


さすがに高額なだけあって、工作精度は高く、見た目で狂いはなさそう。
(しかし、針先に結構ごみが付いているもんですね。目視では全く分からないし、さんざん針先ブラシで掃除したあとでこれです。まあ、音に関係はなさそうですが。


L/R偏差の微修正
 上記まで追い込んでも、周波数特性上では、0.5dBほど左右チャンネルの偏差があります。カタログ値でも0.5dB以内なんですから、これは当然です。
 これをDEQ2496でさらに修正してみます。

 その結果、以下のように、左右偏差もほぼ完全に補正できました。




アジマス補正による音の差

 クロストークが左右でそろっても、周波数特性はほとんど変わらないので、普通に音楽を聴いていると、何となく定位が安定したという以上の違いは、めったに判りません。しかし、ハッとするほど明確にわかる瞬間があるのです。

 比較的低い音量で聴こえているバイオリンなどでは、ほぼ違いが判りませんが、例えば、
ソプラノ歌手が声をはりあげたとき、いままでは、ホールの反響(と思っていた)声のまわりのエコーのようなものが、完全に左右対称になったのが、はっきりわかることがあるのです。
 あれ、これってホールの反響じゃなくて、クロストークが聞こえていたのね・・・。
 で、この差がわかるようになってくると、比較的小音量でも、差が聞き分けられるようになります。「絶対に修正後が正しい」と認識できます。

 アジマス調整は、やはり重要なのです。その調整は、あまりに敏感なので、水準器をヘッドシェルに載せて水平を出しました、という程度では、たいていはここまで到達できていないと思います。


周波数特性微修正による音の差

 さらに周波数特性も、左右差をDEQ2496で0.5dB以下に抑えたわけですが、これはどう聞こえるでしょうか。

 14歳のムターが弾く、モーツアルトバイオリン協奏曲第3番で聴き比べました。



 いままで 「これでいいのだ、ピンポイント定位だ」 と思っていたのですが、修正前と修正後を、DEQ2496用自作リモコンを使って切り替えて比べると、修正後は、14歳のムターが弾くのバイオリンの音が、2つのスピーカーの中央、幅5cmほどの領域に集中して聴こえるのに対し、修正前は、まれに、フラっと左に、はみでる。 

 今までは、ムターが演奏中に動いた、と理解してましたが、違うようです。本当は動いていなかったのです。
 これが本当かどうか、同じソースのハイレゾを聞いてみました。 バイオリンの定位は動いていてないです。修正後が正しい。これまで、このハイレゾとの差を聞き落としていました。。
 
ただし、この差は、非常にわずかで、DEQ2496で部屋の左右差を精密に補正していなければ、絶対に検出できないと思います。ヘッドホンなら簡単にわかるでしょうが。

Starlingのピンポイント定位にまだ先があったとは驚きです。いまや定位はハイレゾとほぼ同じです。ハイレゾよりLPの方がバイオリンの音色が好きなので、いつもLPを選んで聞いています。


 ちなみに、ハイレゾでなく、同じソースのCDも持っています。しかし、CDの音は、私の本(実用オーディオ学、コロナ社)で書いた通り、高域の波形精度が悪いため、幅5cmなどには決して定位しません。幅20cmくらいにぼやけます。LPやハイレゾと聞き比べれば、現状のCDの問題が痛いほどわかって、かなり悲しいです。しかも、LPの音を44.1kHzでサンプリングしてみると、定位はCDと同じ症状になるのです。

下の図は、上記の定位変化のイメージ図です。

定位のイメージ   左:修正後、     中央:修正前、     右:CDの場合

(2020年2月21日記)

 

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