NAGRA (ナグラ) PMA
ピラミッド・モノブロック・アンプ

2018年2月以後、PMAは100Hz以上を受け持つPIEGA COAX 711をドライブし、
100Hz以下を受け持つJBL4344をAudio Design DCPW-240がドライブしています。
 

200ワット/chのピラミッド・パワー

 スイス・NAGRA社のピラミッド型モノラルパワーアンプ、PMA。ある縁で自宅試聴させていただき、その美音と低域の豊かさに驚愕。結局、M-06αに代わり、私のメインシステムのためのパワーアンプの座に収まりました。

 とはいえ、私のかつて信じていた「よい音」の目標、重心が低いホットな音 という意味なら、いまもM-06αのほうが近いようにさえ思うのです。ただ、PMAでは、「クールなのに低重心、ワイドレンジなのに耳に優しい 」という音があり得ることを知り、新しい視界が開けました。できればDACのように切り替えてM-06αも使い続けたかったのですが、スペースと省エネの視点でままならず、新しい音を目指してPMAへの完全移行を決心しました。

 ところで、PMAの試聴はほとんどなんの予備知識もなく行ったものでした。しかし、その後で調べて見ると、このPMAは技術屋の私がうれしくなる点も多いのです。例えば・・・

1) ワンペアのMOSFET
 このアンプは、一見、フツーのAB級。しかし、出力段に、
特性が完全に対称なトランジスタ・ペアを選びに選んだ 1ペア・大型MOSFETのプッシュ・プル」 なのです(FETには選択責任者のサイン入りだそうです)。

 10ペア・パラレル・プッシュ・プルとかもザラの時代に、量で勝負でなく、超高精度な1ペア勝負。これは高精度レコーダで有名なNAGRAのこだわりでしょうか。この1ペアFETから、8Ω、200W/ch もの出力が出ます。電圧は60ボルトも出て、最大12アンペア。これから計算すると、瞬間クリップパワーは、5Ω時に最大で720W、8Ωでは450Wになります。

 このMOSFETは、PMAとほぼ同時期に発売となったゴールドムンドのTEROS-600と同じ英国EXICON製。その後も続々登場のTEROSシリーズはすべてこのEXICON製MOSFETが特徴となっているみたいです。

2) スイッチング電源なのに巨大トランス
 このパワーを支える電源の仕様も非常に特殊。国内ではあまり記事にもならず知られていませんが、パルス電源(スイッチング電源)なのに、系統電源からのノイズをカットすべく、通常電源並みのトロイダルトランスがボディーの下側に収まっています。さらに、電源の電圧、電流の位相を完全に同相にし、電流をクリーニングする(技術的に言えば力率を100%にする)というNAGRA特許のパワーファクターコレクター(PFC)を装備。

 驚いたことに、スイッチング電源だというのに、これらの電源関係が、アンプ体積のほとんどを占めています だから、軽量化、小型化、のためのパルス電源とはちょっと違いそうです。NAGRAは、このようなスイッチング電源こそが「アンプ回路が要求する直流電源を瞬時に高速で供給できる」と主張しています。

3) 200W/chのモノブロック・アナログアンプとしてはコンパクト
 ところで、このような技術的背景は後で知ったことで、最初に私がこの風変わりなアンプを試聴してみる気になったきっかけは、実はそのコンパクトさでした。

 うちのアンプラックは奥行きが45cmしかないのです。接続スペースを考えると、奥行き417mmのM-06αがほとんど限界でした。最新のアンプに更新しようと思って探しても、現代のモノブロック・アンプでこの奥行きに収まってくれるものはあまりないのです。例えばアキュフェーズなら最小のA30、ラックスマンでも最小のM-600Aが限度ということになります。これでは、たとえBTLで2台使っても120W/ch。 M-06αから半減してしまいます。もちろん、それでも音は良くなるのでしょうけれど、そうであっても、わざわざ220W/chを誇るM-06αから変えるモチベーションが沸きそうにない気がしたのです。

 この点で、PMAは、1辺が38cmのモノブロックが2台で、200W/ch。実にちょうど良いスペックなのです。

4) 省エネアンプ
 しかも、高効率電源+AB級動作で、発熱にも悩まされません。この種のアンプの現実の使用方法としては、長期不在の場合を除けば、おそらく主電源は入れたままになるので、音さえよいなら、AB級で常時消費電力が少ないほうが地球環境にもやさしい。

-
アンプ下段(右ch用)のPMA             

 

ピラミッド・パワー、その音は

 実は、この形について、NAGRAはそれなりに「合理的理由がある」と言ってはいますが、その説明(放熱効率がよい、重心が低いなど)が、私としては、「だからこの形がベスト」とまでは納得できなかったので、試聴前は結構ネガティブなイメージでした。音も形も、実は奇をてらっているのではないのか・・・と。

 でも、でてきた音はあまりにも正統派。低域のパワーは、10kgという重量からは到底想像できない底力があります。大太鼓やパイプオルガンの超低音では、音量の大小に寄らず、部屋全体の空気が揺れる という感覚があります。中域、高域もスムースで美しい。声楽もOK。分解能も高く、聞きなれたCDでも、これまで聞こえていなかった「オケの中で小音で演奏している楽器」が聞こえてくるのに気がついたりします。気難しいJBL4344との相性もよろしいようです。

 全体の混濁感も減り、聴感上のチャンネル・セパレーションも向上。目の前に広がるステージが左右に一回り大きくなりました。

 この音を聞いてからピラミッドの形を見ると、なんか納得できる形の気がしてきてしまうから不思議。美的にはOKだと思いますし、音が良くて、うちのラックに収まり、発熱も少ないなら言うことなしです。

 実パワーに関しては、クリップ警告のLED(60ボルトまたは12アンペアで点灯)はどんなに大きな音でキリテカナワが声を張り上げても、決して点灯しませんでした。

 PMAのような8Ωで定格200W出る高電圧アンプと、8Ωで30Wだけど1Ωなら240Wが出るような最近流行の大電流・低電圧型のアンプ。どちらがいいのか、私にはまったくわかりませんが、とにかく、PMAは重量(10kg)からは想像しがたいパワーが出てきます。

 

システム調整

 このPMAの音を生かすには、結局、JBL4344のほうから調整する羽目になり、若干システム調整に手間取りました。2週間の試行錯誤の結果だけを書けば、ミッドウーハーのレベルをわずかに下げ、その分、C46のイコライザを上げる、という調整になりました。
 これまで通りに
3つのDACを使い分けることで、声楽から弦楽器、ピアノ、大編成のオケ、小編成の協奏曲、たまには聞くポップス系まで、何でも非常にうまく鳴っています。

 唯一、使用上で気をつけるべき点は、主電源をオンにしてから音が立ち上がるまで、意外と時間がかかる点。ただし、主電源を常時オンにしておけば、音を出し始めてからは数分でいつもの音になります。A級アンプとは異なり、無音時の消費電力は60ワット以下なので、発熱も消費電力も少なく、省エネです。

 

 実用上でいささか疑問を感じたのは、電源ONを示す緑LED、プロテクタ動作を示す赤LED、オーバーヒートを示す赤LED の3つが、リアパネルにある点です。演奏前に異常が発生していないか念のために見たいですから、ラックの奥に鏡を置いて、前から覗き込めば見えるようにしました(上の写真)。

 なお、アンプ正面にある2個のLEDは、左の青LED が入力レベルに応じて明滅(消灯可能)、右の赤LED はクリップ警告灯です。

 このピラミッド・アンプ、 実際にラックにセットして全体を眺めれば、なんとなくオラクルCDプレーヤともデザイン的に合っている気がします。部屋全体の調和が取れたような・・・。ま、贔屓目でしょうかね。

 本ページトップにある写真に写っている スフィンクス は、PMAのために買ってきました。ピラミッドといえばスフィンクスかな、と思いまして・・・(^^; 

クリスタル・フラワー (スワロフスキー)のほうは、以前から持っていたものです。なんか、こんなおしゃれをさせてあげたくなるアンプです。

 

2008年4月記

オーディオのページのトップへ